6月15日(月) |
【今日読んだ本】 ◆ ヤンキー巫女逢桜伝 (夕鷺 かのう/B's-LOG文庫) 【amazon】 《あらすじ》 地元じゃ筋金入りのヤンキーだったあたし=穂倉梓は、今はド田舎の村で巫女をやらされてる。今日も心は穏やかに、神事のイロハは丁寧に……ってマジウゼエ! しかもそこに"自称・神サマ"のクラスメイト・染井良信が現れて、「僕の父親を探してください!」ときたもんだ。退屈もウンザリだがな、面倒に巻き込まれるのは御免なんだよ!! ――はぐれ巫女&チェリーな神様コンビが、閉ざされた村の闇をぶっ潰す(釘バットで)! 審査員絶賛! 第11回えんため大賞ガールズ部門奨励賞に輝いた青春活劇が大・降・臨! ビズログの新人さん、独特のタイトルで発売前から話題になっていた、ヤンキー巫女が主人公の現代物語。 これは着想の勝利ですね、面白かったです。読んでみて驚いたんですが、根っこの部分はかなり地味なんですよこの作品。半分神様な男の子とともに村の神様の謎を調べていく民俗学なストーリーで、よく作りこまれていてこれだけでも十分面白いものの、これだけだと売れなそうだなあというお話です。 でも、この地味なストーリーにヤンキーな主人公を据えたのがうまくはまっていました。ヤンキーと聞いて想像するイメージよりは結構賢くて根もまともな子で、でも一人称の地の文や喋りはヤンキーらしいハイテンションで、読んでいて楽しく地味さを感じませんでした。出てくる神様たちが揃ってイイ性格しているのも大きいです、ギャグ部分のセンスがなかなか突き抜けていて、その割にシリアスな部分の邪魔になっていないんです、これが上手さなんでしょうか。P181の挿絵つきのアレには不覚にも笑いました。 恋愛要素は薄めでしたがこの主人公に普通の恋はあまり似合わないし、男女間の信頼関係というのが新鮮だしほんのり甘くて気に入りました。あと、印象に残ったのが最後の決め技、出てきた伏線をしっかり回収しつつ意外性もあって、上手いネタだなあと感心。少女小説でこれ出すんだ、という珍しさもありました。 続き出るかどうかは微妙そうですが、何書いても面白いもの出してくれそうなので続刊も新作も歓迎。ただしタイトル以外(あとがきのタイトル候補の壊れっぷりに噴きました)。 評価 ☆☆☆★(7) ◆ 東の剣士 北の魔女 (くりた かのこ/B's-LOG文庫) 【amazon】 《あらすじ》 東国からやってきた剣士・センリは、旅の途中で幼い少女・テアを助ける。ところがそこから事態は一変! 突然「最後の魔女」を探しているという凄腕の暗殺者たちに襲われ、一触即発の状況に。そこへ響き渡った少女の叫びは「あたしのダーリンだけは助けてください!」……いつのまにやら夫婦にされて、センリとテアは二人で旅を続けることになり――!? この出会いは偶然か、必然か。第11回えんため大賞ガールズ部門奨励賞受賞、運命の輪が巡りだす、魅力溢れる剣と魔法のファンタジーが登場!! もう1人のビズログ新人さん、「最後の魔女」な女の子が主人公のファンタジー。 うーん、何がメインなのかよく分かりませんでした。プロローグでやたら変態な魔術師が出てきて、こいつが引っ掻き回してくるのかと思いきや案外出番が少なく、じゃあ主人公と真面目剣士のラブになるのかなと思ったらそっちの要素も薄く。突然ギャグな方向に話が転んだり、脇役たちの描写にやけにページ割いていたりと、とりとめがないように感じられたんですよね。あとがきによると「女の子がお兄さんを振り回して騒ぎを起こす話」らしいです、確かにそういう側面もあるんですが、視点切り替えが多いせいでいまいち印象に残らず。せめて主役2人に視点絞ってくれればそういう話として楽しめたかもしれません。 個人的には、間抜けなキャラクターが多くて「おいおいそれはないだろ」と思わされる展開の不自然さや、忘れた頃に出てくる設定の唐突さ(しかも続編前提)など、色々引っかかってしまって駄目でした。あんな与太をあっさり信じる暗殺者は嫌です……。ビズログの新人さんは結構信頼してたんですが残念。 評価 ☆☆(4) |
6月12日(金) |
【今日読んだ本】 ◆ ロウきゅーぶ!2 (蒼山 サグ/電撃文庫) 【amazon】 《あらすじ》 少女たち五人のさらなる成長を目指し、球技大会に向けて小学校内で合宿を行うことになった昴。解決しなくちゃいけない問題は山積みで、 「ふぁ……見てる。昴さんが、こっちっ」(湊智花) 「ひな、おにーちゃんに見て欲しいなー」(袴田ひなた) 「……まー、すばるんもヒトノコだしな」(三沢真帆) 「えへへ。紗季ちゃんはどうなのかな?」(香椎愛莉) 「ちょっと私まだそういうのは興味がっ」(永塚紗季) それ以上に色々な意味での問題も山積みでして──!? ロリロリ小説のふりをした熱いスポ根ストーリー「ロウきゅーぶ!」2巻。 スポ根かと思ったらショタっ子小説だった! いやもう、主要キャラの中で唯一の小学生男子である竹中がかわいすぎました。1巻でもいいひねくれ具合を見せていたんですが、スポ根の熱さの影に隠れてあまり目に入らなかったんですよ。でもこの2巻は彼が主役だと言い切っちゃいます。ひねくれた意地の張り具合とか、和解したときに見せる不器用な優しさとか、好きな子に対するカチコチ具合とか、これぞ小学生男子って要素がこれでもかというくらいに詰まっていて、微笑ましさにニヤニヤを抑えるのが大変でした。ひねくれる相手と好きな相手が別なおかげでおいしさが倍。主人公に対する対抗意識なんかも見せちゃったりして、何ですかこのかわいい生き物は。竹中のためだけに買う価値はあります。 でも、竹中以外の部分は総じて1巻より劣化しているように思えました。特に、ロリ要素がちょっと過剰すぎるのはマイナス要素だなあ、スポ根という柱があるのにここまであざとく狙わなくてもいいと思うんですが。特に最後のはいらないです、1巻は爽やかでいい終わり方だったのに、なんで2巻でこんなロリコメみたいになっちゃうのか。この先どういう方向に話続けていくんでしょう? 不安になってきましたが、まだ続きは追いかけます。智花とラブ方向に持ってくのだけは勘弁で! ベタベタ幼馴染はちゃんと昴を篭絡するように。 評価 ☆☆☆★(7) |
6月11日(木) |
【今日読んだ本】 ◆ ウィザーズ・ブレイン VII 天の回廊 〈下〉 (三枝 零一/電撃文庫) 【amazon】 《あらすじ》 北極上空の大気制御衛星内に転送されてしまった錬たちは、アルフレッド・ウィッテンの遺した日記を発見する。そこには魔法士誕生の秘密と、ウィッテンの苦悩が綴られていた。――天樹健三、エリザベート・ザイン、ウィッテンの三人が発表した情報制御理論、そしてその成果である魔法士は、世界の軍事バランスに大きな衝撃を与えてしまう。三人は「自然発生した最初の魔法士」アリスを守るため、大気制御衛星内に彼女をかくまうが――。過去と現在を繋ぐエピソード7、いよいよ完結! 過去の諸々がついに明かされるウィザブレ7巻完結編。こんなのネタバレせずに感想書けるわけないので以下反転。 過去編ってずるい! 小龍生存時とかヘイズ誕生時とか持ってこられたら全面降伏するしかないじゃないですか。2巻大好きな自分としては彼らの誕生顛末が読めただけでも嬉しすぎたし、ちょっと嬉しそうなヘイズとクレアの様子には物凄くニヤニヤしました。あの台詞にそんな背景あったとか分かるわけないです。 過去編途中までは、アリスとウィッテンの睦まじさにアテられる一方で、現代の方が好きだなあとか、ウィッテンがもう少し忠告聞いてればとか、ちょっとモヤモヤするところもあったんですが、こういうエピソード出されただけで全部吹き飛びました。過去編ってほんとずるい。 現代の方は、フェイに誰か殺されかかるような緊迫した展開を期待していたのでその点では少しガッカリ、でも真昼の真意が分かるとフェイがそういう行動とるのも納得いく面白い展開でした。錬に関するカードを見る限り、フェイがこの先裏切る線も残ってそうです。しかし、真昼はほんとサクラ大好きだなあ。 そして、色々明かされた後にさらに出てきた謎にワクワク&ゾクゾク。特に最後のは今後の物語の根幹になりそう。どんな道かは分からないですが、真昼はその道に突き進んじゃいそうな。ラスボスは真昼だと予想してますし。残り6個の暗号が誰に託されてるかも気になるところ、祐一あたりは託されてても暗号の存在に気づかなそうですがどうなんでしょう。 残りエピソード3つってことは、上中下×3で最低9冊の予感がします。全部4ヶ月間隔で出ても後3年……今年中に後1冊は出ますように。 評価 ☆☆☆☆★(9) ◆ スノウ王女の秘密の鳥籠 よかったり悪かったりする魔女 (野梨原 花南/コバルト文庫) 【amazon】 《あらすじ》 侯爵アザーに嫁いだマダーと、学友の魔女ポムグラニット。男に転換するマダーの特性を活かし、ときめき庭師の商売を続けるふたり。夫のアザーは、王宮から依頼があっても応じるな、と忠告するが…。 野梨原さんらしさが光る魔女ファンタジー「よか魔女」第3巻。 そうか、ピーターはヒロインだったのか! ポムグラ視点のピーターが今回半端なくかわいかったです。地の文で「男の子ってかわいいな。」とか書かれちゃうくらいのかわいさ、照れ照れがたまらないです。そして、これだけ2人の空気作っといて完全に無自覚なポムグラ……恐ろしい子! 相変わらずアザーは捻くれててマダーは男前でした、完全にアザーがヒロインです。正ヒロインがピーターとアザーで甲乙つけがたいですね(※両者とも男)。しかし、アザーはカイにまで好かれてるあたり幸せ者です。こんなに幸せ者なのに捻くれてるんだから殴られても仕方ない。 さて、完全にカップルが2組できてきたわけですが、1巻の頃「ポムグラがマダーとくっつく可能性もあるのかな」と思っていた自分をぶん殴りにいきたくなります、そんなんなったら台無しじゃないですか全く。1巻のピーターは眼中になかったからなんですが……。 そういや、アダー(蛇)が出てきた時「なんだこの紛らわしい名前」と思ったら、後でしっかりネタにされて少し驚きました。そりゃそうですよね、こんな紛らわしい名前、ネタにするつもりなきゃつけませんよね。 お兄ちゃんは鬱陶しいので、とっととマダーに圧倒されてバカになってください。続き物なので次も早めに。 以下どうでもいいこと。感想書いてて『むぐら→葎』の変換を知りました。へー、雑草の一種なんだ……。 評価 ☆☆☆★(7) |
6月9日(火) |
【今日読んだ本】 ◆ FATAL ERROR9 回帰 (新堂 奈槻/ウィングス文庫) 【amazon】 《あらすじ》 単独行動に踏み切った一朗の真意を知らず、深く落ち込む宏貴。そんな中、天神を統べる玉帝が地神殱滅を呼びかけたため、次々と天神が降臨しはじめる。この状況を危惧する地神たちは、宏貴ら天神を襲う……! 唯一、嘘のつける天神・隆司の使命は、宏貴の盾になることだから――。驚天動地のサイキック・ファンタジー第九弾。 ウィングス有数の長寿シリーズ、鬼と邪霊の戦いを描いた現代アクション&ブラコン小説「FATAL ERROR」第9巻。1巻発売が1995年らしいです、もう13年以上続いてるんですね……。 クライマックスが近いだけあって、いつもよりもシリアスでいい盛り上がりでした。序盤こそ空気を全く読まない新参邪霊にイライラを感じたものの、鬼と邪霊の力の均衡がやぶれ、両陣営ともに犠牲者も出て満身創痍になっていく展開は見ていて苦しいものがありました。 特にインパクトあったのは鬼側。これまで強い存在として描かれることが多かった理子が弱音を吐露しただけでもくるものがあった上、語られる鬼の滅びゆく運命の無常さが胸にズシリときました。その無常さと向かい合う理子の孤独でボロボロな姿が本当に辛そうで、要がもうちょっと支えてれば、と思ってしまいます。にしてもてっちりはいいキャラしてますね、折れそうな理子の支えとして素晴らしい存在感でした。こういう明るさやギャグが所々に入るのがこのシリーズのいいところです。時々やりすぎかなとも思いますが。 他には、ここにきて一気に目立ってきた未知が気になります。宏貴とくっつくフラグ……はないですよね? 物語をどう着地させるかが見えてないのでさっぱりわかりません。閻皇はまだ生きてる気がするんですがどうなんでしょう。 多分この状況をどうにかできるのは一郎だけ、お兄ちゃんパワーで宏貴その他大勢を助けてやってください。 評価 ☆☆☆★(7) |
6月8日(月) |
久々にラ管連ボドゲ部で遊んできました。月島開催のは初参加、10時間弱たっぷり楽しかったです。以下は遊んだゲームの感想。 ・東方雅華乱舞外伝 東方のカードゲーム。相手からキャラのカードを奪い、最終的にそのキャラを場に多く出した人が得点ゲットという、東方好きがプレイしたら激しくなりそうなゲームです。相手の所持カードが分からないため、後半の手札の読み合いがなかなか面白いです。 自分は特に東方に思い入れないということもあって、1戦目はうまくカード集まって勝利。2戦目は読みを外しまくって、3種ボーナスを見事獲得したえそらさんが勝ちを持っていきました。ちなみに、東方は妖々夢のノーマルをコンティニューありでなんとかクリアできる程度の腕です。要はヘタクソです。 ・ちるのい! もう1つ東方カードゲーム。順番に数字カードおよび特殊カードを出していって、合計100を超えさせた人が負け、という一見単純なドボンゲー。が、その実態は、和を強制的に99にする「99」カードが結構な数混じっているバカゲーです。とはいえ1戦5分もかからず終わるし、合間にサクッと遊ぶにはいいゲームでした。 ・魚河岸物語 色んな魚を競りで落とし、その魚を売ってお金を稼ぐゲーム。競り落とし金額は10ユーロ固定で、場に増えていく魚をいつ競り落とすかは早い者勝ち、というのがポイントです。つまり、反射神経が鈍い人には勝ち目がありません。そして、自分の反射神経は年中品切れです。 終始競り落としまくったりゅーかさんが圧勝で、他の4人中3人は初期資金以下で終了という散々な結果でした。 ・キャメロットを覆う影 アーサー王とその騎士たちとなり、敵の侵攻を阻止する協力型ゲーム。7人プレイで説明加えると2時間半くらいかかったのかな? アーサー王についての知識は「Fate」と「ラズ・メリディアン」で得たものくらいですが、問題なく楽しめました。 プレイの方は、序盤に敵の侵攻がやけに聖杯に偏っていた上にスペシャルカードもがんがんきて「これあっさり負けるんじゃ……」となったものの、あちこちギリギリのところで踏みとどまる展開。えそらさんが一騎打ちでランスロットを何とか倒してから一気に楽になって、最終的には楽勝でした。 ・人狼 前回初参加したときはボロボロだった人狼。Web版で勉強して、今回は一矢報いる意気込みでした。 1戦目は村人。真占い師っぽい人があっさり噛まれたり吊られたりしたため、情報皆無で村人側が厳しい展開。4人の最終日まで生き残ったものの、疑われた自分が吊られて、ヴァンパイアのでるたさんが勝利でした。途中からいきなり喋りすぎたのかな。 しかし、最終日に残っているのが狼だと完全にミスリードしたのが悔しいです。後から考えると、4人の状況でのボディーガードGJ率は1/3しかないわけだし、人狼全滅の線も普通にあるんですよね……。ボディーガードの存在が確定したせいで、GJが出たものと思い込んでしまいました。 2戦目はヴァンパイア。占い師のCOがなかったのでステルスしてたら、ステルスを吊る流れになって即死でした。どうせ何もできそうになかったので、騙り占いCOすべきだったかなあと後悔。でもその後、村人と人狼の熱い攻防が面白かったのでいいかな。 あと衣擦れには気をつけます。凄く慎重に動いてたつもりだったのに音でバレバレだったと言われてショックでした。不器用な自分爆発しろ! 3戦目は村人。あっさり吸血鬼に噛まれてこれまた即死。が、人外の皆さんが次々吊られて3ターンで終了という斬新展開でした。3戦連続で狼になったかねぴーさんは強運だけど不運。 今まで人狼4回やって、生きて勝ったことがありません。次回参加のときは勝ちたい。 【今日読んだ本】 ◆ エバーグリーン (豊島 ミホ/双葉文庫) 【amazon】 《あらすじ》 2人をつなぐものは…約束。中学校の卒業式で、10年後の再会を約束したシンとアヤコ。夢をかなえるため、シンは地元に残りアヤコは東京に向かう。それぞれの日常の中で、時間も距離も離れた2人の心は、揺れていた。ほろ苦い青春の日々を通して描かれる切なさにキュッとなる恋愛小説。 まろんさんの猛プッシュを見て買ってみた、はじめての豊島ミホ作品。 何度か叫びだしたくなったくらい酸っぱくて甘い物語でした。田舎の中学生な男の子と女の子が夢をかなえて再会する約束をして別れ、その2人の10年後を描いたお話。2人の中学時代がキラキラでほんのり甘くて希望に満ち溢れているように見えて、だからこそ10年後の2人の姿がたまらなかったです。 夢やぶれた側のシンの描写がきついのは当然ですが、感じるやるせなさやもどかしさといった感情はそこらに転がってそうなくらいリアルで胸をグサグサと突き刺してきます。特にアヤコが夢をかなえたことを知る前後の奈落に落ちそうな気持ちは強烈でした。一方、夢をかなえたアヤコは、シンと再会する夢を見続けてフワフワしている状態。傍から見ると痛々しいんですが、この夢が本当に宝物な想いであることが伝わってきて切なくて胸にきます。この中盤はやばかった。 後半は中盤ほどくるものはなかったですが、2人とも地に足をつけて、それでも幼き日の約束は大切なものとして引き出しにしまってある、素敵な話だと思いました。 決して好みな路線の話ではないんですが面白かったです、他作品にもボチボチと手を出してみます。 評価 ☆☆☆☆(8) |
6月6日(土) |
【今日読んだ本】 ◆ さながら駆けし破軍の如く (天野 ゆいな/講談社X文庫ホワイトハート) 【amazon】 《あらすじ》 王宮の凶手集団「北斗」の首領は、北斗七星第7星、凶星「破軍」と呼ばれる二十歳にも満たない少女・揺光。自らの手を血で染める運命を呪う彼女が、一人の女の子として愛してしまったのは敵国の公子だった。だが、父である王の命令は彼の処刑!!瑞々しい感性で描く、中華ラブファンタジー。2008年下期、ホワイトハート新人賞受賞作! 今月のホワイトハートの新人さんがおくる中華ファンタジー。著者が14歳というところに警戒心を抱きつつも、敵同士ラブときいては手を出さずにはいられません。 うーん、ちょっと腑に落ちない点が多すぎでした。部分部分の描き方はそう悪くはないんです。好みの設定ということもあるとは思いますが、敵同士ゆえに近づくことができないシーンなどはしっかり切なさを感じ取れました。文章は短文中心(改行せずに三行以上進むことが少ない)で淡白気味、とはいえ読みやすいのは確かでこれはこれで悪くなかったです。 でも全体通して見ると、「この人がここでこういう行動とるのって変じゃ?」やら「国や街の描写がいびつで世界観がよく分からない」やら「さっき書いてたこととここで書いてること噛みあわないような?」やら、荒さがやたら目に止まってあまり楽しめませんでした。先例が多い中華物だけに、余計に粗が気になってしまって。話の中核もそれに漏れず、破軍の重みって何だったんだろうと考えてしまいました。 そういや、著者14歳なのに普通に朝チュンがあって少しびっくりしました。ちょうどエバーグリーンを読んでる途中にこれを読んだので驚きが倍です。でも少女漫画的に考えても、今は14歳が朝チュン書くのは別に驚くことではないんですよね多分……。 最後になって色々仄めかしたりと、この世界で別人物主人公の続編はありそうですが、うーん。カンダタといいこれといい、編集さんにもうちょっと頑張ってほしいかも。 評価 ☆☆★(5) |
6月5日(金) |
【今日読んだ本】 ◆ minor club house 2 マイナークラブハウスの森林生活 (木地 雅映子/ピュアフル文庫) 【amazon】 《あらすじ》 桃李学園高等部の片隅に建つ古ぼけた洋館「マイナークラブハウス」に集う弱小文化部――ウクレレ部、園芸部、演劇部、思想研究会、歴史研究会、和琴部――の面々は、自由気ままに青春を謳歌……しているように見えるが、一筋縄でいかぬのが思春期というもの。新・演劇部長、畠山ぴりかの涙のワケは!? 謎が謎を呼び、続きが気になってしかたがない学園・青春小説シリーズ、待望の第2弾。 弱小クラブが集まる学校の外れのクラブハウスを舞台にした学園青春物語第2巻。 相変わらず面白くはあるんですが、1巻よりも苦手度がアップしていて少ししんどかったです。いいなーと思ったのは最初の2話、1話目は高橋家の面白おかしい家庭で活き活きしているぴりかが微笑ましく、2話目は前巻のクラブの青春模様を引き継いだ話で、天野家の面々のアホらしさも加わってワイワイした雰囲気がよかったです。2話目の滝の攻めの姿勢は応援したくなるけど、現時点の天野の関心は明らかにぴりかなんですよね。天野自体も1巻より深い闇が見えたし、前途多難すぎです。 でも、それ以降の話はあんまり好きになれませんでした。解説読んで気づいたこととして、弱者を描くために、凝り固まった大人や同調することを必要以上に悪く書きすぎているように見えるのが嫌なんです多分。安易な同調はよくないことが多いとはいえ、ここまで一方的なのはやりすぎに思えてしまいました。ぴりかの光と闇の二面性もくっきりしすぎていたり、この人のズバっとした切り方は合わないみたいです、うーん。 今後もぴりかの重たい話が続くと辛いので、続きは他の人の感想待ちかも。 評価 ☆☆☆(6) ◆ 陽炎の奏鳴曲(ソナタ) 西域暴雲録2 (藤 水名子/集英社スーパーファンタジー文庫) 【amazon】 《あらすじ》 西域の女人国『西涼』の末姫・瑛蓮は、国の危機を救うため神毒山への旅を続けている。旅の道連れは、母である女帝・昭琴の怒りをかった三人の姉たちに加え、白皙の美剣士・馮昴、吟遊詩人の張圭白、伝説の盗賊団「砂漠の鷹」の首領・李国栄とひとくせもふたくせもある連中ばかり。平穏無事に旅が続くはずもなく、案の定、長姉・妹紅がおこしたトラブルから、次姉の絮星は単独行動に出てしまう。そのうえ、一同が立ち寄ることになった邑・燕村は、魔将・羅刹鬼人に支配されていて……。 月季さんのスーパーファンタジー記事を見て気になった、4姉妹が活躍する中華ファンタジー。何故か1巻の感想が見当たらないので、1巻の感想も交えながら書きます。 一言でいうと、中華風の変わった娯楽活劇、になるんでしょうか。優秀な姉を3人も持つ末っ子が、姉や護衛とともに妖怪を倒したりしながら国を救うための旅をするお話、と概観だけなら普通のファンタジー。なんですが、話が進むにつれ、姉たちは過去の不貞が発覚するわ欠点が色々見えてくるわ、ヒーロー候補だと思ってた護衛(男)は妖怪に犯されて精神崩壊するわ、ギャグっぽい要素が次々と出てくるのが変なところ。その一方で主人公は真面目ないい子だったりして、不思議な楽しさを持ったお話になってます。 で、この2巻も同じような感じ。妖怪との大バトルだったり次姉の切ない恋物語があったりといった真面目な部分と、妖怪が愉快な性格してたり、これまたヒーロー候補が化け物チックな人間とやっちゃったりといったふざけた部分の混ざりっぷりが楽しかったです。ヒーローがどんどん駄目になっていって、主人公がくっつく候補がどこにもいませんよ? 一応、齢○才のおじさんがまだヒーロー候補ですが。 基本的に長姉が見栄っ張りだったり短気だったりで騒動引き起こすこと多くて、この姉いなければ色々丸く収まったんじゃないかなと思ったりしました。こんな姉が次期皇帝の国には住みたくない。したたかで好奇心もある三番目の姉の琲梨が結構お気に入り、護衛とのフラグが若干たってますが、あんまりくっついてほしくないなあ。 残り1冊、もう少し主人公の活躍が見れるといいです。 評価 ☆☆☆(6) |
6月2日(火) |
【今日読んだ本】 ◆ ブランデージの魔法の城 魔王子さまの嫁取りの話 (橘香 いくの/コバルト文庫) 【amazon】 《あらすじ》 元王子さまの魔術師ドナティアン・シャルル。ある日、跡継ぎをつくろうと思い立った彼は、魔法の力でとんでもない行動にでて…!? 平凡な田舎娘アドリエンヌと、恋知らずの魔王子さまの物語! 橘香さんの久々の新シリーズは、堅物で苦労性な女の子が、ある日突然俺様な魔法使い王子にさらわれて求婚されるラブロマンスコメディ。 1冊で2度おいしい、当たりの新作でした。まず一押しすべきは主人公アドリエンヌの性格。例えるなら「コラフェリ」のコラリーを真面目な堅物にしたような女の子で、血液型が存在したら間違いなくA型ですが、行動力はあるしリアクションもよく、見ていて楽しいタイプ。無茶苦茶な王子に反発しながらも、自分を必要としてくれる王子に惹かれていく様がかわいらしかったです。 一方の王子様は、プロローグの俺様っぷりを見て「これはいいデレの予感!」と期待した通りのキャラ。最初は子を産む道具として連れてきた主人公に興味を〜、というお約束展開ですが、好きになっていった理由が明確ですし、陥落後が甘くてかっこよかったので文句なし。 で、この2人が結ばれる前半だけで結構満足したんですが、この話の本番は後半の里帰り編。娘の選んだ相手に興味津々な家族たち、噂で聞いた恐怖の王子を恐れる村人たち、自由気ままに振舞う王子、そしてとことん真面目であろうとするアドリエンヌ。こんな感じのとても愉快なコメディで楽しいことこの上なかったです。家族を堕落させないよう奮闘するアドリエンヌの活き活きした姿なんか大好き。村人たちがひどい行動をとる中、妹のファニーだけは主人公のことをよく分かってるあたりは「さすが家族だなあ」とほんわかしました。いや普段のファニーの行動は許せませんけどね!(←A型な意見) 前半以上の甘いシーンもあって大満足でした。 サブタイトルついているものの、話自体は綺麗にまとまっているので、続き出るかは売れ行き次第なのかな? これは是非続き読みたいなあ。 評価 ☆☆☆☆(8) ◆ 吸血鬼とまぼろしの舞踏会 (倉世 春/コバルト文庫) 【amazon】 《あらすじ》 吸血鬼の少女マイアが仕える女伯爵フロリアンが、王の花嫁選びのため王都に呼ばれた。マイアも同行するが、案内人はマイアに興味津々の公子カディス。吸血鬼を手に入れたがっている彼だったが…? 現実主義者な公子様と召使な吸血鬼の凸凹なやりとりが楽しい欧風ファンタジー、待望の続編。 あれ、思ったよりも甘くならず。どうやらちゃんとシリーズ化が決まったらしく、2人の心がじりじりとしか縮まらなかったのには少しがっくり。でも、カディスの興味が吸血鬼に対してではなくマイア個人へ向いてきているのにはニヤっとしたし、お約束の吸血シーンもあったりと相変わらず楽しかったです、2人の心の振れ幅が対照的で見ていて飽きません。 1話完結なストーリーは1巻同様よく練られてるなという印象。途中まで誰が黒幕で誰が味方かを見抜けませんでした。黒幕だった彼の心中はいまいちよく分からない点もあったけれど、最後にマイアに残した台詞だけは少なくとも本物なんでしょう。この言葉が今後マイアを縛っていくことになりそう。でもカディスがそれで諦める姿は想像つきません、どう打ち破るのか楽しみです。 評価 ☆☆☆(6) |
6月1日(月) |
今月こそはミス0にします! いつも言ってはやらかしてますが、先月ひどいミスがあったので本気で0にしにいきます。自信? ありません。 【今日読んだ本】 ◆ 14f症候群 (壁井 ユカコ/角川書店) 【amazon】 《あらすじ》 ピチピチの素肌。膝上20センチのスカートからスラリと伸びた脚。女子中学生は無敵だ。しかし、突然の微熱と関節痛から目覚めると、その朝少女たちは――。14歳のリアルをダーク&スイートに描く著者渾身の意欲作! 電撃でも活躍している壁井さんのハードカバー作品。今までのハードカバーはピンとこなくて回避していたんですが、TSと聞いて手を出してみました。 TSなのは最初の一篇のみで、身体変化する少女たちを描いた短編集でしたが、これはこれでかなり面白かったです。そもそも自分はTSだけでなく身体変化全般も好きなのでした。体が動物化して、徐々に心も動物化していく話とか無茶苦茶怖いけど惹きこまれます。「山姫アンチメモニクス」の人間⇔犬の入れ替わりとかよいものです。 そんなどうでもいい自分の嗜好はさておいても、身体変化のバリエーションが豊富なだけでなく、ダークな話からしんみりくる話まで方向性も多様で、色々と楽しめる作品でした。1話目で女子中学生の生々しさを見せられた後に、小悪魔な女の子がかわいくて男性向けで出てもおかしくない2話がきたときは驚きましたよ。全体的にどの話も、身体変化に対する女の子の順応が素早くて、そのたくましさが印象的でした。 気に入ったのは、恋する女の子の切なさたっぷりだった1話と奇妙さとシリアスのギャップがいい味を出していた5話。ダークな2篇はオチにあまり意外性なかったのが惜しい。でもどの話も、身体変化に端を発する心の変化がしっかりしていてよかったです。 そんなわけで、身体変化好きな人(いるのかな?)にはもちろん、そうでない人にも結構お勧め。 評価 ☆☆☆☆(8) |