トップに戻る

日記一覧に戻る



 
 8月13日(火)

メルフォレスです。

>「シンデレラは床磨き、懐かしい〜」の方

たまに唐突に懐かしさを提供するのが当サイトです。古くても良い作品たくさんありますしね。
単行本化のときに修正入るのってたまにありますよね。最近出会ったのだと須賀しのぶさんの芙蓉千里が、結末まで大幅改稿されてましたし。とはいえ、10年以上たっているわけで、違いがあったことを覚えていらっしゃるだけでも凄いです。読書メーター情報ですが、雑誌→単行本でイラストが変わったみたいなので、そのあたりでしょうか。
メールありがとうございましたー。


<最近読んだ本>

イスカリオテ6 (三田 誠/電撃文庫)amazon
amazon 

クライマックス目前の、嘘混じりのバトルアクション小説「イスカリオテ」6巻。

熱かったー!
5巻で日常からドカンと突き落として今回は決戦編だったわけですが、熱いシーンが詰まってました。前巻で英雄となることを決意したイザヤがかっこいいところからはじまり、イザヤが英雄として受け入れられるところでグッとくる。
聖戦参加組の静かな決意と次世代への想いは、笑顔なイラストと相まって胸が熱くなったし、新しいフォー・マン・セルにはこれまでを考えるとやっぱり胸が熱くなる。ストーリー的にも、今まで謎だったイザヤ周りの真相が明かされて盛り上がり満点。
もちろんノウェムの可愛さも健在。告白シーン大変おいしかったです。イザヤのポンコツ呼びと「助けていいか?」がときめき。

そして最後の決戦に赴くイザヤですよ。動けるのがたった2人という状況でのひととき、戦いへの覚悟、ノウェムとの別れ。忘れていた前巻の小道具が心憎い。登っていくときの光景では脳内でクライマックスな音楽が流れて来ました。熱い。こういう王道好きです。

で、なんですかこの引き方は! ここまで盛り上げて、後1冊どう続けるんですか! 何を見せてくれるか楽しみです。

評価 ☆☆☆☆★(9)



彼女が死んだ夜 (西澤 保彦/幻冬舎文庫)amazon
amazon 

「七回死んだ男」の西澤さんの初期作品、「タック&タカチ」シリーズという通称がついているようです。「七回死んだ男」を読み終えた後に3人の方からお勧めされて、これは早く読まないとと思い早々に手をつけました。

意外とミステリ色が強かったですが、面白かったです。
ある女の子の家に死体が放置されていた謎事件や同級生の失踪事件を、大学生たちが解き明かすお話。はじめの方は割と普通のミステリ。ハコちゃんの身勝手さに呆れたり、登場人物たちの個性を楽しんだりしつつ、謎さっぱりわからないなあと思いながら読んでました。

毛色が少し変わってくるのは、中盤の推理パートから。荒唐無稽な推理が展開されて、でもその推理が論理的には破綻してなくて、聞き手が感情的には納得できなくても理屈的に惹きこまれていってしまうのが面白いです。あまりの荒唐無稽っぷりにバカミスなのかと勘違いしたくらい。「酩酊推理」などと呼ばれているみたいですが、言い得て妙。

メインの事件も酩酊推理で解かれていくんですが、ここでは何度も驚かされました。まず推理でのひっくり返しがあり、さらに伏線回収でのひっくり返しもあり。ハコちゃんが実は……、あたりが一番驚いたかな。「七回死んだ男」でも大きなひっくり返しがあったし、このロジカルな騙し方が西澤さんの一つの持ち味なのかも。
結末の後味の悪さは相当なもので、真犯人の行動振り返るとひどいという他なく。終わり方は正直好みじゃないんですが、面白かったです。

「タック&タカチ」シリーズというコンビものとしては、1巻の段階では期待よりもコンビ度合いは薄め。いや推理コンビとしては充実してるんですけども、せっかく膝枕疑惑あたりはニヤニヤできたし、もっとラブ寄せを! と思ってしまいました。聞くところによるとラブはこの先も薄めらしいですが、一応あるらしいので良かった。ボアン先輩への苦手意識などもどう変わっていくのか、気になります。
続きも読もうと思いますが、巻を飛ばして読むかもしれません(おいしい関係を読みたい)。出版社がバラバラってことは、きっとそういう読み方にも対応しているはず。はず?

評価 ☆☆☆★(7)



 
 8月8日(木)


<最近読んだ本>

丕緒の鳥 十二国記 (小野 不由美/新潮文庫)amazon
amazon 

言わずと知れた名作の新刊。10年くらい読んでなかったので新潮文庫版の発売を機に再読して、やっぱり名作だなと再確認。昔に比べると「東の海神 西の滄海」好きな気がするなあ、などと思いながら再読を終え、本作に臨みました。

さすがの面白さでした。長編のキャラクターがほとんど出てこない、普通の民を描いた短編集。十二国記の世界の人々の生活な特異さが見れる面白さがあり、またこの世界でも人々の想いの根っこは変わらず、その懸命さが伝わってくる面白さもあり、とどの短編も楽しめました。

個々の短編について少しずつ。「丕緒の鳥」は陶鵲の美しさがとにかく目を惹きました、この広がりと儚さは美しい。諦めを描いてからのラストで丕緒が夢見る光景も綺麗で、希望ある締め方が良かったです。
「楽照の獄」は十二国記の世界でやらなくてもいいお話かなとも感じたんですけど、長く生きる人がいるこの世界でも普遍ということが、重さをより増しているようにも感じました。
「青条の蘭」は、のたうち回って裏切られて万策尽きてからの民の力・世界の優しさが胸をうちます。標仲の切実さの後なら、少しぐらい優しくたっていい。病気の発生の仕方や薬の育ち方といったこの世界の面白さも味わえました。
「風信」は一番気に入った話。浮世離れした面々と普通の民の生活のギャップがある中での、変わらないものの描き方が上手いなあと思います。蓮花の叫びの後でも変わらない支僑が見せてくれる変わらないものが良かった。
この後の新作長編も楽しみです。

以下、与太話。「風信」の冒頭、隠されて閉じ込められる場面で、ドラクエ4の五章冒頭を連想しました。こんなにドラクエは記憶に根付いてるんだなあと。(FFよりドラクエ派でした)

評価 ☆☆☆☆(8)



恋と悪魔と黙示録 契約の獣と身代わりの花嫁 (糸森 環/一迅社文庫アイリス)amazon
amazon 

「花術師」や「she&sea」の糸森さん(iaさん)のアイリス進出作品。ビーンズで出ている花神は序盤乗れなくて寝かしてあって、それもあってこちらもしばらく積んでいました。

なんですかこの冷酷なはずなのに可愛い嫉妬する獣は!
家族を悪魔に殺された少女が、ひょんなことから獣を召喚してしまい、しかもその獣は人型をとれる悪魔で……、といったお話。この獣の悪魔のアガルがまさかの可愛いキャラでした。獣の姿のときから主人公に極端に懐き、他の男の影が見えると強烈に嫉妬するという可愛さを見せていたんですけど、人型になってもそのままかわいいとは。
性格的には冷酷キャラと言っていいと思うし、はじめは「契約して差しあげる」などと結構上から目線なんですけど、ちょっと進むとイメージが崩れる崩れる。レジナにちょっと邪険にされたらすぐ拗ねるし、レジナから好意向けられたら純情青年みたいにうろたえまくるし、周りの男達にはやっぱり嫉妬と独占欲の嵐ですし。何これかわいいの一言。新感覚なヒーローでした。

主人公のレジナのキャラクターも良かったです。善人で奥手な普通の女の子と思いきや、時々妙に頑固だし、変なセンスももってるし。獣のことを「けもの」と呼んだり、人型アガルを最初は「藻」と呼んだり、何かがおかしいです。「藻!」って呼びかけるセンス凄い。
さらに変なセンスの延長として、直球なモノローグが面白くて時々こっ恥ずかしいです。――恋というのをしてみたい――、とか赤面せずに読めない。設定は殺伐とした作品なのに、なんでこんな初々しいんでしょうほんと。

アガルと他の男性陣の掛け合いも楽しかったです、特にヴィネトがアガルをもろともせずにレジナにちょっかいかけるので、戦いが頻発してもはやじゃれ合いのレベル。そしてラストで築かれる不思議なご一行。一人としてまともな人間はいないのは確かにすごい。リストはちょっと巻き込まれた感強いですけど、レジナが嬉しそうでいいラストでした。

あと読んでる途中で感じたのが、このお話は「花術師」のライト版なのかもな、と。主人公の頑固さやヒーローの敬語や性格、不思議な逆ハー模様など、かぶる点が多いです。で、 レジナはリスカほどぐるぐるしないし後ろ向きでもないし、アガルはセフォーほど尖ってないし、花術師よりはマイルドなので、そういう考えに至りました。私はどちらも好きです。ところでジャヴが見たいのですが花術師の続きはまだでしょうか。まだですね。

2巻も近いうちに読みます。花神はもう少し寝かせますがそのうちに。

評価 ☆☆☆☆(8)