___1月14日(月) |
【今日読んだ本】 ◆ やおろず (古戸 マチコ/イースト・プレス) 【amazon】 《あらすじ》 霊感なし、特定の宗教なし。信仰心なんて初めからあるはずもない。それなのに、私の目にはやおよろずの神さまたちが見えるようになってしまった……。 “平凡な女子大生” 高原澄香は、祖母の葬儀が終わった夜、自らを《家神》と名乗る男に出会う。若いのに年寄りじみた表情、着慣れた風情の和服姿。祠の上に腰かけたその男は、面白そうに笑って言う。「わしはのう、長い間ここにいて田舎にはもう飽きておるのだ。ここはひとつ、逃避行と洒落込もうじゃないか」 その日をきっかけに、澄香の目には「やおよろずの神さま」が見えるようになってしまった。絵本を読めとねだってくる幼稚園児姿の《便所の神》や、頑固一徹な《かまどの神》、地域に住まう《道祖神》に、くたびれた《節分の鬼》。次々に現れるどこか変な神さまたちに、澄香は今日も声を荒げる。「もーやだ、絶対やだ! あんたたちを追い出して、平和な生活に戻ってやる!」 これは、そんなひとりの日本人と、21世紀を生きる神さまたちの物語。 元はネット小説、大幅加筆修正されて先月発売された、人と神さまが織りなす笑いあり涙ありの物語。感想書く前にラノサイ杯に投票しちゃいましたが、改めて感想を。 まず魅力として挙がるのが、とっても個性豊かな神さまたち。発言が年寄りじみているけれど好奇心旺盛な家神をはじめとして、頑固親父なかまどの神さま、無邪気な子供の便所の神さま、夫婦喧嘩する雛人形の神さま、お守りに宿るチビ神さま、などなどほんと色々な神さまが登場。で、主人公の澄香は突然賑やかになった生活に最初のうちは反発してはいるんですが、その心理描写がとっても楽しそう。基本的にツッコミ体質で、でもツッコミが時々ボケていて、個人的にツボでした。見る人の気の持ちようによって神さまの姿が変わるのも面白かったです。 ただ楽しいだけじゃなくて、暖かさがまた素晴らしいんですよ。出てくるのは神さまで非現実的なんだけれど、ありふれた暖かさで大切なものを思い起こさせてくれる、そんな感じ。普段明るい道祖神の真実を、ちょっぴりしんみりちょっぴりパワフルに描いた4章も素晴らしすぎるんですが、あえて特筆したいのは5章。見えている世界は違っても、人は分かり合える。神さまを通じてそれを描いたのが、すごく上手いと思いました。イラストがついている場面における世界の美しさがたまりません。 いやー、ほんと面白かったです、下半期発売で一番と言ってもいいくらい。女の子一人称で話が進むので、少女小説読む人には特にお勧め、そうじゃない人にももちろんお勧め。 評価 ☆☆☆☆★(9) |
___1月12日(土) |
2007年下半期ライトノベルサイト杯、はやめに投票すると入れたものが目立つことに気づいたので、今回はとっとと投票です。 「新規部門」 【07下期ラノベ投票/新規/9784086010610】 【07下期ラノベ投票/新規/9784872578577】 【07下期ラノベ投票/新規/9784757739192】 【07下期ラノベ投票/新規/9784403541193】 【07下期ラノベ投票/新規/9784044532017】 眠れる島の王子様 (夏埜 イズミ/コバルト文庫) 今期の一押し。時間ネタを絡めた切ない恋物語。時間物好きな人ならまず外れないでしょうし、分かりやすい設定なので、SFっぽいのはちょっと……という人でも平気なはず。悲恋な設定なのに前向きなのも○。 やおろず (古戸 マチコ/イースト・プレス) ついさっき読み終えたんですが、投票前に読んでおいてよかった。人の数だけ神様がいる、笑いありほんのり涙ありのとても暖かくて素敵な物語。神様が出てくる類の話は基本的に苦手気味なのに、これはすんなり読めました。 暴風ガールズファイト (佐々原 史緒/ファミ通文庫) 暴風が面白いと思った方! トワイライト・トパァズも是非読むべきです。ていうか読め。傑作です。 しかし、ついに佐々原さんブームがくるかと思ったのに売れないのか……。 パートタイム・ナニー (嬉野 君/ウィングス文庫) 世にも珍しい子守ラノベ。無茶苦茶な設定を勢いで突っぱねている、とにかく楽しいお話です。 Romeo×Juliet 赤き運命の出逢い (雨宮 ひとみ/角川ビーンズ文庫) ノベライズですが、原作知らなくてもシェイクスピア知らなくても楽しめます。敵同士のラブって最高ですよね。 次点はソウルメイトでいこう! と熱砂の星パライソ。ネタでC★25にもちょっと入れたかったですが、半分も読んでない状態なのでさすがに自重しました。 「既存部門」 【07下期ラノベ投票/既存/9784086010702】 【07下期ラノベ投票/既存/9784086010900】 【07下期ラノベ投票/既存/9784044524036】 【07下期ラノベ投票/既存/9784840239738】 【07下期ラノベ投票/既存/9784829119785】 ダナーク魔法村はしあわせ日和 〜いとしのマリエラ〜 (響野 夏菜/コバルト文庫) 何度も推してますがここでも。ラブあり事件あり男ツンデレありの名作です。ついでに調教モノです。嘘じゃないですよ?(イズーはビーに調教されてますよね) そういや、やおろずもこれも裕龍さんだ。この人の絵結構好きです。 流血女神伝 喪の女王8 (須賀 しのぶ/コバルト文庫) 祝完結、これだけ長期シリーズで全くクオリティ落ちなかったのは見事という他ないです。 ちなみに、読み始めたきっかけの1つが、いちせさんのとこの「拉致監禁&調教モノ」だったりします。勧めたい時はまず興味を持ってもらうのが大事だと思った次第。 身代わり伯爵の挑戦 (清家 未森/角川ビーンズ文庫) 色んなところで次点で推せなくて無念だったので、ここでは1票を。ツンデレ幼女好きには間違いなくお勧めです(キャッチーにすればいいってもんじゃない)。あと、電車の中で読むのは相当危険なくらい笑えます。 ウィザーズ・ブレイン VI 再会の天地 〈下〉(三枝 零一/電撃文庫) ヘイズラブ。そういや、このラノでウィザブレキャラが一人もランクインしていなかったのにはかなりショック受けました。キャラもいいのに! あれか、迷って一人を選べなかったんだな、きっとそうだ。 クジラのソラ04 (瀬尾 つかさ/富士見ファンタジア文庫) BBBとミカタとどれにするか迷いましたが、完結したこともありこちらに。シスコンがややこしくした事態をブラコンが解決する物語。雫の苛烈な意志の強さと凡人っぷりが素敵でした。 【今日読んだ本】 ◆ モーフィアスの教室 (三上 延/電撃文庫) 【amazon】 《あらすじ》 ごく普通の高校生・岸杜直人が通う高校で、多くのクラスメート達が見た不思議な夢の〈教室〉。その夢の中でバケモノに喰われた者は、二度と目を覚ますことはない――。 悪夢に囚われた友人達を救うため、直人は傍若無人な幼馴染み・久世綾乃と共に夢の秘密に迫る。やがて直人は、自分の夢の〈教室〉にだけ、不思議な扉があることに気が付く。なぜか綾乃は、「その扉を開けてはいけない」と直人に忠告するが……。現実世界を浸食しはじめた「悪夢」を直人は止められるのか? そして綾乃の知る真実とは――? 三上延待望の新シリーズいよいよスタート! 口絵は椎名優によるフルカラー・プレビュー・コミック仕様!! 地味三角関係作家の三上さんの新シリーズは、夢の中の化け物と戦う現代ホラー。 むー、既刊に比べるといまいちかな。といっても話の作りは起承転結分かりやすくていつも通り丁寧だし、変わった道具で戦う設定も面白かったです。では何が悪いかというとキャラ、正ヒロインっぽい綾乃が好きになれませんでした。不器用なのは丸分かりなんですが、壁作ってるだけじゃなくて攻撃的なのがなあ。主人公に対する「あなた」っていう呼称もなんか嫌でした。あと、主人公の妹も黒化しそうな雰囲気が見え見えでちょっと引き気味。応援したくなるには登場シーン少ないですし。 そんなわけで続きはスルー。そういや積んでるダーク・バイオレッツどうしようかな……。 評価 ☆☆★(5) |
___1月11日(金) |
昨日の著者間違いを修正。指摘ありがとうございます、ミスったのは久々……と言いたいんですが、先週も日付間違えていたような。いつまで経ってもやらかしが減りません。 【今日読んだ本】 ◆ ロミオの災難 (来楽 零/電撃文庫) 【amazon】 《あらすじ》 そこにいるだけで空気が華やぐような綺麗な少女、雛田香奈実。彼女にうっかり一目惚れした僕が演劇部に入部してしまってから数カ月、文化祭公演のための台本を選ぶ時期がやってきた。現役の演劇部部員は僕と雛田を含め、一年生五人きり。僕たち五人にはそれぞれ想い人がいたりいなかったりしたのだけれど、部室で見つけた、ぼろぼろの『ロミオとジュリエット』の台本を使うことに決めたときから、五人の心に奇妙な変化が起こり始め──。これは、「すき」と言えない高校生の揺れる思いを描く、ちょっと怖い物語。 最近、固定作品以外の電撃を全然読んでいないことに気づきました。これはまずい(?)、ということで今月発売の新作を買ってみることに。 微妙にダークでなかなか面白かったです。感情を勝手に捻じ曲げられる不条理と戦う中で、恋心を知ったり互いの気持ちに気づいたりして関係が変わっていく……といった感じのお話。こういう感情捻じ曲げな話って、憑依物とかと通じるところもあって好きですね、そんな行動取りたくないんだけど、でも取りたい、みたいな自己矛盾が楽しかったです。演劇本番の何が飛び出すか分からない緊張感もよかったです、嫉妬こわいこわい。 しかし、過去のロミオは実に性質悪いなあ。そういう気持ちが主人公にあまり流れなかったのが少し不思議ではありました。あとあえてケチをつけるなら、5人にしぼった割にはやや描写が薄いキャラがいたのが少し残念かな。でもメインとなる3人は描写十分で皆応援したくなりました、新堂頑張れー。 そんなわけで久々の電撃開拓は成功でした。キメラは何となく2巻買わなかったんですが、積み減ったら手出そうかな。 評価 ☆☆☆★(7) ◆ FATAL ERROR7 遠雷 (新堂 奈槻/ウィングス文庫) 【amazon】 《あらすじ》 "第三の神"一朗の正体を地神の仲間に明かさなかったため、粛清されてしまった要。一方、地神に狙われた一朗は、要の安否を気遣いながらも、宏貴、隆司と共に逃亡生活を送っていた。そんな彼らの前に、衰弱した要を連れた常葉が現れ、仲間を裏切ったと告げ助力を求める。それは真実なのか、それとも罠なのか? とりあえず行動を共にする五人だが……。『七姿』と呼ばれる地神の春日が、人間の命の儚さを嘲笑う。ショートストーリーも収録した、怒濤のサイキック・ファンタジー第七弾! 様子見の均衡が崩れて物語が大きく動き出した神と人の物語「FATAL ERROR」第7巻。 うわー、嫌展すぎる……。ついに鬼たちが本気で一郎を狙い出したわけですが、そのやり口がえげつなさすぎて読んでて気分が悪くなりました。尻に敷かれまくっている邪霊に比べて鬼どもはかわいげがないなあ。これじゃどうしても邪霊側を応援したくなります、ひたすら悩んでいる宏貴も死亡フラグたちまくりの隆司さんも好きですし。 ただ、主人公側を応援するには、肝心の一郎の態度が気に食いません。とりあえずお前全部喋れよと。喋れば何か好転したかもしれないのに、というか宏貴もうちょい信じてやれよと。「壊れはじめている」が言い訳がましく思えるほど色々行動に納得がいきませんでした。隆司の願いが空振りなのが非常に悲しかったです。 一郎は暴走しちゃってどうにもならないので、再登場したあの人たちの動向に期待。一郎張り倒してやってください。 評価 ☆☆★(5) |
___1月10日(木) |
2年ぶりに少女小説人気アンケート調査が実施されているので、忘れないうちに回答してきました。票を入れれたのは以下の5作品。 エパタイ・ユカラ 愚者の闇 ダナーク魔法村はしあわせ日和 〜いとしのマリエラ〜 流血女神伝 喪の女王8 結晶物語4 眠れる島の王子様 あれです、5作って少なすぎ。あと5作品くらいは推したかった……。 【今日読んだ本】 ◆ ロールプレイ (日野 イズム/スクウェア・エニックス・ノベルズ) 【amazon】 《あらすじ》 「宮神司の親友が殺された」。死の真相を探る司が辿り着いた先は、自身が通う深夜の大学。そこでは、異能力者同士のサバイバルゲームが行われていた……! 常識を敵に回した世界の中で、司がその手で掴み取る真実とは――!? なんだか悪くなさそうだったのでamazonの1500円合わせに買ってみた、第4回スクエニ大賞佳作受賞作。 やった! 地雷じゃなかった! というわけでなかなか悪くなかったです。表向きのジャンルとしては夜の大学を舞台にした異能バトルで、中盤まではいかにもそれらしい雰囲気。文章が理系っぽく少し気取っていたり、電波気味の少女が出てきたり、ほんのりエロかったりと、それなりに楽しくはあっても、このまま最後までいっていたらいまいち評価でした。 でも後半が面白かった。嘘つき同士の戦いの中で真実が見えてくるというミステリ仕立てのバトルになっていて、交わされる会話の中で真相が二転三転する展開は先が読めなかったし、明らかになる真実も綺麗。ミステリと思って読んでいなかったので、前を見返すと伏線が意外に張ってあるのも驚きました(どこまでが嘘か分かりにくくて読み取り辛いのがマイナスだったりはしますが)。台詞回しや能力設定などで色んな作品の影がそこかしらに見えはするものの、しっかり1つの作品としての色が出ていたと思います。 いくらでも続けられそうな終わり方でしたが、続きは出るんでしょうか。出るなら買いますが、スクエニの佳作で二作目が出るかどうか……。 評価 ☆☆☆(6) ◆ FATAL ERROR6 悪夢 (新堂 奈槻/ウィングス文庫) 【amazon】 《あらすじ》 なんと要がお見合い!? 地神の大物・理子が強引に決めたお見合い相手は、感受性の強い女子高生・未知。だが当日、何故か要の代わりに一朗が彼女の相手をすることに。一方、自覚のない『第三の神』、一朗が起こしてきた奇蹟の力が、天神と地神、両方の注目を集めていた。要と宏貴が命がけで同胞から彼を護らなければならないほどに……。一朗の理解者である親友の要と、威張りんぼだけど可愛い義弟・宏貴。危うい均衡ながらも三人で過ごす平和な日常に突然の終止符が……。話題騒然のサイキック・ファンタジー第六弾! 現代を舞台に鬼VS邪霊の壮大な争いを描いたブラコン小説「FATAL ERROR」第6巻。 あれ、よく分からなくなってきた。鬼ってこんなにも人間蔑視な生き物なんでしたっけ? 長年人の中で暮らしてきたわけだし、もうちょっと人間寄りの一派とかいると思っていました。なので、常葉の抱いている憎しみに「あれ?」と思ってしまったのが残念。理子は前からむかつくキャラだったのですんなり受け入れられたんですが。 鬼どもが動き出したのに比べて、邪霊サイドの動きはまだまだ静か。隆司がきたとはいえ、宏貴に任せっきりの上の偉い人は何考えてるんだろうなあ、さっぱり分かりません。宏貴はひたすら同じことで悩みつづけそうですし。 あと一郎、もうちょっと現実を受け入れてほしかった気がします。一郎がとっとと能力に気づいていれば、要や宏貴が動いて、要の運命も変わったかも……いや無理か。 何はともあれ、物語が大きく動き出したのでこれからの両勢力の動向が楽しみです。 評価 ☆☆☆(6) 【今日購入したもの】 モーフィアスの教室 (三上 延/電撃文庫) ロミオの災難 (来楽 零/電撃文庫) |
___1月5日(土) |
【今日読んだ本】 ◆ 名前探しの放課後(上)(下) (辻村 深月/角川書店) 【amazon】 《あらすじ》 不可思議なタイムスリップで三ヵ月先から現在に戻された依田いつかは、これから起こる“誰かの”自殺を止めるため、同級生の坂崎あすならと放課後の名前探しをはじめる――。新世代の気鋭が描く切ない青春ミステリ。 ソフトカバーなせいで買うのが遅れた辻村さんの新刊は、同級生と一緒になり謎の自殺者を探す、ミステリー仕立ての青春物語。 ぐあー、また気づかなかった……。辻村さんの作品は大抵どんでん返しが待っていて、特に今作の場合はいかにも自殺者な人物がはじめから提示されていたので、絶対他の人が自殺者だろうと思っていたんです。で、自殺者までは予想ついたし、少しは伏線にも気づいたんですが、肝心のいくつかを見落としました。河野とハルの関係に気づかないと負けだよなあ。ただ、スロウハイツに比べると伏線の張り方がいまいちだったり、伏線回収の章とそれまでの章の雰囲気が違いすぎてバランス悪かったりと、ミステリーとしては欠点も目につきました。 でも、この物語のメインはミステリーじゃなくて青春面。いつもの辻村作品とは違って現代風の冷めた少年が主人公だったのが結構新鮮、捜査やイベントを通じてあすなや河野と言葉を交わしぶつけあい、お互い成長していくのが素敵でした。もがいて苦しんで頑張る姿は青臭かろうとかっこいい。でも一番好きなのは絢乃かも、取り巻きは別として絢乃はいい子ですよね、絢乃関連のいつかの態度は腹立たしかったです。 ただ、すごい気になったのが過去作品とのリンク。ちょっと大げさにやりすぎていて興醒めでした。その後どうなっているのかが見れたっていうのは嬉しいんですが、締めのやつくらいに表立って書いちゃうのはぶち壊し。書かれないと絶対気づかないしなあこんな繋がり。主人公以外のキャラは相変わらず出来すぎた性格の持ち主が多いのもあるし、過去作ファン向けかも。 そんなわけで、面白かったんですが、過去作と比べると若干見劣り(コストパフォーマンスな面も含めて)。そろそろ違う作風の話も読んでみたいところです。 評価 ☆☆☆★(7) ◆ スキップ (北村 薫/新潮社) 【amazon】 画像はなし。 《あらすじ》 昭和40年代の初め。わたし一ノ瀬真理子は17歳、千葉の海近くの女子高二年。それは九月、大雨で運動会の後半が中止になった夕方、わたしは家の八畳間で一人、レコードをかけ目を閉じた。目覚めたのは桜木真理子42歳。夫と17歳の娘がいる高校の国語教師。わたしは一体どうなってしまったのか。独りぼっちだ―でも、わたしは進む。心が体を歩ませる。顔をあげ、『わたし』を生きていく。 積みハードカバーを崩そうフェア第2弾にして最終回、25年度の自分に精神だけがスキップしてしまった女の子のお話。 うーん、面白いし名作と呼ばれているのも分かるんですが、苦手。一気におばさんの体になってしまったことに対するいらだちややるせなさ、様々なギャップを生む25年の重みといった描写になんだか嫌悪感を感じてしまって、開始数十ページで投げ出して積んでいました。今回改めて手にとって読みすすめると、とまどいつつも自分を保ちながら生活していく真理子の強さに胸打たれたんですが、17歳の少女にしては凄すぎるんじゃないかな、という疑問も浮かびます。先生っぷりや教え方がとても高校生とは思えない。授業内容や日誌の内容自体が面白いのでいいんですけどね。最後までもどかしさに慣れることはできませんでしたが、それでも前向きで美しい物語でした。 評価 ☆☆☆(6) 【今日購入したもの】 名前探しの放課後(下) (辻村 深月/角川書店) eensy-weensyモンスター2 (津田 雅美/花とゆめコミックス) ロールプレイ (高崎 ゆうき/スクウェア・エニックス・ノベルズ) |
___1月3日(木) |
【今日読んだ本】 ◆ 人獣細工 (小林 泰三/角川書店) 【amazon】 《あらすじ》 パッチワーク・ガール。そう。わたしは継ぎはぎ娘。その傷痕の下には私のものではない臓器が埋められている。傷痕を見ていると皮膚が透けて、臓器がゆっくりと蠢動し、じゅくじゅくと液体が染み出してくるのが見えてくる。わたしのものではない臓器。人間のものですらない臓器。…第2回日本ホラー小説大賞短編賞をあの名作「玩具修理者」で受賞した著者が、内臓の匂い漂う絶望と恐怖の世界を構築した表題作に、二編を加えた待望の第二作品集。 そろそろ邪魔になってきた積みハードカバーを崩そうフェアを唐突に開始、第1弾は今は亡き浅木原さんが推していた小林泰三のホラー短編集。短編集なので個別に感想を。 人獣細工 豚の臓器を移植されたヒトブタの少女のお話。すごく気持ち悪い。正月に読むものじゃない。 吸血狩り 8歳の男の子が吸血鬼に挑むお話。視点と事実のギャップのせいでとんでもなく後味が悪い。最後の一文で後味の悪さが倍。正月に読むものじゃない。 本 狂気を誘発する本のお話。狂っていく人々の描写が真に迫りすぎてて気持ち悪い。正月に読むものじゃない。 読む時期を間違えました。こういうホラーは全然好みじゃないんですが、上手いとかなり楽しめますね。一番印象に残ったのは「吸血狩り」かな、最後の一文に秘められているものにはじめ気づかず、ネタバレサイト見て「やられた感」を味わいました。怖いよ、怖すぎるよ……。 そんなわけで、未読が減ったら他の作品にも手を出してみようかと。読むのは夏かな……。 評価 ☆☆☆★(7) 【今日購入したもの】 名前探しの放課後(上) (辻村 深月/角川書店) |
___1月2日(水) |
明けましておめでとうございます。今年はしばらくへろへろペースの更新になるかもしれませんが、よろしくお願いします。とりあえずはちんたらやってるウィングスCOMPをとっとと終わらせないと。 懲りずに今年あったらいいな10選2008年版。
【今日読んだ本】 ◆ 熱砂の星パライソ2 背徳者の旅路 (宝珠 なつめ/C★NOVELSファンタジア) 【amazon】 《あらすじ》 「僕に食べられてよ、今すぐ」圧倒的な力で、ルディとレーンの前に立ちはだかる女王の第二騎士ギリーガルー。絶体絶命の危機に、二人は……! SFガンアクション、完結! 新年感想1発目は、銃で荒野なのにSFなファンタジー「熱砂の星パライソ」の完結編。 1巻では世界観や魔物の設定で魅せてくれた本作ですが、2巻は人間メインのお話でした。ジャンル的にはアウトロー親父ロマンでしょうか(女性キャラはほとんど出てきません)。少年時代の生活の美しさとそこで起こした過ちなど、1巻では伏せられていたレーンの過去が明かされるとともに、それを乗り越える強さや過去の亡霊との対決が描かれていて面白かったです。伏線の張り方とかはベタなんですが、2人の伝説の賞金稼ぎとの暮らしが本当に幸せそうだっただけに、失うことの辛さや後悔も理解できたし、その後の展開にも燃えましたね。他にも、科学で魔物に立ち向かう集団との信念のぶつかり合い、魔物の正と負両方の側面、など盛りだくさんでした。犬の魔物がとっても純朴でかわいかったので、動物好きにもお勧め……かな? 真っ直ぐさとブラックさの両方が楽しめる、宝珠さんらしい作品でした。次回作も期待してます。 評価 ☆☆☆★(7) |