女王の化粧師2
千花鶏
ビーズログ文庫
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ウェブ版未読の人も既読の人も楽しめる、素晴らしい2巻でした!
待ちに待った女王の化粧師2巻。当然、発売日に最優先で読みました。文章を相当圧縮したという話が事前に出ていたので、どうなっているのかドキドキしながら読み進めましたが、圧縮感は全然抱きませんでした。元の流れはそのままに、大半は新規のエピソードや会話でリファインされていて、未読勢も既読勢も嬉しい仕様。これ、元のウェブ版そのままな部分は2割くらいしかないのでは? プロの所業でした。
1巻終わりでのマリアージュ様への宣言を受けて、2巻は登場人物たちの悩みや心情がより丁寧に描かれてました。特にマリアージュ様の、ダイの問いに対してひたすら悩む姿が非常に印象的。放置されて育ってきた少女が、覚悟を決めて踏み出した一歩は、将来の名君の予兆を感じさせる一歩だったと思います。
2巻は大きな謎の一つが明かされる巻でもありました。はじめてウェブ版読んだときに、ネタバレせずにどう魅力を伝えるのがベストか悩んだのを覚えています。書籍でも、明かされてからの終盤素晴らしかったですね! ここまでくれば沼にハマる人が増えるはずなので、無事発売されて本当に良かった。
でも、まだまだこれは序の口。先に進めば進むほど、伏線の緻密さ、登場人物たちの生き様の素敵さ、ロマンスの切なさ、などが加速していくんです。なんとか4巻まで(つまり序幕終了まで)は刊行されてほしい。そこまでいけば後は勝利しかないはず。読者の皆さん、みんなでデルリゲイリアの国民と納税者を増やしましょう!
ここからはネタバレ感想。2巻までの範囲で語っているつもりですが、ウェブ版との比較も交えながらなので、気にする方はお気をつけください。
まず1章、アルヴィー訪問が丸々変わっていて初っ端からびっくり。確かに砂漠行く必要ないですものね。そしてここで貴族街の化粧品も見ることになると、なるほど。ミゲルの叫び声が派手になっているのには笑いました。もう少し落ち着いてもいいんですよ? ロウエンの誤魔化し方が達者になっていたり、序盤から細かいところまで変わっていて、違いを見つけるのが一々楽しい。
1章の見せ場は馬車の中の2人の会話。不安を語るダイ、そんなダイに対して過去を明かすヒース、この心の通じ合い、良いですよね。1巻であまり目立ってなかったヒースのターン! そしてヒースに対して提案するダイ。これはヒースに刺さる。名前呼びの特別感がすごい。
アルヴィーは登場の仕方が変わっても相変わらず飄々としてて素敵。見た記憶のない工房描写は雰囲気がたっぷり、加筆のサービスが過ぎる。アルヴィー少し丸くなったかな? と襲撃者対応を見て思ったんですが、少しでしたね。
2章、みんな大好きティティ。代わりに怒ってくれて、できる範囲で真剣に悩んでくれて、ティティがいてくれて良かったー!と心から思いますよね。間章の仲直り、web版もこちらも大好き。唯一惜しいのは、ダイの破壊力笑顔でイラスト欲しかったです(欲張り)。
マリアージュ様とアルヴィーの会話、web版よりもマリアージュ様がより深く悩んでいるように見えました。ダイとマリアージュ様との対話も増えていましたし、答えを出すまでの過程、自身の弱さを受け止める姿がより等身大。web版のひたすら考えるマリアージュ様も好きでしたが(「私のために怒ったんだもの」「あんたはまだマシ」など印象に残るんですよね)、こちらも良き。この違いは、1巻での成長分から生まれたのかなあと感じました。
3章、女装の理由の変化に最初びっくりしましたが、後から理由分かってなるほど。確かにこのマリアージュ様だったら、この方が納得感。ヒースの女装見たかったのに逃げるなんてひどい。会場では、さりげなくロディマスの出番が増えて伏線も増えてましたね、この伏線が生きるところまで読みたい。その後の酔っ払いのダイかわいい。酔って出る本音、マリアージュ様だけでなくダイもweb版より意識が一歩前に言っているような。相互作用ですね。ここの心配するマリアージュ様大好き。
そして正体バレ。男装っていいですよね! これ程までに女王に入れ込むキッカケの1つはここでした。ヒースが本領発揮(?)しはじめるポイントでもありますね。(それゆえに、ネタバレなしの推し記事で、どうしても出番がなくなってしまうヒース・・・) 暗がりでのヒース、いきなり色気全開すぎる。ここはあまり変わってないのも納得。その後の打ち明けシーン、マリアージュ様好きだなあ(語彙枯渇)。しかしマリアージュ様、ほんとどこでそんな下品な言葉学んだんです???
最後は屋根の上での会話、このシーン、とても優しいし美しいし切ない。名前を繰り返し呼ぶだけなのに、この破壊力。合わせ技で不意打ちのイラスト。ずるいヒースです。
全体的に伏線もより丁寧になっているように感じましたが、その辺りは2巻の感想を超えてしまうので控えます。繰り返しですけど、伏線が生きるシーンが読みたい! 序幕終章も読みたい! 微力を尽くしてこれからも推します。