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 1月31日(日)


<最近読んだ本>


この闇と光 (服部 まゆみ/角川文庫)amazon
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色んな方の感想を見て(確か最初はかほさんの感想だったはず。もう5年前ですか……)、気になっていた本。長らく積んでいて事前知識ゼロで手をつけたら、幻想的な雰囲気と驚愕の展開に魅了されました。これは事前知識なしで読んでよかったです。

まずはネタバレ控えめでの感想。盲目の少女レイアが主人公の物語は、暮らす部屋1つが舞台の中心。時折ダフネという女性が訪れたり、犬の家族が増えたり、外界の情報が断片的に入ったりはするものの、それ以外はほぼ父親との関係だけで進む、とても閉じたお話なんですが、この閉鎖空間がとても独特で幻想的なんです。レイアは父親が好きで、父親はレイアが好きで、閉じていても完成されている美しさがあって。レイアが言葉や文字など色々なものを学んでいく中で、その空気を味わうのがこの作品の一つの魅力。聡明に育っていくレイアを見守りながら、どこまでこの暮らしが続くんだろうと気になって読み進めました。

その空気がガラっと変わるのが後半。何を語ってもネタバレになりそうで書きづらいんですが、本当に驚かされましたし、「この闇と光」というタイトルの意味をまざまざと感じさせられる物語にゾクッとしました。光も闇も心の中にはあるし、受け取り方次第でどちらにもなることがよく分かります。

ここからはネタバレ全開で書くので反転。
ミステリであることすら知らずに読んでいたので、男性であることすら、解放される直前まで考えてもなく、種明かしパートはかなり衝撃的でした。ミステリだと知っていても騙されていた気はしますが。
で、種明かしが終わっても最大の謎は残ったままで、レイアも世界に馴染めず、前半の幻想的な空気が残ったままで進むのが上手いなあと。光の世界での息苦しさが伝わってきました。
そして、ダフネや兵士まで全部演じられていたことが分かるところがさらなる衝撃で、一旦手を止めて読み返しました。確かに全てがそう解釈できるように描かれていて、音や匂いの工夫でどうにかなりそうなんですけれど、ここまで完成された世界構築を行っていた父親の心境を想像すると空恐ろしい気持ちで一杯に。次第にダフネが現れる頻度が減っていったのは、次第にレイアのことが愛おしくなったと考えたいんですけれど、ダフネと父親の切り替えの速さを思うと、もっと根深い狂気を感じてしまい。
最後、父親の真意が明かされない終わり方が、その狂気の印象をさらに強くしました。愛する気持ちは確かにあって光だったんでしょうけど、あんな演技をしてたら本人も何だか分からなくなって、闇も不可分になってしまったのでは。何がどこまで本当だったか分からない、恐ろしくも幻想的な物語でした。


他の著作も買ってみたので、また遠くないうちに読みます。

評価 ☆☆☆☆(8)



その無限の先へ1〜2 (二ツ樹 五輪/MFブックス)amazon
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去年の「このWeb小説がすごい」が切っ掛けで読んだシリーズ。上位作品は大体手をつけたんですが、未読だった作品の中で一番気に入ったのが本作でした。

異世界転生した日本人のツナとユキがダンジョンを攻略していくお話。コミカルなパートを挟みつつ、スキルを駆使して敵を倒していく、という王道なストーリーで、どう気に入ったかを言語化するのが割と難しいんですが、1つにはコミカルなネタの入れ方かな。
お約束なダンジョン世界観を前提として、日本語ネタだったりギルドにいるゴブリンだったり、ちょっとずつズラして笑いをとってくるのが楽しい。時々、RPG系の知識があること前提のネタも混じってましたが、大体分かる自分にはプラス要素。元々こういうスキルがバンバン出てくるような世界観が好みなのも大きかったかなと思います。
あと、キャラクターも魅力的。特にツナとユキの主役2人が自然に息合っていて掛け合いが楽しい。ユキが男性っぽくないおかげか、恋愛要素0でも気になりませんでした。

バトルパートで気に入っている点はいくつかあって、こりゃ勝てないだろうという敵との戦闘時の、どう切り開いていくんだろうというドキドキ、2人のコンビネーションの気持ちよさ、無茶苦茶をやらかして打開していくときの「ここまでやるか」という驚きや痛快さなどあるんですが、自分的に特に気に入っているのは「諦めない心」の描き方なのかな、と振り返ってみて思いました。
理由付けを抜きにして、限界でも諦めない、負けたくない、という姿勢が非常にシンプルに力強いのがとても燃える。その辺が「諦めない」話が好きな自分には刺さったのかなと。 読んでる最中には全然そんなこと感じてなかったので、単に好き、でもいいんですけどね。

書き下ろしも楽しく読みました。リリカかわいい、レーネさん半端ない、で大体言いたいこと終わってる気がします。病んでるわけでもないのに怖い……。

登場人物が増え、抱える秘密も次第に見えてくる3巻以降の展開も1〜2巻以上に好きなんです、というわけで再読がはかどっております。既に結構読み終わっているので今後には影響しないので大丈夫ですね(手遅れともいう)。

評価 ☆☆☆☆(8)




 
 1月24日(日)

サイトオープン12周年過ぎてました。小学生が大学生になるくらい経つんですよね……。その割にあまり代わり映えのしないサイトですが、これからもよろしくお願いいたします。


<最近読んだ本>


おこぼれ姫と円卓の騎士 再起の大地 (石田 リンネ/ビーズログ文庫)amazon
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おこぼれ姫シリーズ最新刊は、ゼノンが引っ掻き回していった巻でした。味方がいない中でのレティとゼノンの共闘と駆け引きは、いつ仕掛けがくるのかドキドキ。焼き払いまでの流れの持っていき方とか本当に嫌らしい。デュークの支えもあったとはいえ、レティはよく凌いだなと思います。ただ、負けたとはいってもゼノンはレティの情報を色々と観察していったでしょうし、最後には爆弾落としていきましたし。フリートヘルムでも御しきれる相手ではないでしょうね……怖い。

そのフリートヘルム兄様は今回久々に活躍。活躍がこんな一発ネタでいいのかという気もするんですが、本人楽しそうだからまあいいかな。アストリッドと一緒にイモ買いにいったレティ、想像するとちょっと面白い。
カリム皇子はカメムシ発言の面白キャラ寄りかと思いきや立派でしたね、ゼノンを跳ね除けましたし、国のために真摯な姿が男前。レティとの心の交わし方が良かったです。

あと印象に残ったのは頭と最後だけ出てきたメルディ。冒頭の不吉な言葉は、そこまで考えるのかと。これ、裏を返せばデューク恋愛方面の布石ともなりそうなのでどうなるのか。そして最後のメルディの本音には爆笑。そこでそう答えるの! ゼノンに沈まされた気持ちを引き上げてくれました。頭良くて天然で、メルディ好きだなあ。そんな彼が考えてくれるプレゼント、次巻がとても楽しみです。

評価 ☆☆☆★(7)



本好きの下剋上 〜司書になるためには手段を選んでいられません〜 第二部「神殿の巫女見習いII」 (香月 美夜/TOブックス)amazon
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更新が今一番楽しみなオンノベ「本好きの下克上」シリーズ。書籍版は時々しか感想書いてませんが、再読がてら楽しく読んでます。
この巻は念願の本が完成するパート。本完成のシーンのマインの喜びもグッとくるものがあるんですが、この辺りはそれ以上に、下町組と側仕え組が一緒になって賑やかにしている雰囲気が好きです。洋服のお買い物なんか、何気ない1場面なんですけど楽しい。この先の展開もそちらはそちらで好きなんですけど、進むにつれてこの頃の貴重さが感じられて、ますます好きになっていくんですよね。人を再読に引きずり込む罠ですね。

あとは神官長がメインキャラの1人になっていく巻でもありますね。お小言いう神官長とマインの関係をはじめ、神官長は気に入っているキャラなので、再読でも言葉や変化を楽しみに読んでます。夢の世界でマインの世界に翻弄される神官長はやっぱり印象的ですね、マインに落ちるのもさもありなん。

そんなわけで(?)楽しいのでオンノベ版の再読に入りました。そう、またなんだ。ついうっかり唆かされてしまって(自己責任です)。今度は少しずつ読むことに決めているので、1ヶ月更新が止まる、ということはない、はず。

評価 ☆☆☆☆(8)




 
 1月19日(火)



<最近読んだ本>


階段坂の魔法使い 恋からはじまる月曜日 (糸森 環/角川ビーンズ文庫)amazon
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なんて酷い魔法使い!

糸森さんのビーンズ新作は、触った者を眠らせてしまう能力を持った少女が主役のファンタジー。魔法使いと婚約するところから始まるんですけど、いやー、この魔法使いルイスが酷かった。最初は酷い言葉を投げつけたかと思ったら、銀狼の姿で近づいて懐き、次は人間の姿で接触して失敗して別人のフリして。この間ずっと正体はバラさず、元の姿では冷たいまま。な、なんて面倒くさいヒーロー……。
他の姿のときに魔法使い姿のことをアピールしたりとか大変楽しいんですけど、面倒くさいことには変わりない。リン姿はかわいいのに(糸森さんの獣愛!)何でこんなにひねくれてるのか。自分で愛告げられない誓約までかけて自爆してるの本当に酷いです。どうする気なんだろうこの人。

ジュディの方は、魔法使いを好きになる流れがやや不思議でしたが(ヴィクター姿に転んでもおかしくないのに)、芯が強くて良い主人公でした。自分の力を捨てずに活かそうとする心持ちが素敵。前向きに光の隣で過ごす姿は、ルイスじゃなくても眩しく感じました。

状況は詰んでるわけですが、このヒネくれすぎた恋模様がどうなるのか、続き楽しみです。

評価 ☆☆☆★(7)