4月15日(金) |
少し運営変更のお知らせ。当面、感想数を少し減らします。これまでは読んだものは原則全部感想を書いてきましたが、合わなかったものや感想書きづらいものを除く方向で。最近感想書く速度が遅くなっていて、積みも増えているので切り替えることにしました。 なお、書かないものも、読書メーターに読了履歴を残し、Bookshelfにも評価つきで追加するので、もし気になる方がいたらそちらを。 【最近読んだ本】 ◆ レディ・マリアーヌの秘密 (宇津田 晴/ルルル文庫) 【amazon】 《あらすじ》 憧れの騎士の傍にいるために、剣術を学び凛々しく成長したマリアーヌ。けれど、彼が好きになったのは、儚く可憐な乙女で!? 痛い失恋を機に、剣を捨て可愛い乙女になることを決意! 華やかな王宮で意気揚々と乙女生活をスタートさせたマリアーヌだったが、昔を知る騎士やお目付役の存在で前途は多難? さらに、男前な性格が災いし、女性との噂が絶えない第二王子から下僕認定されて!? ドキドキの乙女生活の行方は? 確か昨年末あたりにさりさんが推しているのを見て買っておいた、ルルル文庫の王宮ファンタジー。 ニヤニヤ成分多すぎの危険な本でした! 男前すぎて恋愛対象に見てもらえなかった騎士の女の子が、レディを目指して奮闘するお話。どんな話か全く予備知識なかったんですが、いやー、これはもっと早く読んどくんでした。元々こういう設定大好きな上に、マリアーヌの努力の空回りっぷりの描き方が素晴らしかったです。本人は本気で努力していて、でもその結果は周りのレディ達の頬を染める、このずれっぷりが絶妙。何が悪いのか、本人は気づかないけど読者はよく分かってとてもニヤニヤできました。ルースは普通の小説なら鬱陶しいキャラだけど、ここではいい仕事っぷり。 そしてそれだけでニヤニヤが留まらなかったのがこのお話の恐ろしさ。お嬢様一筋に仕える執事キャラはごちそうです。そこに俺様王子との恋が加わるとかもう! 前半は顔が緩むの大変でした。後半は後半で意外と純情なところがあるロベルトにニヤニヤ、嫌がられたと思って傷ついちゃうくだりが好きです。 ストーリーは宗教団体怪しすぎて力技だなあと思うところもありましたが、これだけニヤニヤ分があれば他は何もいりません。今月の続きも楽しみ、カイルには思う存分ロベルトの邪魔しつつ、さりげなくマリアーヌに迫ったりしてかき回してほしいです。 評価 ☆☆☆☆(8) |
4月13日(水) |
【最近読んだ本】 ◆ 白い月の丘で (濱野 京子/カドカワ銀のさじシリーズ) 【amazon】 《あらすじ》 アインス国に滅ぼされたトールの王子・ハジュン。10年ぶりに幼なじみのマーリィと再会し心通わせるが、征服された国の現状に心穏やかでない。さらにマーリィの元に通うカリオルが、仇であるアインスの王子と知って!? 銀のさじから今年出たファンタジー。前作の「碧空の果てに」がいい男装ファンタジーだったので読んでみました。 良くも悪くも前作と似たようなお話でした。 10年前に去った祖国に帰ってきた亡国の王子ハジュン、支配国にありながら真っ当な気質をもった王子カリオル、2人の王子と知り合いの平民の女の子の3人を中心に描かれる物語。はじまっていきなり2人とも密かな好意があからさまでその全開っぷりに驚いたりときめいたり。誓いの幼馴染との再会のドキドキもよかったけれど、より惹かれたのはカリオルの方。支配国の人間なのに傲慢さが欠片もなく、とことん優しくてとてもいい男でした。なのになんで(以下略 また、主役だけじゃなくて脇役もいいキャラ揃い。特にソンボが光ってました、最初は力の反乱を望まないハジュンのことを軟弱視してたのに、次第にハジュンに感化されて立派な青年になっていくのが素敵。慕う王子に女装姿を見られて動揺する様もおいしかったです。 このようにキャラが良かった一方で、政治面や物語の展開はやや苦手。前作もそうだったんですが、著者の伝えたいことが透けるというか、どうも作られている感があるというか。決してとんとん拍子ではなくて暗めの展開もあるんですが、それでも理想を良く書きすぎに思えてしまいました。まあ「銀のさじ」というレーベルの対象年齢外ですし、この辺合わないのは仕方ないです。とはいえ、2人の王子だけで満足でした。 評価 ☆☆☆(6) |
4月10日(日) |
【最近読んだ本】 ◆ ゴーストハント1 旧校舎怪談 (小野 不由美/幽BOOKS) 【amazon】 《あらすじ》 取り壊すと必ず事故が起きると噂されている木造の旧校舎。高校1年生の麻衣はひょんなことから、調査に訪れた〈渋谷サイキックリサーチ/SPR〉所長・ナルの手伝いをするはめに。そこで彼女を待っていたのは、身も凍るような謎の現象だった。旧校舎に巣食っているのは戦没者の霊か、それとも―? 言わずとしれた有名作品「悪霊シリーズ」のリライト版。小野さん作品は屍鬼以外のホラーが合わなかったので悪霊シリーズは探してこなかったのですが、読んだの随分前だしせっかくリライトだし、ということで読んでみました。 大変面白かったです!! 読み始めて、文体がティーンズハートまんまなのにまずびっくり。もう少しシリアスなのを想像してました。で、うさんくさい霊能者たちが集結しての賑やかな様子を楽しんでいたら、少しずつおかしな現象が起こって、解決したと思ったらやっぱりおかしくて、と緩急つけた描写がかなり怖い。全編通して麻衣視点で描かれるのが、怖い雰囲気をうまく醸し出していると思いました。いかにも好奇心旺盛なだけの普通の女の子で、怖さの感じ方がリアル。ムンクのあたりはゾワゾワっときました。 また、怖いだけじゃなくミステリ的な側面もあって、科学と心霊現象の押し引きなやりとりは読み応えありました。これも麻衣視点だからこそ、ちんぷんかんぷんになったり質問したり、堅苦しくならずに読みやすかったのではないかと。つまるところ、麻衣の語り口が楽しくてかわいい。恋心はいつの間に、という感じでしたが、夢の中で優しくされちゃうあたりのかわいらしさがよかったです。 脇役の霊能者たちもいい味出してました。特に巫女さん、すぐに調子にのるけど、何かと不遇な目にあっててどこか憎めないキャラで好きです。 次の2巻は凄い怖いらしいし、ナルとの恋も楽しみだし、で2・3巻を注文済。ティーンズハート版がどんなだったのかも気になりますが、まずはこちらの完結まで待ちます。 最後に少し予想を。実は麻衣がPKなんじゃないでしょうか。ナルと別れたくないから、という動機で発動理由は説明できるし、ネタばらしを聞いちゃったせいで今後PK解消しにくいフラグもたってますし。既読の方、外れてたら笑っといてください。 評価 ☆☆☆☆(8) ◆ 悪魔のような花婿 薔薇の横恋慕 (松田 志乃ぶ/コバルト文庫) 【amazon】 《あらすじ》 四海家当主が集結する悪魔城で起きた、様々な事件…。6人の客人のうちの誰かが紋章印を狙う刺客だと知ってしまったジュリエット。おまけに、彼らに関する悪い噂が…!? 衝撃の真相が明らかに!! 悪魔城の夫婦によるダダ甘ファンタジー「悪魔のような花婿」、当主集結で起こった事件の後編。 ミステリ部分の分からなさがいつも通り鉄板でした。 前巻が大分ミステリ風だったので、今巻は犯人を予想しながら読んでみました。その結果→「みんな怪しいときはそれ以外に犯人はいる!」。……予想というか山勘でした。 まあ自分が当たらないのはいつも通りとして、「こんなの誰も分からない」と思わされる松田さん作品の謎の難解っぷりもいつも通り。各人に謎詰め込みです。ポーあたりはともかく、アリスとマルタ尼は無理無理。楽しい謎だったので、分からなくてもいいんですけどね。アリスの決意にはびっくりです、王宮でジュリエットはどう接するんだろうこれ。 今巻で一番好感度あがったのがレディ・ドーラ、ヴィヴィアン教育のシーンが楽しすぎる! 「以上が新婚夫婦の甘い会話の〜」で『んなわけない』と内心ツッコミを入れ、「コルセットとヴィヴィアンは〜」で噴きだしました。ダダ甘空間を爆笑空間に変える力、このシリーズ最強は魔法使いたちよりも彼女だと思います。 次は王宮編のようです、好奇と見下しの視線にジュリエットとバルバロッサがどう立ち向かうのか楽しみ。 評価 ☆☆☆★(7) |
4月5日(火) |
【最近読んだ本】 ◆ アリアではじまる聖譚曲 求愛者は聖女に殉じる (西本 紘奈/角川ビーンズ文庫) 【amazon】 《あらすじ》 正教国から追われたアリア。ユースは捕まり、ジュリアスは逃亡中。そんなとき、マウリシオにユースを助けたければ、王を選び、列聖式を行えと迫られたアリアは、クラウディオのもとに向かおうとするけれど!? 徹頭徹尾の凡人少女による救国異世界ファンタジー「アリアではじまる聖譚曲」完結編。 ああ、アリアはずるい、本当にずるいなあ。 驚かされたり、ときめいたり、「えー」っとなったり、凄く色々なことが詰め込まれた最終巻でしたが、その中でもまず一言いいたくなったのが、アリアの選択と言葉について。選択は別にいいんです。ここにきて何派とかいうのは野暮です。でも、そういう選択をするのなら、クラウディオに対する言葉が凄くずるいものに思えました。エピローグがあの形をとっているから、かもしれません。でも、アリアはあそこまで自分の気持ちを自覚してきていて、それでいてクラウディオに対して「他の人が好き」ということは全く言わない。あくまで事情のみ。大切だという気持ちは伝わってくるけれど、これほどの想いを注いでくれる彼に対しては、含み残さずにはっきりと答えてほしかったです。 ここまでアリアをずるいと思うのも、クラウディオの想いが本当に素敵だったから。ぬか喜びさせられ、焦らされ、残酷な選択を強要され、それでもアリアに向けられる圧倒的なまでの優しさ。二段構えでの一途な描写にやられました。俺様キャラがこんなにも変わるのを見たのはちょっと記憶にないです。ロリコン呼ばわりな関係からこんなになるなんて。 他のキャラについても簡単に。エミリオ君はこの上なく頑張ったと思います、告白シーンかっこよかった! ジュリアスについてはやっぱり・なるほどという感想。思ったよりもアリアに惚れていたので、彼の想いはもっと見たかったかも。耀子ちゃんは最後に持っていってくれました、エピローグ後の長い戦いが楽しそう。教皇はこれでもかというくらいの悪役だったのでスカッとしました、もっとボッコボコにしてもよかったくらい。 全5巻、最後は駆け足気味なところもありましたが、一味違ったファンタジーで楽しいシリーズでした。積んでる前シリーズも早めに読みたいです。読めたらいいなあ。 評価 ☆☆☆(6) |
4月4日(月) |
【最近読んだ本】 ◆ 義兄 明治艶曼荼羅 (丸木 文華/ティアラ文庫) 【amazon】 《あらすじ》 「堪忍して、お兄様……」富豪の家に母の連れ子として入った雪子。待っていたのは義兄の執着愛。独占の証のように刺青を彫られ逃れられない。緊縛、言葉責め……。章一郎との淫らすぎる夜は、雪子を官能の深みに堕とす。禁断の愛に慄える雪子に救いの手を差し伸べたのは貞吉。純真な好青年との逢瀬で知る初めての恋。しかし兄は妹を奪い返さんと悪魔のような企みを!? 明治官能浪漫! 先月のティアラ文庫の新刊。某エロい大手な人のプッシュで盛り上がっているので、波に乗ってみました。 暗くてエロかったです。 舞台は明治時代、幼い少女が変態的な愛情を持った義兄に性的にいじめられるお話。話の流れだけ見ると、女の子が快楽に染め上げられていく調教物で、男性向けに結構ありそうな設定。でも、相手が義兄、しかも幼い頃からじわじわと陥落されていく様子は背徳感がたっぷり。おまけに明治時代ゆえの淫靡さもあって、途中まではエロチックでした。いきなり舐めたり言葉責めしたりと、兄がなかなかに変態。 で、この関係がどうなるのかと思ったら後半がっかり。兄の気持ちがどこで変わったのかがさっぱりでした。途中までは愛は絶対あったと思うんですけど、いつの間にか歪んじゃってて、うーん。後半の兄は、ただ狂ってるだけに見えて、ドキドキの欠片も感じず。著者さんの別作品みたいに兄視点があれば、内面が見えて大分印象が変わったかもしれません。 そんなわけで後半は初恋の君である貞吉さんを応援していたんですが、ヒーロー張るには優しすぎでしたねこの人は……。幸せになれるといいなあと思いつつも、これじゃ兄には勝てないだろうなあというのが分かっちゃうのが無念。なので、最後では驚かされはしたものの、欝とはそれほど感じませんでした。 以下は兄嫌いとしての後日談妄想。貞吉さんはさすがにどうしようもないので、心に傷を負った弟が歪んで覚醒して、数年後に色狂いの兄から雪子を奪い取る方向で。これだと雪子視点でもとてもBADっぽいし、兄が痛い目にあいますし。基本的に兄より弟派です。 評価 ☆☆☆(6) |
4月2日(土) |
【最近読んだ本】 ◆ 放課後探偵団 (相沢 沙呼 他/創元推理文庫) 【amazon】 《あらすじ》 『理由あって冬に出る』の似鳥鶏、『午前零時のサンドリヨン』で第19回鮎川哲也賞を受賞した相沢沙呼、『叫びと祈り』が絶賛された第5回ミステリーズ!新人賞受賞の梓崎優、同賞佳作入選の〈聴き屋〉シリーズの市井豊、そして2011年の本格的デビューを前に本書で初めて作品を発表する鵜林伸也。ミステリ界の新たな潮流を予感させる新世代の気鋭5人が描く、学園探偵たちの活躍譚。 とあるustream放送で推されているのを見て手をとってみた作品、新進気鋭の5人の作家さんがおくる学園ミステリ短編集です。 外れがなくて、どの短編も面白かったです。 5人のうち何人かは別作品で気になっていて面白いんだろうとは思ってましたが、はじめて名前を見た人も、この面子に並ぶだけあって実力者。学園でミステリって限定されているようで全然されてなくて、色々な味わいを楽しめました。以下は個別感想。 お届け先には不思議を沿えて(似鳥鶏) 「理由あって冬に出る」のキャラたちが、すりかえられた宅配便のトリックを解き明かすお話。これが一番ミステリ的に楽しめました、分かりそうで分からないライン。フィルタ付きのMy目には、伊神さんは男装の麗人にしか映らないんですが、さすがに違いますかね、だって表紙絵がひんn(略。「理由あって冬に出る」をはじめ3冊ほど積んでいるので、これは近いうちに読みます。 ボールがない(鵜林伸也) 練習中に消えたボールの謎をみんなで探るお話。設定やみんなで試行錯誤する感じが好き、ただ主人公の存在の薄さが少し気になりました。でもオチは素敵です、学園らしい爽やかさ。 恋のおまじないのチンク・ア・チンク(相沢沙呼) あっまい! 「午前零時のサンドリヨン」のキャラが、バレンタインのチョコ盗難もどき事件に関わるお話。上の2編が甘さ控えめで「恋と推理のボーイズライフ」には物足りないと思っていたら、3編分を一気に補給。主人公の片想いや軽い中二病っぷりの感情描写が生々しくて、いたたまれなくなったり転がったりしました。 横槍ワイン(市井豊) 〈聴き屋〉な主人公が映研でのワインぶっかけ事件を解き明かすお話。自作自演だと読んだらあっさり否定されてしょんぼり。オチは納得いくけど「えー」という思いも強いんですが、そこまでのアイデア色々は楽しかったです。 スプリング・ハズ・カム(梓崎優) 高校の同窓会で、15年前の卒業式にあった不思議な事件を振り返るお話。同じようなトリックどこかで見たことがあるはずなのに、気づかなかったのが悔しい! 同窓会というこの舞台は反則だなーと思いつつも、過ぎ去った寂しさと爽やかさが混じった読後感は一番。「時効は〜」の台詞が上手い。「叫びと祈り」も気になっていたので、そのうち読むリストへ。 評価 ☆☆☆★(7) |