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 7月15日(金)


【最近読んだ本】

銀の竜騎士団 死神隊長と見習いウサギ (九月 文/角川ビーンズ文庫)amazon

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《あらすじ》
誓約の竜を成長させないと廃嫡!! 王女シエラは正体を隠し、竜を大きくするため竜騎士団に入団する。だけど冷酷無情な鬼上官スメラギと、エリートの同僚たちはシエラに冷たくて!? ドラゴンナイト・ファンタジー!!


ビーンズの新作は評判を見てから手をだすことが多いです。これもその口、王女が身分隠して竜騎士団に入るファンタジー。

どう続くのかワクワクするシリーズ開幕でした。
竜を育てようと頑張りつつ、厳しい隊長と接していくうちに成長していく王女様のお話。ストーリー自体はオーソドックスでしたが、主要キャラがみんなよかったです。まず主人公のシエラ、うっかりなところもあるけれど、きちんと反省するし、諦めずに努力する姿勢がいいなあと思いました。中盤の「あきらめたくない」が印象に残ったんですよね。諦めない女の子はどんな物語であれ素敵。

ヒーローな隊長もかっこよかったですが、隊長よりもカイト派です。隊長に迷惑かけるシエラにつっかかってくるのがかわいい。謝ってくる姿もかわいい。きっと今後シエラに惚れてもっとかわいくなる。そして不憫になる。それもまたかわいい。いや不憫にならないでほしいですけどね! しかし、何故かカイトは陰険眼鏡タイプなイメージなんですよね、実際は隊長が眼鏡なんですが。多分このイメージは某ネイトさんのせい。
あと、シリスが気になるキャラ。従兄なのにシエラに対する恋情があまりなさそうなのが珍しいなあと思います、スメラギが近づいても推奨な姿勢なのが面白い。シリスなりの行動原理に基づいて動いているみたいですが、この先シエラとスメラギの距離が近づいたときにも変わらないのかが楽しみ。

で、単体でも面白かったんですが、続きの方が面白くなりそうなんですよこのシリーズ。まさか隊長気づかないとは。いやさすがに状況証拠揃いすぎだし気づかないのありえない……、と思うんですが、気づかないことで今後の2人の関係がグンと面白くなりそう。こうなったらとことん鈍感で、ルーシェとの関係を縮めつつ、王女との婚約話が出てきて板挟みになってほしいです(そういうお約束な展開好き)。


評価 ☆☆☆★(7)



ショコラの錬金術師 (高見 雛/コバルト文庫)amazon

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《あらすじ》
錬金術アカデミーの生徒イルゼは、学校を去った天才少女アニカを連れ戻しにケルルの町へ。アニカはチョコレート職人の兄弟に弟子入りしようとしていた。破格の値段でショコラを提供する店の秘密とは!? 読者大賞受賞作!


今月のコバルトの新人さん、錬金術師の卵たちが主役のファンタジー。

優等生と天才少女の友情がかわいらしいお話でした。
万年2位の優等生イルゼが、出奔した天才少女のアニカを追いかけてチョコレート屋へ向かうお話。このイルゼがアニカとの間の友情に気づいていく様子がなかなかよかったです。優等生と天才少女の組み合わせだと優等生が嫌な子なイメージがあるんですが、イルゼは態度はツンツンしてても嫌がらせなんかは絶対にしそうにない子だし、過去のアニカへの態度にあれだけ落ち込むあたり、真面目でいい子だなあと。最後にイルゼが素直になって一歩を踏み出すところがほんわかしてて好きです。

メインは友情よりも恋愛なはずなんですが、そちらは恋愛感情が一方向なのでやや消化不良。ルーウェンからイルゼへの気持ちが現段階では全然見えませんでした。せっかく年の差ラブで相手がヒゲ青年なのにもったいない。続きでルーウェンの気持ちが描かれてくれるといいなあ。

あと、展開が力技な箇所が結構あるのが、新人さん作品らしいなあと。その辺は許容範囲なのですが、エーデルが妖精なのに途中から存在感薄かったのは残念でした。恋愛が進めばルーウェン大好きなエーデルも目立つはずなので、続きではそちらも期待したいところ。


評価 ☆☆☆(6)




 
 7月10日(日)


【最近読んだ本】

シスター・ブラックシープIV エデンの嘘 (喜多 みどり/角川ビーンズ文庫)amazon

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《あらすじ》
偽の悪魔憑きが続出し、その謎を追う【黒い羊】。その動きを読んだ美貌の司祭ユリエルは、彼女を捕らえるべく罠を仕掛ける。そんな中、悪魔の心境にも変化が――!? クライマックス直前、運命が激変する第4弾!!


悪魔と司祭に悪党まで恋模様を盛り上げてくれる「シスター・ブラックシープ」第4巻。

分かりやすいキャラと分かりにくいキャラにドキドキする急展開でした。
最初にあとがきを読んで「全5巻? あと1冊? なんてこと!」となって読み始めた4巻は、最終巻手前らしく色々ありました。まずは悪魔。前巻あたりから変化は分かっていたので、ついに言葉に出したか、という感じでしたが、いざ言葉にされるとやっぱりときめきます。「そなたである意味が……なくなる」にキュンとなりました。コンスタンティンのとまどいもかわいい。拒む理由がなくなったんだったら拒まなければいいと思います! 「他の人を愛してます」って拒み方があるわけですが。
あと、コンスタンティンの心が悪に染まってないのも、悪魔の変化の影響はあると思うんですよね。聖なる力でダメージは受けてるので属性的には完全に悪魔寄りみたいですが、もう一皮何かあるんじゃないかと期待。このまま悪魔化でファーザーと敵対だと寂しいので。

分かりやすい愛を見せてくれた悪魔に対して、分かりにくかったのがヒース。どこまで本気なのかが分からなくて、読み終わった後に頭がぐるぐるするくらい考え込んでしまいました。いや絶対にド本気なんですけれど、コンスタンティンをどうしたかったのかが分からない。エリカが来なかったら言葉通りにしていたとは思えないんですよね、うーん。エリカあっさり通しちゃうし。言葉が刺さったからですかね。でも優しいヒースはかっこよかったです、まだ悪魔と張るかっこよさ。
しかし、あのタイミングであんな言葉をくれるエリカは素敵すぎます。エリカがヒーローでも全然ありだと思います。ファーザーぶん殴るエリカが見たい。

ファーザーは、あれだけ悶々としていたら箍が外れちゃうのは分からなくはなくて、そんな好感度は下がらなかったんですけど、元々自分は悪魔派&ヒース派なので、挽回しようもないほど差がついてしまいました。これで大逆転ファーザールートだったら荒れます。多分そういう話にはならないでしょうけれど。

あと1冊ですが、一番重要なのは恋の行方よりもコンスタンティンと街の関係だと思ってます。街に残ることになるかどうか、去るならどういう形で去るか。それが一番気になるし、できることなら街に残って変わらない姿であってほしい。この巻の終わり方やコンスタンティンの今後の成長を考えると難しいでしょうけれど。


評価 ☆☆☆☆(8)


平安ロマンティック・ミステリー 嘘つきは姫君のはじまり 初恋と挽歌 (松田 志乃ぶ/コバルト文庫)amazon

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《あらすじ》
次郎君を支えるため、後宮に戻った宮子。しかし次郎君の失声の病はなかなか回復しない。市の聖の話を聞くことを薦められ、宮子と次郎君は一緒に市に向かう。だが、見知らぬ侍に襲われ、連れ去られて…!?


正体問題にも決着がつきかけて、そろそろ佳境の「嘘姫」シリーズ第10巻。

みんな大人になったなあとしみじみする巻でした。
宮子が帰京したところから始まったので、はじめのうちは当然のように次郎君の甘さ攻勢が繰り広げられて、「まだほしい」に次郎君の押しはやっぱり凄いなと思ったりしつつ、甘さを楽しんでました。でも、この巻のメインは甘さよりも皆の成長。次郎君の側にいる者としての自覚をもった宮子、しっかり気持ちに折り合いをつけて2人に対峙した真幸、ほんと1巻の頃から変わったなあと思います。特に宮子は、馨子様、薔子様などとの会話の端々に成長を感じてじんわり。嘘のつけなさやそそっかしさみたいな変わってないところもありましたが、しらっと嘘をつく宮子とか宮子じゃないですし、鹿子とのお絵かきシーンとかはやっぱり楽しかったし、このままでいてください。

中宮様の死については流れと章タイトルで察しましたが(史実知らない)、確信はなかったのでインパクト大。切ないけれど美しい死に様だと感じました。
とても気になるのは有子様、グサリと刺さる涙と叫びを見せてくれましたが、一体どうなるんでしょう。真幸が恋心を抱いてなさそうな以上、結ばれて終わる展開はなさそうな予感。でも、あの涙を見ると、幸せになってほしいです。

あと1冊で終わるのが寂しいですが、1冊で綺麗に終わるのか少しだけ不安だったりも。あんな引きに加えて、有子様の恋、馨子様と文殊丸、事件の行方、姫子大活躍、もちろんメインカップルの甘々も、全部読みたい。読ませてくれますように。


評価 ☆☆☆☆(8)




 
 7月3日(日)

今月の購入予定、一部購入済みですが。3巻すごかったブラックシープが楽しみなので明日読みます。


【最近読んだ本】

この雪に願えるならば (響野 夏菜/コバルト文庫)amazon

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《あらすじ》
雪にふりこめられた街・ノーウィ。駆け出しの歌姫モーナネリーアは、歌劇場のスポンサーで街の有力者・フェイドルンに見初められ、許嫁となる。だが、彼女にはラルフという崇拝者の息子がいて、フェイドルンとの婚約も劇場の支配人にむりやり請われてのものだった。人目を忍んで逢瀬を重ねるモーナネリーア。だが、彼女の背後には、呪われた惨劇の序曲が忍びよろうとしていた…。


響野さんの大昔の作品、タイトルからして切なそうなファンタジー。

登場人物たちの狂おしい想いに胸が苦しくなる物語でした。
雪に閉ざされた街が舞台、記憶喪失の歌い手の女の子が主役のお話。読み始めてしばらくは「2ヶ月前から皆がおかしくなった」少し不思議な舞台の話なんだと思っていて、暗めな雰囲気の中でも、皆には秘密の関係にドキドキしたりしていたんですが、途中からサスペンス風味が増してきて別の意味でドキドキさせられることに。モチーフとなっているらしい「オペラ座の怪人」は知らないので違いは分からないんですが、ダイヴィーッドの苦しみや事件の後の混乱に、どうなるんだろうと思いながら読み進めました。

で、そこからガラっと印象が変わる後半。少しSFの色が強くなりすぎかなと思うところもありましたし、ドードーを肯定はできないんですが、彼の心からの想いが苦しくて切なくて。最後、絶望の重さから希望が見える流れがよかったです。一度目と二度目のタイトルの違いが胸に染みました。
それに、ドードーだけじゃなくて、ラルフもフェイドルンも苦しい想いをしてるんですよね。ラルフは過去では彼女を奪われて、それが軽度の裏切りに現れたんでしょうし。フェイドルンも最後の方の述懐が彼の本当の気持ちだったのだと思うと切ない。こう考えるとモーナネリーアは罪作りな女の子だった気もします、彼女も被害者なんですが、他の道もなかったのかなと考えてしまいます。
唯一気持ちが分からなかったのがレシータ。ドードーの才能を恐れたと取れなくもないんですが、そう確信するほどには描写がなくて。フェイドルンと一緒に現れた場面のせいで、ただの嫌な女性の印象がぬぐえないままでした。まあ1人くらいはこういうキャラがいても。

昔は響野さんは当たり外れ大きい作家さんだと思っていたんですが、最近打率がどんどん上がってます。過去作品はもう1作積んでるので、しばらくしたらそれも。その後はS黄尾再チャレンジも視野に。いまなら楽しめるかも。


評価 ☆☆☆★(7)


折れた竜骨 (米澤 穂信/ミステリ・フロンティア)amazon

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《あらすじ》
ロンドンから出帆し、波高き北海を三日も進んだあたりに浮かぶソロン諸島。その領主を父に持つアミーナはある日、放浪の旅を続ける騎士ファルク・フィッツジョンと、その従士の少年ニコラに出会う。ファルクはアミーナの父に、御身は恐るべき魔術の使い手である暗殺騎士に命を狙われている、と告げた……。
自然の要塞であったはずの島で暗殺騎士の魔術に斃れた父、「走狗(ミニオン)」候補の八人の容疑者、いずれ劣らぬ怪しげな傭兵たち、沈められた封印の鐘、鍵のかかった塔上の牢から忽然と消えた不死の青年――そして、甦った「呪われたデーン人」の襲来はいつ?魔術や呪いが跋扈する世界の中で、「推理」の力は果たして真相に辿り着くことができるのか?


「古典部」シリーズなどでお馴染みの米澤さんの昨年の作品。高評価なのを見て買って積んでました。

鮮やかな解決編にやられました。
島の領主が暗殺騎士の魔術によって殺され、その犯人を領主の娘と騎士が追いかけていくファンタジーミステリー。一言で全体の印象を述べるなら、非常に盛りだくさんな作品でした。容疑者の1人1人に巨人使いだったり凄腕の弓使いだったりといったファンタジー的要素があって、不死のデーン人による襲来が待ち受けていて、他にも牢獄から人が消えたりと事件や謎が色々あって。正直盛りだくさんすぎて、中盤までは目の前に出されたものを読んでいっているという感じがあり、部分部分は面白くても全体像があまり掴めませんでした。なので、ニコラかわいいなあ、アミーナも駄目兄に代わって気丈に頑張ってていいなあ、とキャラ中心で読んでいました。

そうしたら、完結編で叩きのめされました。この設定でこうも伏線あちこちに張りつつ綺麗に回収しているなんて。もう納得と驚きの連続でした。それも物凄く難解というわけではなくて、頑張って考えれば分かったかもというバランスなのが、やられた感たっぷり。解決編に入る前に「いいかこれから解決編だぞ用意はいいか」と言ってくれているのに、「どうせ推理できないだろうから先進んじゃおう」と進んじゃったんです。ほんと進まなければよかった。密室からの脱出トリックは分かったし、この手の話は身近なところが怪しいと思ったのでアミーナのこととかも始めはかなり疑ってましたし……。いや、そこまできて犯人ろくに疑ってない時点で駄目なんですけどね。
また、ミステリとしてだけではなく、最後はニコラが少し大人になる成長譚としてもかなりよかったです。特に、悔しくて泣き出しそうなニコラ。「師匠にどう言えばいいのかな!」の「!」が印象的でした。
最後の最後、ニコラとアミーナの誓いにときめいたりしたのは余談。なので、できれば続きも出てほしいです。


評価 ☆☆☆★(7)