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 3月9日(日)

メルフォレスです。 >「久々にきたらまたおもしろそうな本を〜」の方

お久しぶりです、変わらず少女向け中心で読んでます。流行りは姫嫁作品全盛の数年前からそんなに変わってないですが、その中でも面白い作品は色々と出てるので、よろしければまたコバルトなどもどうぞ。昨年末まとめ記事に挙げた作品あたりはどれもお勧めです。

「無伴奏ソナタ」、お勧めありがとうございます。今は少女向け読みになってますが、はるか昔は「SFが読みたい!」の1位作品を読んだりもしていたのです。今も天冥の標を積んでますし、神林長平さんの作品なども長年積んでます(実は一冊も読んだことない)。そんなわけで久々の海外SF、読んでみようと思います!

<最近読んだ本>

少女は鋼のコルセットを身に纏う スチームパンク・クロニクル (ケイディ・クロス/竹書房文庫)amazon
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nanakikaeさんにお勧めいただいた、19世紀ヴィクトリア女王時代が舞台のスチームパンク。

恋に戦いに、ドキドキたっぷりのスチームパンクで面白かったです。

凶暴な影の人格を抱えているメイドの女の子が、貴族の青年に助けられるところからはじまる物語。この助けられたフィンリーのお話がメインなんですが、それ以外にも色んな要素が詰め込まれてます。スチームパンクなので19世紀でも様々なテクノロジーやエーテルなど出てきて、助けてくれたメンバーは能力者や人型機械など濃いキャラクター揃いで、忍び寄る敵の謎やバトルなどもあって。
訳者あとがきに「アメコミを読んでいるような爽快感にあふれている」とありましたが、まさにそんな感じで、500ページ超ある厚さも気にならずに読めました。

能力の描き方なども面白いんですが、少女小説読みとしては、前述したように主人公フィンリーの物語がメイン。最初は影の人格の存在に怯えるばかりだったフィンリーが、人格の由来を知り、影の人格と折り合いをつけて強くしなやかになっていくのが素敵。人格の謎が明かされるあたりがエキサイティングで、そこから一気読みでした。タイトルにもなっている鋼のコルセットをまとうシーンも、それに惹かれるフィンリーの様子が良くて、物語を象徴するアイテムだと思います。

そして、恋模様が面白いんです。助けてくれた公爵のグリフィンはまさにパーフェクトな青年でかっこいいんですけど、圧倒的な身分差があるのがネック。そこにもう一人出てくるのが、裏社会の親玉な存在のダンディ。影の人格のフィンリーに興味を持ったのがはじまりなんですが、残酷な一面を持ちつつも女性には紳士というこれまたいい男で、フィンリーも影の人格が馴染んでいくうちに彼の魅力に惹かれてしまうのも納得。グリフィンとダンディの両方にときめいてしまい、キスしたいと思うあたり、悪女的な面もあって、一味違うドキドキがありました。この三角関係は次巻に続くなんですが、身分差は大きいし、ダンディもまだ裏ありそうだし、どう転ぶか楽しみ。

仲間たちの個性も面白いポイント。中でもエミリーが、チートレベルの賢さな上にフィンリーの良きポジションで好き。彼女を巡る恋模様もあったりして、ほんと見るべきところが多いです。
最後は実に続きが気になる終わり方。とはいえ1冊としての満足感はあったし、2巻は出ることも決まっていそうで一安心。翻訳物は刊行ペースあくイメージですが、半年くらいで出てくれるといいです。
ミストボーンシリーズあたりが好きな人にはお勧めですし、少女向け読みでも「デ・コスタ家」好きな方には合うんじゃなかなと思います。

以下余談。この作品、旅先で読もうと思って書店で探したら、竹書房文庫という聞きなれないレーベルだったためかなかなか巡り逢えませんでした。結局はジュンク堂が偉大だったんですが、マイナー系はやっぱりネット書店が安定ですね。

評価 ☆☆☆☆(8)




 
 3月2日(日)


<最近読んだ本>

童話物語(下) 大きなお話の終わり (向山 貴彦/幻冬舎文庫)amazon
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素晴らしいファンタジーでした!

下巻は妖精の秘密に踏み込む内容なのかなと思っていたら、そこはあくまで軽くで、本質はペチカとその周りの人々の物語でした。そして、ペチカの物語として素晴らしかったです。
パーパスで暮らすペチカも、愛情をなかなか信じられない不器用さを見せつつも幸せを掴めそうな様子が感慨深く、それだけで胸にくるものがあったんですけど、白眉だったのがその先の旅路。「アンティアーロ、アンティラーゼ」という素敵な言葉からはじまり、大切な人と別れて世界の果てを目指すペチカ、その姿のなんと力強いことか。上巻のペチカとくらべての心のたくましさが雲泥の差で、進む姿が格好いい。未知へのドキドキや新しい出会いもあって、この辺りから読む手が止まらなかったです。

完全に想定外だったのがルージャン関連。こういう第一印象最悪からの〜というのは好みな関係なんですけど、それでも上巻の感想ではルージャンに触れませんでした。それは「ペチカに対するこの仕打ちは下巻でも許せないだろう」と思ったからなんですよね。そしたらペチカとフィツが、そんな考えは浅いよと教えてくれました。「誰もが変わることができるんだ」というメッセージは、上巻の彼や彼女を見てきたから、そしてルージャン自身も努力して見違えるように格好良くなっていたから、胸に響きました。二度と裏切りたくないというルージャンはお約束の台詞でも切ないし、汽車を飛び降りてペチカを助けに向かうルージャンなどは本当に格好良かった。2人に幸あれ!

他にも心に残るシーンがたくさん。下巻に入っても妖精らしいやらかしを何度も見せて笑わせてくれたフィツも最後は立派過ぎるくらいの姿を見せてくれたし、ヤヤもペチカの家族たちもみんな良かった。上巻では細かいところが気になって物語に入りきれないところもありましたが(これ自分の悪い癖です)、下巻は気にならずに物語を存分に楽しめました。

付記にはペチカに関する意味深なことも書かれていたりして、これは二次創作も広がるのも納得できる、設定も魅力なファンタジーでした。昔の作品でもまだまだ知らない面白いものはあるんだなと再確認しました。お勧めありがとうございました!

評価 ☆☆☆☆★(9)