3月10日(日) |
<最近読んだ本> ◆ 伯爵令嬢の華麗ならざる結婚事情 〜愛だけじゃたりない!〜 (湊 ようこ/コバルト文庫) 【amazon】 「氷雪王の求婚」「たとえ許されない恋だとしても」の湊さんの待望の新作は、今までとはうってかわってのコミカルなファンタジー。 楽しかったー、これ大好きです! 親のせいで貧乏になった貴族の少女と、借金踏み倒されて貧乏になった銀行の若頭取、貧乏同士の2人がお互いを金持ちだと勘違いして結婚しちゃうお話。ひねくれたお約束設定ですね。こういう設定がそもそも大好きな上に、描くのが湊さんなわけで、そんなの面白いに決まってます。 この話の特徴の一つが、結婚するまでの過程の丁寧さ。お互いの背景や目的を細かく描いているのが、今まで堅めの作品書いていた湊さんらしいなと。また丁寧なだけじゃなくて、相手について探りいれたり勘違いしたりする様子が、愉快で楽しい。お互い善人で好感ももっているので、駆け引きでも嫌な感じは全然なかったです。 そして、心を掴まれたのが次のセリフ(うちの感想では珍しく引用)。 「嫁(い)ってきます! 『赤字(あか)たす赤字』を『黒字(くろ)』にするために!」 ああもう、こういう勢いある主人公って大好きですよ。色気よりもお金と食べ物が大事という、最近時々見かけるタイプの子です。 結婚してからは、夫婦生活に事件を交えた展開なんですが、この夫婦関係がとても好き。こういう勘違い結婚なのに、アンナもジェラルドも善人なゆえに険悪でない状態からスタートするのが新鮮で、これが存外によかったです。ぎこちなさもありつつもパートナーのことを思いやった関係がほのぼのしてて心ほっこり。看病での気持ちの歩み寄りがいいです。 そんな関係なので恋愛面は薄めですが、お互い人柄への好意は持っていて、さらにジェラルドからアンナへの気持ちは順調に育っているのにはニヤニヤ。ジェラルドの態度がいかにも若くて純情で、すごく見守りたくなります、そりゃ作中で見守り隊も出てきます。最後の嫉妬の仕方もかわいらしくて素晴らしかった! とはいえ、恋愛面ではこれからが本番なので、是非続いてほしいです。あとがきにある未来像まではいかなくても、心通じ合うところまでは……! 評価 ☆☆☆☆(8) ◆ 幽霊伯爵の花嫁 闇黒の魔女と終焉の歌 (宮野 美嘉/ルルル文庫) 【amazon】 宮野さんのデビュー作である「幽霊伯爵の花嫁」、7巻にして完結編。 最後までこのシリーズらしさを突き通した、素敵な最終巻でした。このシリーズの魅力というと、普通のヒロインとは一線も二線も画したサアラの強烈で痛快なキャラクター、アシェリーゼ様のかわいさ、ミステリ風味でちょっとヒネったストーリーの面白さ、などが挙がりますが、それらを全部見せてくれるんだから、面白くないわけがないです。毎回構成は似ていても、全7巻まったく飽きませんでした。特にアシェリーゼ様のかわいさは際立ってました、面倒くささも嫉妬も本当かわいいですこの人。 まさか出てくるとは思わなかったジェイクパパは、この家の男性だなあという感想。なんてタチ悪い性格、しかしアシェリーゼ様が幸せそうだから何も言えないというこの焦れったさ……! ジェイクが言葉足らずなのは遺伝だったんだなと納得しました。 そして最後は素敵な大団円。主役夫婦もアシェリーゼ様もエリオスもリオンもみんなみんな幸せそうで良かった。エリオスは振り回されつつも掴まるんでしょうね。 サアラのキャラクターに惹かれて読みはじめたこのシリーズですが、巻を重ねるごとにサアラも皆も好きになっていきました。最後の幸せそうな様子には心ほっこり。次回作にも期待です! 評価 ☆☆☆☆(8) |
3月6日(水) |
<最近読んだ本> ◆ 詐騎士5 (かい とーこ/レジーナブックス) 【amazon】 今追いかけているシリーズの中で楽しさという点では1、2を争う「詐騎士」のシリーズ最新刊。 今回も楽しかったー! 聖女の招き入れ編ということで派手な動きこそなかったものの、イベントが詰まっていてキャラが活き活きしていて、それだけで十分面白いです。このシリーズ、キャラ小説の割に密度が濃くてやたら読むの時間かかるんですよね。それだけ気に入っているってことかもしれません。 この巻のハイライトは最後のギル様でしょう。ついに言ったー、よく言った頑張った! 動揺するルゼかわいいです、ギル様のこと嫌いじゃないにニヤニヤ。子供から大人へ、意識が変わるなんてヒョンなことなんでしょうね。後処理しないのは少しずるいですけどまあギル様ですし許される。今回はここに限らず一般聖騎士たちが不憫でしたね、まあ青盾の人々は言動的に仕方ない。 一方でニースはラントちゃんと朝帰りとかやらかしているわけですが……こりゃ春は遠そう。聖騎士としてのニースは普通にかっこいいのになあ。はやくヘタレ脱却を! もう一つのハイライトはカリンの変貌だと思います。世間知らずの貴族の女の子だったはずが、いつの間にこんなにパワフルなお嬢さんに……。まさか王族相手に啖呵切る女の子になるとは誰も思ってなかったはず。性格的にはある意味ルゼ超えてますよ。こういう子は好きですけど、嫁の貰い手が……。セルならいける? 他ではエリネ様かわいらしいしゼクセンはどんどんいい性格になっていくし、楽しい楽しい。楽しいので、うっかりブログの第3部も最新分まで読み終わってしまいました(6巻分が間にあるのに)。3部までどう繋がるのかをワクワクしながら6巻を待つことにします。 評価 ☆☆☆☆(8) |
3月4日(月) |
<最近読んだ本> ◆ あなたの町の生きてるか死んでるかわからない店探訪します (菅野 彰/ウィングス文庫) 【amazon】 ウィングス文庫のエッセイ枠な菅野さん作品、今回はタイトルにあるようにヤバそうなレストランの訪問記。 爆笑しましたけど菅野さんたち体張りすぎ! この突撃精神はまるで芸人並と思いましたけど、テレビでは(主に衛生的な意味で)とてもオンエアできないような店が多かったので、芸人以上ですねこれ。こんな危険な素材を菅野さんの文章が料理したら面白くならないわけがなく。漫画家の方のイラスト再現も分かりやすくて、爆笑して読めました。 それにしてもヤバイ店の破壊力やばい、賞味期限切れたおでんがのった中華丼やばい。何より首都圏近辺でこんな店がこんなに生存してるっていうのが驚きでした。1年前どころか数年前の食材使ってそうな店がいくつもとは。2005年の話なので、今はある程度は駆逐されてるでしょうけど(調べたけど該当しそうな店がなかったものも結構あった)。 まあ今は食べログ・ぐるなびがありますから、首都圏にいる限りは地雷踏むリスクは限りなく低いですよね。当たりだったミャンマー料理は3.5点ついてましたし。元より食べログ厨の私はこれからも食べログ重視で回避していきたいと思います。 評価 ☆☆☆☆(8) ◆ 倒立する塔の殺人 (皆川 博子/PHP文芸文庫) 【amazon】 一昨年あたりからあちこちでお名前を見かけて気になっていた皆川さんの作品。初読お薦めを聞いてみたら、こちらと「開かせて〜」の名前がまず上がったので読んでみました。 雰囲気もミステリ面でも面白かったです。まず雰囲気、皆川さん作品は耽美なイメージを伝え聞いていましたが、まさしくその通りでした。作中作の小説が怪しい雰囲気たっぷりで、最初にこの小説が出てくるものだから、そこでまず怪しさに呑まれ。その後も戦争が激しくなった時期のミッションスクールという特殊な舞台で、楽しげでありつつも、ところどころ不安定で情念を感じる描写があるのにゾクリときました。「よけいなことを」はほんと怖かった。 さらに個人的に雰囲気作りに一役買っているなと感じたのが、作中に出てくる文学作品の数々。読んだことない、さらに半分くらいは聞いたことすらない作品だったので、舞台がより遠くに、幻想的に感じられました。この時代のお嬢様はこんなの読んでたんですね(遠い目)。 ミステリ面は程良い難易度ってところで、程良い難易度=私は解けない、ということなので綺麗に騙されました。まず手記書いている人にネタばらし手前あたりまで気づかなかったし、ローマ字占いも候補人物浮かばなかったですし。最初に謎の提示をした後にしばらく作中作で何だこれとなり、でもそれが関係あるというのが面白い構成でした。 「開かせていただき〜」も購入済みなので、今年には読みます。 評価 ☆☆☆★(7) ◆ 光待つ場所へ (辻村 深月/講談社ノベルス) 【amazon】 辻村さんの初期の頃の作品たち(冷たい校舎〜スロウハイツ)のスピンオフ短編集。 痛みのある青春話が揃った良いスピンオフでした。どれも元作品読んだのはかなり昔なので忘れてることもありつつ、こんな人間関係だったなあと懐かしみながら読みました。 一番好きなのは「しあわせのこみち」。中途半端な才能を持ち「普通」を諦めた生き方をしている子の痛さ辛さの心理がはっきりと描かれていて、それに何となく共感できるので心にギシギシと響くお話でした。そして、この話に限らず、痛いだけじゃなくて前を向けて進めたいい話に仕上がっているのがいいなと思います。ただ、最後の落とし方だけはしっくりこなくて、エピローグなし、特に告白なしの方が綺麗かなと感じました。 で、冷たい校舎とスロウハイツを再読したくなったわけですが、読めるのは何時の日か……。再読したい枠はおそらく100冊を超えております。 評価 ☆☆☆★(7) |