謹賀新年2022

2022年1月2日(日)

あけましておめでとうございます。長らく低空飛行な本サイトですが、昨年末に海外生活を終え日本に帰ってきましたので、今年は少しはペースが上がる気がします(という希望的観測)。本年もよろしくお願いいたします。

例年なら年間まとめ記事を書いているのですが、更新記事2つで何をまとめるんだ、と思ってしまったので、昨年の簡単な振り返りだけすることにします。

・女王の化粧師3巻発売

はい、昨年も女王新刊が出て大変良い年でしたね! 「マリアージュ様パワーアップリメイク版」と言ってもいいくらいにマリアージュ様の格好良さ増し増しの書籍版を堪能できました。SNSでの言及も巻を追うごとに増えている気がしますし、この調子で今年は4巻が出ますように!

そうそう、昨年に購入したBookWalkerのギフトが残っているので、女王に興味があるけれど読んでない方がいらっしゃいましたら、電子書籍1-3巻セットをプレゼントします。特に条件はありませんが、読了後にSNSで感想を呟いてくれると喜びます。希望される方はコメント欄かtwitterでご連絡ください。

・Unnamed Memory & Babelの書籍版、完結

両作とも無事最後まで刊行されて本当によかったです。特に文庫版のときのBabel打ち切り事件は大変ショックだったので、今回は最後の雫の選択まで読むことができて感無量。Babelは最終章が一番大好きで読み返しているんですが、今回も雫の覚悟の美しさやエリクの必死さに泣かされました。

・死にプロ書籍化

昨年のまとめ記事で絶賛した「死に戻りの魔法学校生活を、元恋人とプロローグから」が書籍化されました、めでたい。凄いなと思うのは、観測している範囲で、死にプロを読んだ少女小説読みの全員が絶賛していたこと。ここまで皆が絶賛で揃う様子はちょっと見た記憶がないです。それくらい、死にプロには少女小説読みが求めるものが詰まっているのだと思います。

2巻の音沙汰がなくて少し心配ですが、コミカライズも発表されましたし大丈夫でしょう多分。あの1巻の引きで万が一にでも打切りになったら、この出版社の本を2度と買わないと思います。

・ウマ娘ブーム

昨年はウマ娘に時間を持ってかれました。過去の名馬をベースにした上質な物語がいくつも読めるゲームが、競馬ファン&ラノベ読みにぶっ刺さらないわけがないんです。さらにメジャーゲームなだけあって、2次創作も面白いものが大量に供給されて、ハーメルンで色々と読んでました。去年はなろうよりもハーメルンで読んだ文章量の方が多分多かったです。

(書籍感想)忘却聖女 / 守野伊音

2021年12月30日(木)


 忘却聖女
 守野伊音
 SQEXノベル
 【amazon

これだけは今年中に感想を、ということで久々に更新。「狼領主のお嬢様」などを書かれている守野さんの最新書籍化作品は、ほとんど全ての人に存在が忘れられた聖女による、居場所を取り戻すための戦いの物語。

守野さんの作品はどれも感情を揺さぶってくるエモさたっぷりなんですが、その中でもこの忘却聖女は群を抜いたお話。主人公のマリヴェルはスラム育ちで、聖女として神殿に引き取られた後に愛情もって育てられてきた過去をもつ女の子。そんな子が、神殿の皆に忘れられたら辛いに決まっているわけです。特に、父のように思っていた神官長から他人として扱われる際の感情描写は読むだけでもしんどい。

ですが、単に重いだけではないのが守野さん節。忘れられる前のマリヴェルは、脱走や叱られは日常茶飯事の問題児。そんなだけあって、マリヴェルの視点で進む物語は、設定の重さとは裏腹に軽快な語り口。唯一マリヴェルのことを覚えていた神官エーレに事ある毎に叱られる姿は笑って読めます。

とはいえ、本質はしんどいので、笑っている先に落とし穴があったりするわけで、このコミカルとシリアスのアップダウンで読者を見事に翻弄してくれるのがこの物語の魅力。起伏が激しい物語をジェットコースターのようと例えたりしますが、このお話は感情のジェットコースター。笑っていたら一歩先にグサッと胸を刺してくる文章が差し込まれていたりと、振り回される感情がしんどいんですが、その分だけエモさも増幅されているので読み進めたくなるんです。また、「なぜ忘れられたのか?」の謎を追っていくにつれ、先代聖女や王宮にかかわる更なる謎が現れるなどサスペンスとしても面白く、どんな真相が提示されるのか先が気になります。

Web版ではかなり先まで物語が進んでいるんですが、最新話付近の展開はこの1巻を遥かに上回るエモさで、1話更新されるたびに情緒がかき乱されてます。辛いけれど読みたい、の最たる物語で、なろうで今一番更新が待ち遠しい小説。この感情を分かち合える人が是非増えてほしいので、1巻を読んでWeb版に足を踏み込む方をお待ちしております。

(書籍感想)女王の化粧師3 / 千花鶏

2021年8月15日(日)


 女王の化粧師3
 千花鶏
 ビーズログ文庫
 【amazon

3巻も最高に面白かったです、何とか4巻を!

待望の女王3巻、刊行おめでとう&ありがとうございます! こうして続きを書籍で読むことができて本当に嬉しいです。しかも、ウェブ版と比べてエピソード追加&流れもよりスムーズになり、さらに面白くなっていました。途中、比較しながら読んだりしたんですが、細かい表現や伏線まで物凄く手が入っているんですよ。2巻のときも思いましたが、改稿がプロの所業です。

3巻の良かったポイントは山程あるんですが、まず1つ挙げるなら新規エピソードの夜会開催。マリアージュ様が1巻の頃からめざましい成長を遂げていて、次は何を見せてくれるのか、一挙一動にワクワクさせられます。夜会での堂々とした姿には女王らしい風格も出てきていて、「先日作った紹介スライドでマリアージュ様の素敵さをもっと推しとくべきだった!」と少し後悔したほどでした、ページ数が足りなかったんです……。

あとは単純に夜会のコンセプト自体も面白いものでしたし、何より夜会に向けて皆で慌ただしく過ごす女王選の日々が楽しかった。バラバラだった1巻からここまできたんだなあとか、色々な感慨が押し寄せました。

2巻で変化したダイとヒースの関係の甘さも見所。名前呼びですら甘いんだから、それ以上のシーンは当然もっと甘いわけで。治療のために触れるだけでも感情が込められていて色気がすごいですし、本気で触りにきたときは色気倍増。これはダイの感情が翻弄されるのも仕方ないですねこれは、本当にずるいおとこだ。個人的には、ダイのいないところでヒースが見せる笑顔が刺さりました。このヒース、他の人の前でも感情ダダ漏れにしている……! 

後半のエピソードは、何度読んでも胸が苦しくなります。どうすればよかったのかとifを考えたくなりますけど、性格や背景を踏まえると、分岐はほとんどなくて割と必然だった気もするんですよね……。ただただ悲しい。

さて、無事3巻まできましたが、ここまできたら4巻まで何としても出してほしいですよね! 序幕終わりまで刊行できれば後はクチコミで人気が広がってくれるから勝ちだと、書籍化が決まった当時からずっと思っています。序幕をはじめて読了したときの感想を久々に読み返したら、こんなことを書いていました。

後半盛り上がって一つの話として面白く、でも読み終わるとこれはこの上ない序幕なのだと分かります。終章の素晴らしい幕引きに、この先何が待っているのか、期待で胸が震えました。

初読から10年余り、このときの期待を裏切らない物語が読めて幸せです。1人でも多くの人にこの気持ちを味わってほしいし、書籍版でさらに素晴らしくなった序幕を見たい。その思いで紹介スライドも作りました。読者が増えて4巻が刊行されることを願っていますし、これからも出来る限りのことはしたいです。

さて、ここからはウェブ版での比較も踏まえながらの感想です。ウェブ版のこの先の展開についての言及も混じるので、ウェブ版読者のみご覧ください。

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