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 8月15日(土)

 作家サークル一覧、開催中なのに今頃増えたりしてます。本人以外の寄稿は過去にも何度も見落としていたようで……。漏れないように頑張ります。


【今日読んだ本】

ただいま神サマ募集中っ! (香月 せりか/コバルト文庫)amazon

 
 
《あらすじ》
 神様が見える七緒は、神社の跡取り娘。だが祭神のミズローに力がなく、借金のカタに立ち退き確定。そこへミズローそっくりの神様が現れ、不思議な力で七緒を助け、おまけに結婚したいと言い出し!?


 今月のコバルトの新人さん作品、宮司の娘と祭神様による現代ファンタジー。
 「やおろず」を色々と普通にした感じのお話でした。妖怪や神様の姿が見える女の子が、ぐうたら祭神様やそのそっくりさんの神様とドタバタやラブを繰り広げる物語。主人公が普通の感性を持っていて、恋愛相手も正統派で、とオーソドックスな作りでした。
 ライバル美形があまり気に入らなくて、その美形パートが結構長かったので、もう少し奇をてらってほしかったなという物足りなさはあったり。でも、過去から現在まで見守ってきたミズローの気持ちは想像すると切ないし、本気出した後のミズローはかっこいいぐうたらキャラで満足できました。あと、毒舌なゴスロリ美少女神様が結構活躍するので、好みの人にはお勧め。これのシリーズ化はなさそうなので、次回作も手を出すつもりです。


評価 ☆☆☆(6)



千年守護者 〜いにしえの銀 とこしえの恋〜 (真朱 那奈/B's-LOG文庫)amazon

 
 
《あらすじ》
 新米怪物狩人の少女・リュッカは、ある日、狩りに出かけた森の奥で巨大な銀の卵をみつけた。それは、怪我をしていたリュッカの血に触れると、透き通るような美貌の少年に変化する。リーンと名付けられた彼は、血の契約を交わした”ご主人様”の鎧となり、どんな危険からもその身を護るという伝説の合成人形にして魔法兵器 “装神”だというが――!? 心を持たないはずの人形が抱いた「好き」の気持ち。躍動感溢れるファンタジーワールドを舞台に、永遠の時と魔法を超えたボーイミーツガールが花開く!


 天パルが結構好きだったので買ってみた、真朱さんの新作ファンタジー。
 うーん、主人公があんまり好きになれませんでした。みそっかすな怪物狩人の女の子が、ある日無茶苦茶強くて意志を持つ装備を発見して――、という人外ラブなお話。このメインの人外→人間のラブの部分は、装備ならではの描写がいくつかあるし、リュッカを傷つけたくないというリーンの気持ちが伝わってきてなかなかよかったです。また、リーンとだけ意志を交わせるチビコカトリスが、ズバっと核心ついたり地味な活躍したりといい味出してました。
 でも、主人公のリュッカにいただけない点がちょっと多すぎ。力持って思い上がっちゃうのは仕方ないとして、嫉妬での嫌な女の子っぷりは、恋愛的にもストーリー的にもなんだかなあ。この直後にリーンを好きって言われても重みが感じられませんでした。その後の展開も、少しリュッカに都合よすぎかなあと。ラズリーの欠点で和らげてるのはずるい。
 来月に天パルが出るみたいなので、こっちに改めて期待で。


評価 ☆☆★(5)



 
 8月12日(水)


【今日読んだ本】

扇舞う1 (駒崎 優/幻狼ファンタジアノベルス)amazon

 
 
《あらすじ》
 隣国の今居家に攻め滅ぼされた応義家の幼い当主・祥三郎は、仲間とともに家の復興を決意する! シリーズ第一弾!!


 面白そうな評判がいくつも聞こえてきたので釣られてみた、幻狼の時代小説。駒崎さんの本を手にとるのは久々です。
 これは釣られてよかった、面白かったです。絶滅寸前からのお家再興という王道ストーリーなんですが、主人公の祥三郎が「これから立派な領主になっていきそう」ととても思わせてくれる、素直でそこそこ賢い少年でとても応援したくなります。ちょっと上手くいったかと思ったら叩き落してくる展開はワクワクドキドキで読み応えありました。窮地に陥るのが安易な裏切りなどでなかったのもいいです。
 女性陣の中では、今のところは断然れん一押し、初恋の人のために単身敵地へ、というのは燃え燃えですね。きっと正体ばれて大ピンチなお約束が待っているんでしょうが、なんとか切り抜けてほしいです。ヒロイン候補っぽいちやは、登場人物紹介に名前がないのが気になるところ。おはるが妃に、みたいな容赦ない展開はないと思いたいんですが。その辺含めて2巻も楽しみです。


評価 ☆☆☆★(7)



 
 8月10日(月)


【今日読んだ本】

魔法の材料ございます ドーク魔法材店三代目仕入れ苦労譚 (葵 東/GA文庫)amazon

 
 
《あらすじ》
 いらっしゃいませ。ドーク魔法材店へようこそ! わたし、この店で働いているサシャと申します。ここは三十年前に高名な魔導師が創業したお店です。今は三代目が店主を務めているのですが、在庫管理はいい加減、仕入れは無計画だし、今日も予約が入っていたドラゴンの鱗を別の人に売ってしまったんですよ? まったく、わたしがいないと店番ひとつもできないんですから。それで、すぐに買い戻してくるように言ったら、なぜかドラゴンの鱗でなく金髪ツインテールの美少女を連れてきたりして……困ったものですよね。さて、そんな旦那様の物語、楽しんでいただけますと幸いです。期待のGA文庫大賞奨励賞受賞作、ですよ♪


 今月のGA文庫の新人さん作品、魔法材を売る店のぐうたら三代目が主人公の魔導ファンタジー。
 かわいいヒロインと最悪なヒロインが見事に1人ずついて、賛否両論になりそうなお話でした。ぐうたら三代目が金髪ロリと一緒にドラゴンの鱗を拾いに行くストーリー。で、当たりのヒロインは居残って店番をするサシャ。経営を支えるしっかり者の女の子で普段は三代目に厳しくあたるんですが、不在のうちに三代目のいいところに気づかされていく流れがよいです。そして、気づいていくうちに三代目がいなくなる・奪われる不安に晒されて、「私には胸しか……」などと時折暴走しかける乙女思考のかわいさが最高。今年読んだ中でもかなりお気に入りの部類な女の子です。
 一方で、大外れなヒロインなのが一緒に旅する金髪ロリのリア=メイ。「幸福神が助けてくれるからドラゴンも倒せるのじゃ!」などとのたまう、電波で狂信者な女の子です。力(身分)がある狂信者なのが本当に性質悪くて、三代目を何度も窮地に巻き込む(しかも悪びれる様子0)のに、何度ブン殴りたくなったことか。家で読んでたら間違いなく本を叩きつけてました。「聡明」って記述がありましたが、いや賢くないよこの子。なんで三代目がこんな女に惹かれかかっているのか理解できません、リア=メイルートとかないですよね、ないですよね?
 「魔力消去」を中心にした魔法描写はなかなか面白かったし、三代目の辛い過去を露骨に仄めかしていたりと他にも見所あるんですが、ヒロイン2人が良くも悪くも目立ちすぎていて、その辺を食ってしまっているのがなんとも。サシャのために続きも読もうと思います。


評価 ☆☆☆(6)



ソードアート・オンライン2 アインクラッド (川原 礫/電撃文庫)amazon

 
 
《あらすじ》
 クリアするまで脱出不可能のデスバトルMMO『ソードアート・オンライン』に接続した主人公・キリト。最上階層を目指す≪攻略組≫の彼以外にも、様々な職業や考え方を持つプレイヤーがそこには存在していた。彼らはログアウト不可能という苛烈な状況下でも、生き生きと暮らし、喜び笑い、そして時には泣いて、ただ≪ゲーム≫を楽しんでいた。≪ビーストテイマー≫のシリカ、≪鍛冶屋≫の女店主・リズベット、謎の幼女・ユイ、そして黒い剣士が忘れることの出来ない少女・サチ──。ソロプレイヤー・キリトが彼女たちと交わした、四つのエピソードを、今紐解く。


 大人気のMMO小説「ソードアート・オンライン」第2巻。
 一言で感想書くなら「3巻マダー?」となってしまう短編集でした。どの話も綺麗にまとまっているんですが、基本的に1巻の過去の話なのである程度展開は見えてしまうし、新たに明らかになることも少ないしで、1巻に比べると大分物足りなかったです。同じ番外編でも、webにある「圏外事件」の方が読み応えありました(あれとはボリュームの違いも大きいですが)。
 あと、キリトがフラグたてすぎなんです。確かにキリトはいい男に映るけど、真壁さん@迷宮街の方が断然いい男じゃないですか(超主観)。強さの価値も違うんでしょうが、迷宮街にはいい男転がりすぎなのがフラグの量の差に響いてる気がします。ソードアートの世界にはいい男少ないんでしょうか、クラインはモテるタイプじゃないですし。
 とりあえず3巻はとても楽しみ。


評価 ☆☆☆(6)



 
 8月5日(水)


【今日読んだ本】

イリアディスの乙女 月の女神と白銀の婚約者 (神埜 明美/コバルト文庫)amazon

 
 
《あらすじ》
 ようやく『鎖の巫女』として力を使えるようになったシェリス。夜の神・アストロの助けを借り努力するある日、皇太子との婚約を告げられる。アストロへの想いと巫女の務めとの間で揺れるシェリスは…!?


 悲恋の運命に立ち向かう人と神のファンタジー「イリアディスの乙女」第2巻。
 あーもう、どうしてこの世界はこんなに巫女に厳しいんですか。神との調停という重責を1人で負っているだけでも歪んでいると思っていたのに、政略結婚(?)の役目まであるなんて。政教分離なはずなのに、巫女が帝国の象徴になっていたり、帝国が教会の人事いじれたり、歪みすぎですこの世界。恋をして恋を選んだ巫女が総スカンを食らったという記述には絶望しました。神はもう少し巫女に優しくてもいいと思うんです……。
 このように世界は全く受け付けなかったんですが、メインカップルは1巻に引き続き好きです。世界が嫌いな分、その世界で必死に頑張っているシェリスは応援したくなります。諦めそうになりつつも悩んで悩んで、婚約者のエリクとの関係に対して出した結論はかっこいいものでした、シェリス頑張った。
 でも、エピローグ見るに、次巻ではとても嫌な展開が待ってそうなので様子見。どこまで巫女いじめるんですかほんと。


評価 ☆☆☆(6)



 
 8月4日(火)

 2009年上半期ライトノベルサイト杯に投票します。新規で推したいもの多くて「いっそ全部少女小説にしちゃおうか」とも思いましたが、既存で外したくないものもあって、結果的に5:5に分かれました。タイトルは感想にリンク張ってます。
 なお、投票コードは別におきます。(トラバのため)


「新規部門」

鳥は星形の庭におりる (西東 行/講談社X文庫ホワイトハート)

 

今期の新人さん一押し。聡明ゆえに孤独で、13歳という歳相応に幼い面もあり、でも涙を流すことをよしとしない主人公のプルーデンスの気高さに見惚れました。怪しくてロリコンの気もある吟遊詩人とのやりとりも楽しい。
ファンタジー好きにはもちろん、数学やパズル好きな人にも結構お勧め。13歳の女の子が黄金比の美しさについて熱く語ったりします。


ブランデージの魔法の城 魔王子さまの嫁取りの話 (橘香 いくの/コバルト文庫)

 

楽しいラブコメ、という言葉がぴったりくるファンタジー。
真面目で行動力あるA型主人公が、自由気ままな王子に振り回されて反発したり惹かれたりする様子が楽しいこと楽しいこと。特に後半の里帰り編は、興味津々な家族たちにも振り回されて2倍おいしいです。


メガネ恋。 (時海 結以/一迅社文庫アイリス)



「メガネをかけていないと丸裸と同様」な国が舞台というトンデモ設定なのに、普通にラブファンタジーとして面白い、凄い作品。
ネタを真面目に扱っている話が好きな人にはとてもお勧めですし、タイトルに引いて回避するのはもったいないです。


天涯のパシュルーナ1 (前田 栄/ウィングス文庫)

 

山賊の少年が行方不明の王子に、という王道なファンタジー。主人公がそこそこに頭がよくて、でも運命の波にさらわれていく様子がとても好き。先が気になるという点では今期新作で一番。
主人公が男の子だし恋愛要素も皆無に近いので、男性にもお勧め。


姫君返上! (和泉 統子/ウィングス文庫)

 

女装姫様モノです。奇人変人たちに女装主人公が振り回されるのが楽しいです。副主人公(?)のキャラが崩壊していく様子には爆笑しました。



「既存部門」

BLACK BLOOD BROTHERS 10 ―ブラック・ブラッド・ブラザーズ 銀刀出陣― (あざの 耕平/富士見ファンタジア文庫)
BLACK BLOOD BROTHERS 11 ―ブラック・ブラッド・ブラザーズ 賢者転生― (あざの 耕平/富士見ファンタジア文庫)

   

どうしても外せなかったものその1、これを外したら嘘。後半の数冊はカーサにやられました。
3〜4ヶ月間隔を保って刊行されて、これだけの面白さを維持し続けたのも凄い。


ウィザーズ・ブレイン VII 天の回廊 〈中〉 (三枝 零一/電撃文庫)
ウィザーズ・ブレイン VII 天の回廊 〈下〉 (三枝 零一/電撃文庫)

 

どうしても外せなかったものその2。1巻発売当時からずっと追いかけてます大好きです。
この巻では、今までの伏線の畳み方、そして新たに広げられた風呂敷にゾクっときました。各巻の主人公たちの思想のぶつかり合いや仲良くなる姿も相変わらず面白いです。


迷宮街クロニクル2 散る花の残すもの (林 亮介/GA文庫)

 

どうしても外せなかったものその3。容赦なく人が死ぬ緊張感がたまらないです。
迷宮に潜る人だけでなく、それをサポートする人々、さらには街の外からの目線もあったりと、街全体を描いているのが面白いなと思います。あと主人公がいい男すぎます、これは惚れる。


やおろず弐 でこぼこな恋、始めました。 (古戸 マチコ/Regaloシリーズ)

 

今期一番笑った作品。
人の性格や心の持ち様によって神様の見え方が違う、という設定なのですが、主人公の澄香が素晴らしいセンスをしていて、出てくる神様が面白すぎ。カッパをあんな風に見てしまう女の子はすごい。
時々はホロリと泣かせてもくれる大好きなシリーズ。


平安ロマンティック・ミステリー 嘘つきは姫君のはじまり 恋する後宮 (松田 志乃ぶ/コバルト文庫)

 

昨年下半期に迷って入れなかった作品。そしたら、この3巻で予想以上に面白くなっていてびっくりしました。
平安物って堅苦しかったりで苦手なことが多いんですが、これはそんなことはなく、それでいて平安らしい雰囲気はしっかり出ていて、うまく作ってあるシリーズだなと思います。
この3巻は後宮編、変にドロドロしたりすることなく、パワフルでかっこいい女性達の活躍が時にコミカルに時に真面目に描かれるのがいいです。少女小説あまり読まない人にもお勧め。




 
 8月3日(月)


【今日読んだ本】

イリアディスの乙女 封印の巫女と夜の神 (神埜 明美/コバルト文庫)amazon

 
 
《あらすじ》
 神を封印できる「鎖の巫女」シェリス。落ちこぼれで、先代と比較されてばかりの彼女は、封印された神アストロを目覚めさせてしまう。とっさに鎖で戒めるが、自分の腕にも鎖が絡みつき、外せなくなって!?


 いい評判を聞くのでラノサイ杯前に読んでおくことにした、今年スタートのコバルトファンタジー。
 どんな話だか知らずに読み始めたら、随分歪んでいる世界が舞台で驚きました。教会があって巫女が1人いて、その巫女が人と神との調停を行う、という巫女への負担が随分重い設定。しかも優秀な者が巫女になるのではなく、生まれつき選ばれるという厳しさ。これじゃ歪んだ巫女が出てきてもおかしくないです。こんなひどい世界を作った神様たちは猛省すべき。
 と世界観はあんまり好きじゃないんですが、メインのラブストーリーはなかなか。悲恋確定の状況から諦めずにあがこうとする恋は切ないったらないですね。思いっきりそんな状況だった先代の秘密に気づいた場面ではうわーっとなりましたし(珍しく結構早く気づいた)、現職のシェリスもそうなりそうな予感は早くからしていてドキドキでした。こういう健気な頑張り屋タイプの主人公は、たまにイラつくこともありますが基本的には好み。ヒーローのアストロは俺様にしては優しくなるのがはやいなー、という気もしましたが、じっと見守ってくれる優しさはいい甘さでした。幸せ者云々の2人のやりとりとか好きです。
 シェリスが見た死の未来が覆されるのかどうか、2人の恋の行方が気になるので2巻もすぐに読みます。


評価 ☆☆☆★(7)



赤の円環 (涼原 みなと/C★NOVELSファンタジア)amazon

 
 
《あらすじ》
 水の豊かな下層棚から水導士として派遣されたキリオンの前に現れたのは〈竜樹の落胤〉フィオル。この出逢いが、水とこの世界の謎を巡る旅の始まりだった……。第5回C★NOVELS大賞特別賞受賞作


 C★NOVELSの今年の特別賞受賞作品は、水が貴重な変わった世界が舞台のファンタジー。
 このレーベルらしい、地味に読ませるタイプの物語でした。大女と気弱文官が、ふとしたきっかけで旅に出ることになり、世界の謎に触れていくお話。世界の説明を巻末の地図や図に頼りすぎているのは少しずるいなと思いつつ、旅をしていくうちに広がっていく世界にはワクワクしました。水が枯れた荒野の死んでいる姿が、寂寥感あって印象深かったです。
 旅の過程で成長していくキャラクターも見物、優柔不断だったキリオンの後半の活躍には目を見張るものがありました。フィオルの前向きさに感化されて、次第に大切な存在になって、と彼がフィオルに向ける感情はなかなかよかったです。その一方で、フィオル側の描写はやや物足りなかったかも。ずっと流され気味に旅をしていたせいか、いまいち心情が伝わってきませんでした。最後はラブ方向にはいかないにしても、キリオンと邂逅はしてくれたほうが好みだったなあ。
 今年の2作は外れなくてよかったです、こちらも次回作は読んでみるつもり。


評価 ☆☆☆(6)



 
 8月1日(土)


【今日読んだ本】

翼の帰る処 ―鏡の中の空― 上 (妹尾 ゆふ子/幻狼ファンタジアノベルス)amazon

 
《あらすじ》
 北嶺郡で侵略者たちを倒し、皇女とともに勝利をおさめたヤエトは、皇帝から衝撃的な話をされ…。人気シリーズ第二弾登場!!


 隠居志向の超虚弱文官という珍しいタイプの主人公を据えた本格ファンタジー「翼の帰る処」、待望の第2弾。
 途中までで一旦止める予定だったのに思わず最後まで読んでしまいました、さすがの面白さです。この2巻を読んで、ヤエトは素晴らしい主人公だと改めて思いました。がんがん頼られて人に好かれて、どんどん本人の意向とは遠ざかる方に転がっていく、これだけ眺めてて楽しい主人公はそうそういないです。普段の一考一動だけでもしばしば笑わせてくれるわけで、第1章の終わりみたいな、普通の主人公でも強烈な場面での面白さといったらありません。とても有能で特に着任後には名官吏な側面も見せてくれるのに、凄く親しみが持てる、何度も言いますがいい主人公です。
 世界の秘密は今巻はじわじわと小出しにしていて、今後への繋ぎな感じ。ジェイサルドはそういう背景でしたか、意外と黒くなかったです。ジェイサルドよりも、ジェイサルドを従わせるヤエトにびっくりでした。恩寵の力が強まっていってどういう展開を見せるか、予想がつくわけがないので、出されたものに素直に驚くことにします。
 1巻の感想で楽しみと書いた三角関係は、状況的にはそれっぽくなってきてドキドキ。でも姫様もスーリヤもなんだか危なげな未来が見え隠れしていて、期待よりも不安の方が大きいです、このタイミングでドラ貴族滞在中とか嫌な予感しかしません。ストーリー的にやばそうなのはスーリヤの方ですが。思いつめたりするのやめてー!
 と不安もあったりはしますが、下巻はとても楽しみ。たった1ヵ月後に読めるなんて幸せです。


評価 ☆☆☆☆(8)