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好きラノ投票データを使った、本のおすすめツール

2020年7月20日(月)

好きラノ2020上期の投票データを使って、「この本を読んでいる人にはこんな本もお勧めです」ツールを試作してみました。UIは本当に最小限ですし、期待するような結果もうまく出ないかもしれませんが、興味があったら使って遊んでみてください。

以下は、作った動機やどんなロジックで動いているかの簡単な説明です。

元々のモチベーションは、某Web小説サイトの『この作品をブックマークしている人はこんな作品も読んでいます』欄からきています。こういう機能は個人的にとてもありがたく、趣味の合う小説を探すのに重宝しています。ただ何度も使っていると、こう感じることもあります。「ランキング上位の人気作ばかり並ばずに、もう少しマイナーな作品も並んでくれたらなあ」と。

どこぞの本好き主人公のように「そういう機能がなければ自分で作ればいい!」とできればよかったんですが、機能を作るにはデータが必要です。某サイトではブックマークのデータを取得してツールを作って公開するようなことができません。そんな中、昨年末の好きラノ投票数の増加を見て、「投票データ使えば、書籍のお勧め機能作れるのでは?」と思いつき。主催のいちせさんにも快く許可いただいたので、こうして形にしてみました。

(7/21追記) 好きラノに直接関係するモチベーションを触れ忘れていました。何年も前は投票結果の趣味が合う人のブログを見て、面白そうな作品を探すようなことができたのですが、最近の10000票オーバーのような状況ではなかなか難しくなってきています。このツールが少しでも読みたい作品探しの役に立てばいいなあと思い作ったのでした。どう考えてもこっちをメインに書くべきですね。最近はWeb小説中心に読んでいるせいでつい。(追記ここまで)

なお、Web周りのド素人が作ったため、UIはへっぽこです(スプレッドシートからデータを取得しているのでとても遅いです。スマホ対応なんて、とても無理な話でした……)。類似度計算のアルゴリズムも単純なものを用いているので、誰か改良してみたい方いたら是非お願いします!

お勧めする際のロジックは、一言でいえば読者層が近い作品の類似度が高くなるようなものを用いています。単純に共通読者数を見るのではなく、全体の傾向を見て類似度を計算しているので、共通読者数が0の作品でも類似度が高くなることもあります。例えば、ある人が作品A,B,Cを、別の人が作品B,C,Dに投票した場合、AとDの共通読者数は0ですが、類似度はある程度高く計算されます。


これ以降は詳しい人向けの説明です。

好きラノの投票から得られるデータは、各投票者のお気に入り10作(順位づけなし)です。「最大上位10作のみが観測されている」という状況にピッタリ合うアルゴリズムが見つからなかった&思いつかなかったため、今回は近い設定のLightFMを用いました。LightFMのハイパーパラメータは、交差検証を行いつつ、結果の出方の定性感も踏まえてチューニングしています。

作品の類似度計算には、LightFMで得られた各作品ベクトル表現のcos類似度を用いています。ただ、単純に類似度を計算すると、票数が1-2票の作品が類似度上位に来やすくなり、違和感が強いです。これを緩和するため、投票にノイズを入れた学習(パターン2)や、投票数による類似度の重みづけ(パターン3)を導入しています。あまりスマートなやり方ではないため(特に後者)、もっと改良したいところです。

好きラノ2020上期投票

2020年7月18日(土)

好きラノに参加します。前期はTwitterで投票しましたが、今回はブログで。


<心の一票>

女王の化粧師2 (千花鶏/ビーズログ文庫)

「電子書籍限定での発売なので投票できない、辛い……」→「ブログなら集計に迷惑もかけることなくアピールできる!」ということでブログ投票にしました。最高のヒストリカルロマンスを見せてくれることが確定している物語、2巻ではその一端を見せてくれます。さりげない1シーンがとてつもなく甘い。続きはなろうカクヨムなどでも読めます、少しでも広まってほしい。


金星特急・番外篇 花を追う旅 (嬉野君/ウィングス文庫)
【20上ラノベ投票/9784403542220】

ここ10年で読んだ物語でベスト10には間違いなく入る傑作ファンタジーの番外編。振り返る旅というコンセプトが素敵ですよね。相変わらずだったり、幸せそうだったりの面々を見ていて幸せな気持ちになりました。泣きそうな三月が尊すぎて死ぬ。

本編も最近再読したら、やっぱり最高の冒険小説でした。今月までKindleUnlimitedで読み放題らしいので、全人類読むべき。


Unnamed Memory IV 白紙よりもう一度 (古宮九時/電撃の新文芸)
【20上ラノベ投票/9784049128048】

5巻も出てますが、あえて4巻で。3巻の引きからの再スタートの衝撃はやはり強烈ですし、それでも惹かれていく繋がりの強さにときめきます。歳をとっていない分、ちょくちょくやらかすティナーシャがかわいい。


Babel I 少女は言葉の旅に出る (古宮九時/電撃の新文芸)
【20上ラノベ投票/9784049131338】
Unnamed MemoryとBabelは同じくらい好きなので、再書籍化は本当に嬉しい。雫とエリクによる、ボケ5割ツッコミ0割真面目5割の異世界交流雑談が大好き、無限に読んでいられる楽しさ。一つ一つの事件も、しんみりしたりひたすら不気味だったりと色が違って面白い。雫の旅路が行き着く先を、この書籍化ではどういう風に見せてくれるのか楽しみです。


ダイブ・イントゥ・ゲームズ1 ぼっちな俺とはじめての友達 (佐嘉二一/レジェンドノベルス)
【20上ラノベ投票/9784065199770】

VRゲームを舞台とした物語。海の生き物となってリアルに生態系を味わうゲーム、自由度が高いMMORPG、ガチのロボゲー、など色んなゲームが登場して、主人公がそれらを心から楽しんでいるのが伝わってくるのが良いのです。最初はぼっちだったのが、ゲーム仲間と時々一緒に楽しむようになる人間模様にもホッコリ。


Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 01 (之貫紀/KADOKAWA)
【20上ラノベ投票/9784047360174】

主人公たちの研究者らしい好奇心全開の現代ダンジョン物。国家や権力の陰謀や駆け引きなどは二の次、ダンジョンの謎の検証に夢中になったり、日々の食事を楽しんだり、あくまで日常の延長線でダンジョンをエンジョイしている姿が見ていて楽しいです。


フシノカミ 3 ~辺境から始める文明再生記~ (雨川水海/オーバーラップノベルス)
【20上ラノベ投票/9784865546835】

文明を良くしていこうとするアッシュの熱量が素敵なシリーズ、3巻は飛行機制作編。相変わらず他者視点の加筆の大盤振る舞いで、Web版既読者にも嬉しい作り。別れのシーンでのアーサー視点、寂しさや前向きさや嬉しさが詰まっていて最高でした。マイカ視点がどんどん全力全開になっていくのも好き。


魔法世界の受付嬢になりたいです 3 (まこ/アリアンローズ)
【20上ラノベ投票/9784866573052】

近年で最高のケンカップルがこの物語には存在しました。ロックマン、お前なんて難儀な生き方を……。Webの後日談での追撃で私は死にました。電子書籍限定SSでのナナリーの破壊力も凄いので、紙派の人は電子書籍も。


十三歳の誕生日、皇后になりました。 3 (石田リンネ/角川ビーンズ文庫)
【20上ラノベ投票/9784047361454】

スピンオフ出てるんだ、と気軽な気持ちで読み始めたら、莉杏の目を見張る成長に圧倒される物語でした。愛を求めるために文字通り命もかける系女子、とだけ書くとヤンデレっぽいですけどそんなことはなく、「皇后として陛下と同じところに立ちたい」という一途な想いで成長した結果、命をかける選択に至るのが末恐ろしい。1巻の最初ではただの少女だったのに、こんなの暁月も惹かれるしかないじゃないですか、強すぎる。


(書籍感想)筺底のエルピス シリーズ / オキシタケヒコ

2020年7月6日(月)


筺底のエルピス
オキシタケヒコ
ガガガ文庫
amazon

Twitter上で局地的に大ブームになっている、現代を舞台にした能力者たちのSFバトル小説。オススメを見てかなり前に購入はしていたものの、絶望の描写がなかなか強烈と耳にしており、読むのに体力入りそうなので積んでました。

無茶苦茶面白かったです!! なんでこれ積んでた??? といっても1巻の段階では、「停時フィールド」という変わった設定下での駆け引きが面白いバトル物という印象で、そこまで絶賛というわけでもありませんでした。
その印象がまず変わったのが2巻。表紙から明らかに「上げて落とすぞ」というメッセージが伝わってきて、キラキラとした日々を描いた後にこれでもかと落としてくる。それもただ落とすだけでなく、屈しない登場人物たちを描きながら、意外な落とし穴や大量の伏線なども示されて読み応え抜群。先への期待が高まりました。
さらに3巻では色んな人物の心情の掘り下げにより物語の深みがグンと増して、と巻を経るごとに面白さが足されていって、最新6巻はもう凄かった。バトル、SF、群像劇、青春、全てがギュッと詰まっていて最高でした。どうやったら、これだけの世界の広がりを理詰めで展開できるんでしょう。

絶望の描き方もバランス良くて、半分は「これフラグでしょ!」と予想でき、半分は「えっ!」となる、楽しむのにちょうどいい塩梅。そんな絶望が次から次へと襲いかかるジェットコースター。3巻4巻あたりは、それぞれ1.5冊〜2冊くらいかけても良さそうなところを1冊に詰めていて濃密でした。そんな絶望8割の物語でも、希望や目標があるせいか、読み味はそこまで鬱々としてないんですよね。コメディパートも相当少ないのに凄い。

6巻出てから1年以上新刊出てないのは、書くのにも体力入りそうとはいえ少し心配。この物語を完結まで読めないのは大損失なので、このブームで売れてほしいです。

ここからは最新刊までのネタバレ感想を含みますのでご注意ください。

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