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 5月28日(土)


【最近読んだ本】

夢の上3 光輝晶・闇輝晶 (多崎 礼/C★NOVELSファンタジア)amazon

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《あらすじ》
サマーアの空を覆う神の呪いは砕け散る。そして----夜の王に提示された光輝晶はあと二つ。残されし想いや夢はどこに行くのだろう? シリーズ、ここに完結。


今月一番の注目作、多崎さんがつむぐ多視点ファンタジーの完結編。

この上なく美しい物語でした。
改めて振り返ると、1巻を読んだとき「煌夜祭」っぽいという印象が強かったんですよね。で、「煌夜祭」が心の一作なのもあって、完結巻では胸を一杯にさせてくれると同時に、アッと驚く展開も待っているのかな、という期待をしていました。それが2巻読んだときのとんちんかんで恥ずかしい予想に繋がったりもしたのですが、それはさておき。
そういった驚きの観点からは、この完結巻はさほどでもなく。これまで同様、1つの物語を別視点で丁寧に描く構成で、前半のアライスの物語は、アライスの父母への想いに心痛くなったり、ダカールへの想いが想像よりも早期からで深くて転がったり。ただ、最終巻の前半としては新たに見えたものが少なく、後半分で終わっちゃうのかと若干の物足りなさがあったのも事実。

でも後半を読み終わったときにはそんな不満も消えてました。今まで積み上げたものの上に、ツェドカの物語が加わり、「自分自身を救え」という1巻から明かされていたテーマに綺麗に繋がって。タイトルがピタッと物語にはまるのが分かったときには、心震えるものがありました。最後の「夢は終わっても〜」のくだりが希望に満ちててじんわり。
あと、パラパラと見直すと、イラストも心憎い仕事しているのに気づいてオッとなったり。 「面白い」とはちょっと違いますが、とても素敵な物語でした。

また間が空くみたいなので、気長に次回作を待とうと思います。


評価 ☆☆☆☆(8)



薔薇のマリア15 愛も憎しみも絶望も (十文字 青/角川スニーカー文庫)amazon

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《あらすじ》
「あたしは“ハニーメリー”。ハニーでいい」あー、もう――寝てたのに、寝てたのに。マリアローズの眠りを妨げたのは、輝く瞳の女(ハニー)。マリアはすぐにこの女が厄介事の種だと直感する。女は禁じられた技術に手を出して、組織から追われる機術師(メカニスタ)――背を伸ばし、髪と瞳の色を変え、利き腕も変えて逃亡者として生きてきた。マリアに満ちる嫌な予感……。風雲急を告げるエルデンで、蛍光緑(ルミナスグリーン)のハニーとの出会いがZOOを新たな運命に誘う!!


終章突入のアジマリ小説「薔薇のマリア」第15巻。

これまでの伏線を拾いつつ、驚きがあちこちで起こっていてさすが終章という展開。なのですが、このシリーズはアジマリ小説として読むと割り切ったので、その辺りは理解半分で雰囲気を楽しんで今回も読みました。
で、アジマリ的には小休止の巻で物足りず。マリアが割り切ったのにアジアンがヘタレなので進まない進まない。いじめられてるアジアンはかわいいですが、次あたりには男を見せてほしいところ。いざ押されたらマリアどうするんだろう。でもマリアから押すんですかね。
他では、リア充のカタリは暑苦しいなー、でもルーシーはもっと鬱陶しいなーとか思いながら。アジマリを邪魔するルーシーはずっと敵です。

この先もこんな読み方でいく予定ですが、あとがきが不安。伏字の文字数がアジアンと一致するんですよ。この展開でマリアとアジアンがさらに仲良くなっていく絵が、物語にそぐわないように思えるんですよ。まさかね。まさか。


評価 ☆☆☆(6)




 
 5月24日(火)


【最近読んだ本】

天地明察 (冲方 丁/角川書店)amazon

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《あらすじ》
江戸、四代将軍家綱の御代。戦国期の流血と混迷が未だ大きな傷として記憶されているこの時代に、ある「プロジェクト」が立ちあがった。即ち、日本独自の太陰暦を作り上げること。武家と公家、士と農、そして天と地を強靱な絆で結ぶこの計画は、そのまま文治国家として日本が変革を遂げる象徴でもあった。実行者として選ばれたのは渋川春海。碁打ちの名門に生まれながら安穏の日々に倦み、和算に生き甲斐を見いだすこの青年に時の老中・酒井雅楽頭が目をつけた。「お主、退屈でない勝負が望みか?」日本文化を変えた大いなる計画を、個の成長物語としてみずみずしくも重厚に描いた新境地。時代小説家・冲方 丁誕生の凱歌がここに上がる!


いまさら説明するまでもない、昨年の本屋大賞受賞作。

評判通りの面白さでした。
碁打ちで算学者の渋川春海を主人公に、暦が変わるまでの長い長い道のりを描いた物語。読み始めるまで設定ろくに知らなかったんですが、囲碁は打てるし、算数・数学ネタも好きな自分にとってはかなりおいしい設定でした。安井家の人々は名前は見たことあるかも、程度の古碁知識なので、囲碁歴史物としても楽しみどころありましたし、道策のかわいさにはクラクラ。
春海を慕い反発する姿がただでさえ物凄いかわいいのに、あんな強い人が、というギャップ萌えまでついてくるんだからたまりません! 後半は出番減るんだろうな、孤高で切ないなあと思って読んでいたら、意外と2人の対局が多かったのにホッとしました。読了後に調べたら御城碁かなり打ってるんですねこの2人。いい勝負まで迫られてるし、よかったよかった。
算額問題も面白かったし、初手天元みたいな小ネタも色々とあって、細かい楽しみどころが多かったです。

前半は道策に目が行きがちでしたが、ストーリーももちろん面白かったです、暦一つの裏ににこんなに壮大な物語が存在するとは。春海が辿る起伏にドキドキもしましたが、それ以上に多くの人の思いの積み重ねで出来上がった道のりだということが実感でき、感慨深くなれる物語だったなあと思います。旅のお爺ちゃんズが素敵。終盤、春海が老獪さともとれる手腕を見せるのに、年月の重みを感じさせられました。恋愛面がやや薄味で、ときめけそうで今一歩届かなかったのが少し残念、でも最後の穏やかさは好き。

冲方さんは合わない作品も多かったけれど、これは読んでよかった。光圀伝も楽しみに待ちます。


評価 ☆☆☆☆(8)




 
 5月21日(土)

オンライン小説の再読などで間が開きました。間が開くときの半分は大抵こういう理由。Tiny Gardenさんも「人なる」も読み始めると止まらないんですよ!


メルフォレス1つ。

>レディ・マリアーヌ購入予定の方

おお、是非是非! 2巻完結でコンパクトにまとまっているしお勧めです(物は言い様)。ルルルで一番面白かったんですけどね……。
レイヴンズはあざのさん買いと陰陽師嫌いの間で揺れつつ、思い出した頃に読んでます。3巻まででしっくり、ですか。次も忘れないうちに読む予定で。4巻の感想も目に入ってきたんですけど、楽しそうな短編集のようですしね。


【最近読んだ本】

半魂香 ―まどろみの巫女と<守護者>―(上) (響野 夏菜/幻狼ファンタジアノベルス)amazon

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《あらすじ》
星輝族の部族長・サシャは、特殊な力を受け継ぐ巫女である。旅の途中、敵である王子に出会い…。『半魂香』シリーズ登場!!


響野さんのブログに「バカップル」の文字があったので購入を即決めた、先月の幻狼の新刊。

よいカップル、よい萌えでした。
オアシスの部族の首長であり、特殊な力も持つ巫女のサシャと、その守護者の青年ヤハンが主役のファンタジー。この2人の関係が素晴らしかった。少女小説には珍しくはじめから完全な両想い、ただし部族のしきたりで結ばれない運命。この設定だけでもおいしいのに、ヤハンが普段から「サシャだけが大事」な態度全開で甘さ盛り上げてくれます。どうにもならない想いをぶつけてくるのは、ベタでも萌える。また、結ばれない関係といっても普段はそんなに悲壮感はなく。バカップルというよりはバカ夫婦の方が近いかな、自然体の甘さがよかったです。
さらに途中からは大国の皇子まで割り込んできて、これがまたおいしい。バカ皇子ではなく、いかにも残酷だけれど才気溢れるオーラが出ていて、サシャが少しクラクラしたり、ヤハンが猛烈に機嫌悪くしたり。揺らいでもおかしくないと思えるところが確かにあるんですよね。サシャの能力目当てな側面もありそうですが、下巻では求婚しかけてきたりするんでしょうか、どうなるかドキドキ。

お話は過渡期のオアシスの部族の行方を描いたものになるのかな。前半は2人の関係ばかり目がいってましたが、皇子登場のあたりからは、滅んだ都市の人々の想いが気になり、「半魂」の力も物語に絡んできて面白かったです。旅人のスレイがなかなか胡散臭く印象残るキャラだったので、下巻での出番に期待。


評価 ☆☆☆★(7)



テルミー きみがやろうとしている事は (滝川 廉治/集英社スーパーダッシュ文庫)amazon

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《あらすじ》
修学旅行での事故で失われたひとつのクラス。当日欠席したことで事故をまぬがれた少年・清隆は、ただひとりだけ生き残った少女・輝美が、亡くした恋人の遺品を持ち出したことに困惑する。問いかける清隆に輝美は、自分の中に亡くなったクラスメイトたちの最期の願いが残されていることを伝える。少女はその想いをかなえようとしていたのだ。 清隆は自分にも手伝わせてほしいと申し出るが…。
悲劇から始まるやさしさの物語、開幕します。


昨年評判になっていたので積んであった、久々に読むスーパーダッシュ文庫。2巻発売決定の文字を見て手をつけることに。

雰囲気よく、結末を見届けたくなる物語でした。
修学旅行の事故でただ1人生き残り、死んだ皆の遺志を遂行することになった女の子のお話で、またそれを助ける男の子の物語。設定は某ゲームにも似ていてどこか既視感があるものでしたが、はじめの雰囲気作りがとてもいいなあと思いました。いきなり突きつけられる事件と「ハッピーエンド」の文字で、そこまでの道のり、そして訪れる結末への期待が煽られる煽られる。淡々とした女の子と普通の男の子っぽい男の子のコンビもはまっていて、中盤までは、色々な形がある残された想いを果たしていく様子が面白かったです。孝司のエピソードが好き。

ただ、後半でややトーンダウン。単体でいい話ではあるんですけど、1つのエピソードに分量割きすぎで、ここだけ浮いている感がありました。あと、全体的に文章がちょっと合わなく読みづらいところがあって、それが物語に違和感覚えると同時に気になってしまって、という面も。

とはいえ、ハッピーエンドが気になるので、2巻も読むつもり。


評価 ☆☆☆(6)