12月15日(木) |
【最近読んだ本】 ◆ 妓楼には鍵の姫が住まう ―死人視の男― (水瀬 桂子/f-clan文庫) 【amazon】 《あらすじ》 死人が見える目を持つ黄泉がえりの誠二は、生きている実感を持てず、日々を怠惰に過ごしていた。だが深夜の妓楼で 美青年を従えた妖艶で高慢な少女、紅羽と出会う。どこへでも出入りできる不思議な鍵を持ち、化け物姫の異名をとる紅羽。「わらわの下僕となって働け」と、 街で起こっている殺人事件の解明を手伝うよう命じられ、自らの力を疎ましく思っている誠二は拒絶するが……。 10月に創刊されたf-clan文庫の1冊。f-clan読むのははじめて、レーベルは評判いいし、渡瀬桂子さんの別名義とも聞いていたので期待していました。 じんわり染み入るいい話でした。 史実と少し異なる江戸の街が舞台、生きがいが見つからない「死人視」の男が、不思議な少女に出会うお話。読んでいる途中でまず思ったのが、「こういうお話もf-clanは出していくんだな」ということ。男性主人公で落ち着いた雰囲気で、今の少女小説レーベルではほとんど読めなそう。読める話の幅が広がるのはいいことです。 で、幅が広がっただけでなく、きちんと面白かったです。物語の雰囲気がよかったんですよね。全体的に漂う寂しげな空気が綺麗だったし、無目的に生きていた主役の誠二が、紅羽と出会ってから心揺さぶられていく、その心理描写も情感溢れていて好き。紅羽がまた寂しさを抱えた女の子で、ツンツンした誠二との会話が、楽しいだけでなく微笑ましくもありました。 特筆したいのがいい女たちの存在。誠二の馴染みである花魁2人が、どちらも素敵な女性でした。誠二が投げやりに生きている間も、誠二の奥の部分を見て心配してくれていて、そのことが後になって分かる。切ないけど優しい、こういうの弱いです。最後の夕月さんがね、もうね。 主役2人の関係がよかったので続き読めるといいです。できれば恋愛方面行かずにもっと見ていたい。 評価 ☆☆☆★(7) |
12月11日(日) |
コミケカタログ購入後の定例更新、ライトノベル作家さんサークルリストC81版。今回はキャリアあって初参加される方は見当たらず。その代わり、このラノ文庫の藍上ゆうさん、フェザー文庫の絹野帽子さんといった今年デビューされた作家さんの名前が見受けられます。 あとは企業ブースの充実が目立ちます。電撃スマイル文庫は目玉ですね。 |
12月10日(土) |
金星特急とコミケカタログを探してあちこち駆け回った日でした。普段bk1に頼ってると、どの書店でウィングス文庫扱ってるか分からなくて困ります。三省堂ありがとう。 【最近読んだ本】 ◆ 金星特急5 (嬉野 君/ウィングス文庫) 【amazon】 《あらすじ》 夏草(なつくさ)と三月(さんがつ)を雇い金星特急を追う錆丸(さびまる)。 だがイスタンブールで戦闘集団イェニツェリに捕まり、純国語普及委員会に監禁されてしまう。 狙いは錆丸の持つ金星の情報。 正しい世界語(シージエユー)の普及を推進する団体である純国普が、なぜ金星について知りたがるのか? 疑問を覚えつつも錆丸は独力での脱出を試みる。 一方、特急内の砂鉄は無事一命を取り留める。 ところがその直後、突然列車が乗客たちを降ろして走り去ってしまい!? 物語はいよいよ核心へ――。 人気シリーズ第五弾!! 「このライトノベルがすごい」でも57位にランクインした、冒険と恋のファンタジー「金星特急」第5巻。本誌で一度読んでますが、再読でも面白いし番外編もあるし、半年に一度のこの日を待ってました。そんなわけで、まずは雑誌読了時の感想。 ------------------------------------------------- まずは列車内部の方から。8話の引き方はこちらもピンチだったのでハラハラしてたら割とあっさり、殿下凄い。殿下の株が8話から急上昇中です。砂鉄に対する仕返しもお見事、なんて効果的な揺さぶり。 起きたユースタスは笑わせてくれました。「プリン!」って。「!」じゃないよあなた。読む手がしばらく止まりましたよ。で、その後の腹ごしらえ。砂鉄の嫉妬おいしいです、食べ物1つでこの一喜一憂。でもその後のユースタス見ると嫉妬する気持ちも分かりました。このプリン脳がひどい。ほんとひどい。 そして、プリン脳の後の砂鉄視点のときめきがやばかった。あの砂鉄がこんなにはっきりと! 交換がもうたまらない! ユースタスもプリン脳なだけじゃなくて、髪触れにゴロゴロ。この2人はときめきの塊。 このときめきに水を差す不埒な男は樹になってしまえばいい。なんて嫌らしい揺さぶり。ユースタスは思い込んだら頑なそうなので不安です。もう1人の追っかけがキーマンに なったり? 錆丸サイドは、錆丸の成長の半端なさに驚かされっぱなしでした、危機を切り抜ける過程がかっこいいかっこいい。脱出時の度胸も素敵だけれど、種まいたり脱出後に機転利かせたりといった知恵や観察力が光ってました。先生も優秀でしたが、生徒も実に優秀。そんな中、純国普の狙いははっきり見えましたが、金星の謎の方は分かってないし、8話での面々も今回は登場せずで焦れ焦れ。先が気になります。 最後に終わり方について。安心した自分がいます。平和って素晴らしい! ここ何話かの引き方は鬼すぎた。8話読んだときは、この調子で加速して12話くらいで終わっちゃう可能性もあるのかなと思ってましたが、今回少し落ち着いたしまだまだ続きそうですね、よかった。来月の書き下ろしに巻頭カラー、楽しみ! ----------------------------- 三月ー! どのパートもドキドキさせられて面白さが止まらないんですが、中でも今回一番心にきたのは錆丸パートでした。4巻の書き下ろしを踏まえてこうくるとは。密度が一段と濃くて見所ばかりでしたが、感想を書くならば、最後の3人がとても好きだ、というところに尽きると思います。三月が安らげそうでよかった。錆丸すごい。 しかし夏草さん、その場面で未読切れたらってあなた! いや大事ですけどね、あの人とかあの人とか何冊も持ち歩いてますしね。私事をいえば、最近は携帯でオンライン小説が読めるので怖くないという。閑話休題。 砂鉄パートは、砂鉄かっこよすぎるでしょう。出番少なめでもこれだけで十分。砂鉄は胸キュンのツボを押さえすぎだと思います。ユースタスは思いつめて変な動きしそうなので、ちゃんと砂鉄が繋ぎ止めますように。 あとは殿下、月長石のときの姿を見て無敵な人かと思ったら、そんなことなかったようで。「会いたい」から真摯さが伝わってきてよかった。宣戦の言葉にはしびれました、今までで一番かっこいい殿下。 分からないことがたくさんある中、世界語については明らかに。分裂していくくだりが面白かったです。世界語ができて余計に、っていうのは残酷。 金星は昔は協力したけど、今は違う、というのが素直なとらえ方、なのかなあ。でも、今の金星見てるとそういった目的には思えないんですよね。思考が人間離れしてて予想できない。最後の子供っぽさが怖いですよ! おまけに彗星も怖いです、娼婦見ただけでこの反応はまずいまずい。ウェルカメラしかないなら仲睦まじい様子は映ってないと思うんですが、3巻パラパラしたら、恋する乙女なら察してもおかしくない。そもそもウェルの動きはいまいち分からないので、どこかで「ウェルは見た!」みたいなのがあってもおかしくない。金星的には恋するユースタスに手出すわけはないですけど、察した彗星がどうなるか……怖い。 また三ヶ月待ちが遠いです、3巻や4巻の引きと比べればマシとはいえ。 ------------------------------------------------- 2回分なので長いです。改めて通して読むと5巻は錆丸の巻ですね、度胸も機転も素晴らしい。三月と向かい合える強さに惹きつけられます。 書き下ろしの夏草編は重かった。出身地は純国普にやられてたんですね……。名付け親が砂鉄だったのは意外。最後の鎖様の優しさにじんわり、そんな過去が。 ペーパーもよかったですね 錆丸の女装かわいいし、砂鉄の動揺もかわいいし。この人ユースタスに惚れすぎです。最後のイラストもGJ、Twitterで見てましたが、あの笑顔の破壊力は強烈。外道の手からユースタスを幸せにしてあげて! 評価 ☆☆☆☆★(9) |
12月9日(金) |
【最近読んだ本】 ◆ 身代わり花嫁と公爵の事情 (奥山 鏡/ウィングス文庫) 【amazon】 《あらすじ》 まさか姉上と入れ替わって、弟の僕がお嫁入り──!? フランの双子の姉が「結婚式には帰る」と手紙を残して出奔した。フランは仕方なく女装して、嫁ぎ先のミストワーズ公爵家で(姉の)婚約者殿と対面。すると、「私は生粋の女嫌い。生涯、あなたと同衾はできない」と宣言されてしまう。でも彼は優しい人で、その心に大きな傷を負っていた。姉のふりをする間に、フランが彼にしてあげられることはあるだろうか……?笑いと涙で織りなした、ハートフル・ファンタジー♪ ウィングスの新人さん作品は、中篇2本収録のファンタジー。奥山さんの作品は本誌でいくつか読んでいて、どれも面白いので楽しみにしていました。 ニヤニヤできるお話と愉快なお話、どちらも楽しかった! 1作目は、双子の姉の一時的な身代わりとして公爵に嫁いだら、彼は男色家で……というお話。これは設定の勝利ですねー。男色家相手に女性の姿で嫁ぐ。そして公爵は男なことに気づかない。ここがポイントで、表面設定はBLでもそんな雰囲気があまり感じられない、かわいらしいお話になってました。お気に入りポイントは公爵に惹かれていることを自覚しかけてからのフランの複雑なモヤモヤ。このモヤモヤはこの設定ならでは、狼狽したり落ち込んだりするフランがかわいかったです。 あと素敵だったのは双子の姉さん、こういう痛快な姉がいると押しに弱い系の弟が映えますよね。最後の悪巧みの対照的な2人が好きです。。しかし、本誌で掲載されたときに「BLのようだから」とスルーした自分が恨めしいです。食わず嫌いはよくない。 もう1本は別の公爵の結婚話。これがまた楽しかった、主役の公爵の愉快さが物凄かったです。明らかにネジが飛んでる思考回路をもっているのに、公爵本人をそれを自覚していなくて、内面描写のことごとくがおかしい。例えば、『妻の安寧を守るのは夫たる私の崇高な使命。私は脱兎顔負けの敏捷さで身を伏せた。』伝わりにくいかもですがこんな感じ。大真面目にノリノリです。何度笑ったことか。 そんな公爵が何故か笑ってくれない妻の笑顔を見たくて奮闘する、これが楽しくないはずがない。真相は「膨れ顔の秘密はそんなですか! 惚れポイントそこか!」などツッコミいれたくなるところもありましたが、妻のこのずれ方は公爵にお似合い。かわいらしい夫婦が見れてとても満足でした。ささやかに1話のその後が見えるのもよかったです。 話の構成的に続きはなさそうですが、他話のストックも多いはずなので、そう長い期間置かずに別作品も出るのではないでしょうか。楽しみです。 評価 ☆☆☆☆(8) |
12月5日(月) |
予定通りオンノベ充です。芙蓉第3部面白い! sari-sariは無料続けてくれそうなので、安心して連載追います。 今月の購入予定。金星特急5巻まであと5日です。コバルトがいつもの年末前倒しで6冊も。 【最近読んだ本】 ◆ 悪魔が来たりて恋を知る (小野上 明夜/一迅社文庫アイリス) 【amazon】 《あらすじ》 高潔な魂を持つ聖騎士・ユーシウスを堕落させるため、人間界に送られた夢魔のミアリ。媚薬の力でユーシウスを夢中にさせようとするが、逆に薬を飲まされ彼に恋をしてしまう! 媚薬で積極的になったミアリの誘惑をはねのけ、彼女が半魔だと聞き出したユーシウスは『君を人間の淑女にする』と宣言して――!? 臆病で引っ込み思案な恋する夢魔と、生真面目で不器用な堅物騎士が繰り広げるキュートなラブファンタジー☆ 「死神姫の再婚」の小野上さんのアイリス進出作品。堅物騎士に釣られました。 これは良い堅物騎士でした! 腐敗した騎士団の中で孤軍奮闘するユーシウスのもとに、夢魔ミアリがやってくるお話。ユーシウスが帯の「君はまず服を着たまえ!」で期待したとおりの堅物で、篭絡されっぷりが楽しかった! ミアリの「夢魔だけど人がよくてかわいい、でもちょっと変態」なところが堅物と見事にハマっていて、人のよさにほだされ、変態っぷりにペースを乱され、見かけや体にも誘惑され、とユーシアスが翻弄されるのにニヤニヤ。カルガと一緒に篭絡作戦あたりのやりとりが好きです、必死なユーシアスと変な迫り方するミアリ、傍から見るとイチャイチャで2人ともかわいい。 カップルのイチャイチャ以外のお話もなかなかよかったです。はじめは「ラブコメだけでいい、脇キャラとか騎士団の陰謀とかいらないから!」と思って読んでましたが、途中から脇キャラに魅力が出てきて、話もうまく主役2人と絡めたなー、と。騎士嫌いのカルガがユーシウスの真面目さに負けるのはベタながらニヤリとしました、陥落しても毒舌なのもいいところ。アドルニも後半のヒーローっぷりにちょっとときめきました、これで序盤でもう少しいいところ見せてくれてればもっと、とも思いましたけど、脇役だしこれくらいがいいのかも。 現段階では死神姫よりもこっちの方が好き。1冊でもまとまってますが、この2人もっと見たいので続きあるといいです。 評価 ☆☆☆☆(8) |