12月31日(月) |
当たり本に出会ったりコミケに行ったりな年末。まとめ記事は今日の夜か明日に。 <最近読んだ本> ◆ とある飛空士への追憶 (犬村 小六/小学館) 【amazon】 言わずとしれた評判作、の加筆修正されたソフトカバー版。元々はガガガ文庫から出ていた作品ですが、「大きな理由ができない限りガガガ文庫には手をつけない」というポリシーがあったためにこれまで読んでませんでした。去年の映画化の影響でソフトカバーされたので読んでみました、という経緯。 聞きしに勝る傑作でした。評判はいいし、空戦でボーイミーツガールというのは好みそうだし、と面白いことは分かっていたんですけど、ここまでとは。 何に驚いたって情景描写の上手さ。色んな姿を見せる空と海の光景が鮮やかな表現で描かれていて、それだけで読み応えあり。こういう上手さがあるとは思っていなかったのでびっくりでした。特にファナがはじめて空に出たときに感じた美しさは確かに美しいものとして感じられて、そこまでも面白かったんですけど、ここでガツンと持ってかれました。 ボーイミーツガールな恋愛物語として特によかったのは、誰もいない島でのひととき。別れがあることが運命づけられているストーリーに楽しい時間が用意されているのはお約束ですけども、日中のきらきらした楽しさと酔っ払った2人の本音の甘酸っぱさ苦しさが濃縮されたひとときは叫びたくなるくらい素敵でした。 そしてスリリングな空戦を経てのラストシーンがまた抜群に綺麗だった。心の思い出の話題が出たときは島のひとときでいいんじゃないかとも思ったんですけど、こんな清々しくも切ないダンス見せられたらそんなことは言えない。ダンスの伏線をこう使うのが粋だし、拍手喝采。 エピローグの締め方も上手かったなあ、手紙とか本とかそういう締め方には弱いんですよ。エピローグなくても満足でしたが、あって良かったと思います。最後の2ページ、この余韻の残り方は好き、とても好き。完璧な着地でした、よかった。 期待より一段上の王道を見せてくれたお話でした、当時の評価にも納得。続き読みたいのでガガガ文庫解禁を決めました。続きは追憶ほどではないという話も聞くので、あまり期待値上げずに読もうかと思います。 評価 ☆☆☆☆★(9) ◆ ブレイブレイド2 鉄鎖の泉 (あやめ ゆう/C★NOVELSファンタジア) 【amazon】 今年の個人的ヒット作家のあやめゆうさんがおくる、英雄の息子のひねくれ主人公のファンタジー「ブレイブレイド」第2巻。 やっぱりあやめさんの作品大好きだなと思わされた1冊でした。謎をちょこちょこ混ぜて組立てが上手いストーリー、クソッタレな世界で生きるキャラたちの魅力、心に響く文章、全部好きです。この「好き」はツボにハマった好きだなとも思うのですが、「アルデラミン」やその辺りのファンタジーなラノベ読む人にも好きな人多いんじゃないかなと思います。外面だけ見ると、落ちこぼれ系で能力持った主人公+旅する女の子1人+それを追いかける女の子たくさんという感じで今流行りのハーレム系に見えなくもないですが、中身はそこから大分ひねくれてます。 で今巻の感想、今回一番印象的だったのはジンの考え方。誰もが恨みや恋にとらわれて危急の際でも自分勝手に生きる中、それを是とも非ともせず、こちらも好き勝手やるという生き方は容赦なく。でもその「好き勝手」のあり方が真っ当で気持ちいい、善ではないけれどいい主人公です。特に、自分の人生を上から好き勝手いじられるのは許せないという腹立ちのぶつけ方が凄かった。 旅してジンとマキナの関係が変わってきたのもいいところ。マキナはいいキャラになってきたなと思います、単に人らしさを見せるようになっただけでなく、ジンの影響があるのがいい。これも素敵な自分勝手の形。 今回はゲストキャラもかなり目立ってました、イルマの冷めた心が行き着く場所は「そうくるか」という面白さがあったし、オスヴァルトの年の功もよかったなあ。ジンが敵わない相手もいるってことを突きつけてくれるのが面白かった。 別路線組ではなんといってもローズ、出番は少なかったけどこのお兄ちゃん大好きっ子かわいい。「お兄ちゃんさすが!だけど……」な感情の発露が凄くよかった。次は出番多めということで楽しみ、この兄妹はまたちゃんと暮らせるようになるといいです。アニスだけがキャラ立ち弱いままなのも次で解消されるかな? 評価 ☆☆☆☆★(9) |
12月20日(木) |
本を読まないと更新しない法則。オンノベ読みモードに入り、他にやることもあったりして読めてません。年明け過ぎまでこの読書ペース続く見込み。 あと、いまさらながらエヴァ映画版を序からQまでガガッと見ました。Qの感想が皆楽しそうでつい。もろにエヴァ世代なのに、エヴァ見るのこれがはじめて。で、評判になるだけはありますねやっぱり。破が凄かった。そして今日見たQがまた面白かった、というかずるかった。ほんとに予告が予告だし! しかも絶対フェイクあると思ったら直球だし! 濃い105分でした。TV版からどう変わってるのかが気になってきましたが、見るのも大変なので大人しくネタバレwikiでも見ます。 <最近読んだ本> ◆ 六花の勇者3 (山形 石雄/集英社スーパーダッシュ文庫) 【amazon】 このラノで3位に入った、疑心暗鬼な設定で緊張感あるファンタジー「六花の勇者」第3巻。 今回も安定の面白さでした。チャモを救うためにアドレットたちが奔走する前半とゴルドフ視点での種明かしパートの後編に分かれた構成。この構成がまず良かったなと思います。前半の訳が分からないよ感が後半で少しずつ解消されていくだけでなく、前半踊らされていたことも分かっていくのが楽しい。2巻まででアドレットの活躍見せておいて、3巻で失敗を見せつけられるのはやられた感ありました。 でもゴルドフの「失望したぞ」は言いすぎですけど! いやあなたも全然分からなかったし、こんなの分かるわけないって! 挑発して誘導するための発言だと思ったのに失望しました。いや嘘ですけど。 途中まではミステリ的に謎が解けると思って読んでいたので(諦めたんですが)、見隠しの凶魔の謎は少しずるいなと思ったりもしましたが、それ除けば謎も一筋縄じゃなくて面白かったです。 そしてもう一つの柱、ゴルドフの物語。2巻まではいまいち格好良さが見えなくて好きになれなかったキャラですが、この巻で語られたエピソードは良かったなあ。過去エピソード的なものには弱いのです、この出会いは良い絆。ゴルドフは要領悪すぎで格好良いとは言いづらいのですけど、馬鹿みたいに一途な想いの熱さは好きです。願いが果たされたラストに満足。 また良いところで引いて、次で核心に踏み込んでくるんでしょうか。チャモ、ゴルドフはテグネウの七人目候補から消えたとして、相当候補が減ったような。多重人格的なものも視野にいれるべき? 今回テグネウが露出しすぎたのも怪しい、釘は効かないのかもなあ。 実はカーグイックも1人送り込んでる展開あると……いやないか。そうなったらさすがに何でもありすぎ感が。見当違い予想には定評あるので大人しく続き待ちます。 評価 ☆☆☆☆(8) ◆ クリムゾンの迷宮 (貴志 祐介/角川ホラー文庫) 【amazon】 昔から名前は知っていたけど読んでいなかった現代迷宮ホラー。貴志さん作品を一作読んでみたくなって手にとりました。 面白さが色褪せない古典名作でした。現代人たちが見知らぬ土地に集められてサバイバル、のちにホラーというお話。こういうサバイバルのうちに人死にが出てくる設定自体は発売当時でも目新しくなかったと思うんですが、ディティールまでしっかり描写されていて今読んでも面白い。特に人死にが生まれる状況作りなんかが上手かったです、協力し合えない探りあいの空気に狂気の予感があるし、映像の明るさも気味悪いしで、グール誕生の胸糞悪さが自然でした。 そして、グールがなかなかに怖かったです。瞬間的な怖さはないんですけど、人食いは予想はできていてもホラーだし、後半のじわじわと追い詰められていく感が恐ろしい。ラスト手前が一番怖かったかな。 藍については結構序盤から怪しかったし途中で主催者側と気づいたので、思ったより引っ張ったなあ。でも目カメラ気づいてない時点で負けなんですけれどね。それは気づけ。 個人的にはもう少し主催者との対決ある展開の方が好みなんですが、ラスト1ページの締め方は余韻たっぷりで良かった。何気ないようで、紅い光景が意外と味わい深かったです。別作品もタイミング合えば読もうかと思います。 評価 ☆☆☆★(7) |