2月12日(土) |
【最近読んだ本】 ◆ ウィザーズ・ブレイン VIII 落日の都 〈中〉 (三枝 零一/電撃文庫) 【amazon】 《あらすじ》 シティ・シンガポールと賢人会議の歴史的同盟締結を前に、凶弾に倒れてしまった参謀の真昼。厳重な警備が敷かれた病院に真昼は収容され、刻一刻と調印式の時間が迫りつつあった。様々な勢力の思惑が渦巻き、反対派が更なる妨害工作を仕掛けるなか、果たして調印式は無事執り行われるのか? 真昼の描く魔法士と人間が共存する未来の行方はどうなるのか!? そして、その一方、賢人会議の代表・サクラは、ウィッテンが書き残し真昼が隠していた地球を覆う「雲」を除去する方法を知ってしまう……。いよいよ佳境へと進む『ウィザーズ・ブレイン』、第15弾! シンガポールを舞台に各勢力の駆け引きが繰り広げられる「ウィザーズ・ブレイン」第15巻。 このシリーズは自分の中では別格だなあと改めて思いました。 序盤、今後の相談のために各シティの面々が一堂に会した場面、これがもう楽しくて。久々の対面がこんなにたくさん、その事実だけでまず嬉しくなり。そして、子供たちが感情フルスロットルだったり、少し大人な面々も感情表に出したりしていて、みんなかわいすぎ愛しすぎ。ファンメイのクレアへのツッコミがナイスすぎる! 月夜とクレアのひねくれお姉さん同士はいい友人になりそう。 残りの大人4人の会談も、この面々が会話しているというだけでテンション上がる上がる。さすが歴戦の面々、みんな鋭い。集結したキャラクターたち以外も大好きで、おまけに新登場の脇役たちもかっこいいからテンション下がる暇がなくて、ウィザブレ大好きだと改めて思った次第です。ソフィーとメリルにまで心持っていかれるとは! そんな大好きな面々の中でも、今回のメインは真昼とサクラ。真昼の内面が描かれて、サクラとの出会いがそんなに素敵なものだったことにグッとなり、その後のサクラの成長を見て、真昼よかったなあという気持ちに浸りました。 大気制御衛星はそうきますか、そしてサクラだけ知りますか、えっぐい。でも今のサクラなら悪いことにはならないって信じられます。ただ、こうして情報が伝わって、プレゼントがあって、終盤が不穏で、これ真昼が死ぬんじゃ? と心配になります。せっかく無事に両想いになれそうなのにやめて! それにしても真昼の朴念仁っぷりは救いようがないですね、これがわざとじゃないとかひどい。でもサクラがかわいいから許します。 あと今回輝いていたのが、脇役勢、特に中尉。エピソード7のフェイですら、人間の身で魔法士と戦うなんて、と思わされたのに、今度はただの人間ですよ。ただの人間が凄い面々に大博打ですよ、なんてかっこいい。この中尉さん、行動原理は1巻の錬と似てるんですよね。となると錬と中尉の対峙が見たかったですが、それはなさそうなのが残念。今回は錬いいところなかったので、下巻では神戸軍との間に何らかの答えを見せてくれるといいです。 さて、今年中に続き出るでしょうか。自分は出る方に賭けます、ここから1年も開けるなんて非道、さすがにあるわけがない。 評価 ☆☆☆☆★(9) |
2月9日(水) |
【最近読んだ本】 ◆ バンダル・アード=ケナード あの花に手が届けば (駒崎 優/C★NOVELSファンタジア) 【amazon】 バンダル・アード=ケナード 故郷に降る雨の声(上)(下) (駒崎 優/C★NOVELSファンタジア) 【amazon】 《あらすじ》 それは最低の戦いだった。雇い主の過失により多くのバンダルが壊滅状態に追い込まれたのだ。シャリース率いるアード=ケナードも例外ではなかった。傭兵隊としての体裁を繕うのも困難なほどの損失―。他のバンダルの生き残りも収容し一行は進軍を続ける。だが行く先々で敵軍が待ち伏せていた! この中に裏切り者がいるのか!? 彼の決断に隊の命運がかかっていた。 傭兵隊のおっさんたちが苦境に陥りつつも切り抜けていく様を描いた「バンダル・アード=ケナード」の第2話と第3話、借りてきて3冊一気読み。 構成うまいなあと唸らされました。 毎度毎度シャリースたちの雇い主は面倒事を引き連れてきて、この運の悪さはひどいなあと思ったりするわけですが、お話の方は、隊にいる裏切り者は誰だろう、この苦境をどう乗り切るんだろう、と色々気になって先を読みたくなる作りになってます。特に、第3話の多視点での進め方がうまいなあと思いました、ころころ視点が変わるのに混乱することなく読みやすかったです。多視点なお話って後半畳み掛けてくるものが多いですが、これはそうではなくて満遍なく驚き混ざっているのがよかったのかも。味方だけでなく悪役も予想外の出来事に悩まされたりするのも珍しくて面白かった点、下巻の敵さんには結構同情したり。相手の数がたまたま倍増しているとかなんたる理不尽。 もちろんキャラクターたちも読みやすさに一役買ってます、おっさんだらけなのにあまりムサさを感じないのは多分シャリースのおかげ。隊をまとめているあたりは年の功を感じさせますが、悪知恵っぽく頭が回るところなど、年齢の割に愛嬌があるというか、青年的な印象を時々受けます。あとはチェイスがやっぱり好き、年下の食い意地キャラとかとても和みます、空気の読めなさがさすが。でも女装イラストはアウト、壊滅的に似合わない! 苦境の割に被害は今まで少なめでしたが、第3話では厳しい展開も。見事な死亡フラグ回収……は冗談として、サブタイトルにもある故郷への想いにしんみり。傭兵生活と静けさのギャップが胸にきました。 以下余談。本編以外のところでトラップが多いこのシリーズですが、上巻のあとがきにまた騙されました。さすがに嘘予告だろうとは気づきましたけど、そんな次のページあるとか! 騙されません次こそは。 評価 ☆☆☆★(7) |
2月7日(月) |
【最近読んだ本】 ◆ 平安ロマンティック・ミステリー 嘘つきは姫君のはじまり 少年たちの恋戦 (松田 志乃ぶ/コバルト文庫) 【amazon】 《あらすじ》 宮子の秘密に気づき、真相を究明しようとする次郎君と、宮子の帰りを待つ真幸。ふたりは偶然、文殊丸の住む邸で「名刀」をめぐる騒動に巻き込まれてしまう。初めて顔を合わせた二人だったが…!? サブタイトルがとても期待を煽る、偽者姫様の平安ラブミステリー「嘘つきは姫君のはじまり」最新刊。 次郎君が今まで以上に好きになりました。 前巻で宮子がいなくなって、きっと次郎君のことだからすぐに追いかけるのかと思いきや、意外に落ち込んでいたのにびっくり。口説き攻勢が凄いのですっかり忘れてましたが、次郎君も子供だったんですよね。宮子のために大人になっていくのに今まで以上の真剣さを感じて、ますます次郎君派になりました。父母との対峙での、大人になりきれていない懸命な姿が印象的。 そういえば味方も全然いないもんなあと思っていたら、心強い味方ができたのもよかったです。宮さまはそんな役回りだけど、五節の君と結構お似合いなようで何より。 タイトルにもある恋戦は、結果がほぼ分かっていても切なかったです、真幸の選択は次郎君派でも文句なしにかっこよかった。でも今巻の真幸はいけないところもあると思います、有子様に対してかっこよすぎる。「優しさは罪」という言葉がぴったり、有子様の恋が加速しちゃうに決まってるじゃないですかこんなの。どうなるんですかこの恋……。 いつも楽しませてくれる脇役勢は今回も健在、特に鹿子と姫子のチビっ子勢が和ませてくれました、メインキャラ世代はこの子たちに勝てる気がしません(馨子様除く)。鹿子のたくましさはシリーズ通してかなり好きです。 問題は起こりつつも一安心かと思ったらひどい引き。次は夏ですか……悪魔婿も好きなんでいいですけど! 評価 ☆☆☆☆(8) |
2月5日(土) |
【最近読んだ本】 ◆ 風が強く吹いている (三浦 しをん/新潮文庫) 【amazon】 《あらすじ》 箱根駅伝を走りたい――そんな灰二の想いが、天才ランナー走と出会って動き出す。「駅伝」って何? 走るってどういうことなんだ? 十人の個性あふれるメンバーが、長距離を走ること(=生きること)に夢中で突き進む。自分の限界に挑戦し、ゴールを目指して襷を繋ぐことで、仲間と繋がっていく……風を感じて、走れ! 「速く」ではなく「強く」――純度100パーセントの疾走青春小説。 ちょうど今年の箱根駅伝がやっている頃に感想を見かけて気になった、三浦しをんさんの青春小説。 駅伝っていいな! ハイジという名の青年が、走という凄いランナーとの出会いを経て、ボロアパートの他の住人たちを巻き込んで箱根駅伝を目指すことになる物語。読み出して設定を理解したときには、「いや、素人たちがたった10人で1年で箱根はさすがに無理あるんじゃ」という思いで一杯でした。 ですが、読んでいくうちにそんな気持ちはどんどん消え、彼らの挑戦に夢中になっていきました。団体スポーツで一つの目標に向かって努力していくというのはそれだけで心を熱くさせてくれますし、ハイジの指導法が皆の心をつかんでいて、苦しんだり衝突したりしつつも力をつけていく様子は、どこまで行けるんだろうとワクワクさせてくれます。 外せないのがハイジと走の関係。ハイジの夢と強さにうたれて、心に傷を負っていた走の走りが前向きに力強くなっていくのが眩しい。キリッとしてて監督も務めるハイジはほんとにかっこいいので、走の気持ちがよく理解できます。走のハイジへの憧憬は下手すればBLですが、そうならない程度に収まってました。 そして、駅伝本番の描写が凄かったです。10人それぞれの想いを描きながらタスキが繋がれていく様子は、走る彼らの息づかいが感じられて、何度も息が詰まりそうになりました(双子みたいに和ませてくれるキャラもいましたけれど)。中でも一番好きなのはニコチャン。頑張ってもどうしようもないことはあって、でも走りが好きならいいんだと気づいた彼の姿は、切なくもとても祝福したくなるものでした。 苦しくて孤独でも、他の気持ちも与えてくれる。長距離って、駅伝っていいなと思わせてくれるお話でした。三浦さんの小説を読んだのははじめてでしたがさすが。別作品のお勧めも受けたので、それほど開けずに読むつもり。 評価 ☆☆☆☆(8) |
2月2日(水) |
Vanilla Letterさんで少女小説人気アンケート調査の結果が発表されました。金星特急はさすが、最近手を出した人も結構見かけて、概ね好評なようで嬉しい限り。夢の上が票集めてるのも嬉しかった、そうですよね少女小説ですよね! 他にも上位に納得したり入れられなかったあれこれに票が入っているのに嬉しくなったりと見所たっぷり、こういう面白い企画を毎年続けられているのに感謝です。 自分が投票したものを書いていなかったので、書影だけペタリ。年間ベストと入れ替えようか凄く悩みました、ほんと10票欲しかった。 【最近読んだ本】 ◆ 風にもまけず粗茶一服 (松村 栄子/マガジンハウス) 【amazon】 《あらすじ》 小次郎だって武蔵だって、きっとこんなところで人知れず修練したにちがいない。男には、そんな孤独な時間が必要なんだよな。ああ、なんか、今、俺、カッコイイかも。(本文より)ようやく茶の湯に目覚めた友衛遊馬(19歳)が目指したのは、なぜか比叡山延暦寺の一山〈天鏡院〉。お茶嫌いの住職がいるとも知らず、武家茶道家元後嗣の遊馬はその門をくぐるが…。青年茶人が茶の湯に挑む大傑作青春エンターテインメント。 堅苦しいのが嫌で家出した茶道の家元の嫡男が、京都で変人や文化に触れていくコミカルな青春物。先月読んだ「雨にも負けず粗茶一服」の続編です。 遊馬かっこよかった! 続編を読むにあたって、「雨にも〜」の最後で一皮向けたところを見せた遊馬が本物かどうか不安でしたが、ちゃんと本物でした。偉い住職をクソジジイ呼ばわりしたりと遊馬らしさを残しつつも、ろくでもないいい加減さは薄れていて今回は全然不快に感じず。本質を掴むだけでなく茶や武道にも向き合う姿勢も感じられて、弓の大会での落ち着きはかっこよかったし、橋の上での茶で気づくところなどではハッとさせられました。そして、ラストでの1巻はじめとの対比が、とても感慨深く気持ちいいものでした。 また、文化や変人の描写も1巻同様に読み応えたっぷり。特に心に留まったのは茶室の動線、深いなあと頷きながら読みました。天狗の人は予想外。そして佐保ちゃんはもっと予想外。こんな大胆なことする子だとは、恋心がかわいいことこの上ないです。遊馬はいい子を選んだなあ。 カンナの恋のその後をはじめ、遊馬の成長以外にも前作で残されていた点が色々と読めたし、いい続編でした。さらなる続編も連載中の模様。翠の複雑な想いの行方が気になるので、いつか単行本化してほしいです。佐保もかわいいし、今から佐保振る展開はないでしょうけど、元々は翠派だったのでこの想いが見れて嬉しかったりも。哲ちゃんは不憫ですが、口の軽さなどを見ると不憫のままでもいいかとも思っちゃうんですよね。つまり哲ちゃんしっかりしろ。 以下は雑談。夏場に調子よかったタイガースがお約束通り失速したかどうかが気になります。失速してて優勝が鯉だったら最高なんですが、まあそれはないですね(鯉ファン)。 評価 ☆☆☆☆(8) |