ドイツェン宮廷楽団譜 嘘つき婚約コンチェルト
永瀬さらさ
角川ビーンズ文庫
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素晴らしいラブコメディ&ロマンスでした、こういうお話大好きです!
「精霊歌士と夢見る野菜」などを書かれている永瀬さんの今月の新作は、バイオリニストの女の子が主役のお話。良い評判が聞こえてきたので優先して読んだらスマッシュヒットでした! つい先日「ファンタジー要素薄めの楽しいロマンス好き」と書いたばかりで、またこういう作品に出会えて嬉しいです。
バイオリニストのミレアが指揮者のアルベルトと出会うところから物語は始まるんですが、溌剌として負けん気強そうなミレアの性格が好みで、最初から「このお話当たりかも!」と思わされました。性格悪いアルベルトとの掛け合いをはじめ、「聖夜の天使」への純真な憧れなど一挙一動がかわいくて楽しい。アルベルトに惹かれだしてからはさらにかわいい。
ヒーローのアルベルトがまた良いキャラクター。ミレアが憧れる「聖夜の天使」との関係性は割と早くから予想がついて、読者視点だとミレアの言動に振り回される様子に凄くニヤニヤできるんです。「聖夜の天使」にばかり気持ちを向けられたら、そりゃ苛立ちますよね。師匠がそんなアルベルトのことをいじったりするのも楽しい。
それでもミレアにとってのベストな結果を最優先するアルベルトの優しさは、ヒーローにふさわしい格好良さ。その優しさに時折ミレアが気づくことで生まれる甘い空気がまた良かったです。
そして、とても気に入ったのがクライマックスの場面。ミレアの行動力からはじまり、皆の暖かさに触れて、アルベルトを振り回した先に待っているのは素敵な音楽。音楽を通して体当たりして気持ちを伝えるミレアがロマンチックで凄い好きでした。「落ちたら受け止めてくれるでしょう?」が素晴らしかった!
他にポイント高かったのが、話運びや悪役の描き方。しっかりとした障害や困難として描かれながらも、ただの悪役で終わらないのが、意外性もあって個人的に「おおっ」と思わされました。悪役たちだけでなく、脇役たちも含めた想いの描き方がいいなあと思う物語でしたね。家族から名もない楽団のメンバーまでみんな良かった。
あと表紙デザインの2人がかわいい。いい意味でビーンズらしくない表紙だなと思いました。少しずつ多様化が進んでいるんでしょうか。
この1巻でも綺麗にまとまってはいますが、2人のラブコメ模様はこの先も楽しそうだし、レベッカ達など気になるサブキャラもいるので、続きが出ますように!