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 9月15日(土)


<最近読んだ本>


RINGADAWN〈リンガドン〉 虚戦士と終わりの鐘 (あやめ ゆう/C★NOVELSファンタジア)amazon
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1巻2巻と素晴らしかったファンタジー「RINGADAWN」シリーズ最終巻。

最終巻も最高でした! 孤児院で暮らしていた王の落胤の少女と、殺し屋に育てられた少年を中心にした物語。まず、流れに巻き込まれつつ生きる少年少女ってだけでも好みの話で、優しい普通の少女であるミルナが運命に立ち向かおうと決めるまでの流れとかそれだけで好き。

なんですけど、さらに前巻までの登場人物たちも加わって描かれる物語が、もう抜群に好みでした。物語が終わった後も彼らが歩み続けているのが分かって、しかもその歩み方、大切なただ1つのために清濁関係なく受け止めて立つ姿が、格好良くて愛おしい。カミナの飄々とした格好良さは言わずもがなですし、性格悪く進む妖精王の率直さも好き。ノルンの見せる必死さにもキュンときました。皆が皆好きです。

名シーン一杯ありましたけど、特に3つある幕間の最後がお気に入り。英語の副題が切なく、妖精の浮かべる光景が美しい。この作者さんの、心に響くシーンの文章が凄くツボなんですよね。そして良い男女の関係が多いので、ときめきが半端ない。カミナとイセリナが一番好きかな。

終わり方もよかったなあ、御伽話の終わりがシリーズ全部に通じてて、余韻にしみじみ。次回作ももうすぐ出るようで、全然違った雰囲気のお話みたいですが楽しみです。

評価 ☆☆☆☆★(9)



 
 9月13日(木)


<最近読んだ本>


STEINS;GATE シュタインズ・ゲート 比翼連理のアンダーリン1〜3 (海羽 超史郎/富士見ドラゴンブック)amazon
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「ラスト・ビジョン」の海羽さんがおくるシュタゲファンディスクのノベライズ。完結を待って一気読みしました。というよりは1巻の引きが強烈で一気読みさせられました。

ファンディスク本編からのアレンジが大胆で面白かったです。1巻読んでいる間は、ところどころ違和感を覚えつつも、ファンディスク全ルートよく押し込んでるなあと感心しつつ読んでました。そしたら1巻ラストでガツンと。そういうひっくり返しか! 12号機壊れてなかった、の使い方が猛烈にうまい。先日読んだR&Rといいこれといい、知らない側の視点って切ないです。あとデレ綯はどう見てもおかしいよなあ怪しいよなあと思ってたら案の定でした。

2巻以降はオリジナル部分のアレンジ加減が面白かったです。助手・鈴羽・ダルでのオカリン見守りがあったかくて笑えて切ない。綯の立ち位置が片腕っていうのも面白い設定。一方で、ファンディスクの話も交えて進むお話は、誰がどこまで知っているのか、何が起こっているのか、情報が錯綜しすぎて正直理解できない部分もありました。オカリンもループごとに微妙に記憶違ってそうで、完全理解はあっさり断念。

ただ、細部は分からないことだらけでも、タイムリープが変わるまでの仕掛け、そして何をしたかったのかというキャラの想いははっきりしていたおかげか、消化不良感は全くなくて、いい読後感。特にあんだーりんの終わり方、突き立てて終わる刹那具合が好みでした。愛憎混じりすぎててどうなるか分かりませんけれど、片腕発言が何か響いたと信じてます。

次は海羽さんのオリジナル見れたら嬉しいな。以下余談。あとがきに出てきた某ノベライズ、多分読んだことあるやつだろうなと自分の感想を見にいったら、同じような感想書いてました。こりゃ主人公外道だわ。

評価 ☆☆☆★(7)



 
 9月10日(月)


<最近読んだ本>

少女小説家は死なない! (氷室 冴子/集英社文庫コバルト・シリーズ)amazon
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随分前に買って積んであった氷室さん作品。「月の輝く夜に」に短編収録、と聞いて、それならこのタイミングでと手にとりました。

「この少女小説家たちがひどい!」なコメディでした。上京してきて前途洋洋の大学生活が待っているはずの主人公の家に、傍若無人を地で行く少女小説家のセンセが住み着くお話。読み始めるまでは「同居する話」くらいの情報しかなかったんですけど、いやー、センセが実にひどいキャラでした。

書くもののセンスがおかしいとか恐ろしいまでの図々しさとかは置いとくにしても、ファンレターをネタにして脅迫はマジに鬼畜な所業。たった一度の気の迷いのせいで蹂躙される主人公があまりに不憫で、最初は少しイラっとするところもありました。でも、進むうちにあまりの突き抜けっぷりに笑えてきました、というか、他にもひどい人たちが出てきて、主人公も適応してきて、もう笑うしかない状態に。

だって少女小説家5人も出てきて、みんなひどいんですよ。作風がまずぶっ壊れているし、性格もぶっ壊れているし。センセが真人間に見えてくる……それは嘘か。ハーレーさんが一番真っ当かな、相対的に。逆に一番強烈だったのは都さん、この女子校育ち恐ろしい。○使って伏せてあるとはいえ、アレな4文字ワードまで出てくるとは。当時のコバルトはこれも許容してたんだなあという実感含みで強烈でした。

とまあひどかったんですけど、タイトルの意味が分かるラストが、不思議と気持ちいいし、楽しかったです。不憫な人たちは最後まで不憫なままでしたが……。

評価 ☆☆☆★(7)



親愛なる花盗人へ恋の罠を ご主人様なシリーズ (宇津田 晴/ルルル文庫)amazon
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安心のベタ甘作家の宇津田さんがおくる1冊完結の「ご主人様なシリーズ」、シリーズ最終巻。

最後まで甘々ごちそうさまでした。シリーズにずっと登場してきたアロイスと騎士で姫なフリーダの恋物語、これはフリーダかわいかったなあ。どうみても無理だろうという篭絡の命を真に受けて、背伸びしまくってアロイスに迫る姿がかわいいかわいい。これはアロイス落ちますね。どうみても恋してるのに自覚しないアロイスもかわいかったー。

兄様が2人をくっつけようとして指示してるのが一瞬で見破れるので、「これ兄様楽しんでるんだろうなあ、楽しいなあ」とニヤニヤしながら読んでました。途中、お邪魔野郎がフリーダにちょっかい出しているあたりは結構危うい感じで、「おい兄様何放置してるの」と、ぐるぐるしてるアロイスよりも兄様に憤り感じましたけどね。

シリーズ最終巻だけあって、今までのキャラ勢揃いなのも嬉しかったポイント。アロイス愛されてるなあ、義兄にアドバイスするパミーナが好き。カールさん孫はそうきましたか、なるほどなー。

マリアーヌと違って今回は最後まで読めてよかったです。次回作も来月出るようで楽しみに待ってます。

評価 ☆☆☆★(7)



 
 9月4日(火)


<最近読んだ本>

RINGADAWN〈リンガドン〉 幽霊街と呪い笛吹き (あやめ ゆう/C★NOVELSファンタジア)amazon
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1巻がよかったので楽しみに積んでおいた、ファンタジーの第2巻。

このシリーズやっぱり好きです! 主要キャラは1巻と総替えでしたが、1巻と同等の面白さでした。
税務官のイセリナが、人っ子1人いない「幽霊街」を発見し、その謎を幼馴染の軍師と一緒に調査するお話。上手いなあと思った一つが謎の描き方、「幽霊街」が御伽話と関連して描かれていて不思議めいていて、何が原因なのかワクワクするスタート。さらに中盤では不可解な人死になども起こり、「どういうことなの……???」ともう疑問符一杯で、お話に惹きこまれました。
そこからの謎の明かし方もお見事。語られる真相は意外性も納得感もたっぷり。税調査の資料が間違ってるって発想はなかったなあ。真相を語るカミナは軍師だけあって知略からくるひっくり返しに痛快さがあって、でもそれだけだけじゃなく、思想からくる熱さは純粋で格好良く。かといって作品全体の空気は熱くなりすぎることもなく、描写には淡々としたところもあって。あまり読んだことがない感覚で、この空気が気に入りました。本文で出てくる表現で例えるなら、風が吹いているように流れる物語でしょうか。荒野をイメージします。

キャラの描写も1巻と同様に素晴らしかったです、特に主役3人。幼馴染で思想が分かたれた2人の貴族、胡散臭い軍師と女騎士、といった設定だけでもなかなかときめく関係で、その繋がりを語りすぎずに描くサラッとした味わいがよかったです。幼い頃の2人の様子、ノルンの率直さなどいいシーン色々ありましたが、一番好きなのはイセリナとカミナの信頼関係の描き方。行動に表れていたカミナの信頼、そしてそれが分かり、イセリナも信じたからこそのラストシーンの美しさ。この後味がたまらない。

本当、評判買いしてよかったシリーズです、Cノベは時々こういう刺さる作品出してくれますね。最終巻は今週読みます楽しみ。

評価 ☆☆☆☆★(9)



R&R (静月 遠火/メディアワークス文庫)amazon
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ループ物と聞いて面白そうなので買ってみた、久々のメディアワークス文庫。

評判通りの新鮮な視点でした。1日をループする謎の現象から抜けだそうとする男の子、と接する1人の女の子(ループ外)の視点で描かれる物語。ループ外視点っていうのが新鮮でした、会うたびに千瀬のアプローチが少しずつ変わっていったり、たまに感情が不安定になったりするのが面白い。ただ会い続けるだけでなく、途中でおっと思う事件も挟んだりしていたりするし、女の子1人称好きなのもあって、同じ1日繰り返しでも全く飽きずに読めました。
何より、千瀬の様子から百音が大切な存在なのが伝わってくるのがよかったです。怪しみつつもこんな親身になってくれる子いたらそりゃ惚れるに決まってるわけで、でも百音の記憶は継続しないなんて切ないに決まってるわけで。名前呼び、本当に偶然なんでしょうけど、とてもときめきました。

ループの謎自体は単純でしたけど、後半まで気づけなくて、おかげで途中までの謎の追っかけも(まあ解決しても駄目だろうとは察しつつも)楽しめました。風が吹けば桶屋が儲かる解説あたりは、かなり力技でしたけども細かい伏線活かしててお気に入り。
エピローグ直前、端役2人をあっさりくっつけちゃうあたりは少し恋愛的にずるいなと感じましたが、エピローグは未来しか見えない綺麗な着地。読んでよかったです。

評価 ☆☆☆★(7)



 
 9月2日(日)


<最近読んだ本>

千年ジュリエット (初野 晴/角川書店)amazon
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文化祭と聞いて、文庫化待てずに買ってしまった「ハルチカ」シリーズ最新刊。

文化祭ということでいつもよりも重たさ2割減、楽しさ2割増しで面白かったです。全4篇の中で一番楽しかったのは「決闘戯曲」、冒頭のハルチカのやりとりのバカバカしさがまず愉快、台無しにしちゃうハルタひどい。チカの一人称感性もやっぱり好きだなあ、チカは他人からの視点では普通の女子高生に見られてて、そのギャップがまた楽しいです。ミステリ部分の謎解き試行錯誤もテンポ 比較的簡単なオチに気づけなかったのは悔しかったですけど、爽やかさがありました。

で、全編こんな雰囲気かと思わせておいて、そうはいかないという最後の話。病院物は切ないですね、「さようならの回数がゼロ」っていう表現の寂しさが胸にきました。そして、1人になってからの不意打ちがなんとも見事、おまけに他話とのリンク、そう繋げるとは! 初野さんリンクさせるの好きですねえ、こういうの嫌いじゃないです。新キャラの性別も見抜けなかったです、ハルタだけじゃなくチカも見抜いたのが少し意外でした。入部してからどうするんでしょう?

お話内容以外で少し特筆したいのは、最初の話での後藤さん。スナフキン論にふらふら惹きつけられる後藤さんかわいい。後藤さんは脇役の中で一番気に入ってます、チカほどじゃないけど変なところがあって、出てくると目が離せない。今回は途中から出番皆無だったのがちょっと残念でした、もう少し出番増えるといいです。キャラ多いから難しいでしょうけども……。

評価 ☆☆☆☆(8)



銀竜姫とかわいい恋人のススメ (斉藤 百伽/ルルル文庫)amazon
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去年デビューの個人的注目作家さんの3作目は、まさかの続編。続きそうで続かない終わり方だと思っていたので少しびっくりでした。

兄たちが案の定なキャラでした。嫁ぎ先に乗り込んでくるくらいだからそりゃ兄馬鹿だろうと思ってましたが、やっぱりなカリアス妨害っぷり。頑固な長男なんてもうイメージ通りですよ。少しは妹の幸せ考えてやったらどうだともと思いましたが、まあ兄馬鹿ならこれくらい許されます。

そして妨害のおかげで、カリアスとレアが今回も可愛かったです。特にカリアスは兄たちによる焦らしプレイによく耐えたと思います、手も繋げないのにイチャつき作戦とかおいしいに決まってます。レアが嫉妬や寂しさを感じるようになるのも初々しくてよかったなあ。

後半シリアスになってからは少し強引な展開だったかな、前半と後半がアンバランスでした。これなら兄たちの個性をもう少し見たかったなあと思いました。デビュー作のときも展開には荒削りなところも感じましたし、その辺りは苦手なのかも。
とはいえ、この人の描く可愛さはとても好きなので、次回作も楽しみに待ちます。

評価 ☆☆☆★(7)



三国志 第一巻 (宮城谷 昌光/文春文庫)amazon
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恋戦記で三国志熱高まったので、何か読もうと思って選んだ1冊。中学高校くらいまでは吉川三国志や超三国志を読んでましたが、ちゃんとした文庫三国志に手を出すのはそれ以来。

あれ、三国時代がはじまらないよ? 著者の方が「三国時代を理解するためには宦官の趨勢を理解する必要がある」とのことで、後漢時代を描いた1冊。知っている人物が出てこないのにちょっとがっかりし、でも歴史小説として普通に面白かったです。最初読みづらさはあったものの、安帝の愚政あたりから流れが分かってきて、知らない歴史の流れを知れて面白かったです。
宦官は一度衰えて官吏の勢力が強くて、それが壊れた反動でまた宦官が重用されて、ってことだったんですねえ。三国志で宦官の重用と無能に疑問を抱いたことが昔あって、これでようやく理解ができました。
しかし安帝といい梁冀といい、トップの無能は実にたち悪いですね、諌める官吏がことごとく報われないのが無常。曹騰も曹操の祖父ということで有能かと思ったらそうでもなさそうで。ここからどう三国時代に突入するのか、2巻も読もうと思います。いまさら全10巻以上と聞いて少し尻込みもしてるんですが……。

評価 ☆☆☆(6)