7月31日(水) |
<最近読んだ本> ◆ 夜の虹 (毛利 志生子/コバルト文庫) 【amazon】 発売当時に結構評判がよかった、帝政ロシアが舞台のややミステリ風味な少女小説。発売当時に序盤を読んで、どうも気持ちが乗らなかったので、今まで寝かせていました。 面白いじゃないですか! 「人の最期の姿が見えてしまう」という能力を持った少女オリガが、子供の死を見つけるところからはじまるお話。面白いポイントは色々ありましたが、なんといってもオリガがとても良い主人公でした。 まず目につくのが行動力。父の死を探ったり事件に首を突っ込んだりと貴族の女の子らしからぬ活動っぷりで、土地の人々から「変人」扱いされてる、これだけで好感度上がります。しかも、しっかり考えて行動するし、芯は強いし、根っこには善良さがあるし、とプラスポイントがたくさん。時に感情的にもなる歳相応さも魅力だし、かなり好みな子でした。 また、行動力だけが目立つわけではなく、家の中では婚約者とうまく接することができず居心地悪くなったり、誰にも言えない秘密を抱えている孤独さも持っていたりと、様々な面を見せてくれて、少女らしさが詰まった主人公だと感じました。成長すると一層素敵な女性になりそうです。 そんな秘密の苦しみがはっきり見て取れて、だからロジオンに通じたときは良かったなとしみじみ思いました。秘密の共有はおいしい関係だし、ロジオンのキャラ自体も結構好きです。オリガにとってロジオンの存在は間違いなく大きい一方で、決して悪い人ではない婚約者のアーサーがいるわけで、ここからどう展開するのかがとても気になります。いまさら読んだ自分が言える台詞ではないですけど、後1冊しか出てないのが非常に残念。打ち切り確定ではないみたいなので続きでてください! オリガのことばかり語ってますが、物語もしっかりしてました。目の前の事件を追う中で、ロシアの時代動乱などにも踏み込んでいて、改革派と保守派の対立模様あたりは知識なかったのもあって読み応えありました。 あと食べ物がおいしそうです、ロシア料理が食べたくなります。特に伝統菓子のレヴァシが気になったんですが、ぐぐっても出てこない。参考文献の「世界の食文化」に載ってるんでしょうか。近所の図書館にあるようなので、今度行く機会に覚えてたら見てみます。 評価 ☆☆☆☆(8) ◆ 身代わり伯爵と白薔薇の王子様 (清家 未森/角川ビーンズ文庫) 【amazon】 身代わり伯爵の短編集第2弾は、セシリア様とフレッドの出会い短編がメインでしたが、いやーフレッドかっこよかった。最初の登場の仕方は完璧だし、セシリアの声が戻ってからの笑顔と台詞もキラキラしてましたし。どこまで計算ずくでどこまで天然なのか分かりませんけども、そりゃセシリア様惚れますわ。 ただ、フレッド側の気持ちがやっぱり分からないから、この2人の関係は見ててもどかしいです。優しさがあるのは確かで、でもその先の気持ちが見えない。分かりづらいんだよフレッド本心見せろ! ってことですはい。 他の短編では、主役2人が甘い甘い。恋人自慢大会でのミレーユ動揺っぷりも良かったですけど、この巻だとミレーユ日常見守るリヒャルトのハラハラが好きかなー。他の人目線で見ると余計に分かるミレーユの無茶っぷり。この無茶を止めようとした第一部のリヒャルトはやっぱり無謀だったよなあ、と今感想書いてて思いました。 あと目立っていたのがロジオン。彼のキャラが最近どんどんぶっ壊れていってる気がします。楽しくはあるんですけど、こんなアホの子でいいのか……。前巻の子供勘違いも相当でしたし、もう少し控えめくらいが好みですが、この先どうなるでしょうか。 評価 ☆☆☆★(7) |
7月28日(日) |
夏冬の恒例行事、C84ライトノベル作家さんサークル一覧、今回も作りました。 そしてお知らせ、今回で作成は最後にします。C69からほぼ毎回作ってたので8年もやってたんですねえ。少年向けを読まなくなってからは知らない作者さんが大半なことが多くなりましたし、検索効率化する方法見つけるまでは1人1人検索ウィンドウにコピペしていたのでレーベル増えた頃は作成大変でしたけど、概ね作成楽しかったです。ただ、レーベル増で作家さん増えるにつれて情報追いきれなくなってきたこともあって、そろそろ潮時かなと。自分自身も、夏は去年今年と2連続でコミケ不参加となりそうですし。 意外な人の参加があったり、何回か開いての参加があったり、長年毎回参加されてる方がいたり、と人の流れが見れるのが面白かった。何より、作成始めた頃からはリストに載る作家さんが遥かに増えたのが感慨深いです。全部で13サークルなこともあったのが、前回は50サークル以上でしたし。当時はビーズログ文庫もアイリスもなかったんで、少女向け方面からの参加者はほぼ皆無でしたしね。 個人的に一番印象に残っているのは須賀さんの参加かな。好きな作家さんの参加はやっぱり格別なものがありました。 多分いないと思いますが、次回から作成したいという奇特な方がおられましたらデータ関連お譲りしますので、お気軽にご連絡ください。 <最近読んだ本> ◆ 黒銀のオラトリオ 口づけは宵闇に捧ぐ (神尾 アルミ/一迅社文庫アイリス) 【amazon】 今年出た神尾さんの新刊は、シリアスな空気の主従ファンタジー。 「大事なのはお互いだけ」の雰囲気がとてもよかったです。主人公が異能の持ち主で、従者がその発動条件ということで、生きてる限り互いが側にいるのが運命づけられた関係。しかもいつ死ぬかもしれない危険な任務が、幼い頃からついてまわってる。こういう設定大好きです大好きです。 結構ある設定ではありますが、このお話は「互いが無二」という感情の描き方がとても好きでした。全編通して2人の関係がメインなので日常からも感じられるし、死が側にある分、諦念の中でのお互いの存在、死にかけた後の約束などの切なさが胸にくる。特にクラウスの、手を出しかけた後の悔恨や嫉妬や怯えがごちゃ混ぜになるあたりが良かったです。 ラザロに対するオルウェンの感情のあたり、一部しっくりこないところもあったんですけども、2人の描写だけで十二分に満足出来ました。「2人」に対する熱が伝わってくるあとがきも合わせてよいものでした。 評価 ☆☆☆★(7) ◆ 皇帝陛下のお気に入り! 箱入り姫の取り扱いには気をつけて (せひら あやみ/コバルト文庫) 【amazon】 「毒舌姫」シリーズのせひらさんの新刊は、箱入り姫が主人公の中華ファンタジーだったんですが、この箱入り姫が凄かった。ネタバレすると、かかしを皇帝陛下と思い込みます。最後までそのまんまです。いやいや箱入りとかそういうレベルじゃないですから! なんて力技な設定。 とはいえ、徹底的にコメディな話なので、この設定も違和感なく受け入れられて、ボケボケなヒロインとその純真さに落とされていく皇帝陛下の恋愛模様を楽しめました。コメディな割に、甘いシーンでは陛下意外と頑張ってましたし。清佳も父母の仲睦まじさを見ていたからか、箱入りでも狼狽えていて甘かったです。まあオチがつくんですけどね。予想通りではありましたが、いいオチでした。 ちょっと謎だったのは主人公の義兄の行動。皇帝陛下をそばにやることを危惧している割に、反対している様にも見えなかったんですよね。もちろん賛成でもないですけど。で、読み返したら、これはそばにやって無下にされることを危惧してたんですかね? だから妹への興味煽ったわけで、くっつくリスクも承知の上だったのかな。そういや2人がくっついたら皇帝と縁戚関係なんだなと気づいたりしました。それは全然関係ないでしょうが。 果たしてどこまでこの設定を引っ張るのか、続きが気になります。 評価 ☆☆☆(6) ◆ 身代わり伯爵の花嫁修業3 禁断の恋の手記 (清家 未森/角川ビーンズ文庫) 【amazon】 花嫁修業編の第3巻は、ルド様インパクトの巻でした。前巻の引きでルドヴィックが焦点なのは分かってましたけど、そうきますか! 予想だにしないカップリングと呼び方に、出てきた瞬間は目が点でした。いやでもこの組み合わせは面白い。今まで意地悪だった分、思う存分つきまとわれるといいと思います。 ルド様以外は比較的大人しめの巻だったかな。フィデリオの思考回路がいまいちよく分からないというか、キャラ的にミシェルの正体気づくべきですよあなたは。気づいたらコミカルさ減りそうなので仕方ない面もありますけども。まあ、あんな不意打ちキスするキャラは好きになれないってことです。消毒はこれまた甘かったですが、毎巻このレベルのがあるので耐性ついてきました。 そろそろセシリア様が恋しくなってきました。次あたり短編集みたいなのでそこで見れるかな? 評価 ☆☆☆(6) |
7月25日(木) |
<最近読んだ本> ◆ (仮)花嫁のやんごとなき事情 離婚の前に身代わり解消!? (夕鷺 かのう/ビーズログ文庫) 【amazon】 シレイネ様来襲編ということで戦々恐々と待っていた、仮花嫁シリーズ最新刊。 と思ったらシレイネ様の怖さよりフェルのかわいさばかり気になって、なんだこれー! 確かに前巻最後の気持ち自覚するあたりは無茶苦茶かわいかったんですけど、そのかわいさが1巻まるまる持続するとは。冒頭の、クロウのこと嫌いになろうとして、好きしか出てこなくてドハマリするあたりとか、真顔じゃ読めないですよ床バンバンですよ。その後も、どこ切り出してもクロウのこと好きな気持ちにあふれていて、かわいすぎる楽しすぎる。相変わらずの行動力も見せてくれましたし、本当に素敵ヒロインです。タコで潜入は凄い。 クロウも相変わらず格好いいですね。こういうヒロイン相手だと俺様=残念になりがちなところを、しっかりフェルのこと翻弄して主導権握ろうとしてるのが凄い。繋ぎ止め策はフェルの性格よく理解してますねえ。対シレイネ様でも負けていなかったし、ラストの誓いも魅せてくれるし、このカップル好きです。 シレイネ様は、怖いんですけども、絶対的ラスボスというわけではないんですね。意外に弱さも持った方でした、そしてフェル思い。フェルめぐっての三角関係に発展してくれると大変おいしいのですけども、どうでしょう。 で、国に隠された超常的なものがラスボスでしょうか? とりあえず次はコメらしいので、また真顔で読めないものが出てきそうで楽しみです。 評価 ☆☆☆☆★(9) ◆ 恋する王子と受難の姫君 (小椋 春歌/ビーズログ文庫) 【amazon】 2巻だか3巻だかに入れ替わりネタがあると聞いて読むことにした、ビーズログの人気作品。 ヒーロー主従のキャラが濃くて面白かったです。 好きな女の子が性転換していても探し当てる超嗅覚をもった、変態王子アレクがヒーローのお話。性転換ネタも好きなので、読み始めてから性転換ネタあること知って得した気分でした。 といっても性転換はメインではなくて、アレクの変態っぷりを引きたてる一要素ですね。結構よく見るタイプの変態さんではありますけど、性別も無視したストーカーっぷりは一歩突き抜けてました、男状態での涙ペロリとかなかなかの本気。 うっかりアレクに惹かれてしまった(本当にうっかりだと思います)モニカも、翻弄されるだけじゃなくて言うことは言うのが良いパワーバランス。おまけに従者のマーシュが主に全然従わないなど、いい性格の持ち主で、3人のテンポ良いやりとりが楽しくて、人気作なだけあるなと思いました。 綺麗なハッピーエンドで終わってるんですけど、冷静に見ると過去アレク酷いですよね。そりゃ遠くに逃がそうとするのも当然。年を経てアレクも多少反省したとはいえ、朝までまとわりついたりと根は変わってなさそうなところ見ると、これでいいのかとモニカがちょっと心配にもなります。まあ終わりよければ全てよし、なんですかね。 脇役もそこそこ印象残るキャラ多かったですね。ガレ様頑張った。設定全く知らずに買ったのに楽しめてよかったです、入れ替わりネタを楽しみに続きも読みます。 評価 ☆☆☆★(7) |
7月21日(日) |
<最近読んだ本> ◆ 身代わり伯爵の花嫁修業2 嵐を呼ぶ花嫁合宿 (清家 未森/角川ビーンズ文庫) 【amazon】 南無かった、キリルがとても南無かった……。どうせフレッドあたりが原因での勘違いだとは思っていたんですが、ロイだったとは。当時の自爆の仕方がひどくて、しかもミレーユの前でそれが赤裸々になるという仕打ち。そりゃ死にたくなります。おまけに想いは冗談にせざるをえない、と。爽やかにまとめたように見えますけども、何巻か前から引っ張ってこれは南無すぎました。 ミレーユとリヒャルトの方は、一歩前進ってとこでしょうか。途中のミレーユの避けっぷりは、もう少しリヒャルトの話聞いてやってと思いながら見てましたけども、その分ラストでリヒャルトは甘さ堪能してるので、リヒャルト的にプラマイ0じゃないかと。「これがいいです」が甘かった。 あとはミレーユが少し周り見れるようになった気がします。あくまで少しですけども。ミレーユらしさ残しつつ、まともな王妃になれる道がちょっと見えてきました。 一難去ってまた一難なラストでしたが、また小物臭がしますね……。ルドヴィックもそろそろ諦めどき? 評価 ☆☆☆★(7) ◆ シンデレラは床みがき (金 蓮花/コバルト文庫) 【amazon】 1996年のコバルトの作品。我が家には、人の感想見て面白そうなので買って、そのまま積まれているお話がいくつもあります。これもその類の一つ、釣られてから4年ほどたってから読みました。 ほわほわ女の子と経済的なストーリーのギャップが面白いお話でした。 教師と結婚しちゃった女の子が、卒業と同時に財閥家の遺産を相続して、でも屋敷の維持費を払うのに苦労して何とかするお話。まず金さんがこういう幼い感じの主人公のお話書いてたことにも驚いたんですけど、この濃い設定にも驚いた。出会いでは嫌ってた教師とゴールインするまでのあれこれとか全部すっとばしてはじまるんですよ、「いやそこも読ませろよ!」と突っ込んだり。 で、お金持ちなのに貧乏という不思議な状況下でお金儲けの方法を考えていくんですが、稼ぐために女の子が経済活動に取り組むところが結構地に足がついているのが面白かったです。女の子パワーで乗り切る荒唐無稽なところもあるんですけども、まさか株式や持ち株比率のネタを、コバルトの、しかもこういうお話で見るとは。その辺のギャップがいいなと思いました。分かりやすく書かれている分突っ込みどころはあるんですけども、それは気にせずに頭空っぽで楽しむ方向で。 「騙された!」と叫ばされた最後のオチもよかったし、楽しめました。しかし最近騙されすぎな気がします自分……。 評価 ☆☆☆(6) |