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 5月24日(日)


<最近読んだ本>


となりの魔王 到来編 (雪乃下 ナチ/ビーズログ文庫アリス)amazon
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ご近所魔王が愉快すぎる!

なろうに掲載されている同タイトルの書籍化。好きな作品の1つで、以前に一言感想で紹介したこともあったので、アリスの創刊ラインナップに名前あって歓喜でした。アリスはピンとこない作品も多いんですけど、となりの魔王を入れてくれただけでありがとうございますと言いたい。

中身の方はタイトルそのままで、田舎暮らしの夏織の家のおとなりさんに魔王が越してきて日常をおくる、ただそれだけのお話。大きな事件は起きず本当に日常だけで、それなのにこれが滅茶苦茶楽しいんです。

楽しさをまず生み出しているのが、魔王の言語センス。基本的には大げさで時代がかった物言いなんですけど、田舎の日常暮らしとその物言いのギャップ、そして時々こちらの予想の斜め上をいく発想力に、一語一語に笑いが止まらない。回覧板を手にとっただけで「いかに始末するが望ましいか」「余の手に落ちれば〜」ですよ。じゃんけんが三つ巴の邪法になるんですよ。この魔王様半端ない。
性格自体も妙に庶民じみてて、防犯意識が高かったり、通販が大好きだったり。通販グッズで一騒動起きたりするのもまた楽しい。

この魔王様だけで十二分に面白いんですけど、主人公の夏織がなかなか良いツッコミ役なのもポイント。突如現れた魔王に戸惑いつつもかなり適応が早くて、ビシバシとツッコミをいれる。しかも良いセンスをしていて、この子一人称の地の文も笑えるレベルです。魔王の◯◯に防水スプレーかける発想は普通の子じゃ出てこないと思います。

甘さは皆無ですけど、息を抜いて楽しい作品を読みたいときには是非オススメのお話。2巻も7月に出ることが決まっているので楽しみ。

評価 ☆☆☆☆(8)




 
 5月21日(木)


<最近読んだ本>


おこぼれ姫と円卓の騎士 臣下の役目 (石田 リンネ/ビーズログ文庫)amazon
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濃密な読書時間がおくれて幸せです。

毎回面白い「おこぼれ姫」シリーズの新刊、今回は特に濃密で凄かったです。
はじまりはメルディの調査と事故。5年前の事件は長く引っ張るかと思ったらすぐに踏み込んでいくのに少し驚きつつ、メルディとアストリッドの捜査に和んで読んでました、やっぱりいいコンビ。数字を残していかにも危ういなあと思っていたら案の定で、怪しい人は見えていてもドキドキの展開。

そこからの1人で抱え込むレティの姿がハラハラすることこの上なく。元々1人での動きが多かったですけど、今回はいかにも落とし穴に嵌まりそうな動き方をしていて怖かったです。メルディがいれば……と思わされる重苦しい流れを、救ってくれたデュークはお見事。笑顔のイラストが意外性あって素敵! レティのポカンとした表情も良かった。

すっきりしたレティが臣下を上手く使っていくんですが、ここが凄くよかったポイントの1つ。かなり増えてきた臣下それぞれの成長や活躍を描いていって、さらに思わぬ再登場の人も出てきたりと、数十ページ程度の中でぎっちりで面白い。シェランとかいつの間にか凄くしたたかになってて目を見張りましたよ、女装が痛快。アストリッドは相変わらずズレてるところもありますけど、自分で判断して動いて、メアリも説得できたんだから成長してますね。アイリーチェとの組み合わせが変てこで楽しい。数字は危なかったですけど! メルディは伝わってて当然と思っていたのに。読み手側も早くレティに伝えて! と思いながら読んでました。このあたりはまだまだですね。

そしてメルディの事件に踏み込んでいく後半の話運びが圧巻。明らかになった真相、レティの決断、メルディの決断、どれもが重く濃密で、葛藤が伝わってきて読み応えが凄い。特にメルディの決断には心が震えました。なんて残酷で優しい。普通の精神で下衆なことを考える道に踏み出したメルディも受け止めるレティも格好いい。こうして完成した三人分の頭脳にグッときました。

これで終わり、と思ったら最後にもう一盛り上がり。そんな些細な伏線持ってきての名前呼びの破壊力。怯えるレティの気持ちもうまく伝わってきて、いよいよ恋が本番だなとドキドキ。
短いシリーズが増えている中、10巻越えてこんなに面白いシリーズが読めて幸せです。変死が解決して一区切りではありますが、恋の山場はこれからですし、これからも本当に楽しみなシリーズ。

評価 ☆☆☆☆★(9)




 
 5月17日(日)


<最近読んだ本>

エスケヱプ・スピヰド 異譚集 (九岡 望/電撃文庫)amazon
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意外性たっぷりの楽しい短編集でした。

盛り上げて盛り上げて綺麗に着地した「エスケヱプ・スピヰド」シリーズ、おまけの短編集。学園物があると聞いていたので、エスケで学園物って何が出てくるのかと思っていたら、その学園物が一番楽しかったんだから分からないものです。

学園物は現代学園パロで見事にオールスター。本編の主だったキャラがほとんど出てきて、本編のキャラをそのまま全く違和感なく現代に溶け込ませていて、「このキャラは現代だとこうなるんだなあ」ともうそれだけで楽しい。九曜だけは駄目な子になってましたが、現代だし駄目学生もいないとですよね。皆活き活きとしていて平和で、こんな未来もあったら良かったなあとしんみりさせてくれるお話でもありました。特に最後の柊の「また来週」が心に染み入る。柊やっぱり好きだなあ、前日譚は2番目

他の短編も、笑いあり切なさありでどれも良かったです。笑いが思ったよりも多くて、「九岡さんこんなのも書けるんだ!」と驚かされました。後日談も切ないだけじゃなかったですしね、静馬が第二の人生を存分に謳歌しているのには笑うしかなく。
次回作が何出てくるか分かりませんねこれは。現代物もファンタジーもありえそうですし、楽しみ。

評価 ☆☆☆★(7)