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 2月13日(金)


【今日読んだ本】

かぐや魔王式!2 (月見 草平/MF文庫J)amazon

 

《あらすじ》
 隠し通してきた本性――ハラグロ優等生であることがバレてしまった錦織貴(にしきおりたかし)は、新世界の王を目指す輝夜真央(かぐやまお)の下で参謀を務めることになった。夏休み、輝夜が目をつけたのは、町に伝わる聖剣伝説。世を統べる剣を手に入れるため、同じく仲間として迎えられた(巻き込まれた)六道(りくどう)かなめとともに、古文書を持つ米倉愛(よねくらあい)の屋敷で合宿をすることに。「やったね☆お泊り会!」「ぬるいぞ六道。これで私は最強の道具を手に入れそして……お前らを調教する」「目的変わってんじゃねーか!」って、えと、錦織♂×輝夜♀・六道♀・米倉♀? バランスおかしくない? な合宿スタート!


 月見さんがおくるMF文庫ナイズされたハルヒ「かぐや魔王式!」第2巻。
 あ、あれ? ハルヒっぽい魔王様のかわいさを楽しむ話だったはずが、ハラグロでムッツリでツッコミ役の主人公を眺めて楽しむ話に変わっていた2巻でした。みくるフォロワーで一応ライバルだったはずの六道が色物ボケキャラに完全に成り下がったために、主人公のボケの頻度が増していて、その分一つ一つのキレが落ちている気がします。というかヌルいです。自分はアリだと思いましたが、ヌルいボケツッコミの連続したやりとりが退屈だと感じる人にはあんまりお勧めできません。
 1巻の端役が準ヒロインに昇格していて結構かわいいんですが、女の子のかわいさに注目するよりも、輝夜の弱点を知って「これは弱点ついていじめて抱きついてもらうチャンス!」と企てるムッツリ主人公が輝夜に撃墜される姿やその他諸々をニヤニヤしながら楽しむのが良い読み方な気がしました。男ツンデレだけじゃなく、男ムッツリも結構いいものですね!
 ストーリーは早くも飾りっぽくなってきましたが、輝夜も影少し薄くなったとはいえ普通にかわいいですし、続きも読むことにします。


評価 ☆☆☆(6)



雪蟷螂 (紅玉 いづき/電撃文庫)amazon

 

《あらすじ》
 涙氷の降るその山脈で雪蟷螂の女が起つ。この婚礼に永遠の祝福を。長きにわたって氷血戦争を続けていたフェルビエ族とミルデ族。その戦に終止符を打つため、ひとつの約束がなされた。それは、想い人を喰らう“雪蟷螂”とも言われるフェルビエ族の女族長アルテシアと、永遠生を信仰する敵族ミルデ族長オウガの政略結婚だった。しかし、その約束の儀は、世代を超えた様々な思惑が交錯することによって阻まれる。果たして、極寒の地に舞う恋の行方は……。


 紅玉さんがおくる人喰い3部作の3作目、停戦の証として敵方に嫁ぐ女族長が主人公の恋物語。
 胸を切り刻まれそうなほど研ぎ澄まされた恋物語でした。殺したいほど相手を愛するフェルビエ族と、永遠生を信仰し死者を保存するミルデ族が織りなす物語で、対照的な2つの部族の人々が和平のためにとる行動に絡まる恋心が興味深かったです。特に上の世代の恋が非常に印象的、色々削ぎ落とされた純粋で激しい恋心に圧倒されました。また、大抵の物語では脇役な侍女キャラが活躍していたのも個人的には高ポイント、彼女が恋する瞬間もまたフェルビエ族らしい激しさで、なおかつ女らしい彼女の描写が一番気に入りました。
 その一方で、アルテシアの恋はややあっさりしすぎな感も。プロローグで見せた苛烈さと最後の姿がうまく結びつきませんでした。普通の人間ならいいんですが、他のフェルビエ族と比べて恋心がフェルビエっぽく思えなかったんですよね。その前の章の行動は非常に彼女らしかったんですが。
 あと気になったのが誤字というかキャラ間違え。クライマックス最中に「〜は」の人名を間違っている箇所があって結構冷めました、もったいない。この点は紅玉さんと校正さんもう少し気をつけてほしかったです。
 不満も挙げましたが、人喰い3作の中で雰囲気などが一番好みなのはこれ。次回作で人喰い以外の何を出してくるのか気になります。


評価 ☆☆☆★(7)



 
 2月11日(水)


【今日読んだ本】

アクセル・ワールド1 ―黒雪姫の帰還― (川原 礫/電撃文庫)amazon

 

《あらすじ》
 どんなに時代が進んでも、この世から「いじめられっ子」は無くならない。デブな中学生・ハルユキもその一人だった。彼が唯一心を安らげる時間は、学内ローカルネットに設置されたスカッシュゲームをプレイしているときだけ。仮想の自分(アバター)を使って≪速さ≫を競うその地味なゲームが、ハルユキは好きだった。季節は秋。相変わらずの日常を過ごしていたハルユキだが、校内一の美貌と気品を持つ少女≪黒雪姫≫との出会いによって、彼の人生は一変する。少女が転送してきた謎のソフトウェアを介し、ハルユキは≪加速世界≫の存在を知る。それは、中学内格差(スクールカースト)の最底辺である彼が、姫を護る騎士≪バーストリンカー≫となった瞬間だった――。ウェブ上でカリスマ的人気を誇る作家が、ついに電撃大賞<大賞>受賞しデビュー! 実力派が描く未来系青春エンタテイメント登場!


 電撃新人さんラストは、大賞受賞の青春アクションSF。
 さすが大賞、真っ当に面白かったです。おデブで卑屈な主人公がヒロインと仮想格ゲーとの出会いによって変わっていくお話。主人公の後ろ向きな考え方には時折イラっときたものの、そういう風に作ってあるわけで、前向きになっていく様子は今後の熱さを期待させてくれます。彼女に対する一番最悪な言葉が許容ボーダー超えそうで危なかったですが、ぎりぎりセーフでした。
 バーストリンカーの設定もいいですね(オンラインゲーっぽいの好き)。「加速」を突き詰めていく方向性が分かりやすいし気持ちいいです。戦闘シーンも能力など色々工夫されていて、アクション苦手な身でも楽しめました。
 ヒロインの姫はいかにもな先輩でクールなイメージと内面のズレがかわいいですが、自分はチユリ派です、負け組です。ピアノソナタを思い出す負けっぷりです。でも、ミステリアスより快活な幼馴染が好きなんだ!
 川上さんの解説は……いくらなんでも悪ノリしすぎじゃこれ。作品世界をとてもよく捉えているのは確か、でもここまで崩しちゃうのはあんまり好きじゃないです。
 最後はレベル9になって2人の戦いになるんでしょうか。チユリの目がはやくも0なのは残念ですが、続きにも期待。


評価 ☆☆☆★(7)



佐和山物語 あやかし屋敷で婚礼を (九月 文/角川ビーンズ文庫)amazon

 

《あらすじ》
 戦国の名残留める世の初め。大名・鳥居家の姫・あこは、三度も婚礼が延期になったせいで、お忍びで婚家に向かうことに。まだ見ぬ許婚に心ときめかせ、婚家の領地・佐和山に入ったあこ。そこで出会った許婚・直継は、想像以上の超美形!! けれど、ため息つくまもなくあやかしに襲われ、直継に救われて!?《第6回ビーンズ小説大賞優秀賞&読者賞W受賞》ビーンズ文庫史上初!! 戦国風味ラブファンタジー、見参!!


 ビーンズの新人さんがおくる和風ファンタジー。最近のビーンズはどれも似通って見えて敬遠気味だったんですが、和風ということで手を出してみました。
 うーん、丁寧に話作ってはあるんですが、好みから外れているのもあっていまいち楽しめませんでした。怪異やらモノ払いやらのワードが中心になってくる話はどうも苦手です。どう考えても、買うときに「あやかし」の4文字が目に入っていない自分が悪いんですが! 
 でもヒロインは、直情行動タイプでも馬鹿じゃないし、自分が大変でも相手をいたわる思いやりも兼ね備えていて好感持てました。無防備なヒーローに対する狼狽などもいい感じ。一方で、そのヒーローは大人っぽい割にアンバランスであんまり萌えられず。せめてもう少し恋愛方面の知識持っていてほしかったです。2人以外では、おっさんや侍女などの脇役にいいキャラ多いんですが、後半出番少なかったのが残念でした。
 それと、「バラせ」の3文字が頭から離れなかったせいで、序〜中盤にかけて話に集中できなかったのも痛かったです。たまにこういう変なところ引っかかるんですよね自分……。
 あこと直継がどういう顛末を迎えることになるのか気にはなるものの、敵役に魅力感じなかったのもあるし続きは様子見で。


評価 ☆☆★(5)



 
 2月9日(月)

 40万ヒットらしいです。先月も似たようなこと言った気がしますが、いつもありがとうございます。目指せ100万……は無理かな、でも50万60万とコツコツ続けていきたいです。


【今日読んだ本】

ロウきゅーぶ! (蒼山 サグ/電撃文庫)amazon

 

《あらすじ》
 高校入学とともに部長のロリコン疑惑で部活を失った長谷川昴。ただでさえ小学生の話題はタブーなのに気づけばなぜか小学校女子バスケ部コーチに就任って……!?  「ん? ぱんつなら心配ないよ、ほらっ」(三沢真帆) 「やっぱりっ、でか女なんだわたしっ!」(香椎愛莉) 「おにーちゃんの背中が気に入りました」(袴田ひなた) 「あの、そ、そろそろご指導の方を──」(湊智花) 「いろいろ面白くなってきたわね、ふふ」(永塚紗季)  五人の個性的な少女たちの猛烈アピールに戸惑いながらも、それぞれの想いを守るため昴はついに男を魅せる! 小学生の女子だって抱えている悩みは多いのです。そんな彼女たちに翻弄される、さわやかローリング・スポコメディ!


 表紙とあらすじパッと見で「これは守備範囲外だろう」と購入対象から外れていたところ、良質なスポ根との評判があちこちから聞こえてきたので手にとってみた、銀賞受賞作の女子小学生スポ根。
 燃えて萌えて燃えて、とてもよいスポ根でした、面白かった! 練習や試合の光景は当然のように丁寧に描かれているし、戦力的な差を何とか埋めようと策謀をめぐらせる様はワクワクするし、何より勝ちたいという思いからくる皆の必死な姿が胸をうってきて、スポ根っていいなと改めて思わされました。ちゃんとチーム戦しているのもいいですね、クライマックスの絆が素敵でグッときました。また、種目がバスケというのも個人的にポイント高かったです(球技の中で一番好きだった、下手でしたが)。
 ロリコン要素をあまり違和感なくいれているのもさりげなく凄い気がしました。さすがにメイド服はちょっと浮いてましたが、それでも全体の雰囲気は壊していませんでしたし。何より、熱いだけでなくみんなかわいいのです。特に懐いてくる智花かわいいですかわいいです(大事なので2回いいました)。
 これを手にとらせてくれた世間の評判に感謝。イラストは確かに詐欺ですが、面白い作品が手にとられる機会が増えるのはよいことなので肯定派です。部長の問題がアレなので、続編ではラブ方面進むこともあるんでしょうか、進むにしろ進まないにしろ楽しみです。


評価 ☆☆☆☆(8)



ナナヲ チートイツ (森橋 ビンゴ/メガミ文庫)amazon

 

《あらすじ》
 若き麻雀打ち中也は、ある勝負で父に裏切られた。ヤクザに売られた彼はコンビ打ちの闇麻雀大会に勝ち自由を取り戻そうとする。中也がパートナーに選んだのは、自分と同じような境遇の少女・七緒だった。ライトノベル界初の、本格麻雀闘牌ラブストーリー。


 世にも珍しき麻雀ライトノベルということで特攻してみた先月の新刊。同人では見たことあったんですが、商業誌で麻雀小説を読むのは初めてです。
 ヤクザの肉奴隷が主人公なのに、しろさん絵はないと思うんだ……。
 上のロウきゅーぶもイラスト詐欺でしたが、こっちも大概イラスト詐欺だと思います。こんなにアングラで、しかも牌イラスト使いまくりで麻雀ガッツリと打っているところにしろさんの絵をもってくるのは、いくらラブコメ要素があるとはいえミスマッチとしか思えませんでした。モノクロ絵が何だか……なのもションボリ。でも、しろさんのモノクロはいつもこんな感じだったかも(うろ覚え)。
 イラストはこのぐらいにして中身の方も。本格麻雀を謳っているだけあって麻雀部分は読みごたえありました。打牌の理由や相手との駆け引き、コンビの相手を信じる気持ちなどが細かく書いてあって面白いし、逆境からの逆転にいたる筋道などもうまくできてます、最後のどんでん返しが綺麗でした。あと、ヒロインが何故かチートイツだけは天才的にあがるチートイツ少女、といったフィクション麻雀のお約束(? 偏見かも)みたいなものもちゃんと抑えてありました。ラブコメとしてはちょっと駆け足すぎるのが残念、でも心開いてからの七緒はかわいかったですね。
 ただ、肉奴隷設定はグロテスクで、読んでいて気持ちのいいものではなかったです。初音や一之瀬といった裏世界のキャラたちが総じて消化不良なのもあって、無駄にダークにしただけのいらない設定のように感じました。森橋さん好きなんですかねこういうの、もうちょっと青春寄りのをまた書いてほしいんですが。
 どの層を狙ったのかよく分からない作品でしたが、麻雀小説としては結構よかったので、もし続編が出るようなら読んでみたいです。


評価 ☆☆☆(6)



 
 2月7日(土)

 ミス1件修正、ご指摘ありがとうございます。く、今年はここまでミスなしできていたのに……。


【今日読んだ本】

東京ヴァンパイア・ファイナンス (真藤 順丈/電撃文庫)amazon

 

《あらすじ》
 真夜中に出没し、超低金利で高額融資をする<090金融>ヴァンパイア・ファイナンスを営む万城小夜。今夜も獲物=融資客を求めて蠢く。デート終わりの送りオオカミをめざす日野健壱。性転換手術をしようとしている大田美佐季。振り込め詐欺グループに復讐を目論む〈やえざくらの会〉の老人たち。ドラッグ・デザイナーを辞めたがっている濱田しずか。都会のアンダーグラウンドで息する彼らは小夜に出会い、融資をうけるかわりに自身の問題に首を突っ込まれまくる。そして、債務者それぞれ衝動や欲望をフルスロットルにし、ひしめきあって無限に増殖するのだった──!!


 電撃新人さん2作目、銀賞受賞のアングラなヤミ金小説。
 不満点もあるんですが、全体的には面白かったです。あらすじ流し読みしてバッカーノみたいな複数の視点が収束していくような話を想像していたんですが、案外バラバラで短編が複数入り乱れている雰囲気。でも、個々の債務者たちが個性豊かな上、彼らに関わる主人公の小夜にはサバサバしているのに怪しげな魅力があって、どの話もさくさく読めました。中でもじいさん方の魑魅魍魎っぷりが愉快。妖怪じみているくせにへっぽこなところもあるのがいいですね。あとお茶会にとても憧れます。甘いもの好きにはたまらないです、やたらと細かく描写されてますし。
 不満なのは、他の方も言及してますが終盤のまとめ方。スカッとするかダークなのかどっちかの流れできていたのに、やや超展開気味にしんみりした終わり方するのは微妙すぎます。伏線とされているのが伏線として弱すぎるのもあって、唐突で違和感ありありでした。
 これも続きは出なそうです。他にも色々な賞をとっているようですが、そちらは好みじゃなさそうなので様子見で。
 そうだ、書き忘れてました。忘れられたムラサキさんかわいそうです。


評価 ☆☆☆(6)



ウィザーズ・ブレイン VII 天の回廊 〈中〉 (三枝 零一/電撃文庫)amazon

 

《あらすじ》
 謎の空間転送に巻き込まれた錬たちが目覚めたのは、大気制御衛星の中だった。一方、エドとセラを連れ北極を彷徨うファンメイは、北極の地下に眠る大規模施設に潜伏する老人たちに捕らえられてしまう。同じ頃、北極海中の《Hunter Pigeon》艦内では、ヘイズ、クレアと祐一が、地下施設をシンガポール、ロンドン両軍から守る方法を、必死に練っていた。そんな彼らに真昼がもたらした“策”?──それは世界を相手に仕掛けられた、壮大なブラフだった!! 《魔法士》誕生の秘密が、ついに明らかになるシリーズ最新作!!


 まさかの4ヶ月間隔刊行、メンバーオールスターで魔法士の真相が明かされ始めるウィザブレ最新刊。
 またもや引きが凄く凶悪です……。しかもまた彼女ですかっていう。引きに使われる率が高い気がするんですが、いじめですかこれ? ここまで残ったメインキャラは誰も死なないと思ってるんですが、危なかったりするんでしょうか。この巻の中で一番頑張っていた印象ありますし、下巻ではちゃんと助かりますように。
 面白さについては今更語ることもなし。オールスターがいつもと違う分かれ方して企んだり揉めたりするだけでも十二分に楽しいのです。特に今回は、とことん情けないヘイズと悟りきっている祐一が楽しすぎました。こんなヘイズも大好きです(全キャラ中1、2を争うくらいヘイズ好き)。祐一は過去に鍛えられたんでしょうね。他では、セラが少し不安。支えてくれる人がいないし、何かやらかしそうで怖い感じです。これまであまり目立ってないエドがキーマンになるといいんですが。
 あとは終盤にほぼ新登場の面々、彼らはこういう人だったんですね。1人の像が想像と結構ずれてました。それと1名、狙いすぎかわいすぎ。
 辛酸をなめているシンガポールも一矢報いてくるでしょうし、衛星の奥で何が起きるのか、4ヵ月後にはきっと出ないだろう下巻がとても楽しみです。


評価 ☆☆☆☆★(9)



 
 2月6日(金)


【今日読んだ本】

パララバ ―Parallel lovers― (静月 遠火/電撃文庫)amazon

 

《あらすじ》
 遠野綾は高校二年生。平凡な日々を送る彼女の一番の幸せは、部活を通して知り合った他校の男子生徒、村瀬一哉と毎日電話で話すことだった。何度も電話をするうちに、互いを友人以上の存在として意識し始めた二人だったが、夏休みの終わりに一哉は事故死してしまう。本来であれば、二人の物語はそれで終わったはずだった。 しかし一哉の通夜の晩、綾のもとに一本の電話がかかる。電話の主は死んだはずの一哉。そして戸惑う彼女にその声は告げた。死んだのはお前の方ではないのかと……。二人が行き着く真実とは!? 出会えぬ二人の運命は!? 携帯電話が繋ぐパラレル・ラブストーリー。切なさともどかしさが堪らない、第15回電撃小説大賞<金賞>受賞作。


 電撃新人さんのシーズンが今年もやってまいりました。まずは「切なさともどかしさ」のワードに釣られざるをえなかった、金賞受賞の現代ラブストーリー。
 うーー、切なさが足りない!! 読み始めたときは「これは当たりっぽい」と小躍りしたんですよ。「携帯電話だけが絶対会えない2人の間を繋ぐ絆」という設定の時点でまず好みですし、地味タイプの女の子の一人称というのも自分的に大当たり。会えない切なさに溢れた描写などがとてもよく、2人で真実を解き明かそうという展開に、どういう結末を迎えるのかワクワクしながら読み進めました。
 が、読み進んでいくにつれ、じわじわとテンションが下がっていきました。いや、よくできてはいるんです、ただしミステリとして。伏線細かく丁寧に張ってあるのに感心はしても、それを楽しめるかは別なわけで。ミステリ色が濃すぎるせいで、終盤の切なさ分が足りません。この設定なのに、肝心なところは単独行動が多いのがなんとも。淡い切なさ好きな人はこれくらいでちょうど良い感じなのかもしれませんが、自分にはとても物足りなかったです……。あと、伏線が丁寧すぎて、真実の概観は簡単に予想ついちゃったのもマイナスだった気がします。
 ただ、最後までガクンと失速することはなかったので、切なさに期待しなければ楽しめた気がしますし、次回作も手を出してみるつもりです。


評価 ☆☆☆(6)


【今日購入したもの】
 アクセル・ワールド1 ―黒雪姫の帰還― (川原 礫/電撃文庫)
 パララバ ―Parallel lovers― (静月 遠火/電撃文庫)
 東京ヴァンパイア・ファイナンス (真藤 順丈/電撃文庫)
 ウィザーズ・ブレイン VII 天の回廊 〈中〉 (三枝 零一/電撃文庫)
 雪蟷螂 (紅玉 いづき/電撃文庫)
 悪魔のミカタ666 6 ノットB (うえお 久光/電撃文庫)
 笑うかのこ様2 (辻田 りり子/花とゆめコミックス)

 


 
 2月5日(木)


【今日読んだ本】

未完成行進曲 富士見二丁目交響楽団シリーズ第二部 (秋月 こお/角川ルビー文庫)amazon

 

《あらすじ》
 “フジミ”の天才指揮者・圭の才能に惚れ、ライバル楽団“市民ファル”から芳野が入団。しかも彼は実力派バイオリニスト。悠季はコン・マスの座と、恋人・圭の愛を守るべく、芳野の挑戦を受けて立つ。(『コン・マスの光と影』)また、圭の愛情あふれる特訓が実を結び、名門中学でオーケストラ指導の職を得た悠季。だが、そこで待っていた手痛い“先礼”とは。(表題作)音楽家コンビの圭&悠季が奏でる熱く切ない愛の物語2編。大人気シリーズ第2部スタート。


 久々のBL積み崩し、自信が持てないバイオリニストと天才指揮者の恋を中心とした現代音楽物語。
 1行目、「S○Xの快感っていうのは、シンフォニックな感覚だ。」(アレなので一応伏せ)で早々と心折れそうになりました。久々に読むBLの開幕パンチとしては強烈すぎます……。
 まあこのシリーズは濡れ場そんな多くないし、ちゃんと主人公の社会的立場の揺らぎや不安なども踏まえつつストーリーを作っていて、アレなシーンを除けば普通に面白いです。コンマスを狙う刺客がやってくる最初の中篇は悠季が全開、マリアローズ@薔薇マリ並の悩みっぷりで、そこからの脱出が気持ちいい話でした。もう一篇の中学校オケ部の問題児たちと向かい合う話も、いかにもな中学生をうまく描いていました。
 あと数冊積んであるので、中身忘れないうちには読む予定。


評価 ☆☆☆(6)



砂漠の王子と風の精霊 (天堂 里砂/C★NOVELSファンタジア)amazon

 

《あらすじ》
 砂漠の国の第二王子カマルは、兄に対する反逆罪で追われる身。「《地の精霊》が兄に成り代わっている」と教えられ、優しかった兄を取り戻すため《輝命石》を求め旅に出る。第4回CN大賞特別賞受賞第一作、登場!


 渋い海洋ロマンでデビューした新人さんの新作は、砂漠が舞台の精霊ファンタジー。
 そこそこ面白かったんですが相変わらず地味、どちらかというとデビュー作の方が好きかなあ。一言で表すなら温室育ちの特徴なし王子の成長譚。が、周りの後押しが強く、あまり成長が見受けられなくて成長譚としては微妙でした。でも、精霊の設定や旅している間の世界の描写など、ファンタジーとしては丁寧に作られていてなかなか。鷹のアルタイルが愛嬌あってお気に入り、風の精霊のウカーブに対する反発心がいいなあ。あと、水の精霊に関する脇のエピソードもいい話でした、やっぱり華はないんですが。
 この人は1冊完結より長編で1度見てみたいです、骨太の物語を読ませてくれそう。


評価 ☆☆☆(6)


【最近購入したもの】
 かぐや魔王式!2 (月見 草平/MF文庫J)
 ミラクルチロル44キロ Bパート・ミラクルフレーバー (木村 航/メガミ文庫)
 ナナヲ チートイツ (森橋 ビンゴ/メガミ文庫)
 佐和山物語 あやかし屋敷で婚礼を (九月 文/角川ビーンズ文庫)
 太陽で台風 (はむばね/SQUARE ENIX NOVELS)

 買い損ねた新刊たちがようやく手に入るも、電撃の足音が聞こえてきてしまいました。



 
 2月3日(火)


【今日読んだ本】

シャングリ・ラ (上)(下) (池上 永一/角川文庫)amazon

   

《あらすじ》
 地球温暖化の影響で東京は熱帯の都市へと変貌した。都心の気温を5℃下げるために東京は世界最大の森林都市へと生まれ変わる。しかし地上は難民で溢れ、積層都市アトラスへと居住できる者はごく僅かだった。地上の反政府ゲリラは森林化を阻止するために立ち上がった。


 テンペストがよかったので手を出した、現代から数十年後、森林都市に生まれ変わった東京を舞台に描かれるSF。
 あれ、テンペストよりも面白かったですよ? 完成度は正直言ってテンペストの足元にも及ばなくて、いくらなんでもそれは強引だろうと思う点が何度もあったり、会話の台詞回しがキャラの性格と乖離してとても嘘くさくみえることが時々あったりと結構ひどめ。作中の時間の進み具合なんかも凄く分かりづらいです。
 が、「炭素経済」と「積層都市アトラス」をめぐる壮大な設定と、とにかく濃すぎるキャラ描写には、欠点を補ってあまりある牽引力がありました。炭素経済と地球環境問題だけでもひとつの主題として十分なのに、そこの裏にすごいネタがくっついていて、どんどん謎が明かされていく展開にはとてもワクワクさせられました。また、キャラにはテンペストの真牛を上回る強烈なのが何人もいて、数人は人間というより妖怪と評した方が正しそうなくらい。超人バトルや不死身っぷりはどう考えてもやりすぎなんですけど、「面白いしまあいいか」と押し切られてしまうくらい勢いがありました。深く考えたら負け、頭を空っぽにして読むエンターテイメントとして素晴らしい出来だと思います。
 これ期限内に読んでたら多分ラノサイ杯で入れてました、惜しかった。次回作も要注目です。


評価 ☆☆☆☆(8)



忍剣花百姫伝2 魔王降臨 (越水 利江子/Dreamスマッシュ!)amazon

 

《あらすじ》
 魔に滅ぼされた八剣城。幼い花百姫は記憶を失い、盗賊に育てられる。しかし、唯一手元に残った剣によびさまされ、記憶と力がよみがえる。一方、闇の魔王は…。壮大な時空ファンタジー。


 年の差ラブらしい戦国時代が舞台の児童書ファンタジー「忍剣花百姫伝」第2巻。
 霧矢のターン開始キター! ようやくメインの年の差ラブがはじまりました。はじまったといっても最初から気持ちは通じ合っているようなものなので、なかなか出会うことのできないもどかしさが今のところの楽しみ。捨て丸の気持ちはまだ慕う段階っぽいですが、この先恋情に変わっていくのかどうかが楽しみです。
 ストーリーはラスボスが登場。案外に迫力がなくてちょっとがっかり、もう少し威厳がほしかったところ。天兵と小太郎の準主役2人がどうなるのかが気になります。あと、流山がネタキャラすぎてかわいそうなんですが、この先大活躍することあるんでしょうかこの人。
 もう既刊購入済なので、のんびりとこの先も読んでいきます。


評価 ☆☆☆(6)