2020年読書まとめ(オンライン小説)

2020年12月26日(土)

またも更新が空いた状態でのまとめ記事となりました。商業本をろくに読めてないので仕方ないということで……。まずはオンライン小説編、今年気に入った物語を5つほどピックアップ。

死に戻りの魔法学校生活を、元恋人とプロローグから (※ただし好感度はゼロ) (六つ花えいこ/小説家になろう)

今連載されているなろう小説の中で一番好きなシリーズ。タイトルで少しでもピンときた未読の少女小説読みの方々は、いますぐ読んで悶えてきてください!

死に戻ったら自分のみが記憶を継承していたオリアナが、死を回避しようとしながら、元恋人のヴィンセントに体当たりでアプローチしていく話。やり直し物は最近なろうでもよく見かけますが、六つ花さんが手掛けたら楽しくて甘くてエモくなるに決まってるんです。まずとにかく恋に生きるオリアナがかわいくて素敵。ヴィンセントの方には記憶がないので、すげない態度をとられるんですけれど、それでも負けずに努力して恋しつづけるオリアナの姿に心奪われます。結構強引なアプローチもとっているんですが、根がいい子なのが地の文からも内面描写からも伝わってくるので嫌な気持ちになりません。感情豊かで等身大で、自分的に割と理想の主人公です。

ヴィンセント側の内面描写もあって、ヴィンセントが次第にオリアナに絆されてていく様子にとてもニヤニヤ、格好かわいい。昔の自分に嫉妬する展開とか美味しいですよね。このお話、学園の日常の色んな場面が相当丁寧に描かれていて、その中で恋心やほのかな甘さが伝わってくるシーンがたくさんあるんです。その積み重ねの上での本命の甘いシーン、破壊力抜群に決まってます。また、主役以外のキャラにも恋愛模様が見られるのも嬉しいポイント、とても良き主従関係もありますよ! ヤナかわいい。

そして、死の秘密に迫るにつれて上昇していくエモさ。今月に入ってからは数日に1回はエモさに殴られて倒れている気がします。この後さらに殴られるのも分かってる、覚悟はできてます(耐えられるとは言っていない)。ネタバレだから何も言えないんですけど、秘密抱えてる某キャラはお手柔らかにお願いします。おそらく物語はもう終盤、皆が幸せな結末を迎えますように。


アルマーク ~北の剣、南の杖~ (やまだのぼる/小説家になろう)

傭兵の息子である少年アルマークが、魔法学院に入学するところから始まる学園青春ストーリー。

アルマークが人として、また魔術師として成長していく中で、クラスメイトや周囲もアルマークの影響を受けていく過程がとても丁寧に描かれていて、なろう小説らしくなく、児童文学っぽさも感じる物語。重い背景を背負っているキャラもいて、時には戦闘での命の危機も経験しながら、周囲との絆を深めていくのにグッときます。

特に「この物語好きだな!」となったのは武術大会編あたりから。クラスメイト1人1人に明確にスポットが当たって、アルマークの影響で皆がどう変わってきたのかが伝わってきて、物語の深みがグンと増しました。中でも最高だったのがモーゲンの描写。鈍臭くて才能がなく、普通の物語ならモブその1の立ち位置になりそうな彼の姿を、物語のはじめから追ってきたからこそ実現できるシーン。独白に思いっきり泣かされました。この物語に心を掴まれたのはこの場面だと思います。   

さらに先に進むと、クラスメイト以外へフォーカスが当たることも増え、かなりの登場人物の数になり、それなのに1人1人の個性が立っていて「誰だっけ?」と混乱することが少ないのが凄い。アインとフィッケの秀才&ひょうきんものコンビとかお気に入りです。そんな物語の、一つの集大成ともいえるのが学園祭編。一章丸々くらいの文量を使って描かれる作中劇は、皆の個性を活かした配役と心理描写が最高に素晴らしくて、ブラボー!とスタンディングオベーションしたくなりました。闇の力との戦いなど、物語の大きな奔流は別にもあるんですが、この学園の物語が大好き。

恋愛要素は、あることにはあるんですが、この関係や感情を「恋」として安易に定義したくはないな、とも思います。憧れ、大切なものを守りたい気持ち、後悔や恐れ、そんな様々な気持ちを内包していて、何よりお互いへの心情が綺麗でまぶしい。甘いシーンでも、甘さに悶えるのではなく、尊さに切なくなります。守られるだけでなく並び立とうとする強い気持ちをもった少女とか、そういうの好きな方には刺さると思います。

すでに400話超えているので新規にとっつきづらい側面はありますが、書籍化はしない意向と以前書かれていたので、是非年末年始のお供に。


プニキとはじめるリーグ運営 ~野球ゲーム?作って運営します~ (ブーブママ/小説家になろう)

タイトルの一発ネタだと最初思ったお話が、300話続き、現実ともクロスオーバーした物語になるとは思いませんでした。

タイトルの通り、ケモノ達が選手となって活躍するバーチャルな野球ゲーム「ケモプロ」を運営していくお話。今の日本の社会で技術だけが少し進んだ世界が舞台で、近未来なゲームであるケモプロが魅力的なのはもちろんのこと、チームのスポンサーとなるオーナーの話や社会への影響などをしっかり描いているのも面白いポイント。

以前から楽しんできたんですが、今年に入って、コロナの影響を明確に物語に反映させてきたのに驚きました。スポーツが開催できない中、バーチャルなプロ野球だからこそ、人々に提供できる観戦。ただのゲームにとどまらず、社会における長く根づく存在を目指して紡がれてきた本作だからこそ、自然に取り入れられたコロナ要素。現実が物語に追いついた、という心情を抱きました。いやほんとケモプロ観戦してみたい。野球好きのなろう読者の方にお勧め。


逆行転生したおじさん、性別も逆転したけどバーチャルYouTuberの親分をめざす!(ブーブママ/小説家になろう)

上のプニキと同著者によるVtuber物。Vtuberは全然興味ない(動画コンテンツは基本苦手)ので見ないんですが、著者繋がりで読んだらハマりました。

タイトルがあらすじそのもので、主人公が推しがたくさん存在する世界を目指して奮闘する本編も楽しく読んだんですが、この物語の真価はむしろバーチャルYouTuberの親分になった後ではないか。そう思うくらい、後日談が充実してるんです。プニキと同様、こちらも少しだけ技術が進んだ日本が舞台で、今の世界だと無理なバーチャルな技術がたくさん。そんな中で、様々なVtuberたちがバーチャルなゲームや企画を楽しんでいる姿が実に楽しそうで、遊んでみたいしリスナーとして見たい。よく色々なアイデア出てくるなあと思います。そして、トップVtuberである主人公がガチVtuberオタクとしてスロットル全開なのも楽しい。自分も楽しむためにドーム借りて推し達のステージまで企画するとか突き抜けすぎて愉快。どのVtuberも好きですが、帝都組お気に入りです。

この作品の影響で、他のVtuber小説にも手を出しています。ちょうどハーメルンでVtuber小説ブームが今年起きているらしく、配信の賑やかな空気や配信者同士の尊い関係、ちょっとしたシリアスなど、お話によって色々なアレンジがあって楽しいです。実際のVtuberは依然として全く見てないんですけどね! 


TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA (佐遊樹/ハーメルン)

「要素詰め込みすぎだろ!」と突っ込みたくなるタイトルからの、さらにぶっ飛んだ内容というとてつもない小説。

ただの悪役令嬢追放物ではなく、神様たちが実況して主人公と意思疎通を交わすというスタイルがまず斬新。そして、頭のネジが1本どころか10本くらい飛んでそうな主人公が無茶苦茶。追放からどんどん遠ざかるのは序の口、脊髄反射で飛び出す突飛な行動の数々や、力こそパワーな脳筋スタイルで読者を混沌に突き落とす。「悪役令嬢は対抗として聖女COした」みたいな、どうしてそうなる的展開がてんこもり(上の例はかわいいレベル)で、神様たちの胃はツッコミで死ぬ。おまけにシリアスも結構頻繁にぶち込んできて、コメディとシリアスの壮絶なギャップが同じ話に同居しているのに脳が混乱します。なんでドシリアスな戦闘とのんきな歌声が隣り合っているんです?? 露骨な鬱展開フラグもあって怖いんですけど?? あと、婚約者のロイや騎士ジークフリートとの乙女ゲー的要素も微妙にあるので、そちらも楽しみにしていたり。

パロディやネットスラングやRTA文化などが盛り盛りなので人を選びますが、その辺りに馴染みある人はきっと楽しめるはず。

好きラノ投票データを使った、本のおすすめツール

2020年7月20日(月)

好きラノ2020上期の投票データを使って、「この本を読んでいる人にはこんな本もお勧めです」ツールを試作してみました。UIは本当に最小限ですし、期待するような結果もうまく出ないかもしれませんが、興味があったら使って遊んでみてください。

以下は、作った動機やどんなロジックで動いているかの簡単な説明です。

元々のモチベーションは、某Web小説サイトの『この作品をブックマークしている人はこんな作品も読んでいます』欄からきています。こういう機能は個人的にとてもありがたく、趣味の合う小説を探すのに重宝しています。ただ何度も使っていると、こう感じることもあります。「ランキング上位の人気作ばかり並ばずに、もう少しマイナーな作品も並んでくれたらなあ」と。

どこぞの本好き主人公のように「そういう機能がなければ自分で作ればいい!」とできればよかったんですが、機能を作るにはデータが必要です。某サイトではブックマークのデータを取得してツールを作って公開するようなことができません。そんな中、昨年末の好きラノ投票数の増加を見て、「投票データ使えば、書籍のお勧め機能作れるのでは?」と思いつき。主催のいちせさんにも快く許可いただいたので、こうして形にしてみました。

(7/21追記) 好きラノに直接関係するモチベーションを触れ忘れていました。何年も前は投票結果の趣味が合う人のブログを見て、面白そうな作品を探すようなことができたのですが、最近の10000票オーバーのような状況ではなかなか難しくなってきています。このツールが少しでも読みたい作品探しの役に立てばいいなあと思い作ったのでした。どう考えてもこっちをメインに書くべきですね。最近はWeb小説中心に読んでいるせいでつい。(追記ここまで)

なお、Web周りのド素人が作ったため、UIはへっぽこです(スプレッドシートからデータを取得しているのでとても遅いです。スマホ対応なんて、とても無理な話でした……)。類似度計算のアルゴリズムも単純なものを用いているので、誰か改良してみたい方いたら是非お願いします!

お勧めする際のロジックは、一言でいえば読者層が近い作品の類似度が高くなるようなものを用いています。単純に共通読者数を見るのではなく、全体の傾向を見て類似度を計算しているので、共通読者数が0の作品でも類似度が高くなることもあります。例えば、ある人が作品A,B,Cを、別の人が作品B,C,Dに投票した場合、AとDの共通読者数は0ですが、類似度はある程度高く計算されます。


これ以降は詳しい人向けの説明です。

好きラノの投票から得られるデータは、各投票者のお気に入り10作(順位づけなし)です。「最大上位10作のみが観測されている」という状況にピッタリ合うアルゴリズムが見つからなかった&思いつかなかったため、今回は近い設定のLightFMを用いました。LightFMのハイパーパラメータは、交差検証を行いつつ、結果の出方の定性感も踏まえてチューニングしています。

作品の類似度計算には、LightFMで得られた各作品ベクトル表現のcos類似度を用いています。ただ、単純に類似度を計算すると、票数が1-2票の作品が類似度上位に来やすくなり、違和感が強いです。これを緩和するため、投票にノイズを入れた学習(パターン2)や、投票数による類似度の重みづけ(パターン3)を導入しています。あまりスマートなやり方ではないため(特に後者)、もっと改良したいところです。

好きラノ2020上期投票

2020年7月18日(土)

好きラノに参加します。前期はTwitterで投票しましたが、今回はブログで。


<心の一票>

女王の化粧師2 (千花鶏/ビーズログ文庫)

「電子書籍限定での発売なので投票できない、辛い……」→「ブログなら集計に迷惑もかけることなくアピールできる!」ということでブログ投票にしました。最高のヒストリカルロマンスを見せてくれることが確定している物語、2巻ではその一端を見せてくれます。さりげない1シーンがとてつもなく甘い。続きはなろうカクヨムなどでも読めます、少しでも広まってほしい。


金星特急・番外篇 花を追う旅 (嬉野君/ウィングス文庫)
【20上ラノベ投票/9784403542220】

ここ10年で読んだ物語でベスト10には間違いなく入る傑作ファンタジーの番外編。振り返る旅というコンセプトが素敵ですよね。相変わらずだったり、幸せそうだったりの面々を見ていて幸せな気持ちになりました。泣きそうな三月が尊すぎて死ぬ。

本編も最近再読したら、やっぱり最高の冒険小説でした。今月までKindleUnlimitedで読み放題らしいので、全人類読むべき。


Unnamed Memory IV 白紙よりもう一度 (古宮九時/電撃の新文芸)
【20上ラノベ投票/9784049128048】

5巻も出てますが、あえて4巻で。3巻の引きからの再スタートの衝撃はやはり強烈ですし、それでも惹かれていく繋がりの強さにときめきます。歳をとっていない分、ちょくちょくやらかすティナーシャがかわいい。


Babel I 少女は言葉の旅に出る (古宮九時/電撃の新文芸)
【20上ラノベ投票/9784049131338】
Unnamed MemoryとBabelは同じくらい好きなので、再書籍化は本当に嬉しい。雫とエリクによる、ボケ5割ツッコミ0割真面目5割の異世界交流雑談が大好き、無限に読んでいられる楽しさ。一つ一つの事件も、しんみりしたりひたすら不気味だったりと色が違って面白い。雫の旅路が行き着く先を、この書籍化ではどういう風に見せてくれるのか楽しみです。


ダイブ・イントゥ・ゲームズ1 ぼっちな俺とはじめての友達 (佐嘉二一/レジェンドノベルス)
【20上ラノベ投票/9784065199770】

VRゲームを舞台とした物語。海の生き物となってリアルに生態系を味わうゲーム、自由度が高いMMORPG、ガチのロボゲー、など色んなゲームが登場して、主人公がそれらを心から楽しんでいるのが伝わってくるのが良いのです。最初はぼっちだったのが、ゲーム仲間と時々一緒に楽しむようになる人間模様にもホッコリ。


Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 01 (之貫紀/KADOKAWA)
【20上ラノベ投票/9784047360174】

主人公たちの研究者らしい好奇心全開の現代ダンジョン物。国家や権力の陰謀や駆け引きなどは二の次、ダンジョンの謎の検証に夢中になったり、日々の食事を楽しんだり、あくまで日常の延長線でダンジョンをエンジョイしている姿が見ていて楽しいです。


フシノカミ 3 ~辺境から始める文明再生記~ (雨川水海/オーバーラップノベルス)
【20上ラノベ投票/9784865546835】

文明を良くしていこうとするアッシュの熱量が素敵なシリーズ、3巻は飛行機制作編。相変わらず他者視点の加筆の大盤振る舞いで、Web版既読者にも嬉しい作り。別れのシーンでのアーサー視点、寂しさや前向きさや嬉しさが詰まっていて最高でした。マイカ視点がどんどん全力全開になっていくのも好き。


魔法世界の受付嬢になりたいです 3 (まこ/アリアンローズ)
【20上ラノベ投票/9784866573052】

近年で最高のケンカップルがこの物語には存在しました。ロックマン、お前なんて難儀な生き方を……。Webの後日談での追撃で私は死にました。電子書籍限定SSでのナナリーの破壊力も凄いので、紙派の人は電子書籍も。


十三歳の誕生日、皇后になりました。 3 (石田リンネ/角川ビーンズ文庫)
【20上ラノベ投票/9784047361454】

スピンオフ出てるんだ、と気軽な気持ちで読み始めたら、莉杏の目を見張る成長に圧倒される物語でした。愛を求めるために文字通り命もかける系女子、とだけ書くとヤンデレっぽいですけどそんなことはなく、「皇后として陛下と同じところに立ちたい」という一途な想いで成長した結果、命をかける選択に至るのが末恐ろしい。1巻の最初ではただの少女だったのに、こんなの暁月も惹かれるしかないじゃないですか、強すぎる。