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 11月21日(土)



【今日読んだ本】


紫の砂漠 (松村 栄子/ハルキ文庫)amazon

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《あらすじ》
遙かかなたの地平線まで、鷹揚に風の紋を刻んでただただ広がる紫の砂漠。なにかが呼んでいる―砂漠の果てに生まれ、砂漠とともに過ごし、砂漠に強く心惹かれるシェプシは、神の領域であり、禁域とされている紫の砂漠へ思いを募らせる。四つの月を持ち、「真実の恋」によって男女の性差が決定するこの星で、シェプシの冒険がいまはじまる。芥川賞作家・松村栄子がおくるファンタジーノベル。


傑作ファンタジーとの呼び声を聞いて調べてみたら、「生まれた時は中性体で、恋によって性が分化する世界」という惹かれる文字が見えたので手を出してみた作品。

砂漠の描写が鮮やかに伝わってくる物語でした。「真実の恋」に、紫の砂漠に、と独特の世界観の中で、シェプシが冒険し世界を知っていくお話。このシェプシが砂漠と一体化しちゃうくらいの砂漠大好きっ子で、彼女の感じる砂漠の美しさや一体化したときの開放感の描写が凄かったです。砂漠関連だけで読んでよかったと思うくらい。こういうとき、うまく伝えられない語彙のなさが悔しい。

世界の謎が次第に明かされていく過程も面白かったです。根幹設定自体はそれほど珍しくないんですが、神話の裏に隠された思いはこの物語ならでは。思いの切実さが伝わってきたし、こういうジェンダー的なネタは好き。知識欲旺盛なシェプシが謎を知って考えをめぐらすのが楽しそうで、するすると内容が頭に入ってくるのもよかったです。

残念だったのは、中性体と聞いて期待したよりはロマンチック度合が低かったこと。ある章だけを見ると切なさに胸をしめつけられてよかったんですが、全体を通してみると物足りず。シェプシの詩人への強い気持ちをうまく理解できなかったからかも。あまり世界の謎に踏み込まず、「真実の恋」のみにもっと焦点を当てた話も読んでみたかったです。

続編もあるようなので近いうちに。


評価 ☆☆☆★(7)



グラスハート EX. AGE 楽園の涯 (若木 未生/コバルト文庫)amazon

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《あらすじ》
若木未生の二十歳のデビュー作「AGE」に登場する高校生の高岡尚。そして大学生になった彼と、藤谷直季との運命的な出会いを描く「楽園の涯」。「グラスハート」の世界が一望できる短編集。


久々のグラハ、デビュー作を含む短編集。

「なんとなく分かるけど、分からない」短編たちでした。本編と同じように感情をダイレクトに切り抜いてきたような文章なんですが、視点が違うせいで分からない度合が段違い。感情を揺さぶってくるのは同じでも、西条視点だと分かったつもりになれるのに対して、尚視点なんかは分からない、うまく咀嚼できないままのことが多かったです。まだ3巻の坂本視点の方が分かりやすい。いただいたメルフォによれば、三人称の話だとさらに分からなくなるらしいです。西条視点って偉大だ。

なので、内容についてはうまく語れません。でも、この頃の尚があまり好きじゃないのは確か、ちょっと尖りすぎ。この頃と本編で内面どれくらい変わってるんだろう。あと、井鷺さんがこの頃はまだまともそうなのを見て、それからの変化を思い浮かべてしょんぼりな気持ちに。誰が悪いわけでもないからなあ。朱音視点だと大して何も思わなかったのに、尚視点だと同情したくなったから不思議。

次は本編に戻る……ってあれ? 順番間違えてる? 5巻読み始めて「あ、短編の方が先か」と思ってわざわざ取り替えたのに。あー、うん、たまにありますよね。次は5巻。


評価 ☆☆☆(6)



 
 11月17日(火)

 相変わらず、本を読まないとパッタリ更新が止まるサイトです。しばらく不安定更新になりそうです。


【今日読んだ本】


魔法の材料ございます2 ドーク魔法材店三代目仕入れ苦労譚 (葵 東/GA文庫)amazon

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《あらすじ》
ドラゴンの鱗も無事入手できて、お店に束の間の平穏が訪れました。でも、一難去ってまた一難、旦那様の身にまた難題が降りかかります! 赤熱病。わたしの両親を奪った、流行病です。治療に尽くす旦那様を見て、わたしも少しでもお役に立ちたい、そう思って行動したのですが。
突然、知らない人たちに草の上に放り出されました。両手は後ろで縛られ、猿ぐつわを噛まされています。し、しかも、わたしのことを、しょ、処女かって、そ、そんなこと聞いていったいどうするんですかーー!
攫われたリア=メイさんも窮地に陥るなか、希望はもう旦那様だけです。どうか旦那様とわたしたちに、幸運神のご加護がありますように。


魔法屋ファンタジーではなく、冒険時々女の子1人称なファンタジー「ドーク村(以下略)」第2巻。

サシャかわいいよサシャ。
1巻に引き続きサシャが素晴らしい子でした。相変わらずお留守番役の彼女ですが、今回は自分から行動を起こした姿から、三代目への愛情が伝わってきてよかったです。そして、その想いが三代目に通じたことが本当によかった、三代目えらい。暖かい中にラブが生まれそうな予感が微笑ましくニヤニヤできました。

一方のリア=メイ、こちらも相変わらず。でも出番も減ったし、1巻よりうっとおしさは大分減っていて何より。前半で好感度上げようと色々フォローされているのには納得できませんでしたけどね。聡明で増長してるだけの姿とは一線を画してましたよ1巻の彼女は……。

その分、敵役にいらつく人が多かったです、特に商人のタトラ。人命の二文字が全く脳裏に浮かばないのはとても怖かった。せめて虫けらに思ってくれた方がまだマシでした。

対立構造もはっきりして、そろそろ過去が明かされていくんでしょうか。サシャとの関係が進展しますように。


評価 ☆☆☆(6)