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 7月16日(木)


【今日読んだ本】

紫色のクオリア (うえお 久光/電撃文庫)amazon

 
 
《あらすじ》
 自分以外の人間が“ロボット”に見えるという紫色の瞳を持った中学生・毬井ゆかり。クラスでは天然系(?)少女としてマスコット的扱いを受けるゆかりだが、しかし彼女の周囲では、確かに奇妙な出来事が起こっている……ような? イラストは『JINKI』シリーズの綱島志朗が担当。「電撃文庫MAGAZINE増刊」で好評を博したコラボレーション小説が、書き下ろしを加え待望の文庫化! 巻末には描き下ろし四コマのほか、設定資料も収録!!


 うえおさんの新刊、人間がロボットに見える少女をめぐる、すこしふしぎなSF。「うえおさんならアンパイだろう」と後回しにしていたら、やたら評判よく話題になっていたので慌てて読みました。
 話題になるのがとても頷ける凄さでした。1話目は、人間がロボットに見える少女ゆかりを、友達のガクの視点から見たお話。ゆかりの特殊性や普通の人との隔絶を描きつつ、それを跳ね除ける気持ちいい百合友情物になっていて、これだけでもいいもの読んだなあと思える出来。
 でもこの話のメインは皆さん言っているように2話。軽いネタバレをするとループ風味なSFなんですが、その見せ方が上手すぎるんです。ガクの一人称で話進めることで詰め込まれたネタを読みやすく仕立てていて、1話でゆかりとの関係を描いてあるゆえに、怖いくらいに突っ走るガクの動機がとても理解できて。そして何より、設定を活かして怒涛のごとく畳み掛けてくる物語は、何転もして凄く面白かったです。SFの仕掛け自体には目新しさはないんですが、それの料理の仕方がこれぞライトノベルなSFといった感じ、うえおさんさすが。めぐりめぐって綺麗なところに着地した、ロマンチックな物語でした、多分。以下核心に迫るネタバレ感想になるので伏せ。
 問題は3話ですよね。色々考えてたら、これはやっぱり隔絶したお話なんじゃないかなと思えてきました。3話を見てると何かが届いたのかもと思いつつ、やっぱりゆかりは次元が上の存在でその断絶は果てしなく大きい、そんな悲しい話なのかもなあと。章タイトルをはじめ色々と咀嚼できていないので、思いっきり的外れかもしれません、少し時間を空けてから再読してみます。
 何はともあれとても面白かったのは確か。ついでにアリスがかわいかったのも確か。シフトの続きも首を長くして待ってます。


評価 ☆☆☆☆★(9)




 
 7月14日(火)


【今日読んだ本】

三千世界の鴉を殺し14 (津守 時生/ウィングス文庫)amazon

 
 
《あらすじ》
 ニコルを狙う砲撃はやまない。やむなく流民街の真ん中で、装甲車を降りる一行だが、今度は生身のニコルを銃弾が襲う。“もう一度逢いたい、ルシファード―”。薄れゆく意識の中、ニコルは視る。現れた彼の頭上に輝く、王家の星を…。ルシファの不倶戴天の仇敵、アルジャハル教授登場。破壊と混乱、衝撃のシリーズ最新巻。


 昨年に11冊まとめ読みして以来久々に読む、SF風味&BL風味&コメディ寄りな大人気ファンタジー「三千世界の鴉を殺し」14巻。
 こ れ は ひ ど い!
 決死のカーチェイスからはじまる序盤はかなりシリアスな展開で、いよいよ物語が大きく動くのかと身構えていたんですよ。それがラスボスっぽい人物が出てきたあたりから何だかおかしなことに。確かにルシファとは仇敵で、立場的にはラスボスにふさわしいです。でも、「過去に人体実験されてた」はともかく、「内臓フィストファックされた」とか変態設定が入るのはどうしてですか? 変態的な所業について男2人が話す光景はシュールで面白いんですけど、ストーリーは次第に放置気味に。
 そして、各キャラとのエピソードを経て辿りついた終盤が実に酷かった。なんでここにきてパープル・ヘヴン風味なルシファ逆レイプがはじまるんですか! もうストーリー進める気が全く感じられません。この巻の最後にマルっちとのオチを持ってくるとか、もうギャグ路線で行く気満々ですよね。笑えるんですけど、刊行ペースも遅いのにこれでいいのかなあと。ま、笑えるからいいか。
 そうそう、基本的に嫌いなキャラがいないので楽しく読めているんですが、サラディンだけはいらないです、この人出てくると途端にBL色が強くなるので。マルっちに露骨に嫉妬とかやめてください……。
 完結までつきあえるのか、そもそも完結するのか、などと不安を色々抱きつつ次巻待ち。


評価 ☆☆☆(6)



魔王城 二限目 (田口 仙年堂/ファミ通文庫)amazon

 
 
《あらすじ》
 魔王の落とし子「魔人」たちの教師役を引き受けたエイゴ。彼の目下最大の懸案事項は、魔人たちの社会見学の実現だ。魔人たちが、いずれ普通の人間として人々と暮らしていけるように。けれど町を訪れたエイゴたちは、町の子供たちの嫌がらせから、思わぬ危機に陥ってしまう――。軍内部では魔人排斥の風潮が高まり、密かに事態が動き始める中、エイゴは子供たちを守り抜けるのか!? 残酷な世界に抗う青年と子供たちの、痛みと優しさの物語、好評第2弾!!


 そろそろラノサイ杯に向けての積み崩しの時期。というわけで、「ガーゴイル」の田口さんがおくる魔人ファンタジー「魔王城」第2巻。
 駄目だ、リタイア。決してつまらないわけじゃないんです。この2巻では魔人と人間社会との関係が主に描かれていて、一筋縄では到底いかなそうな現状や人々から向けられる敵意に戦々恐々としつつも、理解してくれる人たちも少数いてくれて、きっとエイゴたちならこれから何とかしてくれるんだろうと希望を抱かせてくれます。キサラやマルスといった魔人それぞれの掘り下げもはじまって、今後の行方が気になるんです。
 が、ハイナートの存在がどうしても受けつけませんでした。「苦境から抜け出そうと戦っている人たちが理不尽で潰される話」って物凄く苦手なんです。潰される理由が自然なものなら納得いくんですが、理不尽だと投げ出したくなります。で、ハイナートの狂信っぷりは自分的には理不尽の域。ハイナートみたいなのが教会みたいな形で集団としてあるならOK、でもハイナートは明らかに浮いてるので許容値オーバー。続きで理不尽が炸裂するのは目に見えているのでここでリタイアです、残念。


評価 ☆☆★(5)




 
 7月12日(日)


【今日読んだ本】

侯爵夫妻の物語 よかったり悪かったりする魔女 (野梨原 花南/コバルト文庫)amazon

 
 
《あらすじ》
 アザーたち一行が駐屯する土地フリンギー。ルリの邸宅でのパーティと魔女大会が近づいていた。ペーターら懐かしい仲間が集まり、「フリンギーの月の王」の歌詞の謎も明らかに…? 感動の最終巻。


 週末読む宣言していた「よか魔女」最終巻。やっぱりまとまりそうにないので、前巻同様に箇条書き気味で。

・ポムグラ&ピーターは再会した瞬間からラブラブ全開でアテられました。告白シーンがあっさりしすぎてて逆に凄かった。でもポムグラらしいとも思います。
・庭師顧客の皆さんの行動力はこのシリーズ最強かもしれない。
・アザーの秘密にはとても驚きました、そこで1巻が活きてくるのがすごい。
・まさかのチェインバーレンさん重要キャラ。「あなたもしあわせになって。」にうわーうわー、となりました。
・アストレアが完全に主役級でした、おかしい、3巻ではただの悪役だと思ってたのに……! でも悪役な印象はラスト2巻で完全に払拭されました。ポムグラとのやりとりの数々は相当気に入ってます。箒とか異名とかいいなあ。
・そうかそこで惚れ薬か! 色々繋がってて上手いですこのあたり。ピーター→ポムグラ→アストレア、カイ の伝達の流れに「秘密ってなんだろう」と思わず呟いてしまいました。でもアザーだからいいかな。
・まさかのあほの護衛再びになごむ。そしてその後の波乱に少しびっくり。
・なんというアザーヒロイン! 「私はお前の全てになりたい」男前だマダー。
・スノウ様の大切なことはこの巻くるまで全然気づきませんでした。でも普通気づきませんよね?
・最後の収拾のつけ方が見事すぎます、意外性ばっちりなくせに、タイトル含め色々と綺麗にまとめてます。

 最後の結婚式の雰囲気がこの作品を象徴しているように思えました、途中でときめき庭師に変わってもごく普通に受け入れられて、みんなありきたりに幸せそうで。「人は1人だと孤独で誰かを愛してそれがつながっていく」という普遍的なテーマを変わった切り口で描いた面白い物語でした。だんだんと野梨原さん信者になってきてます、今後は、ヘブンリー→魔王シリーズ→マルタサギーと読んでいくつもり。


評価 ☆☆☆☆(8)




 
 7月11日(土)


【今日読んだ本】

エフィ姫と婚約者 ―五十枚目の運命― (甲斐 透/ウィングス文庫)amazon

 
 
《あらすじ》
 パスカの王女エフィは、隣国ユリオスの若き王レオンのもとに嫁ぐことになった。 それは小国の王家の娘に生まれた定め―― 結婚の形を借り、大国への恭順の意をあらわす人質となるために。 ところが輿入れの旅の途中、エフィは暗殺の危機に! そこを流浪民の占い師である大女のアトゥに助けられる。 彼女にユリオスへの道案内を頼むエフィだったが、実はアトゥは……? 恋あり陰謀あり、どきどきの王宮ファンタジー!


 甲斐さんが久々にウィングスから出した新刊、やや幼い姫様が主人公の政略結婚ファンタジー。書き下ろし以外は本誌で読んでいるので、実質再読です(甲斐さん載るときは欠かさず買ってる)。
 で、改めて読んで、甲斐さんの書く女の子はやっぱり大好きだなあと思った次第。主人公のエフィ姫は幼くてお転婆な女の子で、「勢いと度胸はあるが注意力はない」と評されるように欠点もあるんですが、自分の意思で運命を切り開くという気概に溢れているのがかっこよくてとても気に入りました。13歳な女の子が見せる目一杯の頑張りな感じが伝わってくるのがいいなと思います、2話での恐怖を覚えつつも必死に気を保つ姿が素敵でした。
 また、かっこいいだけじゃなくてかわいらしさもたっぷり、子供扱いしたり女にだらしなかったりするレオンに腹をたてつつも、次第に惹かれていって、でもそんな自分を認めたくなくて内心言い訳を重ねる姿がかわいくて仕方ありませんでした。2人のやりとりにはニヤニヤしっぱなし。レオンは上に書いたようにだらしない俺様キャラなんですが、王様としてはしっかりしていることもあり普通に好感持てるヒーローでした。
 そして、ラブ度大幅アップの書き下ろしにもキュンキュン。ついに自分への言い訳がきかなくなったエフィがかわいいのはもちろんのこと、エフィにクラっとくるレオンもよかったです。数年後にはきっとエフィは物凄い美人になっていてレオンはしょっちゅう動揺させられて、でも2人とも中身は変わってなくて。そんな幸せな未来図が容易に想像つく、素敵なラブファンタジーでした。
 そういう未来の話も読んでみたいですが、それは無理だろうので諦めます。でも数年前よりレーベルも増えたことですし、甲斐さん他でも書いてくれないかなあ、もっと読みたい。


評価 ☆☆☆☆(8)



たった二人で世界を裏切る。 〜犬のような彼〜 (丸木 文華/ティアラ文庫)amazon

 
 
《あらすじ》
 彼氏は犬のように服従する――。高校2年生の遥は健太の告白に、軽い気持ちでOKを出す。最初は弄ぶつもりだったのに、年下の彼と歪んだ関係を続けるうち、次第に官能の深みにはまっていく遥。焦燥と執着、支配と服従、サディズムとマゾヒズムが錯綜するなか、主従じみていた二人の関係は狂いはじめ、遥は彼の身体に溺れていく――。Eroticismの深淵が姿をあらわす背徳愛!


 唯一買い損ねていた今月刊のティアラ文庫、乙女ゲーやエロゲーのライターさんによる現代物。
 うー、こういう嗜虐的な話は苦手です……。犬っぽい男の子に告白された女の子が、彼に対してサドっぽい行動をとるうちにドロドロしていくお話。このサドっぽい行動をとる主人公の心理が自分にはあまり理解できませんでした。健太は確かに犬っぽくてうっとおしくて、邪険にしたくなる気持ちなら分かるんですが、Hな方向に苛めたり女装させたりといった歪んだ方向にいっちゃうのが不思議。暗めの文章でドロドロとした情念が迫ってきて、動機以外の部分は伝わってきたんですが。SM自体がそもそも苦手なのが理解を妨げたのかもしれません、SMなHシーンはいたたまれない気分になって読むのが辛いです。
 物語的には、中核となっているのはありきたりなネタ。健太視点での変態チックな健太の見せ方は上手いと思った一方で、落としどころがあっさりしてたりと物足りない面もありました。親のエピソードなんかは、もう少しメインの話に絡んできたらグッと面白くなりそうな気がしただけに惜しいです。
 この作品は合わなかったものの、こういうふうに色々な話が出るのは歓迎。刊行数維持して頑張ってほしいです。


評価 ☆☆★(5)



 
 7月9日(木)

 メルフォレス。

>私も小説感想サイトを立ち上げたいと思っていますが、画像を貼るときにどうすれば
>よいのかがわかりません。とりあえず画像にamazonへのリンクを張ればいいかな、
>ぐらいに思っているのですが

 自分もあまり詳しくないのですが、確かamazonの画像を使用するのにはアフィリエイトに参加しないと駄目なはずです(アフィ使ってる理由の半分くらいはこれ)。画像のURLとってくるのにはAmazonShというソフトを使ってますが、これは多分もっと楽な方法がある気が。ちなみに、bk1の画像使うのにも、やはりアフィリエイトに参加する必要があるみたいです(でるたさんのページ参照)。はてなだとアフィリエイト使わなくてもamazonもbk1もリンク張れると聞いたことがありますが、試したことないのでこの辺の詳細は不明。
 結論としては、サイト立ち上げた後にアフィ申し込めばOKです。立ち上げ頑張ってくださいー。


【今日読んだ本】

眠れ、蒼く深き海の底 幻獣降臨譚 (本宮 ことは/講談社X文庫ホワイトハート)amazon

 
 
《あらすじ》
 ケルベロスの契約の門から飛ばされてしまったアリアがたどり着いたのは、なんと絶海の孤島だった!人里へもどる道をさぐるアリアは、深海の底に眠る幻獣、リヴァイアサンと出会う。そこで再び意識を手放したアリア。はたして、どこで目覚めるのか!?一方、ライルとシェナンは密かに再会を果たし、互いの道を確かめ合うことに。シュータン帝国との開戦のさなか、それぞれの想いが交錯する!


 アリアがどこかに飛ばされてさあどうなる?、な「幻獣降臨譚」第12巻。
 『次巻あたりに人死にまくりのえぐい展開が待ってそう、シェナンその他はどう乗り越えるんでしょうか。』(前巻の感想から引用)
 そんな展開はありませんでしたとさ、見通しが甘すぎです自分。いやでも、いい加減もう少し話進んでもいいと思うんですよ、ここ数巻ディクスがひたすら黒化してたりでじりじりとしか話動かなくて大分焦れてきました。普通に面白くはあるんですが、惨劇の予兆がずっとあるだけに「まだかー!」という気持ちが強いです。
 でも、この巻に関してはシェナンにとてもときめいただけで満足でした。ここ数冊でメキメキとかっこよくなってきた彼がついに本領発揮。自分の立場を完全に理解した行動の数々にライルも気圧されるほどの迫力、当初の傲慢王子がよくぞここまで、と感慨深い気持ちになります。アリアへの恋心の描き方も素晴らしいですね、「最初で最後の……」にはやられました。アリアもシェナン意識しはじめたし、シェナン×アリアがいよいよ現実味を帯びてきてシェナン派としては歓喜、これでシェナンルート行かなかったら叫びます。
 あとがき見る限り、次巻では色々と動いてきそうですね。まだディクス大活躍まではいかなそうですが、アリア帰還でどうなるかが楽しみ。


評価 ☆☆☆(6)



薔薇のマリア Ver5 つぼみのコロナ2 (十文字 青/角川スニーカー文庫)amazon

 
 
《あらすじ》
 あの人と会われるんですか? コロナがレニィに発した一言。“あの人”が誰を指すか、レニィはすぐに理解した。しかし、それだけでなく、攻撃的で、恨みがましくて、それでいてすがるような、何とも言いがたい輝きに揺れているスミレ色の瞳。かすかに潤んだコロナの目に、レニィは怯んでしまい……。少しずつ、少しずつ、距離を縮めていく2人。天然系魔術士コロナと孤独な少年レニィの物語、完結編。ついに登場!


 本編の脇キャラであるコロナを描いた薔薇マリ外伝「つぼみのコロナ」完結編。
 うわ、ラブラブだー。レニィもコロナも薔薇マリらしく悩んではいるものの、本筋は薔薇マリらしくない王道ラブでびっくりです。1巻読んだときは2人ともあまり好きになれず「これなら本編読みたいなあ」と思っていたんですが、コロナが大分普通な女の子に見えたし、恋する男の子として奮闘したりうろたえたりするレニィがなかなかかっこよく、この2巻は読んで良かったです。レニィは薔薇マリキャラの中で一番真っ当な男の子だなあと思ったり。こういうラブが本編で読める日もいつかきてほしいですが、アジアンもルーシーも変態だからなあ……。アジアンはここでも変態扱いでしたし。
 2人以外ではなんといってもサトー×権堂コンビ。ダメクラッカーの典型なサトーみたいな奴の内面もがっちり描くのが十文字さんらしいなあと思います。内面読んでもダメ人間なのに変わりはないんですが、でも人間味あるダメに見えるようになりました。バカ正直な権堂とはうまい具合に噛みあってるんでしょうね。ところでレニィが気にしてましたが、この2人ってどっちが攻めでしょう? レニィはサトー攻めにしてましたが、サトーは受けだと思うのです。
 あと、本編で出てきた人たちのその後が分かる番外編らしいサービスは素直に嬉しいところ。ただ、このシリーズ登場人物多すぎて、彼らの印象があまり残ってないのが少し残念でした。薔薇マリwikiがあったので見てみたら、誰これ、って人も結構いました……。
 次は12巻、の前に「純潔ブルースプリング」が出そうですね。数年前から気になっていた代物がとうとう発売、どんな話なんでしょうか。


評価 ☆☆☆(6)



 
 7月7日(火)


【今日読んだ本】

フリンギーの月の王 よかったり悪かったりする魔女 (野梨原 花南/コバルト文庫)amazon

 
 
《あらすじ》
 マダーがスノウ王女の逆鱗にふれたため、フリンギー遠征を命じられたアザー。アザー、マダー、ポムグラニット、カイの4人が城館に少年ルリを訪ねてから数日後、影の軍勢がアザーたちを襲う!


 野梨原さんの魔女ファンタジー「よか魔女」佳境の第5巻。感想うまくまとまらないので、久々に箇条書き形式でお送りします。

・男爵があらすじだけの役割でちょっとかわいそう、「ストーリー分からなくなってきました」みたいなお便りでもあったのかなあ。
・アストレアが大きな存在になってきてびっくり。ずっとやられ役だと思ってたのに! でも相変わらず嫌な奴です、軍勢きたときのポムグラの無力感はずしりときました。
・そのポムグラ、ピーターラブな気持ちの募り方にワクワクが止まりません。
・「あなたが結構好きよ。だから、勝手に幸せになってほしいの」「今までのあなたのつらさより、私とあなたが出会ったことの方が大事だな」(一部抜粋)こういうのが野梨原さんだなあと。ルリにそれ言うマダーは凄い。
・アザーはとても分かりやすいのに、マダーはとても難しい。傷ついたときと無敵なときのギャップが大きすぎて理解できなくてグルグルしました。鈍感なのは間違いないんですが。
・このシリアスな流れでチェインバーレンさんですか! いいセンスしてますほんと。
・「あなただって大差ないわよ」には噴きました。マダー自覚ないんだ! しかしポムグラとマダーの関係はいいなあ。言葉で表すなら親友が近いんだろうけど、ちょっとずれてる気もします。
・真相はさっぱり分かりません。提示された情報は揃ってそうなんですが。
・上の色々を全部さしおいて、この巻の主役はカイでした。この夫妻を主に持ってよく頑張った。

 全体的に、変わりゆく予感と過程が切ない巻でした。残り1冊は週末読む予定。


評価 ☆☆☆☆(8)



罪と楽園の香り 白銀の民 (琉架/講談社X文庫ホワイトハート)amazon

 
 
《あらすじ》
 白銀の民・イオは、育ててくれた船長や仲間の命を、助けられなかったことがトラウマになっていた。自分が持つ精霊と話し、癒しの能力(ちから)を海兵隊のために使いたいと願うイオだったが、隊長のジクルスは、危険なことはさせたくないと認めず、2人の気持ちはすれ違いのままだった。そんな折、港街で次々起こる変死事件。イオは謎の解明に1人で動きだす……!!


 不思議な力を持った男装少女が主人公のファンタジー「白銀の民」第2巻。
 ああ惜しい、惜しいなあ。2巻になって待望のラブ寄せがはじまったんです。犬タイプな男装少女と一回り年上の青年の関係が、親子的なものから次第に愛情に変わっていくとかとてもツボなんです。なのに、はじまった途端に終わってしまうなんて……。イオ→ジクルスの恋心が描かれることのないまま打ち切りなのが残念すぎました。イオにめろめろ(死語)なジクルス見てるだけでも楽しいんですが、メインは逆方向だと思うのです、ほんと惜しい。
 おまけに、打ち切りで急ぎすぎたせいか、2人の心がすれ違う過程に無理があるように見えました。2人ともどうしてそう思ったり行動したりするの、という箇所がちらほらと。特にジクルスの嫉妬や八つ当たりは引っかかりました、もう少し理性的に行動できる人だと思うんですが。その辺が気になりだすと、ぎこちない文章とかも気になってしまって悪循環でした。じっくり書いていればこうはならなかったと思うだけに、重ね重ねもったいないです。
 改めて次作に期待といきたいところですが、ホワイトハートは2冊切りが多いのが不安、ちゃんと出てくれますように。


評価 ☆☆☆(6)



 
 7月5日(日)


【今日読んだ本】

紅の勾玉 〜姫君の幼馴染は陰陽師〜 (大槻 はぢめ/ティアラ文庫)amazon

 
 
《あらすじ》
 二人の天才陰陽師が世を去って数年。都では《闇》の魔物が蠢きはじめているけど、帝の姫君・桜子は大丈夫! だって幼馴染には天才の血をひく若き陰陽師――ぶっきらぼうな光彰と、優しくて美形の泰雅兄さまがいるんだから。むしろ悩みは16歳になっても、殿方から恋文がまったく来ないこと。そんなある日、素敵な文が桜子の元に。送り主は誰? もしかして――!? 平安風恋絵巻。


 Hあり乙女系のティアラ文庫創刊第2弾、まずは帝の姫君が主人公の平安物。
 また晴明の孫か! タイトルろくに見ずに全買いしたので、読み始める段になってはじめて陰陽師の文字を見つけて「ぎゃー」となりました(陰陽師物苦手)。いや事前情報いれてないのが悪いんですが、でも晴明の孫なんてヒット作ある設定持ってこなくても……。
 と設定的には好みでなかったもののそれなりに楽しめました。優しいお兄さんタイプと素直になれない少年タイプ、2人の幼馴染兼陰陽師に囲まれた三角関係な話なんですが、2人に囲まれた主人公が、まるで8〜90年代の少女小説のようなテンション高い一人称使い。このおかげで、現代物と同じノリで読むことができたのが大きかったです。
 でも、この話の主役は素直になれない方の幼馴染の光彰。お兄さんな泰雅に恋心を抱いたつもりになっている鈍感主人公に対して、諦めずにアタックをかける彼の努力には涙を禁じえません。夜這いをかけたのに、暗闇の中で主人公がお兄さん幼馴染の方の名前を連呼したときはもうどうしようかと。この主人公の鈍感さは思わず殴りたくなるくらい罪です。光彰よく心折れずに頑張った。ちなみに、H度は夜這いを除けば普通。
 ただ、ストーリーが序盤でバレバレな割にページ数が多くて少し間延び感がありました。その辺りがなければなおよかったです。


評価 ☆☆☆(6)



黒椿姫 〜雷鳥の暗殺者と公爵令息〜 (魚住 ユキコ/ティアラ文庫)amazon

 
 
《あらすじ》
 殺すのも愛すのも同じこと――。自分の命を狙ったことで処刑されるはずだった暗殺者レイフェンを、従者として雇った王女エルダ。暗殺者と暗殺対象の奇妙な生活が続くなか、腹黒で野心家の公爵令息ヒースコートがエルダに求婚! 強引にエルダを奪おうとする彼の前に、なんとレイフェンが現れて――!? ベストセラー作家・魚住ユキコ、初の完全オリジナル長編小説がついに登場!


 続いてティアラ、QuinRose系のノベライズを書いている魚住さんのオリジナルデビュー作は、王宮ラブファンタジー。
 今月の当たりはこれ、良い主従ラブでした。幼い頃から命を狙われ続けたために人間不信気味な王女と元暗殺者の従者が、王女の婚約者が現れるのを機に距離を近づけて――、というお話。孤独な姫様と無口な従者というメインカップルが結構ツボな上に、全体的に色っぽい雰囲気が漂っているのがとてもよかったです。元々2人だけの世界を築いていて微妙に退廃的で、さらに婚約者も色気出していて、そのおかげでエロスなシーンが挟まるのが自然だし、普通以上にエロさを感じました(キスだけでも他作品の本番なシーンより淫靡)。エロくて気持ちも通じ合って、こういうティアラ文庫ならではの作りは好感持てます。
 また、婚約者がただ色気出しているだけでなく、腹黒爽やかでなかなかに嫌な奴で、「こっちじゃなくてレイフェンとくっついて!」という気持ちを沸き立たせてくれるいいキャラでした。これくらい腹黒貫いてくれると気持ちいいです。
 意外な展開に驚かされたり、ラストも綺麗に締めてあったりとストーリーも期待以上で、続いてくれなかったのが残念なくらい。ティアラは続き物出さないんでしょうか、結ばれた以降の話があっても面白いと思うんですが。


評価 ☆☆☆★(7)



ガーディアン・ガーデン 〜乙女の守護者〜 (時田 ゆか/ティアラ文庫)amazon

 
 
《あらすじ》
 凛の命を救ったアズラエル――人間を遙かに凌駕する戦闘能力と美しい容姿を持った種族『半綺』の青年。半綺は母親の仇、そのうえ彼は軽い性格のプレイボーイ。最初はアズラエルへの反発を抑えきれなかった凛も、秘められた優しさを知るうち徐々に惹かれていく。だがその想いは、彼と敵対する組織に気づかれ、凛は誘拐されてしまう――! 超人気少年マンガ家meets乙女系小説!


 もういっちょティアラ、ライターさんの小説デビュー作(?)。読んでから知ったんですが、乙女ゲー「Bloody Call」のスピンオフ作品らしいです。
 うーん、これは合いませんでした……。設定や世界観が凄く適当で、始終置いてけぼり感が強かったです。「半綺」という戦闘能力をもった人間みたいな存在と人間の共存を目指した街が舞台なんですが、「半綺」がどれくらい人間と異なる存在なのかが場面場面で違っていて全然分からないし、多くの半綺が所属してるらしい「NEDE」がどういう組織なのかも全然説明されないし、そもそもこの街でどう共存を目指しているのかもさっぱりだし、いくらなんでもこれは雑すぎ。そのせいで、半綺に母親を殺された主人公の恨みなども伝わってきませんでした。スピンオフと知って、設定がやたら適当なのは借り物なせいかと凄く納得。
 話の展開も「なんだかなあ」と思う箇所が多め。序盤の出会いのシーンで「え、そこでこっちくるの?」とあっけにとられたり、クライマックスの敵の行動があまりにお粗末だったり。Hシーンも1回だけで見所なし。主人公の気の強い性格は嫌いじゃないんですけど、いかんせんその他のマイナスが大きすぎました。
 これだけ外れだと思ったのは久々、やっぱり全買いは怖いです。


評価 ☆★(3)



 
 7月4日(土)


【今日読んだ本】

鳥籠の王女と教育係 永遠の恋人 (響野 夏菜/コバルト文庫)amazon

 
 
《あらすじ》
 王女エルレインの呪いが半ば解けた矢先、父王が病に倒れた。教育係のゼルイークは、背後に魔物の気配を察知した。エルレインを呪った魔物の矛先が父王に向かったのだ! だが頼みのゼルイークには秘密が!?


 カエル化の呪いがかけられた少女とその教育係な魔法使いが主役の毒舌魔法ファンタジー「鳥籠の王女と教育係」第3巻。
 これ絶対に打ち切りも想定したストーリー展開ですよね……! 前情報とあとがきがなければ「あー3巻打ち切りか」と間違いなく思い込んでました、並の打ち切り作品よりも綺麗にまとまってます。ダナークやらここ最近のシリーズが頭にあったからこういう構成にしたんだろうなあ、シビアで切ない、打ち切られなくてよかった。
 で、内容の方は、そういう背景もあったためか見所満載で面白かったです。まさかのカエル増殖には爆笑しましたし、ゼルの過去告白からはじまる一連のシーンは胸キュンでした。信頼が前提にある舌戦はとてもよいものです。アレクセルもいいけど、続くならなんとか現世でレーンとくっついてほしいなあ。
 2巻で出てこなくてどうしたんだろうと思っていたローリオは、登場したと思ったらあえなく撃沈。素直になれなかった彼も悪いとはいえ、1巻の時点ではもう少し対抗馬としての仕事すると思っていただけにちょっとかわいそうな役回りでした。あと全体的にイラストがいいです、眼鏡レーンにはやられましたし、カエルも卑怯。この絵師さんでよかったです。
 エピローグがアレクセル×オルフェフラグに見えなくもないですが、おそらく気のせい。この先どういう展開を見せるんでしょうか。


評価 ☆☆☆☆(8)



妖精王の月 (O.R. メリング/講談社)amazon

 
 
《あらすじ》
 そなたの答えがノーでも、彼女の答えはイエスだ。わたしは〈人質の墳墓〉から花嫁を連れていく。フィンダファーを寝袋もろともさらいあげると、妖精王は塚山から去った。タラの丘の〈人質の墳墓〉でキャンプした夜、別の世界にあこがれるいとこ、フィンダファーが妖精王にさらわれる。翌朝からグウェンのいとこを連れもどす旅がはじまる。妖精たちとの絶妙な出会いに助けられながら。だがケルトのフェアリーランドは、グウェンにとっても魅力ある世界だった。カナダの青少年がその年、一番おもしろかった本を選ぶルース・シュワッツ賞の1994年度受賞作。


 先日「ヘルメハイネ〜」を読んだときに、「井辻さんならこれもいいですよ」とお薦めいただいたケルトファンタジー。井辻さんが翻訳をされている作品です。
 これはヘルメハイネ以上に好みな少女小説ファンタジーでした。妖精にさらわれた女の子と、彼女を助けるために冒険を繰り広げる女の子を描いた物語。メインとなるのは冒険部分なんですが、その過程で出てくる妖精の世界が、時に逃げ帰りたいくらい残酷で、時にずっと暮らしたいくらいに美しくて、その二面性にグウェンと共に魅了されました。また、アイルランド全域に妖精を信じている人やそ妖精ゆかりの場所が結構残っていて、現実にフェアリーランドが根付いているのがよく分かるのも面白いです。
 そうしたファンタジー的な面だけでなく、冒険を通して成長したり恋をしたりといった少女小説的な面もよかったですね。フィンダファーを求めてアイルランド全土を駆け巡るグウェンの冒険は先読めなくてそれ自体がワクワクしたし、行動派ではない彼女が妖精の罠に何度もかかってへこたれつつも進む姿はかっこいい。さらわれた当初は夢見がちで軽率なところがあったフィンダファーも、恋をした後は女王としての自覚をもった素敵な女の子になってました。そもそも、最初の2人の語らいからして少女冒険小説の雰囲気が溢れているので、そういう話が好きな人にはとてもお勧め。
 ただ惜しむらくはラスト、7人集まるところまではよかったんですが、そこからの幻想的な光景にはヘルメハイネの時と同様にあまりついていけず。さらにその先に待っていた予想外の展開がとてもご都合主義に見えてしまって、最後だけはしょんぼりでした。
 でもそれまでの素晴らしさは損なわれないですし、読んでよかったです。続編みたいなものもあるらしいので、そのうち読んでみるかも。


評価 ☆☆☆★(7)



 
 7月3日(金)

 昨日書き忘れましたが、神の棘延期情報ありがとうございましたー。今月買うもの多いのでちょうどよかったです。


【今日読んだ本】

芙蓉千里 (須賀 しのぶ/角川書店)amazon

 
 
《あらすじ》
 明治40年、売れっ子女郎目指して自ら人買いに「買われた」少女フミ。満州はハルビンの地で、新しい人生が始まる。コバルト文庫の看板作家が満を持してオトナ女子におくる、ハイパーガールズエンタメ!!


 須賀さんの新刊は、ハルビンの女郎屋に自らすすんで買われた少女の人生を描いた物語。携帯で連載していたものの書籍化のようです。
 まあ、須賀さんがこのあらすじでお話を書いて、面白くないわけがないですよね。「女郎になりたい」と宣言するフミの、溢れる可能性を感じさせる姿に非常にワクワクし、そこから一気に読んでしまいました。フミだけでなく女郎達1人1人にドラマがあり、女郎屋の光も闇も全部描いてあって面白かったです。ネタバレしないと感想書きづらいので以下反転。
 まずインパクトあったのがお蘭姉さんの死ですね。フミ視点で読んでいて完璧に見えていた人で、死ぬとは全然思っていなかったのでびっくりしたし喪失感もたっぷり。理由も理由だっただけに女郎屋の闇をとても感じさせられて、グイっと惹きこまれました。
 で、さらに驚かされたのがタエ。正直、タエは途中で狂って死ぬんだと思ってました。舐めてました甘かったですごめんなさい。フミの影響を隣で受けてきたにしろ、ここまで成長するとは完全に予想外、女将を前にして一歩も引かないタエはフミと同等かそれ以上にかっこよかったです。
 恋愛方面は、最後の決断はフミならそうするだろうなという感じで予想通りではありました。でも、少女時代視点での山村さんの存在は絶対だったし、それ以来ずっと心の支えであったことが窺えるので、その彼を振り切れたフミはやっぱり素敵だなと思います。黒谷とは恋は生まれないかもしれないけどそのうち夫婦にはなるんでしょう、そう予想させてくれるいいラストでした。

 須賀さんはさすがだなと再認識しました。今連載されている外伝もタエのかっこよく恐ろしい姿が見れてよいものです、読んでない人はこちらもお勧め。


評価 ☆☆☆☆(8)



 
 7月2日(木)


【今日読んだ本】

ドラグーン・デリバリー 〜竜の背はまごころを運ぶ〜 (佐々原 史緒/HJ文庫)amazon

 
 
《あらすじ》
 竜に憧れる女の子コゼット・パースンは、念願であった竜に乗って宅配便事業を行う「ドラグーン貨物」に就職することになった。希望に胸を膨らませて配属先にやってきたコゼットを出迎えたのは、問題ばかり起こす不良社員の部下2人、竜騎手のリズとアイリーンだった。竜に乗った宅配便屋さんが届けるハートフル・コメディ!


 数少ない確定著者買い(あらすじ見ずに買う)作家である佐々原さんの新刊は、竜による運送会社が舞台のハートフルファンタジー。
 飛びぬけたものこそないものの普通に面白かったです。竜に憧れるお嬢主人公が、始末書常連な不良社員たちと一緒に竜による運送を行いながら、危険と遭遇したり暖かさに触れたりするお話。主人公は典型的な振り回されタイプの女の子で、オニキスにトパァズに級長にと、癖がある女主人公が多い佐々原さん作品には珍しいタイプ。先に挙げた人たちの方が好みではありますが、お嬢な性格が佐々原さんの丁寧な地の文に合っているし、肝が座ってて好感持てる子でした。あと本筋には全然関係ないですが、相当な耳年増な気がしますこの子。
 お話は、この手のジャンルのお約束をきっちり描いているなという印象で目新しさはなし。でも、ドンパチ好きなリズとがめついアイリーンの不良部下2人組がいい味だしてました。信頼関係を築きつつも無茶苦茶やらかして主人公を振り回す姿が活き活きとしていて、それに主人公がいい反応を返すのが楽しく、読んでいて飽きなかったです。
 売り上げがよければ続き出るかもしれないらしいです、出るなら今回物足りなかったラブ寄せ期待で。
 以下どうでもいい話。脇役の悪いクマさんを見て、鷹の爪(Flashアニメ)の博士の絵が思い浮かびました。あのシュールさ好きだったなあ。


評価 ☆☆☆(6)