8月13日(土) |
<最近読んだ本> ◆ Babel ―異世界禁呪と緑の少女― (古宮 九時/電撃文庫) 【amazon】 書籍化おめでとうございます! やっぱり好きです! 前々から大好きなオンライン小説の書籍化作品。人気もあるし書籍化しないかなあとずっと思いつつ、文量の多さやシリーズの繋がりなどから難しいのかなとも思っていただけに、書籍化の報を聞いたときは本当嬉しかったです。Babel単独でも文字数100万ですからね、電撃さんありがとうございます。 物語のあらすじを書くと、異世界に迷い込んだ少女が帰還のために魔法士の青年と旅していくファンタジー。異世界物では能力持ち主人公が全盛の中、この物語の主人公である雫は普通の女子大生。でも、この雫がとても好きなんですよね。 特に能力もなく自分に自信がもてない少女は、同行者や出会いに支えられながら旅していくんですが、その中で自分のあり方を悩み考え続けながら、目の前の問題には全力でぶつかっていく。前を向くその意志が眩しく見えて、web版からずっと気に入ってます。 魔法士とのエリクとのやり取りも好きなポイントの1つ。まず、文化や常識の違いで頻繁にずれた会話が楽しい。エリクはツッコミの視点がおかしいし、雫も時々自分からネタを振ったりして、会話が軽快に斜め下に落っこちていくのがたまらなく好き。 そんな2人ですが、真面目な場面でのやりとりもいいんです。どちらも真摯に率直に言葉を返す人間で、読んでいて背筋が伸びますし、響く言葉が多くてグッときます。旅立ちの場面なんか特に好き。 あと、2人の言語についてのやり取りも興味深いです。ただの異世界間の言葉の違い、だけではないことが分かっていく様子を、はじめて読んだ当時はワクワクしながら読んでいました。 ここからはweb版との変化も織り交ぜながら、この巻のネタバレも含めて。雫とエリクは共にヒロイン・ヒーローらしさが上がってましたね。特にエリク、身も蓋もない言動が減ってましたし、ピンチに颯爽と駆けつけるの普通に格好いい! でもちゃんとズレた言動も残っていて良かったです。雫のこれからも楽しみ。 メアはweb版の出会いのエピソードも好きだっただけに、削られてしまったのが惜しくもあり。文量的にどう考えても仕方ないんですけどね。でも、雫の優しさに触れて、自分から一歩を踏み出したこちらのメアも良いなあと思います。かわいいですしね(大事)。2巻で呼称がどうなるかがとても気になります。 文量といえば、エピソード以外でも文章がちょこちょこ圧縮されているようでした。act1を1冊ですものね……改稿量がすごい。 変わり様に一番驚かされたのがターキス。ワイルドだったのがかなり優しさで漂白されてました。人物紹介自体はほとんど変わらないのに、誰だこのいい人は。いや元々悪い人じゃないですけど。イラストも多くて「出世してる!」と思いました。飴食べる場面あたりの面倒見の良さがいいですね、ジト目な雫とのやり取りも楽しい。 久々に特典集めもしたので、SSの感想も少しだけ。メイトのは落とすぞ落とすぞときて、しっかり落としてくるのが楽しい。最後の雫えらい。とらのは途中からツッコミ不在で転がっていくのがいかにもこの2人らしくて好き。メロンのは図書館愛がいいですね、知ってはいましたけど、こうして改めてお話になると、この姿勢いいなあと再確認。そしてここでもしっかりボケるエリク、犯行声明に笑いました。 要は全部楽しかったです、webでのSSも含めて、この2人の掌編での安定感は凄い。 物語はまだまだここから。進むごとにどんどん大好きになっていった物語なので、この先が楽しみだし、ぜひ最後まで見届けたいです。また特典ついたら全力で買います! 評価 ☆☆☆☆(8) |
8月11日(木) |
<最近読んだ本> ◆ 血と霧1 常闇の王子 (多崎 礼/ハヤカワ文庫JA) 【amazon】 ◆ 血と霧2 無名の英雄 (多崎 礼/ハヤカワ文庫JA) 【amazon】 なんてやるせない……でも面白かった。是非続きをください。 多崎さんの最新刊は、血統により能力が決まる世界を舞台にしたハードボイルドなファンタジー。これまでの多崎さんの作風とは異なりますが、最近の多崎さん作品の中では一番気に入りました。 好きなポイントの1つは、ハードボイルドな世界観での、登場人物たちの情の深さ。家族を失って殺伐気味に生きていたロイスが、ルーク少年やその護衛たちと接していく中で、 本来の情を取り戻して不器用な優しさを見せていくのが良かったです。他の登場人物たちも皆素敵で、特に、最初はガードが硬かったロイスの心に柔らかくも真っ直ぐに踏み込んでいくヴィンセントがお気に入りでした。 そんな暖かさの後に待っていたのは、やるせなくて、切なくて、でも愛しい物語。血統が全ての世界で、彼らの関係は家族愛と呼べるものにまでなって、けれども血統が連れてくる宿命は強大で。皆、自身の愛情・誇りにしたがって行動して、それでも悲しみが生まれるのが本当にやるせない。でも、彼らの姿はとても眩しくて、残ったものは決して悲しさだけではなかったし、読後感も良かった。彼らが動かした心、残した世界がこの先どうなるのか、続きが読みたいです。 以下は余談気味。物語とは直接関係のないところで、とても気になるのが「煌夜祭」とのリンク。いくつか見覚えのある名前が出てくるのです。そして多崎さんのブログによると、ほんのり繋がりがあり、それはシーズン3まで刊行されると分かるとのこと(現在はシーズン1終了)。こちらの側面でも、是非とも続きが読みたい! というわけで皆さん読みましょう。 評価 ☆☆☆☆(8) |
8月7日(日) |
すっかり月次更新。今週ははBabelに仮花嫁最終巻と楽しみ一杯です。 <最近プレイしたゲーム> ◆ ファタモルガーナの館 (Novectacle) 【amazon】 ぼろぼろ泣いた。凄い物語でした。 2012年発売の同人ノベルゲーム。面白いという評判を聞いて買ってはいたものの、重い・グロくてエグいという間違った先入観のせいで長らく積んでいました。愚か者でした。幾度となく驚かされ、幾度となく胸うたれ、最後は思いっきり泣かされました。 ジャンルとしては、ある館で展開される色んな時代の物語を描くホラー調のサスペンス、になるんでしょうか。この物語の特徴の1つが、人の弱さを一つの切っ掛けとして、胸をえぐる展開を見せてくること。決して特殊な感情ではなく、多くの人がもっているだろう心の弱さによって物語が悲劇的に転がっていくのが、とても苦しくて胸に響きました。 特に3章、物語の仕掛け自体は早くに分かったんですけど、その後の掛け違いがしんどいこと。その手前の2章もやるせない物語で、この2章3章で心を鷲掴みにされました。それ以外でも突き落とされる場面は多めなので、心が元気なときにプレイするのが推奨です。 驚かされる展開やカタルシスが多めなのも、この物語の特徴。モニタの前で幾度となく叫んでました。事前に目に入った感想に「ノベルゲーをやり慣れている人の方が、より予想を外されて楽しめるかも」というのがあったんですが、プレイしてみて頷けます。5章は鮮烈でした。 そうして悲劇を経て、驚きを経て、積み重ねた先に待っているのは、真実と感動。ネタバレ厳禁な物語なので迂闊に何も書けませんが、最後ぼろぼろと泣きました、多分ゲームでは過去一番。歳をとるにつれて涙腺が緩くなってきているのもありますが、それだけ胸をうたれたのは間違いなく。自分にとって大切な物語の一つとなりました。主人公の姿勢がとても素敵で、好きなキャラも主人公。 絵は第一印象は苦手でしたが、ゲームの雰囲気に合っていて段々と好きになりました。あと特筆すべきは音楽。絵と同様に雰囲気抜群で、「これ凄い」と思うものが沢山。ポルトガル語の歌は訳詞見ないと言葉はさっぱりでしたが、感情ははっきり伝わってきて、物語での感情の揺れが増幅されました。60曲以上の中でいくつか心に残った曲をあげると、「Giselle」「Cicio」「Husked Girlhood」「He Called Hex」「They Are Crying」「Tarantula」「Dira Minchia」など。不安にさせる曲も優しい曲も良かった。 ほんと何で積んでたんでしょうね。手を付けたら止まらず2日で一気でした。今は資料集やサントラやファンディスクを買って、少しずつ世界を味わってます。ファンディスクは「究極のバッドエンド」と銘打たれていてプレイが怖くてまだ手付かず。 こんなゲームがDL販売なら1000円で売っているところもあるし、3DSでも1000円で遊べる。とんでもないことです。鬱なゲームが嫌いでなければ是非お勧め。 評価 ☆☆☆☆☆(10) |