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ドイツェン宮廷楽団譜 嘘つき婚約コンチェルト / 永瀬さらさ

2016年12月25日(日)

ドイツェン宮廷楽団譜 嘘つき婚約コンチェルト<ドイツェン宮廷楽団譜> (角川ビーンズ文庫) ドイツェン宮廷楽団譜 嘘つき婚約コンチェルト
永瀬さらさ
角川ビーンズ文庫
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素晴らしいラブコメディ&ロマンスでした、こういうお話大好きです!

「精霊歌士と夢見る野菜」などを書かれている永瀬さんの今月の新作は、バイオリニストの女の子が主役のお話。良い評判が聞こえてきたので優先して読んだらスマッシュヒットでした! つい先日「ファンタジー要素薄めの楽しいロマンス好き」と書いたばかりで、またこういう作品に出会えて嬉しいです。

バイオリニストのミレアが指揮者のアルベルトと出会うところから物語は始まるんですが、溌剌として負けん気強そうなミレアの性格が好みで、最初から「このお話当たりかも!」と思わされました。性格悪いアルベルトとの掛け合いをはじめ、「聖夜の天使」への純真な憧れなど一挙一動がかわいくて楽しい。アルベルトに惹かれだしてからはさらにかわいい。

ヒーローのアルベルトがまた良いキャラクター。ミレアが憧れる「聖夜の天使」との関係性は割と早くから予想がついて、読者視点だとミレアの言動に振り回される様子に凄くニヤニヤできるんです。「聖夜の天使」にばかり気持ちを向けられたら、そりゃ苛立ちますよね。師匠がそんなアルベルトのことをいじったりするのも楽しい。
それでもミレアにとってのベストな結果を最優先するアルベルトの優しさは、ヒーローにふさわしい格好良さ。その優しさに時折ミレアが気づくことで生まれる甘い空気がまた良かったです。

そして、とても気に入ったのがクライマックスの場面。ミレアの行動力からはじまり、皆の暖かさに触れて、アルベルトを振り回した先に待っているのは素敵な音楽。音楽を通して体当たりして気持ちを伝えるミレアがロマンチックで凄い好きでした。「落ちたら受け止めてくれるでしょう?」が素晴らしかった!

他にポイント高かったのが、話運びや悪役の描き方。しっかりとした障害や困難として描かれながらも、ただの悪役で終わらないのが、意外性もあって個人的に「おおっ」と思わされました。悪役たちだけでなく、脇役たちも含めた想いの描き方がいいなあと思う物語でしたね。家族から名もない楽団のメンバーまでみんな良かった。

あと表紙デザインの2人がかわいい。いい意味でビーンズらしくない表紙だなと思いました。少しずつ多様化が進んでいるんでしょうか。

この1巻でも綺麗にまとまってはいますが、2人のラブコメ模様はこの先も楽しそうだし、レベッカ達など気になるサブキャラもいるので、続きが出ますように!

指輪の選んだ婚約者 / 茉雪ゆえ

2016年11月27日(日)

指輪の選んだ婚約者 (アイリスNEO) 指輪の選んだ婚約者
茉雪ゆえ
アイリスNEO
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ニヤニヤたっぷりの良いロマンスでした!

なろう発のロマンス作品。なろうで読んでるときにかなり気に入っていたので、書籍化決まったときは喜びました。こういうファンタジー要素薄めの楽しいロマンス好きなのです。

勢いでいきなり婚約発表をしてしまった貴族の男女が、お互いの利益になるということでそのまま婚約の協力関係を結んで……、という始まりのお話なのですが、このカップルのゆっくりとした恋路がとても可愛くてニヤニヤできるんです。

ヒーローのフェリクスは実力を伴った美形騎士ですが、内実は不器用で女性も苦手というキャラ。そんな人間が、自分のことを特別視せずに、不器用なペースにも着いてきてくれるような女性と出会ったら……どうなるかは見えてますよね。といっても真面目で不器用なのでペースはゆっくりだし格好悪い姿も見せたりするんですが、決めてくるときはバシッとくるのが甘い!! 不器用人間の直球な褒め言葉つよい、転がります。

主人公のアウローラは、刺繍命の刺繍狂いで、それゆえにフェリクスにもそこまで関心なく、一緒にいても刺繍に心囚われることもしばしば。そんな彼女の心が少しずつ変わっていく様子がまた微笑ましくてニヤニヤ。刺繍好きの描写に力入っていて、本当に好きなんだなあということが分かるし、その上で心の変化をじっくり描いて、徐々にフェリクスが心を占めていく様子が自然に見えたのが良かったです。好きなものに目を輝かせて、いざというときの度胸や行動力もあって、読んでいて楽しい主人公でした。

苦労性のアウローラの兄上や女傑揃いのフェリクス家族など、サブキャラクター達も楽しさを増してくれます。フェリクスはこの家族と育ったら女性苦手になるのも納得。フェリクスの変化に大騒ぎするモブの騎士たちあたりも気に入ってます。長文喋っただけで驚愕されるフェリクス……。

最後は甘さたっぷりのロマンス、気持ちを自覚したアウローラの狼狽えようと暴走がかわいいし、率直な甘い台詞を連発するフェリクスの情熱にはゴロゴロ。良いカップルでした!

ダブルクロス The 3rd Edition リプレイ・メビウス / 中村やにお,F.E.A.R.

2016年10月16日(日)

ダブルクロス The 3rd Edition リプレイ・メビウス2 微笑むキミに会いたい<ダブルクロス The 3rd Edition リプレイ・メビウス> (富士見ドラゴンブック)ダブルクロス The 3rd Edition リプレイ・メビウス2  微笑むキミに会いたい
中村 やにお,F.E.A.R.
富士見ドラゴンブック
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ダブルクロス The 3rd Edition リプレイ・メビウス 3 1秒でも長くキミといよう (富士見ドラゴンブック) ダブルクロス The 3rd Edition リプレイ・メビウス3  1秒でも長くキミといよう
中村 やにお,F.E.A.R.
富士見ドラゴンブック
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リプレイという媒体の凄さを感じました!

ループをテーマにしたリプレイシリーズ。評判も良かったので、リプレイ好きとしてホイホイされていました。1巻はそこまで刺さらなかったので、2巻以降はしばらく積んでいたのですが、読んだら面白かったです。

リプレイって、プレイヤー達の動きで物語が想像以上のものになっていくのが魅力の1つなのですが、この作品は特にそれが見事でした。各プレイヤーが自分だけの秘密をもってプレイすることで、プレイヤー同士も予想つかなくなっていることがまず理由の1つ。「過去をやりなおせるかもしれない」という選択肢のおかげで、大きな悩みが産まれ、各キャラの想いや決断が映えるのが1つ。そして最後に、プレイヤーさん達のキャラへの理解度・シンクロ率がとても高いこと。ベテランプレイヤーさんだけでなく、紅とアンゼリカのダブルヒロインも120%で没入していたように思えます。

特に3巻の後半、紅とアンゼリカの想いのぶつかり合いが本当に凄かった。何も示し合わせず、相手がその場にいなかったのに、お互いを想って対照的な願いを抱くんですよ。これだけでも奇跡的なのに、その願いが真っ向からぶつかり合って、世界を救うか大切な人を救うかの問題に答えを出そうとする。溢れ出る涙、なんて痺れる展開。リプレイは数えるほどしか読んでませんが、これは普通の小説では味わえない面白さだし、リプレイ史上に残るんじゃないかなと思います。見開きのタイトルロゴも抜群のタイミングでした。

リプレイ特有の、ストーリーが始まる前や合間合間の笑える会話も、なかなか切れていました。有世さん、どんだけネタ振りまくんですか。なぜか仲間のためにきびだんごを買ったり、シリアスシーンで大仏のお面かぶったり、他にももう色々とおかしい。これだから公共の場でリプレイ迂闊に読めないんですよ! 噴き出すんですよ! なんという天然。こんな人がシリアスシーンでは惹きつけられるやり取りするから、リプレイって凄い。

そんなわけで、何年ぶりかに読むリプレイシリーズでしたが、読んでよかったです。また面白いリプレイがアンテナに引っかかったら読みます。