感想」カテゴリーアーカイブ

指輪の選んだ婚約者 / 茉雪ゆえ

2016年11月27日(日)

指輪の選んだ婚約者 (アイリスNEO) 指輪の選んだ婚約者
茉雪ゆえ
アイリスNEO
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ニヤニヤたっぷりの良いロマンスでした!

なろう発のロマンス作品。なろうで読んでるときにかなり気に入っていたので、書籍化決まったときは喜びました。こういうファンタジー要素薄めの楽しいロマンス好きなのです。

勢いでいきなり婚約発表をしてしまった貴族の男女が、お互いの利益になるということでそのまま婚約の協力関係を結んで……、という始まりのお話なのですが、このカップルのゆっくりとした恋路がとても可愛くてニヤニヤできるんです。

ヒーローのフェリクスは実力を伴った美形騎士ですが、内実は不器用で女性も苦手というキャラ。そんな人間が、自分のことを特別視せずに、不器用なペースにも着いてきてくれるような女性と出会ったら……どうなるかは見えてますよね。といっても真面目で不器用なのでペースはゆっくりだし格好悪い姿も見せたりするんですが、決めてくるときはバシッとくるのが甘い!! 不器用人間の直球な褒め言葉つよい、転がります。

主人公のアウローラは、刺繍命の刺繍狂いで、それゆえにフェリクスにもそこまで関心なく、一緒にいても刺繍に心囚われることもしばしば。そんな彼女の心が少しずつ変わっていく様子がまた微笑ましくてニヤニヤ。刺繍好きの描写に力入っていて、本当に好きなんだなあということが分かるし、その上で心の変化をじっくり描いて、徐々にフェリクスが心を占めていく様子が自然に見えたのが良かったです。好きなものに目を輝かせて、いざというときの度胸や行動力もあって、読んでいて楽しい主人公でした。

苦労性のアウローラの兄上や女傑揃いのフェリクス家族など、サブキャラクター達も楽しさを増してくれます。フェリクスはこの家族と育ったら女性苦手になるのも納得。フェリクスの変化に大騒ぎするモブの騎士たちあたりも気に入ってます。長文喋っただけで驚愕されるフェリクス……。

最後は甘さたっぷりのロマンス、気持ちを自覚したアウローラの狼狽えようと暴走がかわいいし、率直な甘い台詞を連発するフェリクスの情熱にはゴロゴロ。良いカップルでした!

Babel II 剣の王と崩れゆく言葉 / 古宮九時

2016年11月20日(日)

BabelII ‐剣の王と崩れゆく言葉‐ (電撃文庫) Babel II 剣の王と崩れゆく言葉
古宮九時
電撃文庫
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皆さん買いましょう読みましょう!!(ダイマ)

Web小説で大好きなシリーズの書籍化、第2巻。タイトルの通り、言語が一つのテーマなのですが、舞台を魔法大国ファルサスに移したこの巻は、その言語の謎にズバッと踏み込むのが、他の異世界物にはないアプローチで、初読時は相当に衝撃的でした。また、異質を排除しようとする王に対し、言葉と意志だけで対峙する雫は書籍になっても健在で、その姿が眩しくて尊くて大好きです。そうした真面目さだけでなく、打てば響くコミカルなやりとりに笑えるシーンも多くて、本当に面白いシリーズだと再確認。

次巻以降どうなるかは売上次第との悲報が届いてしまいましたが、ここで終わってしまうのはあまりにも勿体無い……! ここから先、もっともっとワクワクさせられるし、胸打たれるんです。残虐な姫とのガチンコ勝負を読みたいんです、キングオブ不憫な魔法士を見たいんです、雫の旅路を最後まで見届けたいんです。皆さん買いましょう読みましょう!(繰り返しダイレクトマーケティング)

以下はまず、この2巻までの内容ネタバレ込みでの感想です。

なんといっても前半のハイライトは雫の飛び降りシーン。唐突に異質ゆえの死を突きつけられ、そこで逃げずに対峙する。力をもたない少女は言葉を振るい、人であるために文字通り命を賭ける。どんなに無謀であっても、その姿は自分には尊く映りましたし、その意志が大好きです。

その後の雫の適応力も凄いですよね、死をかけた相手とのコミカルな掛け合い。まあ大体ラルスが原因ですね。ターキスはあんなに漂白されたというのに、このサド王ときたら……。でも、この雫と王様の全力で愉快なやりとりも好きです、負けず嫌いな雫が素敵。

エリクの悔恨は、どう考えても防ぐのは難しかったのに責任を背負い込んでしまっているのがとてもやるせなくて、それだけに雫がその悔恨を跳ね除けてくれて良かったなと。特に、雫が精神魔法で操られる場面、雫の意志とエリクの想いが加筆されていたのがとても良かったです。エリクが救われたのがはっきりと分かりますし、雫を助け守ろうという意志が格好いい。1巻といい、エリクのヒーロー度がアップしてますねやはり。

生得言語は、初読の時はかなり衝撃でした。そういう世界なのか! という驚きと、たまにある会話の違和感はこれか!! との合わせ技。さらには雫の言葉の問題まで踏み込む。異世界物にあるお約束・常識を根底から覆されるのにはゾクゾクしました。「崩れゆく言葉」というサブタイトルがまたいいですね。そこから一気に最後まで、いい引きです。続きを!

ここからはWebでのシリーズネタバレもありの感想。シリーズ既読者以外はご注意ください。ブログ化したので、初めて折りたたみが使えます……!

(さらに…)

自負と偏見 / ジェイン・オースティン

2016年11月11日(金)

自負と偏見自負と偏見
ジェイン・オースティン
新潮文庫
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さすがの名作でした!

結構前にお勧めいただいていた、1800年頃のイギリス田舎の階級社会が舞台の古典名作。「高慢と偏見とゾンビ」が上映されていて、読むならこの機だと思って手にとりました。

読み始めてまず気づいたのが、軽快な読み心地。邦訳小説とは思えないくらいの読みやすい文章に加え、登場人物たちの個性が非常に豊か。俗っぽい登場人物も多くて、最初はこんな人達も出てくるのかと引っかかったりもしたんですけど、皆ブレることなく活き活きとした姿はどこか喜劇的で、すぐに気にならなくなり楽しく読めました。ひたすらズレた喋りのコリンズ、現実的にしたたかな道を選んだシャーロットあたりが特に印象に残りました。

そしてメインカップルのエリザベスとダーシーです。ダーシーを嫌うエリザベス、エリザベスに惹かれだすダーシー、という構図を見て、「このお話好きになる」と確信しました。特にエリザベスに会うたびにとことん嫌われていく不器用なダーシーには肩入れしたくなって、エリザベスがいつ心を変えるのかをドキドキしながら読んでました。

一番の見所であろう、告白からエリザベスの認識がひっくり返る場面は鮮烈。そりゃとことん嫌ってた相手が実は素晴らしい人だったというのは、すぐには受け止められませんよね。時間をかけて心が揺れ動き、自負と偏見が羞恥と尊敬に変わっていく様子はリアリティあって、こちらの心も揺さぶられました。
それにしても、あんな振られ方を一度しても愛を翻すことなく、それどころかますます男前になるダーシー。ちょっと格好良すぎでしょう。この格好良さ、これまで読んだ物語全ての中でもかなり上位だと思います。

リディアがまさかの相手と駆け落ちしたのには驚きましたが、ダーシーがさらに格好良い姿を重ねていき、エリザベスが恋していくのにニヤニヤできて、最後まで面白かったです。再度の告白が受け入れられたときはダーシーおめでとう! と言いたくなりました。いやー、王道って素晴らしいですね。近年の少女小説では捻りを効かせて、ここで再度断るような鬼ヒロインがいたりしますからね(それはそれで愉快で大好きですけど)。

時代を越えて語り継がれる作品はそれだけのものがあるのだと改めて感じました。なおゾンビ映画は見る前に上映が終了しました、ちょっと遅かった……。DVD化されたら見たいです。いやでも、ゾンビよりは本家を先に見ましょうか。