1月12日(日) |
<最近読んだ本> ◆ ネイキッド (杉浦 リョーコ/講談社F文庫) 【amazon】 2005年発売の、ケータイ小説発の作品。普段あまり手出さないジャンルですが、読書メーターで趣味があって参考にしている方が面白いと書いていたので手を出してみました。 楽しくて青臭い青春恋愛ストーリーで面白かった! 大学受験に失敗して荒れてドン底に落ちた女の子が、心機一転して地方の親戚の家に行くところからはじまる物語。とあらすじはシリアス気味の恋愛小説ですが、中身は半分少女小説寄り。出だしこそ、クスリをやってしまったりといったケータイ小説らしさ(?)もあるんですけど、切り替わって親戚の家に行ってからが楽しかった。 良かったポイントは大きく分けて3つでしょうか。1つは、主人公の今日子がかなり愉快な性格をしていること。地方に行くにあたって「クール&ストイック」を目指して変てこな夏のテーマを考えたり、迎えにくるハトコの高校生男子についてグーンと妄想を広げたり、と少女小説主人公にいそうな楽しい内面描写見せてくれます。かと思えば、今風の少女らしくファッションへの意識がかなり強かったり、繊細な感受性もあったりで、サバサバしたところ、変なところ、女の子らしさと色んな側面を感じる不思議な主人公でした。 ポイント2つ目が、同居人のハトコでヒーローポジションの専とのやりとり。高校生の割に大人びている子なんですけども、今日子と専の会話が、打てば響くように息が合っててテンポ良くて、読んでて楽しかった。お互いに踏み込む中でケンカも多いんですが(あらすじによると「お茶の間バトル」)、そのケンカの会話も息合って感じられる。参考にしている方が「有川浩さん作品好きの方に読んでほしい」と書かれてましたが、同感です。 でまあ、暮らしてるうちに恋愛で、という流れなんですが、これが実に青臭くてこっ恥ずかしかった。主人公が心理学かじってるのもあってか、ケンカのときからかなり内面に踏み込んだやりとりをしてて、その延長で告白などのときも全部赤裸々に自分をさらけ出すんですよこの子たち。ずっと何を考えてたか専が話すところとか、 真顔じゃ読めませんでした。そりゃ今日子も見ただけで真っ赤になりますよ。 最後、3つ目にして最大のポイントは、専のお母さんのゆきちゃんの存在。母子2人で暮らしてて、親子の距離感が「海外の素敵な仲良し家族」くらいに近くて、この手の恋愛小説にしてはかなり珍しいくらいに母親の存在感が大きいです。なので今日子とゆきちゃんとの距離感もかなり近く、友達感覚的な仲良し親子な一面も見せてくれたりして、でも肝心なところで大人としての言葉をくれる、この距離感がとても素敵だなと思いました。ゆきちゃんがいなければ、この作品はこんなに爽やかにならなかっただろうなあ。 そんなわけで、読んで良かったです。新品では手に入れづらいと思いますが、前述のとおり有川さん作品みたいな楽しい恋愛小説好きな方にはオススメ。 評価 ☆☆☆★(7) ◆ 八百万の神に問う3 秋 (多崎 礼/C★NOVELSファンタジア) 【amazon】 多崎さんがおくる独特世界観ファンタジー「八百万〜」第3巻は、予告通り転機の巻でした。ついに明かされたイーオンの過去が重く、そしてイーオンの望みが復讐ということに驚き。すでに亡くなっているような状態までとは思ってなかったし、そうまでして望んでいるのが復讐というのが悲しい。楽土でずっとその想いを抱えていたっていうのが悲しい。今の楽土のメンバーやシン少年じゃとてもイーオンを繋ぎ止められそうにないんですが、「冬」でどうなってしまうのか。 で、この巻一番印象に残ったのがトウロウに対する台詞。「この身が滅んでも傍に」ってそれ告白じゃないですか! いや違うんですけども、「僕を守ったらあなたが濡れてしまいます」「かまわん」とかときめくに決まってるじゃないですか。雨の中に囚われている似た者同士の2人、突き放して雨を抜ける道を選ぶトウロウに見惚れました。 今回メインのトウロウの物語は、単純だなと思っていたら綺麗に騙されました。ただ、このシリーズここまで読んで、多崎さんの他作品に比べるとややパンチ弱いなあとも感じます。「告白」での話の進め方がちょっと合わないのかも。その分はメインストーリーに期待ということで、別れの「冬」を待ちたいと思います。 評価 ☆☆☆★(7) |
1月2日(木) |
1日遅れましたが、本年もよろしくお願いいたします。 まよさんが毎年開催されている少女小説人気アンケート調査がスタートしてます。今回はさくっと初日投票しました。投票物は先日のまとめの一行目とほぼ同一なので省略(幽霊伯爵だけ新規追加しました)。アンケートの年齢欄が気になる年頃になりました。 <最近読んだ本> ◆ 翼の帰る処4 ―時の階梯― 下 (妹尾 ゆふ子/幻冬舎コミックス) 【amazon】 新年の読み始めは鉄板を読もうと思い、積んでいた翼の最新刊をチョイス。 笑わせてくれるヤエトさん、思わぬ人の一面、強まるファンタジー色、色々詰まって読み応えありました。 読み始めてまず目を引いたのが預言者のウィナエ。前巻までは堅めの印象を持ってたんですが、この巻になってから印象が一気に柔らかくなり、かわいらしさも感じるように。 そして読み進めたら、反則が待ってました。ウィナエの能力あってこそですけど、ヤエトの人たらし能力、ここに極まれり、だと思いますこれは。その言葉だけが支えだったというのが凄い。ときめきでもあり、切なくもあり。彼女の最期は非常なもので悲しくもなりましたが、ヤエトがいて救われたんだという思いも強かったです。 異世界編(?)であと印象的だったのが、ジェイサルドの名前のくだり。名付けの力、急ごしらえの名付けでは支えきれないあたりのファンタジー色がいいなあと思います、この巻のファンタジー要素は程々に濃くて、分かりやすくかつ雰囲気出てて、かなり自分好み。 さらに、ジェイサルドに「勝て」と命じるヤエトがかっこよすぎました。苦手でもこういうこと言えるから、色んな人がタラされていくんですよね。 後半の反乱編は、ヤエトさんの面白さが随所に出ていてかなり笑えました。「隠居したい」からの一人内面ボケで爆笑したのにはじまり、あちこちでくすりと笑い、「突き指」発言でまた爆笑し。皇妹が言うのとは別の意味で面白いですよこのヤエトさん。 ストーリー展開も面白かったです、ファルバーン母はそういう役目か、スーリヤそこで出番か、とあれこれ驚かされたり、これまでの伏線回収しながら派手な魔物暴れも見れたりと濃くてよかった。前半出番なかった皇女も凛々しかったりかわいかったり。ヤエトの離れたくありませんへの反応いいですね、全くこの天然タラシが! 最後の一行が不安を誘うのですが、無事に世界の危機を救いつつ、三の君を回避できますように。……これ後2冊で終わるんですかね? 評価 ☆☆☆☆(8) ◆ 恋と悪魔と黙示録 身代わり魔術師と円環の葡萄祭 (糸森 環/一迅社文庫アイリス) 【amazon】 昨年の読み納めだったのがこの作品。糖分過多なために、自宅読書用に積んでたわけですが、 なんなのこの2人甘すぎるでしょう爆発しろ!!! いやもうね、互いが互いを好きすぎることは読者には丸分かりなのにどうしてすれ違うんですかねこの2人。いや、アガルが純情な癖にやたらヒネた言葉使うし、レジナが鈍感というか変な解釈をしてまたアガルの誤解を誘うし、と原因は分かるんですけどね、それでも何やってるのこの2人、と傍から見てると思ってしまいます。卿もきっとそう思ってる。 お互い好きすぎるものだから、すれ違いの最中にも両思い的な発言が出て、これがもうこっ恥ずかしすぎて床ローリングでした。「急に格好良くなるのが悪い」「かわいらしいのが悪い」「いきなり凛々しくなると困る」もう何言ってるのこの子たち!!!!! 特に今回強烈だったのはアガル側。アガルが女を侍らせたり意味不明な行動をとっていた理由、これがかわいすぎて。無理して頑張りすぎでしょうもう。 で、すれ違いにかなりモダモダしてただけに、最後はグッときましたね。レジナよく言った! 二人ともおめでとうおめでとう。気になるのが次の巻のスタート、このまま恐ろしいバカップルになるのか、それともまたすれ違うのか。やっぱりすれ違うんですかね。 あと今回思ったこと、レジナは魔性の女ですね。「国がほしい」から「許します」の流れが大物すぎる。アガルに卿にロアス王子に、3人の傑物を惹き寄せる、これが魔性じゃなくてなんなのか。ちょっと変でかわいいだけの子なはずなのに。いや、「ちょっと」じゃないですね。 本筋ストーリーは悪役が滅ぼされるいつもの流れですが、隠れ方や事件背景がえぐくて意外性ありました。この主役2人のかわいさと事件のえぐさのアンバランスさ、嫌いじゃないです。 カラシャは何者なのかがさっぱりですが、いつか怖い展開がきそうな予兆がたっぷり。絶望が代償ってことは、将来絶望を与えられるってことでしょうか。乗り越えてほしいです。 評価 ☆☆☆☆(8) |