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自負と偏見 / ジェイン・オースティン

2016年11月11日(金)

自負と偏見自負と偏見
ジェイン・オースティン
新潮文庫
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さすがの名作でした!

結構前にお勧めいただいていた、1800年頃のイギリス田舎の階級社会が舞台の古典名作。「高慢と偏見とゾンビ」が上映されていて、読むならこの機だと思って手にとりました。

読み始めてまず気づいたのが、軽快な読み心地。邦訳小説とは思えないくらいの読みやすい文章に加え、登場人物たちの個性が非常に豊か。俗っぽい登場人物も多くて、最初はこんな人達も出てくるのかと引っかかったりもしたんですけど、皆ブレることなく活き活きとした姿はどこか喜劇的で、すぐに気にならなくなり楽しく読めました。ひたすらズレた喋りのコリンズ、現実的にしたたかな道を選んだシャーロットあたりが特に印象に残りました。

そしてメインカップルのエリザベスとダーシーです。ダーシーを嫌うエリザベス、エリザベスに惹かれだすダーシー、という構図を見て、「このお話好きになる」と確信しました。特にエリザベスに会うたびにとことん嫌われていく不器用なダーシーには肩入れしたくなって、エリザベスがいつ心を変えるのかをドキドキしながら読んでました。

一番の見所であろう、告白からエリザベスの認識がひっくり返る場面は鮮烈。そりゃとことん嫌ってた相手が実は素晴らしい人だったというのは、すぐには受け止められませんよね。時間をかけて心が揺れ動き、自負と偏見が羞恥と尊敬に変わっていく様子はリアリティあって、こちらの心も揺さぶられました。
それにしても、あんな振られ方を一度しても愛を翻すことなく、それどころかますます男前になるダーシー。ちょっと格好良すぎでしょう。この格好良さ、これまで読んだ物語全ての中でもかなり上位だと思います。

リディアがまさかの相手と駆け落ちしたのには驚きましたが、ダーシーがさらに格好良い姿を重ねていき、エリザベスが恋していくのにニヤニヤできて、最後まで面白かったです。再度の告白が受け入れられたときはダーシーおめでとう! と言いたくなりました。いやー、王道って素晴らしいですね。近年の少女小説では捻りを効かせて、ここで再度断るような鬼ヒロインがいたりしますからね(それはそれで愉快で大好きですけど)。

時代を越えて語り継がれる作品はそれだけのものがあるのだと改めて感じました。なおゾンビ映画は見る前に上映が終了しました、ちょっと遅かった……。DVD化されたら見たいです。いやでも、ゾンビよりは本家を先に見ましょうか。

時計館の殺人<新装改訂版>(上)(下) / 綾辻行人

2016年11月5日(土)

時計館の殺人〈新装改訂版〉(上) 「館」シリーズ (講談社文庫) 時計館の殺人〈新装改訂版〉(下) 「館」シリーズ (講談社文庫) 時計館の殺人<新装改訂版>(上)(下)
綾辻行人
講談社文庫
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緻密な伏線からの大胆な結末! 面白かった!

館シリーズ第5巻にしてシリーズ一という評判も聞いていた本作。まあどうせ自分には仕掛け分からないだろうと達観し、驚く準備をして読み始めました。

前半部は、閉鎖された館が舞台という王道的なミステリの展開。小手調べの降霊会トリックのあたりは仕掛けも分かりやすくのほほんと読んでられましたが、どんどんと人が殺されていく展開がなかなかに怖い。異様な空間の中で、登場人物たちが精神的にやられていくのが分かり、また仮面の殺人者も不気味で、上巻読了あたりは雰囲気たっぷり。夜中に読まなくて良かったと思います。

で、読み進めていくにつれて由季弥が怪しく見えてくるも、怪しすぎて他に犯人いそうだないう予想に。登場人物たちも同じ考えに至っているあたり、作者の手の内ですね。で、時系列表が並べられて、「あ、この夜中に電話してるのアリバイ作りだ!」と気づきました(遅い)。夜中の電話とかあからさまに怪しいですよね……。でも気づいたものの、この時点では「数時間ずらすと合うのかなこれ」とか考えてました。完璧に術中ですはい。

こんな惨状だったので、犯人ははいそうですねとなりましたが、仕掛け、伏線、動機と明らかになっていくにつれて驚愕に翻弄されました。時計を使った壮大な舞台装置にはびっくりしましたし、何よりそこに至った父親の動機が凄かった。そういうことか! と膝を叩きました。なんという歪んだ執念。そして歪んでいたとはいえ、その舞台が16歳を迎えられずに崩れ去ったのはやるせなかったです。間違っていたのが正されたといえばそれまででも、あと数日……。そこから負の連鎖で本編の大量殺人に至ったのだと思うと、やはりやるせない。

それにしても、本当に伏線が綺麗に張り巡らされていました。カップ麺の件など、言われて「あああ!」と叫びました。睡眠薬だけじゃ味覚までは異常きたしませんもんね……。真相は、1992年など様々な伏線を結びつければ出せない答えでは決してなく、でも巧妙に各所に伏線ばらまかれていて分かりづらい。見事でした。

最後はお約束のように崩れ去る館。それもただ燃えるだけではなく、物語の流れの中での壮絶な崩壊は、美しさも感じさせられました。ミステリと物語が綺麗に噛み合っていて、館シリーズ一と呼ばれるだけはありました。自分の中でも今作が一番の評価。面白かったです。

おこぼれ姫と円卓の騎士 白魔の逃亡 / 石田リンネ

2016年10月30日(日)

おこぼれ姫と円卓の騎士 白魔の逃亡 (ビーズログ文庫)おこぼれ姫と円卓の騎士 白魔の逃亡
石田リンネ
ビーズログ文庫
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離れていてもレティと騎士たちの信頼関係が素敵でした。

衝撃の引きだった前巻を経て最終巻突入のおこぼれ姫シリーズ。離れ離れからのスタートでしたが、別々でも各々ができることを成していき、また情報をうまく伝達させていく様子は、レティと騎士たちがこれまで築いてきたものを感じさせてくれて、こういう最終章って素晴らしいな!とグッときながら読んでました。シェナンからメッセージが繋がっていくところとか興奮しましたね、ウィラードもアイリーチェもみんな有能。

レティはメルディと逃亡の旅。メルディ大好きな俺得展開でしたありがとうございます。苦手なアクティブ活動でもメルディ頑張った。悩むレティに対して、メルディがかけた明快な言葉と励ましが素敵でした、メルディ好きだなあ。その後のアストリッドとのボーイズトークでの姿もまたメルディらしい。鈍感だけど情報さえ与えられれば答えを出せるメルディ、そしてバッサリとドライなメルディ。メルディ好きだなあ(2回目)。

旅の中でもレティのこれまでの積み上げが実感できたのも良かったです。最後はシャルロッテとの間のロングパス。騎士たちには言えないだろう言葉を言ってくれました。素直になって、役者も揃って、さあ反撃だ、というところで次巻。いい引き!

というわけで続きとても楽しみなんですが、まだゼノンが怖いです。これまでもゼノンは割とレティの超常を垣間見てきているので、ゼノンならばレティの超常ファクターも十分考慮して思考しているのではないかと。フリートヘルム兄上は余裕で裏かけてるんですけどね……、対ゼノンはまだ一押しがいる予感がしています。怯えつつも幸せを祈って次巻を待ちます。