12月13日(日) |
まだ沼に(略) 年内に読む予定だったものがあれこれ残ってますね……。 <最近読んだ本> ◆ 左遷も悪くない5 (霧島 まるは/アルファポリス) 【amazon】 最後まで暖かくて素敵でした。 結婚からはじまった鬼軍人主人公のファンタジーも最終巻。前巻で予告されていた敵国への旅がメインでしたが、無事に済んでよかった。ウリセスが積み上げてきた縁や信頼、何よりレーアとの暮らしで育った無事に帰りたいと思う気持ちが、助けてくれたんだと思います。クヌートの企み跳ね返すのは痛快でした。 色んなキャラが出てきた今巻、ウリセス側では三悪友が意外な存在感を見せてくれました。ガストーネはじめ、なんという癖あって有能な面々。ウリセスが家族のことを語れるようになって、また一味違った関係を築くんだろうと思うと、嬉しい気持ちになりました。 レーア側は、助けてくれるメンバーがたくさんいて平和、この作品らしい暖かさをたっぷり感じられました。フィオレは最初はポッと出感ありましたけど、笑顔を提供してくれるいいキャラになりましたね、レーアと一緒に笑いました。 ずっと好きなキャラだったエルメーテは、とても頑張ったと思います。自分にできることを必死で考えて、まさに帰還の立役者になったわけですし。殉職しないでよかった。しかし最初の頃考えると、ほんとウリセスのこと大好きになりましたよねエルメーテは。コンビとしてもピッタリ互いを補ってて、今後も長く息のあったコンビであるんでしょうね。 でもジャンナからすればそんなのは見えないわけで、ジャンナの意趣返しもジャンナ視点で考えると大変気持ちがいいものでした。エルメーテは報われてもいい頑張りだったと思うんですけど、まあ仕方ないですね。 で、でも2年後にはそろそろ許してあげてもいいんじゃないでしょうか!! とおまけの後日談を見て。これ進展してるんですかね……(遠い目) 3年以内には許してあげてください。 グラートはウリセスの子らしくないませた子に育ちそうですね。あまりガストーネに会わせちゃいけない子のような。ちょろい扱いされているセヴェーロとコジモが心配です。セヴェーロは剣の方はどうなったんでしょう。 本編の最後、みんな笑顔で賑やかで、最後の一文が本当に素敵で。いい物語を読んだなとしみじみ。web版は別に続くということで楽しみです。 評価 ☆☆☆☆★(9) ◆ 魂織姫 運命を紡ぐ娘 (本宮 ことは/講談社X文庫ホワイトハート) 【amazon】 本宮さんのホワイトハートからの新作(というには時間経ってますが)は、糸紡ぎの巫女が主役の和風ファンタジー。村娘が巫女として王宮に、という王道の開幕で、その過程もじっくりと描いていく様からはかなり本格的な大河少女小説になる雰囲気があって、読んでてワクワクさせてくれました。 物語の特徴としては、糸紡ぎの描写がとても丁寧なこと。読書メーターの感想に野麦峠の文字が飛び交うのもよく分かるくらいに、序盤は女工物で糸紡ぎ。ハードな環境なんですけど、主人公の水華が真面目で糸紡ぎ好きなおかげでそこまで重くもなく、また蚕の命を惜しむような優しさを見せたりと好感持てる子だったので、先の展開を素直に楽しんで読めました。 ヒーローは最初は晃成だと思いきや、皇帝っぽいですね。お互い孤独で惹かれあうのがよく分かるポジション。名前呼びは水華には効くに決まってますよね、不器用な皇帝と、言葉の意味が分かって赤くなる水華にはニヤニヤ。絶対的な立場の問題があるだけに、ここからどう展開するのか。陰謀の元凶も出てきましたし、続きが楽しみ。打ち切りになりませんように(ホワイトハートはちょっと怖い)。 評価 ☆☆☆★(7) ◆ トカゲなわたし (かなん/レジーナブックス) 【amazon】 「好感度が上がらない」の作者さんの書籍化作品。webで結構楽しかったので本編も買いました。タイトルのとおり、トカゲ族の女の子が主人公という異色作。人間からトカゲに転生→トカゲの世界から人の世界に異世界トリップ、と二段構えでなかなか凝った設定です。 最初のトカゲ世界の描写は、ひたすらに馴染めない様子を描いていて、結構長くて重たい。10年以上全く馴染めなかった時点で地獄でしょうし、よくここまで耐えて生きたなと。ノエリア視点ではイカレた登場人物ばかりで読むのしんどかったです。ラト君がいなかったらと思うとほんと怖い。 でもトカゲ世界の描写があるから、人間世界にきてからのノエリアの幸せと優しさがよく理解できるわけで。トカゲの姿で恐れられても動じずに、優しい心で人の世界に馴染んでいけるのは、ひどい孤独を味わっているからですよね。持ち前のチートパワーで文字通り自力で居場所を勝ち取っていく姿が、気持ちよくて面白かったです。 ラト君のノエリアの種族を超えた交流も良かった。恋愛要素は薄めでも、二人とも命の危機を一緒に乗り越えただけに信頼関係バッチリで、ほのぼのしたやり取りに胸が暖かくなりました。とある勘違いが発覚したときのラト君は楽しかったし、恋を飛び越えて家族的な暖かさをもった終わり方も良かったです。この先、恋愛に発展したのか(種族的にどうにかできるのか)はちょっと気になりますね。 最後に、イラストはもう少し冒険しても良かったような(特に表紙)。このタイトルですし、トカゲを押し出した表紙も見てみたかったです。 評価 ☆☆☆(6) |