2月8日(日) |
<最近読んだ本> ◆ 下鴨アンティーク アリスと紫式部 (白川 紺子/集英社オレンジ文庫) 【amazon】 コバルトの姉妹レーベル?のオレンジ文庫、2冊ほど買ってみました。こちらは本誌で読んで良さげなので買ってみた、京都舞台の着物ミステリー。 雰囲気良し、謎良し、人物良し、で面白かったです。亡くなった祖母が遺した着物の不思議な秘密を、良家の少女と下宿人の青年が探っていくミステリー。この作品の特徴の1つは現実とファンタジーのバランスでしょうか、着物の描写が凄く丁寧に描写されていて、用語など分からなくても鮮やかに美しさが伝わってくる一方、着物の文様が動き回るというファンタジー要素もある。そしてその謎解きは源氏物語やアリスといった古典を絡めていて、詳しくなくてもふむふむと頷きながら読めて面白い。といった感じで、良いバランスだったなと思います。 恋愛要素もいい塩梅。主人公の鹿乃が京言葉の気の強いお嬢さんで、お相手が長年下宿していた年上の青年です、年の差ラブおいしいです。成長してきた鹿乃に対する気持ちを自覚しそうでしない慧にニヤニヤです。あまりドロドロしたりせず、ライバルもかませっぽい雰囲気で、この辺りも自分好みでした。 メイン二人以外のキャラクターもなかなか。特にお祖母ちゃんの恋の顛末は、お祖母ちゃんがツンデレでかわいく、お祖父ちゃんかっこよかった。 全体的に大人向けのコバルト文庫な印象が強かったです、こういう作品の方向性ならオレンジ文庫読んでいきたいです。あまり似たような作品ばかりにならないでくれれば。 評価 ☆☆☆★(7) ◆ シャルパンティエの雑貨屋さん (大橋 和代/アリアンローズ) 【amazon】 webで好きだった商人ファンタジーの書籍化。以前に一言紹介はしましたが、改めて感想です。 普通の商人の女の子が、遠方の未知の地で雑貨屋を開くお話で、1巻は店を開くところまで。このお話で好きなのは、なんといっても主役のジネットのキャラクター。一見すると普通の元気な女の子だけど、紙切れ1枚の証明書を信じて1ヶ月以上かかる旅路に踏み出す行動力。普段の姿を見ていても、芯が強くて物怖じしなくてほどほどに賢い。こういう主人公好きなんです。 web版と比べて、書籍版では旅路での商人としてのジネットの描写が増えていたのは嬉しかったポイント。稼ぎ方や物の値段の相場などがよく分かって、ジネットの才覚や世界観を掴みやすかったです。同時にユリウスがどれだけ稼いでたのかを実感。桁がとんでもなかった……。 高級なケーキを食べている描写などもあって、値段を気にしつつも至福の姿見て、分かるなあと頷く場面も。現代感覚だと多分2000円オーバーですよねあのケーキ……。 お話全体の流れとしては、旅をして、お店開店に向けて村の問題を一歩一歩片付けていって、と結構地味なんですが、ダンジョンや魔物の存在やギルドとのやりとりなど、色々なもののディティールがしっかりしており、ファンタジー世界での地に足着いた商売物で面白いです。 甘さは1巻段階では控えめ。ユリウスは強面とイケメンの中間くらいのビジュアルですね、もうちょっと強面かと思ってました(他の感想見ても、大体皆さん思うところは同じのようで……)。まあこれはこれでかっこいいので良し。短編読んで、ユリウスにとってのジネットはほんと奇跡的な出会いですよねと改めて思いました。 全3巻くらいになるんでしょうか、2巻もどう変わっているか楽しみ。 評価 ☆☆☆★(7) |
2月3日(火) |
<最近読んだ本> ◆ 本好きの下剋上 〜司書になるためには手段を選んでいられません〜 第一部「兵士の娘I」 (香月 美夜/TOブックス) 【amazon】 私の正月を奪っていったモンスターオンノベ「本好きの下剋上」の書籍化。なにせ文字数300万ですからね、文庫換算で多分20冊くらい行きますからね。よく4日間で読みきったものです。 あらすじを簡単に書くと、本好きの女性が死亡後、異世界の病弱幼女マインに転生して本のない生活環境に絶望して、本を読む未来に向けてひた走るお話。 この物語の魅力は一にも二にも、マインの本への欲望。本がなければ紙、紙もなければ文字を書けるもの、ととにかく本を求めて、自身の体調も周囲への迷惑も考えずに突き進んでいく姿に、次は何をしでかすんだろうという興味がそそられてグイグイと引きこまれます。現代知識もフル活用で、オーバーテクノロジー?何それ? な状態ですが、本と身の回りだけに注ぎ込んでいるので見てて清々しい。 暴走して迷惑はかけるものの、ちゃんと家族関係を築いているのもいいところ。本への愛情や生活感覚が現代的なだけで、心は異世界の方に馴染んでます。お姉ちゃんのトゥーリがかわいい。 書籍化して嬉しかったのが、地図がついた点。オンノベを一気読みすると細かいところ読み飛ばしがちで地理把握できなかったりもするので、ひと目で分かるのは嬉しい。それにマインが子供なので、世界が今どれくらい広がっているのかが視覚的に見えるのがなお良かったなと。都市思ったより小さい、港がある!?、など既読者としての驚きも色々ありました。 あと書籍化効果ではイラスト。怒りマインまじ怖い。表紙もいいですね。 一方で書籍化でちょっと惜しいのがマイン視点への固定化。本としての形だと仕方ないとは思うんですけど、連載時は閑話での他視点が気に入っていたし、効果的だなーと思っていたので。特に、かなり好きだった箇所(ルッツ視点)が改稿で少し重みが軽くなったように感じられました。 でもルッツ大好きです、暴走少女と面倒見のいい幼なじみの組み合わせっていいですよね! 他も好きだなあと思う登場人物が多いです。つまりは作品が好きってことなんだと思います。 話が進むにつれて世界が広がりマインの暴走も加速して、どんどん面白さが増す物語なので、是非全部書籍化されてほしいです。とりあえずは今月の2巻が楽しみ。 評価 ☆☆☆☆(8) ◆ シュガーアップル・フェアリーテイル 銀砂糖師たちの未来図 (三川 みり/角川ビーンズ文庫) 【amazon】 シュガーアップル最終巻の短編集は、このシリーズらしい切なく、でも前を向いていて読んでて幸せな気持ちになれるお話たちでした。ネタバレ全開で感想を。 まずは一番気になっていたヒュー。そう来ましたか! 言われてみるとなるほど、でもキャットと同様に全然気づけませんでした。素直じゃないキャットをここまで素直にさせるヒューへの気持ちにグッとくるし、それを笑い飛ばすヒューも相手がキャットだからで、読んでてこんな楽しい気分になれる。何度も言うけどこの2人好きです! 終わり方もいいですね、直接書かずとも幸せだったのだろうなと分かります。 アンとシャルは、この2人らしい自然な姿。特に生きた証として何を残すかという問いに対してアンが出した回答が、「ああ、アンだなあ」と思わせてくれるものでした、エリルとのやりとりは心に残ります。結婚式も暖かくて楽しくて、シャルの想いも愛しくて、幸せなお話。 他も主要な登場人物がみんな前向きな姿で良かった。ラファルの記憶喪失もベタではありますけれど、このシリーズらしい優しさであり、祈りの力だったと思います。 そして最後はミスリル締め。そんな締めですか! と読了直後に叫びましたけど、1巻からずっと一緒だったミスリルで、というのは自然ですね。笑って気持よく終われるラスト。シャルは大変そうですけど、ミスリルの目から隠れる手段はあるでしょうし、3人で楽しく暮らしてください。 改めて、読んでよかったシリーズでした。あきさんとのコンビの新シリーズも当然期待。 評価 ☆☆☆☆(8) ◆ シンデレラ伯爵家の靴箱館 仮面の乙女は真を歌う (仲村 つばき/ビーズログ文庫) 【amazon】 「この口説き文句がひどい」大賞があったら受賞間違いなしのアラン様がヒーローの「シンデレラ伯爵家」シリーズ第3巻、今回も酷かったです。ぶたにくの次はザリガニに例えるんですよ、女の子をですよ。本人大真面目なんですよ。笑い殺す気ですか。どこでこんなセンスを身につけたのか、指南書は間違ってないのに。 甘くて公共の場で読めない少女小説は結構あれど、笑いそうで読めなくなるのはそうそうないです。エデルも色々ずれてる子なので、なんとなく受け止めて一応噛み合ってるのがまた笑いを誘うという。 そんなアランがまさか本気出すとはびっくりですよ。そりゃいきなりすぎてエデルも理解できないわけですよ。ルディアGJという他ないですね、ルディアいなかったらこの2人がどうなってたか。絶望しか見えない。 恋愛周りが面白すぎてストーリーの印象が薄いんですが、終わりのシレーネとオーウェンの関係は素敵でした。あと印象に残るのは敵役の嫌らしさですね、アランとエデルの関係を素直に喜びたいのに喜べない。この先の展開が重そうですが、ルディア(とアラン)の頑張りに期待して次巻へ。 評価 ☆☆☆★(7) |