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 9月27日(土)


<最近読んだ本>

王女コクランと願いの悪魔 (入江 君人/富士見L文庫)amazon
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最初から最後まで素晴らしい物語でした!

今月のL文庫新刊、「神さまのいない日曜日」の作者さんがおくるファンタジー。気になっていたところに絶賛の感想がいくつも目に飛び込んできたので、これはすぐ読まねばと手に取りました。

聡明で孤独な王女が、ランプの悪魔をたまたま呼び出してしまったところからはじまる物語。まず冒頭の出会いのシーン、コクランの凛としつつも少女らしさも感じられる姿、悪魔レクスとの軽妙なやり取りが期待を煽ってきて、「これは最後まで綺麗に着地すれば名作かも」と感じました。シリアスな雰囲気に比べて会話が若干軽いところがあるのが最初は少しだけ気になりましたが、読み進めると物語の中には楽しさ・軽妙さも内包されていて、ちょうどいい塩梅でした。

撃ち抜かれたのが次の1話。後宮(とは名ばかりの学校のような教育施設)で起こった事件、それを解き明かしていく中での謎解き自体が面白く、誘惑をかけるレクスと相手にしないコクランのやり取りが楽しく、見えてくるコクランの孤独が切なくて。コクランの在り方を際立たせた1話の終わり方が凄く印象的でした。最後の一文の余韻に痺れた。

2話目以降は楽しさが前面に出た話。色々なものを切り捨てていたコクランが楽しさを知り思い出していくのを見て、喜ばしい気持ちになりました。アイネもメイディもかわいくていい子。レクスとのパワーバランスが崩れたのを切っ掛けに距離が縮まっていくのにも心が暖まりました。

そこからの絶望の見せ方が凄かったです。コクラン、レクス双方に訪れるどうしようもない運命の描写が、伏線もうまく絡めていて容赦ない。特に閑話での小鳥が! 毎回それを行っていたコクランの心を思うとたまらなくなります。絶望は募り、感情が溢れ、どういう終わりを迎えるのか、迫真の終盤。

そして、最後の着地も実に良かった。ラスト付近では涙が。終わった後も過酷な運命がきっと待っているんでしょうが、エピローグでコクランが見せたひたむきさが、きっと周りを動かし、コクランも変え、素敵な未来になってくれる。そんな希望を信じられる、素敵な幕引きでした。

最初から最後まで心に響く物語でした、今年読んだ新作で一番好きかも。比較的万人向けだとは思いますが、特に少女小説読みにオススメ。こうした作品出してくれるL文庫の今後にも期待です。

評価 ☆☆☆☆★(9)



おこぼれ姫と円卓の騎士 恋にまつわる四行詩 (石田 リンネ/ビーズログ文庫)amazon
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アイリーチェの恋物語がとても良かった!

短編集と聞いていたおこぼれ姫最新刊は、アイリーチェメインの中編と他短編という構成。このメインの中編が、アイリーチェこんなしっかりした恋してたんだ! と驚かせてくれる、過程が自然なロマンスで堪能しました。かりそめの関係からスタートというのはお約束ですけど、お互い一緒にいる楽しさを知っていっていく描写が本当に楽しそうで。惹かれていくのが凄く伝わってくるのにときめき、2人がそれぞれ恋心に気づいてとまどう様子にはニヤニヤ。女の子が強いのもいいですね、暗殺者に立ち向かうアイリーチェは格好いい主人公でした。
アイリーチェのしっかりした性格は本編の時点で好きでしたけど、この中編でも将来を見据えた動き方を実践していて、やっぱり好きだなあと。そんなアイリーチェの恋心だからこそ、より素敵なものに感じました。最後の、過程を踏みつつ飛び越えてもいいという心持ちや詩での気持ちの伝え方も、彼女らしくて良かったです。

他短編ではなんといってもノーザルツ公。妻公認の残念かわいい人なところに爆笑。演奏させて2人にして、いやー、皆さんいい仕事しますね。壁バンバンしてるのにも爆笑。やっぱりノーザルツ公大好きです、ごちそうさまでした。
他2編ももちろん良かったです、レティはデュークをここまで念入りに調べてたんですねえ。よく知っていて幸せになってほしいからこその本編の選択なんでしょうけども……。本編の続きを待ちましょう。

評価 ☆☆☆☆(8)



 
 9月21日(日)


<最近読んだ本>

シュガーアップル・フェアリーテイル 4〜6巻 (三川 みり/角川ビーンズ文庫)amazon
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がんがん読んでます。ラファス編終わりまで読み終わりましたが、面白いですね! 妨害や悪意もありますけれど、歪んた理由が何かしらはっきりしていますし、アンの真っ直ぐさ、それに応える仲間たちの姿見ていると、心が洗われて元気が出ます。シャルとの甘さも本格化してきて、ジュブナイル寄りの少女小説としてとても楽しんで読んでます。新章も楽しみ。
以下は各巻の感想です。

4巻はペイジ工房入り編。職人として一歩一歩進んでいく、地に足が着いたストーリー展開に好感持ちました。立て直しをまかされるというのはベタですけど、最初の銀砂糖としてのアンへの期待、それに応えて風を吹き込んでいくアンの姿が気持ち良い巻。
この巻で一番好きなのは、アンが砂糖菓子を作りたい理由に気づくシーン。うまくいかない、理不尽に対するもどかしさ。それに対して幸せを願うための砂糖菓子、というのがアンらしい回答で眩しくて素敵でした。

5巻はシャルさん甘すぎ編。4巻あたりから自覚が進んで甘くなってきたのがここで爆発してました。手を出しかけてる行為も甘いですけども、それ以上に何百年でも待てるという想いが甘くて切なくてときめき。
他ではヒューの寂しそうな表情が印象に残りました。彼が何故力を求めて昇りつめなければならなかったのかが気になります。ノアのエピソードも含め、切なくなるシーンが後半多かったです。

ラファス編完結の6巻は、ラファスが何しでかすか怖くて一気読み。長期の滞在もあるかと思っていたので、あっさり解決だったのは驚きましたが、彼の残した呪詛は今後も2人を蝕むんだと思います。人間と妖精の関係というのはこの作品の最大テーマでしょうし、2人だけじゃない大きな動きになるんでしょう。完全に両片思いの2人が気持ちを出せないのが切ない。
エリオットの怒る姿が印象的だったのもこの巻。エリオットは最初の登場シーンは印象よくなかったんですけど、ちゃんとアンを評価してくれて導いてくれるのが好きです。他の仲間達とも工房として一つになれていて、ブリジットもジョナスも、みんな前を向けて良かった。これもアンのおかげですね。
最後のキースは仕事のパートナーとしては素晴らしそうですけど、シャルの当て馬的役割もあるんでしょうね。シャルが身を引く展開が目に浮かんで今から苦しいんですが、どうなるでしょうか。

評価 ☆☆☆☆(8)



恋をしたら死ぬとか、つらたんです (みかみ てれん/エンターブレイン)amazon
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先日読んだ「勇者イサギの魔王譚」と同作者さんによる、乙女ゲー主人公になっちゃった系物語。こちらもWeb連載を読んでて好きだったので買いました。

他の乙女ゲー物との最大の相違は「攻略対象を好きになったら死ぬ」という設定なこと。この設定に、主人公のヒナさんの「一見普通なのに猛烈に惚れやすいクレイジーサイコビッチ」というキャラクターを放り込むことで生まれた、猛烈な死亡ループがとにかく笑えて楽しいお話です。

挨拶でも死ぬし、笑顔を見ただけでも死ぬし、女の子キャラを見ても死ぬし、とにかく死ぬ。いやほんとヒナさんおかしい(褒め言葉)。ヒーローの反応を見るための葬式シーンがゲームに搭載されてるのも楽しいところ。製作者がキャラへの愛を語る姿と、葬式シーンでぶっ壊れたキャラとのギャップには涙と笑いを禁じえませんでした。
死亡回避のラスボスが、ヒーローたちではなく友情キャラの凛子なのも乙女ゲーあるあるで良かったです。このヒナさんをゲームクリアまで導かないといけないシュルツさんまじ頑張れ。

Web版とそんなに違いはなかったですけど、本の形でも一冊勢いがありました。弟好きなので2巻での登場楽しみです。

評価 ☆☆☆★(7)