(書籍感想)女王の化粧師2 / 千花鶏

2020年6月20日(土)


女王の化粧師2
千花鶏
ビーズログ文庫
amazon

ウェブ版未読の人も既読の人も楽しめる、素晴らしい2巻でした!

待ちに待った女王の化粧師2巻。当然、発売日に最優先で読みました。文章を相当圧縮したという話が事前に出ていたので、どうなっているのかドキドキしながら読み進めましたが、圧縮感は全然抱きませんでした。元の流れはそのままに、大半は新規のエピソードや会話でリファインされていて、未読勢も既読勢も嬉しい仕様。これ、元のウェブ版そのままな部分は2割くらいしかないのでは? プロの所業でした。

1巻終わりでのマリアージュ様への宣言を受けて、2巻は登場人物たちの悩みや心情がより丁寧に描かれてました。特にマリアージュ様の、ダイの問いに対してひたすら悩む姿が非常に印象的。放置されて育ってきた少女が、覚悟を決めて踏み出した一歩は、将来の名君の予兆を感じさせる一歩だったと思います。

2巻は大きな謎の一つが明かされる巻でもありました。はじめてウェブ版読んだときに、ネタバレせずにどう魅力を伝えるのがベストか悩んだのを覚えています。書籍でも、明かされてからの終盤素晴らしかったですね! ここまでくれば沼にハマる人が増えるはずなので、無事発売されて本当に良かった。

でも、まだまだこれは序の口。先に進めば進むほど、伏線の緻密さ、登場人物たちの生き様の素敵さ、ロマンスの切なさ、などが加速していくんです。なんとか4巻まで(つまり序幕終了まで)は刊行されてほしい。そこまでいけば後は勝利しかないはず。読者の皆さん、みんなでデルリゲイリアの国民と納税者を増やしましょう!

ここからはネタバレ感想。2巻までの範囲で語っているつもりですが、ウェブ版との比較も交えながらなので、気にする方はお気をつけください。

(さらに…)

(書籍感想)茉莉花官吏伝 / 石田リンネ

2020年6月1日(月)


茉莉花官吏伝
石田リンネ
ビーズログ文庫
amazon

久々の書籍感想です。どれくらいぶりだろうと確認したら、2年半以上空いてました(白目)

それはさておき、おこぼれ姫シリーズの石田さんの最新シリーズ。1巻を読んだ後に読書ペースが落ちて続きを読めていなかったのですが、まとまった読書時間ができたので手をつけたら一気に8巻まで駆け抜けてました。

目立たないように生きてきた茉莉花が、皇帝陛下との出会いをきっかけに花開き成長していく物語。と一言で成長物語と書きましたが、成長っぷりが本当に半端ない。才能を眠らせ静かに生きようとしていた女の子が、目的意識を強く持ち、視点を高く広げ、他人のことを理解しようとし、果てには国を良くするための大規模計画を自ら立案し動かすところまでいくんですよ。意識が変わっていく過程も丁寧で、きちんと少女小説であると同時に、これは下手なお仕事小説よりもお仕事小説だなと感じながら読んでました。ラブコメ面も斜め上の発想するキャラが多くて笑えました、翔景はどうしてそうなった。

個人的にハマったのは、2巻の玉霞さんへの対応からでした。こういう方法を受け止めて真っ向から描くんだ、というのがかなり印象的で、何をこの先見せてくれるんだろうという期待が高まったのが一気読みに繋がったと思います。

お気に入りキャラは暁月。2巻の頃から性格と苦労性のギャップがいいなと思いながら読んでいたので、3巻で続投だったのを喜び、この夫婦かわいいなとホクホクし、茉莉花に発破をかけたりして皇帝やっている姿が格好良く、怒ると子供っぽい一面も愉快で。4巻の情熱的な本気口説きが最高でしたね。そこで残っても良かった。
それともちろん春雪くんは好きです。気の置けない相談役なんて美味しいポジションにいる子、好きにならないわけないですよね。なんだかんだ優しいし、変な相談されて困る様子が楽しいし。陛下にいじめられるのは回避不可能なので強く生きてください。

石田さんの別シリーズ「13歳〜」と繋がっているのを7巻まで読んだところでようやく気付きました。本当はそちらも読んでから感想書こうと思ってたんですが、時間が取れず読めていないのでまたの機会に。

最近のオンラインノベル読書

2020年5月10日(日)

女王の化粧師2巻発売決定おめでとうございます!!!!!!

いやー、本当に良かった。ひとまず電子書籍版だけではありますが、これまで2巻が出なかった作品を星の数ほど見てきたわけで、続刊が出るだけでもまずは御の字です。しかも大幅改稿と圧縮で6章まで収録とのこと。控えめにいって神では? これでより多くの人が女王の沼にハマって布教をはじめますね。もちろん紙の本も欲しいですけれど、何よりも願うのは序幕終わりまでの刊行です。そこまでいけば沼が人で満員になるはずです。

というわけで、しばらくはTwitterで事あるごとに騒ぐと思いますが、去年からそんな感じだったので通常運転です。フォロワーさんなど知り合いで書籍版未読の方いたら、いつでも電子書籍でギフトお送りしますので。推しは推せるときに推すんです。


さて、ここからが本題です(本記事は女王の化粧師のプッシュ記事ではありません)。著者の花鶏さんにサイトを紹介していただいたんですが、このサイト一覧を眺めていて気づいたこと。
「女王だけしか推してないサイトに推しの説得力ないよね……」
これはいけない。というわけで、女王2巻発売に向けて、サイトを微復活させることにしました。微復活なので亀ペースの更新ですが、止まらない程度に動かせればいいな(希望的観測)と思ってます。

リハビリがてら、最近のオンノベで好きなものの感想を。著者名は敬称略です。

 

Dジェネシス ダンジョンができて3年 (之 貫紀/小説家になろう)

ダンジョンが世界中にできて探索者がいるのが当たり前になった世界で、偶然でいきなりランク1位になり特殊なスキルも手に入れた研究者が主人公のお話。
あらすじだけ並べるとテンプレ作品っぽくも見えますが、このお話の違うところは、主人公たちの研究者らしい好奇心。主人公もその相方も根が研究者気質な上に、楽しく人生をおくることに重きを置いていて、能力はチートでもそれを嫌味に感じません。
国家や権力の陰謀や駆け引きなどは二の次、ダンジョンの謎の検証に夢中になったり(研究者に数値をたくさん与えてはいけません)、日々の食事を楽しんだり、あくまで日常の延長線でダンジョンをエンジョイしている姿が見ていて楽しいです。
ダンジョンの設定自体も面白いし、雑学や学問などの小ネタも色々と織り交ぜられたりしていて、見所たくさん。恋愛要素は薄めですが、このお話はその方が合っている気がします。近江商人な三好の活き活きした姿は、恋愛ありだと多分見られなかった。

現実世界にモンスターが溢れるローファンタジーのジャンルはいまいち惹かれず、ランキング上位作品を読んでも「うーん」となることが多かったんですが、これは一気に読みました。書籍版は現在1巻が発売中。

 

私達、欠魂しました (守野伊音/小説家になろう)

暗殺者から王子をかばったら一緒に欠魂し、王子と離れたら昏睡してしまう関係になった魔術師の女の子のお話。タイトルの一発ネタと見せかけて、中身はとてつもなくエモいから、守野さん作品は油断できない。

最初はかなりコメディ寄りなんです。無表情だけど思考回路が斜め上にぶっ飛んでいる主人公エリーニの言動がおかしく、振り回されて胃が死にそうになっている王子を見るのが楽しい。王子のセリフ、半分以上はツッコミ(もしくはツッコミが追い付かない嘆き)なのでは? エリーニは独特すぎてキャラが表現しづらいんですが、無表情マシンガントークとかする子です。一人称の文章でこのキャラを成立させているのが凄い。会話が愉快なおかげで、王子の味方は友人の医者1人だけという酷い状況なのに、全く悲壮感がないです。

そんな中、離れられない関係をごまかすために、偽装の恋人関係をはじめるんですが、ここからがまた独特。何せ、主人公が唐突に王子への好きを語りはじめます。王子は当然驚きますが、読者も驚く。一人称なのに真意がはっきりと分からない。でも何やらエモいのは分かる。この辺で期待が高まってきます。

そして随所に撒き散らされる伏線からの後半の回収パート。何これ尊い。ネタバレ防止のために何も書けないんですが、結びつきがあまりに素敵すぎる。直球な感情のぶつけ方にノックアウトされました。皆に幸あれ、そして王子は強く生きて。

 

ダイブ・イントゥ・ゲームズ ~ぼっちなコミュ障、VRゲーム始めました~ (赤鯨/小説家になろう)

タイトルの通り、ぼっち主人公がVRゲームを遊ぶお話。1つのゲームをやり込むのでなく、色んなゲームを渡り歩いていくのが、この手のお話としては珍しいです。海の生き物となってリアルに生態系を味わうゲーム、ヒーローやヴィランのなりきりを楽しむゲーム、飛行船乗りになって相棒の動物と空を駆けるゲーム、ガチのロボゲー、などなど、バリエーション豊かでどれも面白そう。
そして、主人公がゲームを心から楽しんでいるのが伝わってくるのが良いのです。最初はぼっちだったのが、ゲーム仲間と時々一緒に楽しむようになるのもホッコリ。

そもそも、ゲームを遊んでみたいと思わされた時点で読み手の負けです。ラオシャンでイルカになって海を泳ぎたい。書籍化決定済です、6月発売予定。

 

シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 (硬梨菜/小説家になろう)

何度か挙げてますし今更ですが、オルケストラ編が最高だったので一言だけ。サイナの歌、素晴らしすぎでは?? この作者さんはこんな見事な舞台構築をどうやっているのか……。

 

本好きと香霖堂~本があるので下剋上しません~ (左道/ハーメルン)

タイトルから分かるように、本好きの下剋上の二次創作で、東方とのクロスオーバー作品。一言でいうと、序盤のマインさんの色々な障害(本がない、虚弱)が、あるお店の影響で取り除かれたifのお話。結構変化が大きいifなのにマインの再現度が高い、それがこの物語の好きなところ。本が読めちゃうので当然マインやルッツの進む道も変わってくるんですけど、その変わり方の切り口が面白いし、マインは変わらずやらかしたり暴走したりするし、ifとしての完成度が高いです。ベンノさんには強く生きてと言いたい。

東方とのクロスオーバーですが、東方知らなくても楽しめます。自分も当方はキャラ設定を軽く知っている程度なので、東方パートは軽めに流しつつ読んでました。

現在は第一部完。第一部の締めが原作にないオリジナル展開で、この設定だからこそできる優しいお話でとても気に入ったので、紹介することにしました。