感想・レーベル別」カテゴリーアーカイブ

おこぼれ姫と円卓の騎士 白魔の逃亡 / 石田リンネ

2016年10月30日(日)

おこぼれ姫と円卓の騎士 白魔の逃亡 (ビーズログ文庫)おこぼれ姫と円卓の騎士 白魔の逃亡
石田リンネ
ビーズログ文庫
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離れていてもレティと騎士たちの信頼関係が素敵でした。

衝撃の引きだった前巻を経て最終巻突入のおこぼれ姫シリーズ。離れ離れからのスタートでしたが、別々でも各々ができることを成していき、また情報をうまく伝達させていく様子は、レティと騎士たちがこれまで築いてきたものを感じさせてくれて、こういう最終章って素晴らしいな!とグッときながら読んでました。シェナンからメッセージが繋がっていくところとか興奮しましたね、ウィラードもアイリーチェもみんな有能。

レティはメルディと逃亡の旅。メルディ大好きな俺得展開でしたありがとうございます。苦手なアクティブ活動でもメルディ頑張った。悩むレティに対して、メルディがかけた明快な言葉と励ましが素敵でした、メルディ好きだなあ。その後のアストリッドとのボーイズトークでの姿もまたメルディらしい。鈍感だけど情報さえ与えられれば答えを出せるメルディ、そしてバッサリとドライなメルディ。メルディ好きだなあ(2回目)。

旅の中でもレティのこれまでの積み上げが実感できたのも良かったです。最後はシャルロッテとの間のロングパス。騎士たちには言えないだろう言葉を言ってくれました。素直になって、役者も揃って、さあ反撃だ、というところで次巻。いい引き!

というわけで続きとても楽しみなんですが、まだゼノンが怖いです。これまでもゼノンは割とレティの超常を垣間見てきているので、ゼノンならばレティの超常ファクターも十分考慮して思考しているのではないかと。フリートヘルム兄上は余裕で裏かけてるんですけどね……、対ゼノンはまだ一押しがいる予感がしています。怯えつつも幸せを祈って次巻を待ちます。

レディ・マリアーヌの婚約 / 宇津田晴

2016年10月22日(土)

レディ・マリアーヌの婚約3 (ルルル文庫) レディ・マリアーヌの婚約
宇津田晴
ルルル文庫
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またマリアーヌに出会えて嬉しかった!

まさかの5年ぶりのレディ・マリアーヌ新作。当時は期待のシリーズの2巻打ち切りを目にして、多くの読者が涙したものですが、今になって出るとは。たとえ功労者への最後のご祝儀であっても、出してくれたルルルさんにも書かれた宇津田さんにもありがとうございますと言いたい。

中身はいつもの宇津田さん作品の甘さ。両想いからのスタートの分だけ、普段よりも甘かったですね。マリアーヌはまあ普通に映るんですけども、ロベルトはがんがん甘い言葉吐きすぎです。レディ呼びが甘い甘い。両想いなのでお話の盛り上がりは少なめでしたが、幸せそうなマリアーヌが見れただけで満足です。

そんな中で美味しいところ持っていったのはカイル。従者ポジションの強みを存分に発揮してましたね。一番の座もキープできて、カイル大勝利でしょう。カイルも前作から応援したいキャラだったのでこういう結末迎えられて良かった。
裏切ったフリのシーンは本当は「えーっ!?」と叫ぶところなんでしょうが、宇津田さん作品でそんな裏切りが発生するわけないので、はい二重スパイですねと思って読んでました。モーリスさんおつかれさまでした。

あとがきの最後のかしこまった文章、ルルル廃刊のことを踏まえると、最後のご挨拶ですよねこれ……。宇津田さん作品の安心の甘さはルルルのレーベルととても合っていただけに、今後の宇津田さんがどうされるか気になります。どこかでまたお目にかかれますように。

斜陽の国のルスダン / 銅のケトル社(並木陽さん)

2016年10月17日(月)

斜陽の国のルスダン 斜陽の国のルスダン
銅のケトル社(並木陽さん)
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良い歴史物の少女小説でした。

Twitterで感想見かけて気になっていた、グルジアの女王ルスダンを描いた同人小説。グルジアのことは全然知らなかったのですが、amazonで販売されていて入手しやすかったので手にとってみました。そうしたら、素敵なロマンスであると同時に、歴史背景もしっかりしていて読み応えもあり、良い歴史少女小説でした。

時代はチンギス・ハンがモンゴルで猛威を奮う少し手前ということで、タイトル通り段々と傾いていくグルジアが舞台。序章がいきなり滅びの場面から始まり、寂しげに死を選ぼうとするルスダンの姿に目を奪われ。続いてキラキラとした子供時代が始まって、どういう変遷で滅びまで至るのか、一気に興味を惹かれました。

子供時代は頼れる兄王や隣国の幼馴染ディミトリとのやりとりが眩しくて幸せそう。身分差で結婚することはできないことが告げられるも、読者視点ではきっと大人になっても2人の間には何かあるんだろうとドキドキしていました。そう、この頃はまだ。

そんな平和な時代はあっという間に終わり、若くして重責を背負うことになってしまったルスダン。家臣にも侮られ、外敵も迫る中、思いがけずディミトリと結ばれたことだけが救い。ディミトリと2人で必死に国を支える気丈なルスダンを見てると、ディミトリがいて良かったという思いでいっぱいに。

それだけに、ディミトリとの別離はショックで、原因を作ったディミトリ馬鹿野郎! と叫びたくなりました。ルスダン視点で信じられないのは仕方ないですし、どう考えても相談を怠ったディミトリが悪かった。冷徹になったルスダンの姿を見るのが辛い。

それで絆が切れなかったのがこの物語の救い。離れてもルスダンを想い続け、自身ができることをやり遂げたディミトリは、馬鹿野郎どころか立派なヒーローでした。ルスダンとの別れ、誇り高い最期はとても胸に残りました。

そして1人残されたルスダン。最後の決意を見届けてから冒頭に戻ると、最期に至るまでを彼女がどういう気持ちで懸命に生きてきたのかが伝わってきて、切なくてたまらなかったです。歴史上のルスダンは淫蕩な女王と評されたりもするらしいですが、このルスダンは素敵な女王でした。ディミトリともっと生きて欲しかった。

130ページちょっとと短めですが、濃厚な物語でした。最近はあまり見かけませんが、歴史物の少女小説はやっぱりいいものだなと思います。