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___8月16日(火)

 妹尾ゆふ子さんのページの「少女向け文庫はあなどれない!」がすごい。ファンタジー中心に良作がいくつか紹介されてるんですが、「霧の日にはラノンが視える」や松井千尋作品、「シャリアンの魔炎」など、マイナーのツボをついた選出基準が素晴らしいですよ。特にラノンは今年読んだ中でも五指に入る名作なので、興味持った人は是非是非読むべし。

(リンクミスあったので17日午前修正、ボケすぎ……_| ̄|○)


結晶物語2 (前田 栄/新書館ウィングス文庫)amazon

《あらすじ》
 人間だけでなく、幽霊や妖怪などの有象無象に縁の品まで扱う、不思議な質屋の主人・凍雨(とうう)。現在は昼行灯を決め込んでいる大妖怪・白夜を父に持ち、自身も相手の感情を結晶にし、舐め味わうという彼。しかし、今まで出会ったことが無いような、底知れぬなにかを抱えた男との出会いが、凍雨を未曾有の危機に遭遇させ―!? 前田栄のあやかし冒険譚、続篇登場!!


 おとぎ話をモチーフにした、前田さんの現代あやかしファンタジー第2弾。
 前田さんの作品は安定して出来いいなぁ。今回のモチーフは眠り姫・白雪姫・かぐや姫と姫3連発。白雪姫の話は前編だけで終わっていて謎も全然明かされていないので置いておくとして、眠り姫の話がかなりよかったですね。実は童話の眠り姫は全くあらすじ知らないんですが(王子様が眠っているお姫様にキスをする、でいいのかな?)、鵺を王子役に据えるのが斬新な上、「嘘は絶対つかないし約束をやぶるものは許さない」というあやかし独自の倫理観などを利用しうまく話をひねっていて、モチーフ関係なしに楽しめました。わざとそっけなく振舞う鵺の態度は泣かせるし、そこから辿り着いた終章では心温まりました。普段の黄竜と凍雨のずれたかけ合いなんかも面白いし、今後も楽しみ。


評価 ☆☆☆★(7)



___8月15日(月)

 コミケ・ライトノベル系オフなど楽しかった2日間終了。色々と知ったり再考することもありましたが、うちはこのままのマイペースでこれからもやっていこうと思います。

奇蹟の表現II 雨の役割 (結城 充考/電撃文庫)amazon

《あらすじ》
 再び修道院に雇われることになり、シマは半年振りにナツと再会する。朝、日課の掃除をしていたシマのもとに、ナツが驚いた表情をしてやってきた。納骨堂に、何者かが忍び込んでいるという。二人はひどくおびえる様子の“侵入者”を保護し、匿うことにするが、その侵入者の行方を探す警察と、ある“組織”の男が相次いで修道院を訪れ……。“侵入者”の秘密が明かされるとき、再び争いに巻き込まれるシマとナツ。そんな二人へ雨は静かに降り──。第11回電撃小説大賞<銀賞>受賞作品、待望の第2弾登場!!


 半年ぶりに発売された、今年の銀賞受賞のサイボーグと少女の物語、第2弾。。
 ……どこを目指しているんだろうこの作品は。てっきり今回もシマとナツ中心に話進めるものだと思っていたら、シマとナツの関わりが予想より大分少なめ。で、代わりに増えたのがミクニ描写。序盤以外は主にシマパートとミクニパートの2つに分かれて話が進行するほどで、情報収集・戦闘と準主役級の活躍。ただでさえ前作地味だったのに、これ以上おっさん度増やしてどうするんでしょう。
 まあミクニが調べ上げていく「根源的暗殺者」の謎はそれなりに面白いんですが、ナツの出番減ったことによるマイナスが、ミクニの出番増えたプラスよりもはるかに大きいのがアレ。シマと絡まないと、ナツが無謀な行動ばかりするアホな子にしか見えなくて、アホやるたびにイライラさせられました。作中でミクニがナツのことけなしてますが、大いに共感できましたね。そしてこの点が引っかかったせいか、1巻ではあまり気にならなかった「?」を「……」で代用したりする文章が今回は読みにくくてきつかったです。また、厳しい態度見せていた副院長やイルマが後半態度急変するのにもかなり違和感。今後派手になる要素見受けられないし、次巻は様子見かなぁ。


評価 ☆☆★(5)


【最近購入したもの】

透明人間の告白 上巻 (H・F・セイント/新潮文庫)
コミケで購入したもろもろ

 手当り次第に買った。気づいたら買いすぎていた。今は後悔している。



___8月12日(金)

 明日と明後日はアレに行ったり色々忙しいので更新できないかもしれません。

老ヴォールの惑星 (小川 一水/ハヤカワ文庫JA)amazon

《あらすじ》
 偵察機の墜落により、おれは惑星パラーザの海に着水した。だが、救援要請は徒労に終わる。陸地を持たず、夜が訪れない表面積8億平方キロの海原で、自らの位置を特定する術はなかったのだ――通信機の対話だけを頼りに、無人の海を生き抜いた男の生涯「漂った男」、ホット・ジュピターに暮らす特異な知性体の生態を描き、SFマガジン読者賞を受賞した表題作ほか、環境と主体の相克を描破した4篇を収録。著者初の作品集


 小川さんの三ヶ月連続新刊刊行の第2弾は、書き下ろし一編を含んだ著者初となる中編集。4篇いずれも面白かったけれど、それぞれ大分毛色が違う作品なので以下感想は個別に。

"ギャルナフカの迷宮"
 極限化の社会構成の話で唯一の既読作品。これが今までの小川作品に一番近いかな、女の子の描き方とかに凄く「らしさ」が出てます。一人一人疑心暗鬼の状態から社会できるまでの流れが面白いけれど、ラストが説明くどくてバランス崩しているのがちょっとマイナス。同人誌掲載バージョンのようにさらっと流してくれた方が好みです。

"老ヴォールの惑星"
 ヒトでない知性体の生態を描いた話。知性体の設定がかなり斬新でなんとも魅力的。SFマガジン読者賞受賞作ということで既作よりハードSF寄りでしたが、ハードSF好きじゃない自分にも楽しめました。

"幸せになる箱庭"
 タイトル通り箱庭な話。前半のETI発見〜捜索部分もなかなかよかったけど、肝の後半の問答が直球勝負で面白かったです。

"漂った男"
 唯一の書き下ろし作品、惑星に不時着して漂流する男の生き様を描いた話。一番最近書かれただけあってこれが一番よかったですね。通信だけはできるという状況配置の仕方がうまく、筆力抜群で男の心理が如実に伝わってきて先が気になってたまらない。そしてラストの一文の着地が見事。傑作といっても過言でない出来。

 ラストがグダグダになりにくい分、中編の方が安定して面白いのかもしれませんね。長編・中編ともにこれからも大いに期待。


評価 ☆☆☆☆(8)



___8月10日(水)


山姫アンチメモニクス (三上 延/電撃文庫)amazon

《あらすじ》
 平凡な中学生・篠原カズキの前に現れた、不思議な美少女・山姫翠。彼女は男性を魅了し、その記憶を操る『山姫一族』の末裔と名乗り、山姫の里を抜け出した姉、風花を追ってきたという。常識が無いうえ思いこみが異常に激しい風花は「人の悩みを解決するには、イヤな記憶を抜けばいい」と思いこんでいる。このままでは町の人々の記憶が危ない! 翠と共に風花を捜すカズキだったが、「アパートのトイレ掃除がイヤ」という“悩み”を風花に知られ、トイレに関する一切の記憶を抜かれてしまい……。ギャグ満載の短編連作シリーズ第1弾。


 シャドウテイカーの三上さんの新シリーズは、今までのホラーとはうってかわったギャグの短編集。
 ダーク→シャドウと続いて、三上さんはホラーしか書けない人なのかと思っていましたがこういうのも書けるんですね、一点を除けば普通に面白かったです。まず、ヒロインがかわいい。前作の葉はモジモジな女の子でしたが、今回の翠は内気でもツンでもない、普通の恋する女の子。翠視点が結構多くて、恋する描写が激しすぎず大人しすぎずでなかなかよかったです。そして話も「一部の記憶をぬきとる」という設定をうまく料理していて、テンポもよく四編いずれも楽しめました。最後の犬と主人公の入れ替わりなんかはシチュとしてかなり好き。だんだん犬化していくのをもっと書いてくれたら神でしたが、本作のように無意識に犬の本能に従う描写だけでもそうそう見れるものではないし満足。
 ただ一点、ヒロインの姉がうざいことだけがマイナス。「人のために記憶を抜いている」ことになっているけれど、翠の話にろくに耳を貸そうとしないその姿はむしろ愉快犯に見えます。実際に愉快犯で悪役ならば割り切って楽しめるのに、善人設定だから行為一つ一つに腹が立って仕方ない。思いこむようになった理由づけが欲しかったです。とはいえこれ以外は楽しいので、続きが出たら買い。


評価 ☆☆☆(6)



ヴぁんぷ!III (成田 良悟/電撃文庫)amazon

《あらすじ》
 【2ヶ月ぶりだね、日本の紳士淑女諸君! 今日は少々血生臭い話をするとしよう】【復讐──そう、復讐の話だ。活劇から悲劇に至るまで、様々な物語に取り入れられる王道とも言うべき要素だよ】【復讐は常に新たな復讐の芽を生む。様々な物語でよくそう言われるものだが……仮に、相手の親類縁者全て、さらにはそのまた縁者をも復讐の対象とし、全てを滅ぼし尽くす覚悟だとしたら? おそらく復讐の連鎖は止まるだろうが、その者に安らぎが訪れる事は無いだろう】【そんな覚悟をしてしまった者は、この世界と──己自身にこそ復讐をしたいのだろうからね】


 先々月に発売されたヴぁんぷ!IIの続き、吸血鬼と人間の島の祭の完結編。
 値段分は楽しめ、でも上巻の出来から期待していた程の満足度は得られなかったなぁ。なんだか語られる事象がぐちゃぐちゃ錯綜していて分かりにくく、いつもの収束の時の爽快感が今回はありませんでした。このシリーズの売りであるキャラクターはどいつもこいつもよく動いて、セリムのエピソードなど一つのシーン単位ではいい場面が一杯。しかしいかんせんキャラ増やしすぎで、黒スルー、博士の過去次巻まわし、と語られていない事柄も多いし、主点が定まらず散漫気味。キャラ多いほど面白くなるのが成田作品の特徴と昔書いたことがありますが、さすがに多すぎは駄目でした。あとがきによると次巻は短編集の模様、予告内容を見るにどれも面白そうなので期待。


評価 ☆☆☆(6)



___8月9日(火)

 ふと気づいたらカウンタがとんでました……_| ̄|○
 で、アク解みて修正。いつのまにか50000Hitいっていたみたいです、ありがとうございます。


翔佯の花嫁 片月放浪 (森崎 朝香/講談社X文庫ホワイトハート)amazon

《あらすじ》
 和睦の証(あかし)として、隣国の閃王(せんおう)・巴翔鳳(はしょうほう)のもとへ嫁ぐ瓔国(えいこく)公主・香月。だがそれは、母の命を奪った王への復讐を果たすためだった。しかし、その日のために研鑽(けんさん)を重ねた暗殺はあえなく失敗。捕らえられた香月に王は言う、「君は殺さない」と。――その目的は、いったい何なのか? そして、愛と憎しみの狭間で揺れながらも、次第に王への想いを深めてゆく香月の、新たなる決意とは!?


 森崎さんの今月の新刊は「雄飛の花嫁」の続編、閃王の孫の世代の物語。
 どうにも納得のいかない話だったなぁ。あらすじだけ見ると非常に自分好みの作品に思えたし、事実読み始めた直後は「敵同士LOVEキター!」と期待し、途中まではベタを楽しめました。が、後半の展開が意味不明のわけわかめ。心理描写が少なすぎて、二人がお互いのことをいつ好きになったのかさっぱり分からないまますれ違いに突入するため、ドキドキを感じられず二人が沈んでいるのを見るだけのだるい展開に。冒頭の伏線の使い方も唐突すぎるしやや無理もあって、ない方がよかったです。前作も今作もプロローグなくして前半の流れをそのまま後半に継承してくれればよかったのに、どうしてひねるんだろう。次こそは最後までベタを書いてくれますように。


評価 ☆☆★(5)


【今日購入したもの】

ヴぁんぷ!III (成田 良悟/電撃文庫)
奇蹟の表現II 雨の役割 (結城 充考/電撃文庫)
山姫アンチメモニクス (三上 延/電撃文庫)
最後の夏に見上げた空は3 (住本 優/電撃文庫)
9SVI (葉山 透/電撃文庫)
うそつき 嘘をつくたびに眺めたくなる月 (日日日/新風舎文庫)
老ヴォールの惑星 (小川 一水/ハヤカワ文庫JA)
神を喰らう狼 (榎田 尤利/講談社X文庫ホワイトハート) 結晶物語2 (前田 栄/新書館ウィングス文庫)
平井骸惚此中ニ有リ 其伍 (田代 裕彦/富士見ミステリー文庫)
検事官はお年ごろ (鏡 貴也/富士見ファンタジア文庫)
被害者はどこにいる? (鏡 貴也/富士見ファンタジア文庫)

3桁の背中が見えてきた……。



___8月8日(月)


天の階 竜天女伝 (森崎 朝香/講談社X文庫ホワイトハート)amazon

《あらすじ》
 乾(けん)王朝炯明(けいめい)帝は、男児を授からず、苦悶(くもん)の日々を送っていた。が、ある日、「満月の晩、星が流れた時に生まれた女子が、必ずや次代の皇帝を産む」と仙人から告げられる。やがて、国中から集められた娘は10人――才色兼備の娘、それを妬(ねた)む娘、母を案じて泣く娘、はたまた読書好きの娘等々。後宮では、皇帝の寵を競う物語が! そして、もう1人、「竜」の宿命を負った娘がいた……。彼女達が辿る道程(みちのり)は、幸福へと続くのだろうか!?


 森崎さんの二冊目は一昨日読んだ「雄飛の花嫁」と同世界観の未来が舞台、皇帝の子を産むと予言された竜乙女たちの運命を描いた物語。
 これはまた見事な竜頭蛇尾ですね! 序盤の竜乙女たちが選ばれる過程、並びに中盤の竜乙女たちの後宮での暮らしの描写までは非常に面白かったんです。ちょっと嫉妬深い普通の女の子、絶世の美人なのに皇帝以外に恋をしてしまう女の子など、竜乙女が多種多様で、メイン四人の誰かに偏ることなく一人一人の描写が丁寧。竜乙女たちと皇帝に皇太子(皇帝の甥)も加えて刻々と変化していく後宮内での人間関係に、「これは後半修羅場展開か!」と戦々恐々としつつも、どう収集つけるのかワクワクして読んでいました。
 しかし終盤、後宮にあげられていない真ヒロインが中心となってからが……。別に、真ヒロインが後宮外に据えられているのはプロローグで分かっていたし、過去の体験ゆえに女としての自分を捨て剣士として生きる性格も嫌いじゃないんです。問題は、後宮側の描写が明らかに減って、修羅場がないどころか色々な問題の解決全てがほぼデウスエクスマキナで読者おいてけぼりなこと。仙人登場ってなんですかそれ。玉鳳の想いは完全スルーですか? ここまで肩透かしをくらったのは結構久しぶり。後宮内だけで物語進めれば名作になったかもしれないのに、バカーバカー著者のバカー。


評価 ☆☆★(5)


【今日購入したもの】

天の階 竜天女伝 (森崎 朝香/講談社X文庫ホワイトハート)
翔佯の花嫁 片月放浪 (森崎 朝香/講談社X文庫ホワイトハート)



___8月7日(日)

 昨日の著者名が間違っていたので修正。まあいつものことです。

結晶物語1 (前田 栄/新書館ウィングス文庫)amazon

《あらすじ》
 古びた質屋の主人・凍雨のもとに持ち込まれる品物には、いろいろな想いが染みついている。ところがちょっと違うのは、その想いの主が『人』とばかりは限らぬところ。空に浮き、水に棲み、人と交わらぬ妖どもの、想いが凝った品物を、平気で預かるこの主人――凍雨にも、実は、『人でなし』な秘密があった……!! 前田栄の当世あやかし物語、はじまりはじまり!


 そろそろ2巻が発売するみたいなので買ってみた、「ディアスポラ」の前田さんの現代あやかし物語。
 ディアスポラ好きなのに今まで買ってなかったのは、主要登場人物が男しかいなかったのと、あやかしという設定に惹かれなかったから。でもいざ読んでみると、男ばかりでもBLくささは全くなくてゲストキャラは女の人なこともあって全く問題なし、あやかし設定も戦闘等はなくて、人の激しい感情を結晶に変える半人半妖の凍雨が主人公らしくない非情さ持っていたりと変わっていて面白かったです。御伽噺をモチーフにした物語もなかなか、二編あったうち気に入ったのは浦島太郎をモチーフにした方。小さな不運とちょっとした行き過ぎのせいで非業の人生を送ることになった乙姫の生き様がなんとも切なかったです。あっさり解決しちゃうのが若干物足りないのはこの設定の特徴だから仕方なく、それまでの過程が楽しめればよし。前田さんの作品の出来は安定してますね、続巻にも期待。


評価 ☆☆☆(6)



___8月6日(土)

 世界陸上が開幕。放送が全て録画という糞仕様もあっていまいち盛り上がりにかけた世界水泳と違い、こちらは全て生放送なので熱いですね。過度に日本選手ばかり注目しないのも○。まあ、日本選手が弱いからなんですが。
 世界陸上は2年おきに行われているわけですが、一昨年ので印象に残っているのが、ドラモンドのフライング&抗議事件。「誰かがフライングしたら、次にフライングした選手は1回目でも失格」というゴミルールに当時大いに腹立てましたが、どうやら最近は一発で問答無用失格になる動きがあるみたいです。今回は幸い認められなかったみたいですが、テレビ放映のためにこんなルール採用しようとするとは何とも腐ってるなぁ……。


雄飛の花嫁 涙珠流転 (森崎 朝香/講談社X文庫ホワイトハート)amazon

《あらすじ》
 珠枝は綏国公主。先王の寵子(ちょうし)でありながら、父王亡きいま、愛らしく美しい異母妹、仙華(せんか)の陰で心細い日々を送る。そんななか、大陸では巴飛鷹(はひよう)率いる閃国が勢力を広げ、綏との間で緊張を高めていた。そして、和睦のため、珠枝が閃の王妃として差し出されることに! 3年経ったら、必ず迎えに行く……幼い日から慕い続ける異母兄の言葉を信じ、見知らぬ国へ嫁ぐ珠枝を待ち受ける運命は、いかに!?


 今日本屋に行ったら続編みたいなものが売っていたので積んでいた1巻を崩してみた、ホワイトハートの中華風ファンタジー。
 彩雲国物語・風の王国、と評判いいのに今一つ馴染めないものが続いて、十二国記という例外を除いては自分は中華物があまり好きじゃないのかなと思い始めていましたが、これはなかなかよかった。一言でいうなら「ベタラブさいこー」。兄のことを想っているのに蛮族に嫁ぐことになってしまった姫、でも嫁いだ先にいたのは想像よりもまともな王で徐々にひかれていく、しかも主人公の母は卑しい産まれながら寵愛をうけていて、父と母の死後は主人公は継母にきつく当たられまくり、という「既視感? それがどうしたの?」と言わんばかりのベタっぷりが素晴らしい。主人公はちょっと無鉄砲でもいい按配に強いしかわいいし、閃王もかっこよくて二人の間の描写がたっぷり、満足満足。マザコンな兄王の行動がいまいち理解できなかったり、あまりにも嫌らしく書かれている王太后はやりすぎだろうと感じたり、欠点も色々ありましたが、そんなものベタの前には無力。これは他の既刊も買わなければ。


評価 ☆☆☆★(7)


【今日購入したもの】

隻腕のサスラ 神話の子供たち (榎田 尤利/講談社X文庫ホワイトハート)
片翼で飛ぶ鳥 神話の子供たち (榎田 尤利/講談社X文庫ホワイトハート)
結晶物語1 (前田 栄/新書館ウィングス文庫)

 神話の子供たち、今確認したら3巻を買ってた_| ̄|○



___8月5日(金)

 プッチャン人形が微妙に欲しい今日この頃。しかし目元が気に入らないし、明らかに高いのがアレ。うー。


シフト ―世界はクリアを待っている― (うえお 久光/メディアワークス)amazon

《あらすじ》
 転校生・赤松祐樹には秘密がある。眠ると異世界へ≪シフト≫する不思議な現象――。「……なぁ赤松、おまえも聞いたことあるだろ? 寝て、シフトするとき、『世界はクリアを待っている』とかなんとかいう言葉」「……まぁ」「知ってるか? なんか、うわさによると、いつか向こうの世界に、魔王が現れるんだそうだ。そして勇者が現れ、勇者がその魔王を倒したとき、世界はクリアされるとか」「……一応、聞いたことは、あるよ。……根拠のない、都市伝説みたいな話だけど」第8回電撃小説大賞<銀賞>受賞作家、電撃文庫「悪魔のミカタ」シリーズ著者うえお久光が贈るモダン・ファンタジー登場!


 「悪魔のミカタ」の刊行が途絶えて以来、久々のうえおさんの新刊は、現実と夢の中のファンタジー世界の二層で構成された現代ファンタジー。
 うわあああああああああああああああああああもったいなさすぎる!
 夢の中のファンタジー世界ってことは要はバーチャル世界みたいなものでそれだけでも結構好みな上に、怪物や普通の人間や戦士や魔法使いが混在しているのに社会が未完成で、生活観がある世界の描かれ方がなんか凄く気に入りました。一つ一つの要素に目新しさはそれほどあるわけではなく、「すごさ」で言えば悪魔のミカタのIt編の方が上なんだけれど、どちらが好きかと言われたら迷わずこちらを取ります。セラの女の子視点はすごくいいし、ウィンディの腹黒さなんかも含めてキャラクターはみんなお気に入り、場面場面も盛り上がって本当に面白い。
 これで数巻かける予定でまともに構成してくれていたら迷わず傑作認定しているんですが、惜しいことに未完。当然続くんですよねこれ? ここで終わりとか言われたらほんと泣くんですけど……。仮にハードカバーで全10巻になろうがなんだろうが最後までつきあうので、是非出してくださいお願いします。


評価 ☆☆☆☆★(9)



狂乱家族日記 弐さつめ (日日日/ファミ通文庫)amazon

《あらすじ》
 大財閥、姫宮本家を壊滅させるという暴挙の結果、優歌の実の姉・姫宮千子をくわえ総勢9人となった「乱崎一家」。平和な日々が訪れるかと思いきや、退屈と平穏が死ぬほど嫌いな母・凶華は、唐突に家族一同引き連れた新婚旅行を計画する。一夜のうちに家の前にできあがった滑走路から、旅客機で飛び立った「乱崎一家」に襲いかかる今度の不幸はなんだ!? その饒舌とスピード感と巧みな語り口で読者を魅了する新世代作家・日日日(あきら)絶好調シリーズ2巻登場!


 五賞受賞作家日日日の受賞作以外での初刊行作は、狂乱家族日記の続編。
 基本的に前巻とほとんど変わってない感じ。相変わらず何故こんな風に家族としてあっさりと強く結びついてるのかはさっぱり理解できないし、凶華のキャラクターの良さと展開の無茶苦茶さが楽しいのも前巻通り。ただ、家族増えたせいもあってかキャラクターの掘り下げがされてないのが気になりました。1巻はキャラ見せの意味も大きかったので広く浅くでよかったと思うんですが、キャラで今回誰一人としてまともに掘り下げてないのは大いにマイナス。帝架の影の薄さなんか哀れすぎます。誰か一人、多くても二人に焦点絞って巻進めてほしかったなぁ。終わりの方を見るに一気に物語動かしてきそうだけれど、こんなキャラの印象薄い状態だと先行き不安。


評価 ☆☆★(5)



___8月4日(木)


ブラック・ベルベット 緑を継ぐ者と海へ還る少女 (須賀 しのぶ/コバルト文庫)amazon

《あらすじ》
 神聖帝国ディートニアを転覆させるため、ハル神父に弟子入りしたキリ。厳しい鍛錬で力をつけるが、離ればなれになった親友ファナの身に危機が忍び寄る…。疾風怒濤のアクション・ファンタジー!


 女神伝の須賀さんの別シリーズ、女三人珍道中のはずだったファンタジー第三弾。
 前巻読んだ時点でこのシリーズは微妙かなと思っていたら面白くなってきたー。二巻のようなぬるめの展開よりは、こういうハードな方がずっと好み。読み終わってみるとタイトル通りの内容だったわけですが、あらすじもタイトルも全く見ずに読んだので、終章あたりは結構くるものがありました。前巻で大きく評価落とす原因となったキリのキャラクターも、1巻のミステリアスな雰囲気を切り捨てて見たらアンバランスさが好ましく思えてきて評価アップ。これで序章終了ということで、今後どんな鬼展開がくるか期待期待。


評価 ☆☆☆★(7)



___8月2日(火)

 のべるのぶろぐ一周年記念「みんなの読書スタイル、訊いてみたい」に回答してみる。

・一ヶ月に何冊くらい本を読みますか?
 去年は40冊ペースだったけれど、今年は30冊程度。1日1冊がちょうどいいです。

・ライトノベル・非ライトノベルの比率はどれくらいですか?
 9:1かそれ以上、ほとんどがライトノベル。非ライトノベルにも好きなもの結構ありますが、合わないものが多いのであまり手を出してないです。

・一ヶ月に何冊くらい本を買いますか? ぶっちゃけ本代はいくらくらいでしょう?
 やっぱり平均30冊程度。古本新刊入り乱れてなので、本代は月15000円くらいのはず。先月はハードカバー多くて死にましたが……。

・家に何冊くらい蔵書がありますか? 本棚は何棹あります?
 今数えたら大体600冊強(ライトノベルのみ)。ライトノベル用の本棚がないので、クローゼットに板とりつけて横にして積んでます。奥行き3列で限界まで詰めこんで一杯一杯、未読は常時外に溢れている状況。ゆえに、読了していまいちだった本はバシバシ売っていきます。

・積ん読(買ったけど読んでいない本)はどれくらいありますか?
 80冊です。減らしたいです。

・複数の小説を並行で読んだりします?
 めったにしません。途中放棄でしばらく放り出す時以外は、ほぼ一冊専念。

・おでかけする時、何冊くらい本を鞄に忍ばせますか?
 最低2冊、場合によっては3冊、たまに4冊。とにかく読むものが尽きないように。

・あなたのメイン読書空間はどこですか?
 電車内がメイン、自室ベッド上がサブ。

・書斎とか書庫って持ってます?
 なんですかそれ?

・本が無くても生きてはいける?
 しんどい。

・自慢の読書スタイルがあればどうぞ!
 日常に組み込まれているし、特になし。



レンタルマギカ 魔法使い、集う! (三田 誠/角川スニーカー文庫)amazon

《あらすじ》
 魔法使い派遣会社〈アストラル〉2代目社長の伊庭いつき。入院先で同室となった少女・黒羽まなみが呪波汚染に襲われるが彼女にはある秘密が……!?


 現代舞台の魔法会社小説「レンタルマギカ」第3巻は雑誌連載の短編を集めた短編集。
 うーむ普通だ。長編の時も優等生的な面があったけれど、短編になってさらにそれが色濃くなったような気がします。きっちり構成作ってあって手堅く、けれど設定と雑誌連載という性質上、依頼→解決という流れを取らざるをえないためかどこか物足りなさを感じる、そんな短編集。初出でお遊び入った短編も一つくらい欲しいなぁ。アディ分がもうちょい高ければ満足できるんだけれど、ラスト一編以外は登場シーンすらなし。その分みかん分が増量していますが、特に新しい面が引き出されているわけでもなく微妙。まあ短編向きな作品じゃないということで、長編に期待。


評価 ☆☆☆(6)



グラーレンの逆臣 (雨川 恵/角川ビーンズ文庫)amazon

《あらすじ》
 グラーレン地方の領有問題を解決するため、戦地へ赴くことになった王弟・アレクシード。遠く離れた場所で、置いてきた幼妻・ユティを想う彼だったが、とんでもない疑惑をかけられて!? 兄弟の絆に危機が訪れる第3弾


 「アダルシャン・シリーズ」としてめでたくシリーズ化が決定した、幼女小説の皮をかぶった兄弟&宮廷陰謀小説第三弾。
 もうこのシリーズにラブを求めるのは諦めた。せっかくファーナのフラグがたっているのにアレクどっか行っちゃってファーナとユティは盤遊戯、ラブ化する気配がさっぱり見受けられず。盤勝負の場面はこの巻一番と言っていいくらいよかっただけに、もっとユティもファーナも出番欲しいですよ。シリーズ化したから6巻くらいでユティ成長させてラブに持ってってくれないかなぁ、ファーナの照れ具合なんか見てると結構いいもの書きそうなのに。
 で、今回はアレクの過去が絡んだ陰謀がメインなんですが、思いっきり「次巻につづく」で終わっちゃっているので評価しづらい。今のところは相変わらずの生ぬるさが心地よくて面白いけれど、また馬鹿一兄弟愛になりそうでちょい不安。その兄弟、弟が兄馬鹿なのはいつものことだからいいとして、兄が今回は情けない。今まで色々言われても耳を貸さず信じてきたのに、血一つで揺らぐのはヘタレでしょう。もっと兄頑張れ。あと前巻の時も思ったけれど、母親のイラストがギャグレベルの若さ、見るたびに笑いそうになるのでどうにかしてほしい。何はともあれ下巻待ち。


評価 ☆☆☆(6)



___8月1日(月)

  いつものように7月のまとめ。

 読了――30冊
 購入――39冊

 ……何も言うことはありません。今月の結果で示そうと思います。


花に降る千の翼 (月本 ナシオ/角川ビーンズ文庫)amazon

《あらすじ》
 南洋の島国タリマレイ。王女イルアラは、鳥の神の息子・エンハスを護衛役に、なんとか王位継承者として認められようと奮闘する日々。そんな中、大国バラ―バルの若きシーハン王がタリマレイを狙っていると知り――!?


 三ヶ月連続ビーンズ新人ラッシュの第2弾は優秀賞受賞作、精霊や神代の地の住人が出てくるファンタジー。
 なんだか無性にイライラする話だったなぁ。まず、主人公であるイルアラの「恋愛に鈍感」という設定がとても作り物めいたものに思えてさっぱり受け入れられなかったのが問題。箱入りだったならともかく、幼い頃から兵士に混じって暮らしてきたのなら、多少鈍感になることはありえてもこれだけ無知になることはありえないと思うんですよね。設定ありきでキャラ作りきれていない感じがして気持ち悪さを覚えました。さらにキャラ紹介に「恋愛にはかなり鈍感☆」なんてついているのが作り物感に拍車をかけてて×。「☆」見た瞬間に抱いた嫌な予感が的中、そういう事項は本文で語ってほしいです。
 そして更なる不満点、「恋愛にはかなり鈍感☆」とか書いといて全然恋愛を話に絡めないってどういうことですか。エンハスとの関係ラスト10ページくらいでさらーっと流されてブチギレですよ。変わりに話の中心になっているのが微妙なファンタジー設定、ついでに兄弟話っていうのがなんとも……。全く自分には合わない物語でした。


評価 ☆★(3)


【今日購入したもの】

crochet (みとせ のりこ)