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 金星特急最終話感想

ああ、終わっちゃった。これが読了直後の気持ち。本当に終わっちゃいました。しかも、多少駆け足とはいえ概ね全部謎を語り終えて。余韻に浸りつつ、色々考えながら感想書いてます。

まずはメインの錆丸と金星の物語について。金星が鬼灯を殺したことはここまでから分かっていましたが、錆丸から語られたのは想像より一段上の残酷さ。動機が好奇心だとは、初デートの喜びからの無邪気さは怖かった。錆丸が恐れを抱いて、でも全く恨まずに恋している心理に完全に納得できました。ここまで見せてきた無邪気さを思えば、金星のこの動機は自然なんですよね。
そしてその後の錆丸が想像以上に壮絶。「死のうかなって思った」でうわーとなった。アカシの夫婦に出会えてよかったなあ。

そんな錆丸の話も交えつつ、皆で分析されていく金星特急の秘密はふむふむと頷きながら。「オデュッセウスみたいに」という何気ない言葉から、この旅が生まれていたのには素直に驚きました。そんな願いまで区別せずに叶えようとする金星は、ちょっと怖くてちょっと切ない。
日面通過との関連は全く頭になかったですが、1巻の冒頭から出てきてるんですねえ。あれでも前回が8年前じゃなく9年前なのは何でだろう。と思って少し考えて、殿下はズレに気づいていたけれど(殿下が間違えるわけない)、説明のために誤魔化したのだと想像。そして金星は、何らかの理由でタイミングを間違うことになり、そのタイミングのズレが、錆丸への恋心に繋がり、本来予定された消滅はなくなった、と。全然違うかもしれませんけど、こう思うとロマンチックじゃないですか?

そして到着後。金星が死を選ぶかもというのは、お願いの言葉を見てから薄々とした予感はありましたけれど、その動機が! 動機が! なんて悲しい英雄の物語。ただでさえ金星特急による英雄作りが印象深かったのに、さらにかぶせるのは破壊力ありました。容赦ない2択を突きつけられた錆丸の苦しさもあって、凄い切なかった。無邪気でありながらこうも用意周到に物語を準備しているのに最初は少し違和感がありましたが、恋心以外は理知的なんですよね金星、と気づいて納得。

最後はお約束ともいえる展開、でもこのくらい残されるものがあっていいですよね。生まれ変わりという解釈もできそうですけど、普通に子供かな。でも生まれ変わりであればという想いがあります。好きな子と手を繋いで歩く、錆丸の願いができるなら叶ってほしい。成長とかは金星パワーで何が起こってもおかしくないですし。そして家に帰って終わりというのもよかった。錆丸の過去を読んだ後だとよかったなという想いがひとしお。

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本筋はこのくらいにして、ここからは各キャラについて少しずつ。まずは錆丸。どんどん格好良く成長していった彼ですけれど、最後は元々の男の子らしい格好良さを見せてくれたなあと。告白シーンの直球よかった。タラシに成長も感じましたけどね。あと今話では、計算できない姿などもあって、錆丸が子供っぽかったことを思い出させて和ませてくれました。散々気になった弱点は、樹って文字が見えた瞬間分かりました、なるほど金星の能力から類推はできたんだなあ。思ったほど弱点を執拗に狙われたりはなかったですが、カウントダウンの乗車劇はなかなか緊迫感がありました。

伊織は本当に純粋に錆丸と金星が心配だっただけなんですね。過去において身を呈して錆丸を助け続ける、そこまでの錆丸への思いはどうやって培われていったのかが気になります。その辺りの話は是非番外で読んでみたいところ。最後は何やってますかあなたと突っ込みましたけどね! なんですかこの動揺しない人は。

ユースタスは良かった良かった何もなくて良かった。物凄く心配してたわけですけれど、ユースタスを見くびってましたごめんなさい。恋は人を強くしますね。リオンに言い放った言葉が格好良くてスカッとしました。そして雷鳥様GJですよリオン爆発させてくれた!
その後はお幸せに! という他ないですね。「砂鉄独占欲強そう」という錆丸の内心には噴きました、見透かされてるよバレバレだよ! レジーさんの揺れる炎の表現は素敵。残り少なくなってからの砂鉄の自重しなさが半端なかったですね、こんな幸せな2人が本編中にこんな赤裸々に描かれるとは。事後があからさますぎてこっ恥ずかしかったですけども、2人の笑顔ドアップでもう満足ですよ。
エピローグではどういう生活送ってるんでしょうか、常に一緒ではなさそうで、ユースタスがどうなってるのか気になりました。この2人はきっと番外編ありそうなので、そこで読めるかな?

砂鉄繋がりで彗星。彗星の結末は仕方なかったかなという気がしています。ずっと見続けて気持ちを昇華していく余裕はどう見てもなかったし、死ぬ手段があるタイミングも悪すぎた。砂鉄の言葉に対して、自分から手を離した発言が重たい。この言葉は楔。この死があって、砂鉄とユースタスはしばらく(もしかするとエピローグ直前までずっと)離れていたのかな。
でも一番辛いのは無名だと思います、父親まで……。黒曜さんはいまいち考えが分からないまま終わってしまいました、再読すると理解できるかな。色々気づくことありそうなので再読は文庫発売までにはしておきたいです。

その他の女の子たちは少し人数が多すぎたかも、ヤグチさんは本当に重なるだけで終わっちゃいましたし、もう少し1人1人を詳しく見たかった。ヤスミンたちとバドルおじさんのその後は読んでみたい。バドルおじさん最後に良い渋さ見せてくれましたし。その影で暁玲の想いが全く通じなかったのは、結果よかったとはいえ悲しかった。双子も分からないところあるままだったなあ。

三月と夏草さんは、特急が舞台なので出番少なかったですが存在感ありました。だって、あの状態の三月をずっと語らないなんで生殺しですよなんてことするんですか。まあ間空けたからには死ぬ展開はないだろうとは思ってましたが。ご都合主義気味ですけれど、これは納得できますし、あり。錆丸の血摂取が有力ですけれど、兄弟宣言による奇跡とかでもいいです。
最後の夏草さんは、そうだよね知る機会なかったんですよね性別! と笑った笑った。砂鉄がきっかけなしに教えるわけないですしね。夏草さんは後半の笑い供給源として活躍してくれました。
少し気がかりなのは、錆丸との接点。夏草さんはあまり離れられそうにはなくて、月氏もやめないとなると、三月と錆丸が一緒に暮らせないじゃないですかー! 錆丸が家を離れることもないだろうしなあ。三月には、兄弟らしい生活をまた送ってほしいんですけれど。

殿下はなあ、乗った時点から死ぬ覚悟はできていたでしょうし、思う存分生き抜いて満足なんでしょうけれど、生きていて欲しかったな。生きていればエミリーとの再会があったのかもなと思うと切なくなります。
ヴィットリアは後を継いだんでしょうね。世界語への対策方法は無事にいってて何より、戦いの経験もそうですけど、身近な人々の死がこういう対策に向かわせたのかな。

長くなりすぎたのでこの辺でストップ。
3年近く、3ヶ月おきの雑誌発売が楽しみでした、錆丸は本当いい主人公でした。最後まで面白い物語をありがとうございました!