9月14日(水) |
【最近読んだ本】 ◆ 姫君返上! 民を守護する者 (和泉 統子/ウイングス文庫) 【amazon】 《あらすじ》 男に生まれたのに、聖レーミッシュ帝国の皇女として育てられたアレク。 悪魔を祓う聖祓魔師〈エクソルチスタ〉・ノエルに協力し、現在は藤花選帝侯国に滞在中だ。 そこへ帝都よりとんでもない知らせがもたらされた。 隣国ルスラントからの侵攻、選帝侯達の裏切り──しかもそれらを立案したのは猫バカの宰相!? 「俺は偽者の皇女だけど、逃げるのはやだ」。 そう戦いを決意した〈麗しの薔薇姫〉だったが、ルスラント皇帝が正式に求婚してきて……?王宮ファンタジック・ロマン、堂々の完結!! 姫君生活をおくる女装少年の受難と活躍、さらにその家族たちも描いたファンタジー「姫君返上!」最終巻。 とことん気持ちのいいお話で面白かったー! いやもう、ここまで面白くなるとは思いませんでした。まずはヴィルヘルムに思いっきり驚かされるところからスタート。全然想像外、まさかヴィルヘルムがそんな。この時点ですでにやられたなと感じてました。 で、その危機を知ったアレクの行動が気持ちいい。1巻の頃から変わらない真っ直ぐな心意気を見てきたから、身近な人を、そして多くの人を動かしていくのが凄く納得できるんですよね。出来過ぎの文字が一瞬脳裏をよぎっても、アレクの笑顔でかき消されました。まだ甘くて諭されたりすることはあっても、成長も見てとれたのもよかったです。 このまま終わるのかな何かありそうだなと思っていたら、また驚かされる。そういうことですか! ヴィルヘルムが悪役っていうのはシリーズの雰囲気にあわないよなあと思いつつ、種明かしまで気づかず。ヴィルヘルムはおいしいところ持っていったなあ。見事に作者の手の上で踊らされました。でも心地よい踊らされ方。 その後、ラストに至るまでの流れの気持ちいいことといったら! 兄ちゃんの鬼っぷりやアレクの迂闊さ狼狽に笑い、ノエルの力技が素敵で、綺麗で痛快な幕引きが最高。読み終わった後に「あー面白かった!」と自然に声が出る物語でした。 書き下ろしも楽しかった! そうですよね落ち着いたら結婚問題出てきますよね。兄ちゃんが楽しそうでアレクが不憫、いつも通りだけど立場が変わってる分余計に愉快。ただ、アレクはマーリとくっついてくれないかなと密かに期待していたので、そうはならなそうなのだけが残念。 番外編は11月発売の秋号に載るようです、元々楽しみでしたがますます楽しみに。アレクの出会いもあったりするんでしょうか。 評価 ☆☆☆☆★(9) ◆ 無音の哀戀歌 〜さようなら、わたしの最愛〜 (御永 真幸/コバルト文庫) 【amazon】 《あらすじ》 革命前夜のフランス、パリ。高級娼婦のジャンヌと身分を偽った死刑執行人、シャルルは出会った。互いに惹かれあいながらも、許されることのない恋の行方は──!? 表題作ほか1編を収録。 先月のコバルトの新人さんの作品、フランス革命の頃の処刑人たちが主役の歴史ロマンス。 処刑人としての生き方が切ない物語でした。 これを読むまで、この時代の処刑人の位置づけを知らなかったのですが、これは苦しい生き方。生まれたときから処刑人として生きることが定められていて、なのに周囲からは白い目で見られて。そんな処刑人の辛さが表題作からひしひしと伝わってきました。自身が処刑人であることを自覚していて、それでも惹かれていってしまうサンソンの気持ちが伝わってきて、でもそれゆえに切ない。なぜ処刑人というだけでこんなに辛い想いを、と問いたくなるお話でした。題材の活かし方がうまいなあと思います。 2話目はマリがちょっといい子すぎな気がしましたが、サン・ジュストがカリスマあってかっこよく、革命に関わる者たちのお話として面白かったし勉強になりました(史実全然知らない)。あとがきに「あまり信じないで」とありますが、流れは大体史実どおりでしょうし、そもそも処刑人関連だけでもためになりましたし。処刑人たちのwiki見て1話と2話の間を想像したり、デュ・バリー夫人の名前を見て「ベルばらと繋がった!」と思ったりと。デュ・バリー夫人は史実はどんな人だったんでしょう、wiki見ただけだとどちらもずれてそうですが。 珍しい悲恋物でしたし、次回作がどうなるのか気になります。 評価 ☆☆☆(6) |
9月11日(日) |
【最近読んだ本】 ◆ 翼の帰る処3 ―歌われぬ約束―(下) (妹尾 ゆふ子/幻狼ファンタジアノベルス) 【amazon】 《あらすじ》 皇帝の策略によって罠に陥ったヤエトは、ルス公当主ライモンドと対面し、逃亡した商人を引き渡すよう要請する。要求は受け入れられたものの、無理がたたって倒れてしまうヤエト。からくも北嶺に戻るが、皇帝の策略を阻止するため、ヤエトは無理を押して再び北方へ向かうことを決意する。それを決断させた裏には、<過去視>の力で出会った謎の少女・ルシルの願いを聞き入れたいという思いがあり――。 主人公が隠居からどんどん遠ざかっていくのが楽しいファンタジー「翼の帰る処」最新刊。昨日は妹尾さんとこときさんのサイン会に参加してきて、いただいたサイン入りの本を早速読みました。 ヤエトさんのお茶目が留まるところをしらなくて楽しい! 前巻の終わりが八方塞な状況でどうなるのかと思って読み始めた、その1行目。身も蓋もない感想にがっちり心を掴まれました。ヤエトは1巻の頃に比べるとほんと愉快になりました。 そんな詰んだ状況、さらに敵が迫る状況を切り抜けるのはさすが。あっさり北嶺に戻ったのは意外でしたが、その後の出立シーンが素敵。ヤエトの気持ちが皇女に追いついてきたな、と。イラストの皇女が大人びてかっこよく見えて、余計にそう感じました。 ルシルとの一連のシーンは読み応えありました。はじめはルシルのかわいさに和み、ヤエトの真っ当さに安心し、人たらしっぷりにおののき。その後のアストラの正体探しや、過去と未来が混じったアストラとのやりとりが、世界に迫っていくのがドキドキで面白い。ファンタジー部分は何となくの道筋は見えてきた気がしますが、そこにいたる過程が見当つきません、どう人の流れと繋げていくのか。 そんなシリアスシーンでもしっかり和ませてくれるのはさすがヤエトさん。ターンに対する言い草がひどかった、ハゲって! ルシルをセルクに、というのは言われてみるとなるほど、そういう役回りもあるとは。あとアルサールのルシルへの噛み付きっぷりがかわいい。タルキンといいアルサールといい、北嶺の少年たちはいいですね、ヤエトと姫様の魅力のおかげ。 戻ってからも色々ありましたが、まずはスーリヤ。照れスーリヤのイラストがおいしかったです! たくましくなっててかわいい。ルーギンの台詞が引っかかりますが、まだその気持ちを応援してます。 ラスボスとの対峙はハラハラ、皇帝も皇妹もまだつかめません。ヤエトの不思議まで深まりましたし。そしてなんといっても最後のシーン。ヤエトがついにここまで……! 姫様よかったですね。ところで今回のヤエトは女性を女性として意識する場面が結構あったんですよね。これは誰かをそういう存在として見る伏線でしょうか。それも自然な流れに思えてきました。 続きはかなり先のようですがいつまでも待ちます。それまでに過去の関連作品が見つかるといいです。 評価 ☆☆☆☆★(9) |
9月7日(水) |
メルフォレス。 >KANOさん 翼3(下)読まれましたかー。まだ読んでないのですが、面白いのは間違いないのでうずうずしてます。伏線のうまさは先日の再読でも感じましたが、そこまでですか! 週末のサイン会が終わったらすぐに読もうと思います。本当は読んでからサイン会参加しようとも思ったのですけど、書店で見つかりませんでした……。 再読する時間とるのは大変ですよね、再読したい本は100冊単位であるのに未読もたくさん。十二国記と女神伝あたりをそろそろ読み返したいです。 メールありがとうございました! 【最近読んだ本】 ◆ 花狩のロゼ 歌姫は薔薇を殺す (夕鷺 かのう/B's-LOG文庫) 【amazon】 《あらすじ》 「何度だって君に会いにくる――」少年・クロードが初恋の少女・ロゼと交わした約束は、花が人を喰う“花嵐”によって引き裂かれた! ロゼがいなくなって5年。クロードは、18歳の可憐な美女に成長!? ロゼを奪った花を狩る“歌姫”になるため、見た目は女の子として楽院に通っていたのだ!! そんな彼(彼女!?)の前に、少女と見紛う“舞手”の少年・ノワールが現れる。出会い頭に彼に殺されかけたクロードと、ノワールの仲は最悪! しかもノワールの正体が実は……!? 複雑・厄介・面倒くさい恋の花が絡み合う!! 「ヤンキー巫女」などの夕鷺さんの新シリーズ。評判がよく、しかも女装少年と男装少女のお話だと聞いて飛びついてみました。 男装で正体隠しって素晴らしい! 初恋の少女を失い、彼女の敵をとるため「歌姫」を目指す少年が主役のお話。割と設定盛りだくさんで、女装男装が出てくる前段階の、幼い2人の約束と別離にまず惹きこまれました。こういう幼い少年少女の真剣な誓いって好物です。 その後女装パートに入って、ヒロインのノワールが出てきた当初はあまりピンとこなかったんですが、話進んでノワールの女の子としての心が少しずつ育っていくのにニヤニヤ。そして最後の畳み掛けるような恋の芽生えが素晴らしい! 2人ともお互い性別すら分かってない状況でこんなドキドキが生まれるなら、今後気持ちが育っていったらどうなるのか、性別気づいたときの反応には今からワクワクさせられるし、おまけにその後にはもう一段衝撃が控えているわけで。今後が楽しみすぎます! ノワールは時々態度が男前だしクロードのドキドキは乙女っぽいしと男装女装でお似合いなところもあって、一組で何粒もおいしい二人です。 主役2人以外にもう1人素晴らしかったのが、主人公の幼い頃からの親友のミュゲ。主人公の女装につきあって学院までついてきているところや「兄弟」という呼びかけから結びつきの強さは感じとれましたが、ミュゲにとってのクロードの大切さが想像以上でグッときました。最後の畳みかけがくる前は、主役2人の関係を上回るかと思ったくらいです、ミュゲ男なのに。飄々としている裏に真摯な想いが、というのはとてもよいです。親友キャラでここまで気に入ったのはあまり記憶にない。ミュゲの気持ちはこのまま変わらないのか、他の誰かにも向くことはあるのか、今後が気になります。 今回やや影が薄かったベルガモットも、正体知らない人代表として今後活躍してきそうだし、ノワールの師匠はインパクトありそうだし、続きが大変楽しみ。順調に出ますように。 評価 ☆☆☆☆(8) |
9月4日(日) |
覆面作家企画を読んでいるために本の進みが遅いです。ほとんど読んだことない作家さんで、当たり前ですがオンライン世界は広いなあと。 【最近読んだ本】 ◆ クシエルの矢3 森と狼の凍土 (ジャクリーン・ケアリー/ハヤカワ文庫SF) 【amazon】 《あらすじ》 最愛の家族を失い、修道士ジョスランとともにスカルディアの蛮族に売られたフェードル。だが、鍛えた洞察力と生来の才能、そして故国への忠誠心によって二人は死地を乗り越え、辛くもテールダンジュに帰還した。しかし、王国はすでに分裂の途にあった。スカルディア来襲の報を告げられた女王の密命により、フェードルは国を救うため、幼なじみのヒアシンスを伴い新たな旅に出る……華麗なる叙事詩、激動の第1部完結篇! 神様より娼婦の能力を賜った女の子が主役の激動ファンタジー「クシエル」シリーズ第1部完結編。 大冒険で面白かったです! 娼婦の子が権謀術数うずまく貴族社会を乗り切っていくシリーズだと思っていたら、2巻で大きく様相が変わり、この3巻は大冒険。救いの兵を求めて陸を越え海を越え、行き着いた先では現地の民との交渉、そして涙あり熱さありの戦い、と盛りだくさん。2巻のように容赦ない展開は今回もあって、ヒアシンスの場面ではガツンとショック受けたりしましたが、それを受け止めて進んでいくフェードルが素敵。才を発揮するだけでなく、周りにも進む力を与え、自身も覚悟に満ちた行動をとるのがいいなあと思います。1人でこっそり発つところはしびれる。娼婦な面もいいエッセンスです。 脇役もいいんですよ。現地の対極的な双子王に雄雄しい王様、陽気な船乗りたち、みんな個性豊か。フェードルの野郎どものからかいが、場やフェードルの気持ちを明るくさせてくれて好きです。貴族たちの名前はいまだにこんがらがったりするんですが、今回出てきた人々は覚えられました。 メリザンドについては、恐ろしいの一言。あちこちで怖さを囁かれているのが理解できてきました。旅の途中でいきなり姿を現したときにはゾクっときましたし、その後もいつ何かを仕掛けてくるんじゃないかという見えない怖さがありました。アルバにいるときだけが安心できるという。一矢報いて、メリザンドもそこまで予見はできなかったんだと少し安心しましたが、その後の仕掛けにゾクゾク。天敵ですね、これからが恐ろしい。 そしてジョスラン、ヒーローじゃないですか! 救出シーンにときめき、エピローグにニヤニヤ。こちらもすぐにどうこうはなさそうで一安心。でも予言が不安。メリザンドとの三角関係みたいになっていくんでしょうか、ジョスランがフェードルの性癖を受け止めきれるのかどうか。今回も若干危うく見えるところありましたし。とはいえ、こちらは楽しみの方が多いです。既刊あと6冊、貴族たちの名前忘れないうちに次も。 評価 ☆☆☆☆(8) ◆ まもなく電車が出現します (似鳥 鶏/創元推理文庫) 【amazon】 《あらすじ》 芸術棟が封鎖され、困ったクラブや同好会が新たな棲処を探し始めた。美術部の僕は美術室に移動して、無事作品に取り掛かれるかと思いきや、美術部の領地と思しき開かずの間をめぐる鉄研と映研の争いに、否応なく巻き込まれてしまう。しかし翌日、その開かずの間に突如異様な鉄道模型が出現!? 表題作を含む五編収録の、山あり谷ありで事件に満ちたコミカルな学園ミステリ短編集。 柳瀬さんの分かりづらい恋心がかわいらしい学園青春ミステリ、今回は短編集。 なんということでしょう! と2度叫んだ最後の短編でした。5つ短編が収録されているんですが、メインは最後の「今日から彼氏」。購入前にこのタイトルだけ知っていて、きっと柳瀬さんと葉山くんにニヤニヤできる話だと思っていたんですよ。そうしたら、そうしたら! 葉山くんは事情抱えた女の子ホイホイすぎると思います。葉山くんを選ぶ女の子たちは見る目あるし、また今回も女の子かわいいから、どうなるかとハラハラしました。推理できてれば安心なんでしょうけど、推理できてるわけないですし。もし彼女が最初から正攻法でいってたらどうなってたんでしょう。柳瀬さん負けないとは思うんですが。 で、めでたしめでたしと思ったところに。葉山くんやるじゃない! 事情が分かったとはいえ別れた直後にそれはどうなんだと少しツッコミたくもなりましたが、柳瀬さんが嬉しそうなので許す。柳瀬さんの本心が大分見れたし、よい短編でした。 他の短編も苦いけれど小粋な謎で面白かったです、三野にもあっさり騙されました。このシリーズは長編よりも短編の方がシンプルにまとまっていてミステリ的に好き。でも、柳瀬さんが見れればなんでもよかったりも。「嫁と竜〜」の食事する柳瀬さんかわいいです。これで既刊は読みつくしましたが、少し関係が進んだ2人が見れるだろう続きが楽しみ。 評価 ☆☆☆★(7) |