長年待ち続けた作品で、これが読みたかったんだと思えるものを、期待以上のクオリティで提示される。こんな幸せなことってないよね、と思える下巻でした。端的に言って最高。
完結巻も秋に読めるってほぼ確定しているのも素晴らしい。あと1巻なのか複数巻なのか分かりませんが、楽しみに待ちましょう。
以下、全力ネタバレ感想タイムです。
まずは無事に生還して良かった……! 中巻の感想で、ファンメイ死亡が怖いと書いたら、まさしくそういう展開に。キャラの立ち位置的には可能性薄いだろうというメタ的な読みはあったんですが、帰ってきた後の話はするわ、最高の笑顔が出るわで、追加の死亡フラグもガンガン立てていくので、「大丈夫……だよね?」とハラハラしながら読んでいました。本当に良かった。
ここからは話の流れに沿って。冒頭はまだまだ絶望タイム。再生機構サイドの行き詰まり感も重かったですが、ルジュナやシスターの選択がしんどすぎて心にずっしりきます。特にルジュナは、その選択しかないけれど、でも! と叫びたくなる。残った魔法士たちの優しさが残酷。
そこに一筋の光を差し込もうとするヘイズとファンメイ。2巻が大好きで、このコンビも大好きな身にとっては、心が熱くなる展開。ヘイズの格好良さ、ファン名の明るさ、ハリーのユーモア、この場面大好き。朴念仁なのは、まあヘイズなので仕方ない、怒られるのは当然ですけど。宇宙の発想には、ハッとさせられました。意識が空のさらに上を向くのがファンメイらしい。
上に書いたように、笑顔のイラストも最高でしたね。今回のイラスト、心に刺さるものが多くて、本気を感じました。
舞台が島のコピーというのも、また最高の展開。中巻でもそうでしたけれど、再演が意識されてますよねおそらく。舞台を重ねた上で、違った選択をさせたり構造を逆転させたりしていて、そうくるかと思った瞬間が何度もありました。1巻からの全てが今の物語へと繋がっていると感じます。
で、苦難の道なのは分かっていましたけど、島は無理ゲーだし、1人で止めるのも無理ゲーだし、どうにかなるのこれ?? と思って読んでいたら、そうか、ここでクレア船復活でしたか! 再読してたのに頭から抜けてました。フェイさんが何気にスーパーファインプレイ。確かにここで動けるのがフェイらしい。
クレアのド直球告白は、ヘイズにはこれくらい言わないと、ですね。間に合ってよかった。そして、2人のカップルになってからのはじめての共同作業。このコンビのポテンシャルは前々から感じていましたが、計算でどうにかしてしまう究極の力技が成立するの、とんでもないですね。寄り添っての指パッチン、好き。
エドの方は、ほんと久々にガッツリ活躍で何より。これも世界樹の再演の感があって、立場が替わってエドが助ける立場になったことにグッときました。小龍たちの再登場は、サービス感もありますけれど嬉しかった。エドにはずっと被保護者的な面を感じてしまっていたんですけれど、小龍たちから託されて、ようやく対等になれたかなと。
そしてついに主人公始動。ここ、錬への火を灯したのが、ファンメイ達の奇跡だったのが良かった。火をつけるのはフィア以外でないとダメだと思っていたので、ちゃんと第三者の行動で動いてくれて安心しました。
戦闘も圧巻でした。1人で全てを完封し続けるのがまず格好良すぎるし、1回倒れた後の展開にも興奮しました、その発想はなかった。さすが可能性が無限大の能力。サクラの「貴方の弟が、奇跡を起こしにやってきたぞ」が大好き。
あと、錬が倒れたときのファンメイの祈り。「がんばろう」を受けとったファンメイが祈るというのが、個人的に刺さりました。
他にもこの章はイルにディーに、あちこち全てが見所だらけ。こんなクオリティの物語が読めて、初期からの一読者として幸せです。これまでウィザブレの1番好きな巻は2巻でしたが、ついに上書きされました。まあ5巻以前と以後を同列で比較しづらいのはありますし、そもそも全巻好きなんですけどね。
終章も見所たっぷりでしたね、ルジュナさん踏み出せてよかったー!
錬はイラストの立ち姿に1巻表紙を想起させられて、1人でも凛々しく立てていることにグッときました。そして放送での宣言。数巻前からこの路線の選択は見えていたわけですが、色々な経験を経たうえでここに至ったことこそが大事。幼かった1巻の頃から時間がたち、祐一的な立場にも近くなり、そのうえで「絶望があるを知り、それでも明日を夢見るのを諦めない」という答えを出す。読んできてよかったなあ、としみじみ感じます。
さて残るは完結巻だけですが、予告の表紙、最高がすぎませんか。対比の仕方、表情の描き方、実に美しい。待ち受けている展開は、これが仮にゲームだとすると、サクラを倒すノーマルルートと、サクラも生還するトゥルールートとの、分岐な気がしています。当然トゥルールートですよね? そのための道筋もおそらく出揃っている気がします、全然見えていませんが。ともあれ、発売の秋が楽しみです。
最後に、特典についても忘れずに触れなければなりません。
どうして全読者が読むべきディーとセラのシーンを特典でやるんですか???????
いや、本筋とは関係ないとは思うんですが、こんな最高のSSを読み損ねる読者がいてはいけないと思うのです……。あと、ファンメイの方も、2巻好きには必読のSSでしたし。もう一度、小龍との会話が読めただけで感無量なのに、光景・台詞ともに綺麗で素敵でした。
読み逃した人が続出するのは本当に惜しまれるものだと思うので、完結後に後日談の短編集出して収録してほしいです。