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 8月29日(土)

Twitterで少女小説ビンゴを作られている方がいたので、やってみた結果。



◯が全巻読了、△が一部のみ(1冊のみが多め)。なんとか1ビンゴでした。古い作品漁ってた時期があった分、印だけは割とついた方なのかなと他の方々の回答見て感じました。セディ・エロルと竜の眠る海だけはタイトルすら分からず。星へ行く船は、多分積み本置き場の奥の方にあります……。


<最近読んだ本>


残穢 (小野 不由美/新潮文庫)amazon
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怖かった……!!

夏の間に読んでおこうと思って手にとった、小野さんの現代ホラー小説。「マンションの部屋で奇妙な物音がする」という怪奇現象を、ホラー作家の主人公が住民と一緒に調べはじめるところからスタートする物語。
はじめのうちは大して怖くなかったんですよ。聞き取りで地道に怪異の原因を探っていくドキュメンタリー形式の進行。個々のインタビューには不気味さもあるんですが、主人公の語り口がかなり淡々としているのもあって、そこまで恐ろしくはありませんでした。
それが話が進んでいくにつれて、加速度的に怖くなっていくんです。調べれば調べるほど、過去に過去に何か原因があることが分かっていって、関係なそうだった怪談同士にも繋がりがあって。偶然では片付けられないくらいの証拠が集まって、でも全貌が見えてこないのが薄気味悪くてたまらない。

そして怖さが爆発するのが、主人公にも怪異が振りかかるところ。関わった者にも怪異が襲いかかる構造が見えてきて忠告されて、ドンピシャなタイミングでくるのが怖すぎる。この伝染していく身近な「残穢」は、「読んだ人にも〜」と思わせてくる怖さもあって、皆さん怖い怖い言ってるのに凄く納得。このあたりを夜に少しだけ読み進めましたが、全部読み切るのはギブアップしました。無理無理。
そこからは、主人公達が調べ続けるのを「そろそろ止めときましょうよ!」と思いながら読みました。これだけヤバそうな匂いがしているのに、情報が入るとつい調べ続けてしまうのは、乗りかかった船ではあるとはいえ、怪奇に絡み取られている感がありましたね。 足掛け7年も調べていた根気凄い。
最後はもう一度「偶然かも」という視点に戻っての終わりでしたが、絶対偶然だけじゃないと思わせるくらいの状況証拠なだけに、怖さは引くことはなく、不気味さがしっかり心に植え付けられました。

もう1冊の鬼談百景も買ってカバンIN済、こちらも今夏に読みます。怖いものは一気に片付ける!

評価 ☆☆☆☆(8)



青薔薇伯爵と男装の執事〜出逢いは最悪、しかして結末は〜 (和泉 統子/ウィングス・ノヴェル)amazon
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ウィングスから新創刊したソフトカバーレーベルの1冊。このレーベル、内容的には文庫と大差ないと思われますが、オンノベ書籍化などでソフトカバーが活発化している中でのテコ入れでしょうか。ウィングスは元々一見さんが手に取りづらいレーベルですし、この策もありかも。読者的にはちょっとお高いですが、ウィングスには好きなので応援します。

で、感想ですが、和泉さんらしい愉快なラブコメで楽しかったです。没落した伯爵家に若くて口が悪い新伯爵がやってくるところからはじまる物語。このお話の特徴は、なんといっても濃いキャラクターたちだと思います、主役の執事アンと伯爵アッシュをはじめ癖ある人ばかり。特にアンですね、アッシュにどんな嫌味を言われても全てをポジティブに受け止める善良っぷりが凄い。全部「ご主人様はお優しい」に変換されますからね。アッシュの口の悪さも大概酷いけれど、アン相手のときは同情します。打っても打っても響かない掛け合いが楽しい。
他の使用人達や他家のキャラも癖ある人が多くて、もっと見たかったなあと思う人がたくさん。書き下ろしのノラ視点でのアッシュの不器用な優しさも良かったですね。アンは本当に残念で愉快な子です。

男装執事ということで、性別隠しつつの恋愛要素も期待しちゃうんですが、今のところは薄め。でもお互いのことを意識するようになっていくのにニヤニヤ。ライバルキャラ登場で心がモヤモヤするお約束展開もときめきです。

銃が出てくる物騒な展開や国の権力争いの要素などもあったりするんですが、それでも重く感じないのはキャラクターたちのおかげかな。あと、シリアスでも重くならないのは和泉さんの作風でもあると思います、前作もそんな感じでしたし。1話目のような、悪役もなんだかんだで引き込んでしまうお人好しな空気、好きです。

青薔薇の秘密はまださっぱり見えてきませんが、アンとアッシュの恋愛模様がどうなるかが楽しみ。アッシュが迫って、アンが変なこと言う流れな気がします。
で、最新話を本誌で読んじゃったんですが、一言だけ。「えっ、あっ、えっ!?」でした、やられた。気になる方は本誌買って読みましょう(露骨な販促)。次が最終回らしいので、番外編なければ全2巻は確定してる模様です。

評価 ☆☆☆★(7)




 
 8月23日(日)


<最近読んだ本>


烏に単は似合わない (阿部 智里/文春文庫)amazon
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や ら れ た !!!

少女小説らしいところもあると聞いて気になっていた、松本清張賞受賞の和風ファンタジー。簡単にあらすじを書くと、東西南北の四家からそれぞれ后候補を出し、その争いを1人の少女視点から描く物語。主役格のあせびは権力争いを知らない無邪気な女の子で、彼女が田舎者で周囲に笑われたり、意外な特技を見せたり、若宮様への恋心を抱いたり、といったあたりは確かに少女小説で、四家の姫君による宮廷争いがどうなるのかドキドキしながら読んでました。登場人物が人ではなく八咫烏なのもこの物語の特色で、鳥への変身、人との文化の違いなどが話の中で見えるのも面白かったです。

と、ここまでが中盤のお話。途中から色を一変させるのがこの物語の恐ろしいところ。何書いてもネタバレなので詳しくは書けませんが、ある事件が起きるあたりからミステリ色が強くなり、思いっきり驚かされました。これは見事という他ないです。ほろ苦さの中に心暖まるところもある結末まで、夢中になって一気読みでした。
以下ネタバレ反転です。
北家の悲恋物語が展開してるあたりでは、脇役のエピソードまで少女小説らしいんだなあなどと考えておりました。まさかあせびが変貌するとは。あせび視点だと何気なく書かれていたことが、反転すると恐ろしく見えるのが凄い。バタンバタンと倒されていって、誤解・勘違い・悪意がなければ、の畳み掛けでやられた感一杯に。赤い着物の真相あたりは本当に驚かされたし恐ろしかったです。
そんな中で、若宮と浜木綿には癒やされました、ほんのり胸キュンなときめきをありがとうございます。特に終章が素晴らしかった。読み終わった後に冒頭に戻ると、意味が違って見えるのが絶妙ですね。


少女小説読みでミステリも好きな方には是非お勧め。続編も文庫落ちしているので読んでみようと思います。

評価 ☆☆☆☆(8)



シンデレラ伯爵家の靴箱館 小さき乙女は神を知る (仲村 つばき/ビーズログ文庫)amazon
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やっぱりアランがおかしい。
アランの恋愛アプローチが面白すぎてストーリーを食っているシリーズの第4巻ですが、今回も凄かった。巻を経るごとに面白発言にバリエーションが増えてきて、笑えるポイント多すぎて読んでて困ります。ウサギ小屋とか作ってる場合じゃないんですよ! 個人的なMVPは「一緒に幸せな豚を目指そう」でした。もう何を言ってるか分からない。
これでちゃんと気持ちは通じてて甘いからおかしい。恋するエデルかわいいし、いいんですけどね。でも、シレーヌの後押しがなかったら結構危うかったような気がするし、ルディアもいるし、周りに助けられてますね。

本編も良い話なんです。リリーローズが大人へと踏み出す場面ではジンときたんです。でも感想書くとなると、アランのインパクトが強すぎて。もうここまできたら、最後までアランにはこのままでいてほしいです。

評価 ☆☆☆★(7)




 
 8月20日(木)

長く続けていると思わぬ嬉しいこともあるんだと実感した先日。めっきりスローペースになりましたが、これからもぼちぼちと。


<最近読んだ本>


ミレニアムの翼 320階の守護者と三人の家出人3 (縞田 理理/ウィングス文庫)amazon
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スチームパンクなファンタジー「ミレニアムの翼」最終巻。タイムマシンみたいな派手なギミックを持込みつつ、綺麗にハッピーエンドで締めてくれて面白かったです。通して振り返ると、サイラスと愉快な仲間たちのバランスとれた空気が良かったなあと思います。個性的な3人をサイラスが支柱となって繋ぎ止めてて、活躍あり笑いありで楽しかった。お人好し・苦労人キャラ好きな自分にとって、サイラスはとても好みな主人公でした。

最終巻で印象的だったのはジャカード卿ことジョニーパパとケイシー。ケイシー来襲! のスリリングな展開をジョニーパパがぶち壊してくれましたからね、弄ばれるケイシーがちょっと不憫になったくらい。そのケイシーも最後は救われてよかった。ジョニーのアプローチが素敵でした。ジョニー親子はこの親にしてこの子ありでしたね。
前半のインパクトが強かった分、後半のラモーナ危機編は消化試合感が若干。相手も小物でしたし。でもナッシュ最強には笑いました。最後のサイラス正体明かしも痛快、気づいてませんでした。書き下ろしのヒューイの秘密まで含めて完璧な着地。
縞田さん作品は次回作のペテン師も前編読了済。そろそろウィングスでもまた恋愛要素がある作品を読みたいなあとも思いますが、わんこがかわいいのでまずは後編を待ちます。

評価 ☆☆☆★(7)



婚外恋愛に似たもの (宮木 あや子/光文社文庫)amazon
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宮木さんがおくるジャニーズ小説。個人的に最近沼に浸かってきてる自覚がありまして(来月には宝塚観劇デビューします)、このタイミングで読んどこうかと手に取りました。

思ったよりも割とコミカルで、思ったよりも現実的でした。
とある男性アイドルのファンになった、セレブから貧困層まで5人の女性を描いたお話。各人とも生活の中にどうにもならない苦しさを抱えているんですが、それでもあまり重くなくて読みやすいのは、どこか現実離れしていてコミカルさを感じるからだと思います。その最たるのが、アイドルが縁で5人が繋がるところ。超セレブと一般人が混じって焼肉打ち上げはなかなかにファンタジー。

とはいえ、コミカルさの中には現実的なところも。はっきり違いは存在しているし、夫や子供といった会話も出てきますし。そんなふわふわしつつリアルでもある、奇妙な関係が面白かったです。個別ではセレブ2人の話が楽しかったかな、どちらも強烈。後半の方は終わり方も好きです、その幸せはささやかだけれどもとても尊い。

ところでこの手のお話を読むと、一つに全力でハマる人々がいつも羨ましく思えます。自分が広く浅くタイプなためなんですが、そのうち沼にドハマりする日はくるんでしょうか。

評価 ☆☆☆★(7)