月別アーカイブ: 2016年12月

2016年読書まとめ(オンライン小説編)

2016年12月31日(土)

今年もオンノベをたくさん読みました。ランキングなどから新作を探しつつ、連載を日々読む日々。読む連載が増えるにつれ、商業作品の読書量は減っていくのでした。いや、それだけが原因じゃないですが。

今年のお気に入りを5作ほど。半分以上は書籍化作品になっちゃいましたが、面白いから書籍化されるわけで仕方ないです。


女王の化粧師
Barocco / 千 花鶏 さん)

ここ何年か、続きが一番楽しみなオンライン小説の座を不動のものにしているシリーズ。今年は2幕終了までたっぷり読めて幸せでした。
何年か前に紹介記事書いてるので基本はそちらに譲るとして、素晴らしいロマンスと素晴らしい主従の両方に出会える物語です。世間知らずだったのが成長して名君になっていくお姫様って素敵ですよね。
最新の2幕では周辺の国々も登場して大きな話が持ち上がってきて、ますます物語の行末が楽しみになりました。

ちょうど2幕が終わって小休止中、読むなら今ですよ今! 特に少女小説ファンタジー読みの皆様には全力でオススメしたい所存。なろうさんカクヨムさんにも最新分まで転載されるようなので、なろう派の方も是非。


リライト・ライト・ラスト・トライ
小説家になろう / はな さん)

今年出会った中では一番お気に入りのお話。異世界転移をした少女が、毎回死んでしまう護衛の青年を救うためにやり直しを続けた、その最後の1回を描く物語。この舞台設定だけでもう美味しすぎます。主人公の目的は青年を救うことですが、今の青年には当然それまでの思い出がないわけで、伝えられない想いが切ない。

と、設定だけ見るとかなりシリアスですが、主人公が結構いい性格をしていて、コミカルなシーンも結構多め。2人の視点が数話毎に入れ替わって、それぞれの視点だと意外な発見もあったりして楽しいです。特に護衛のトウイの視点だと、主人公が色々無茶をして危なっかしいのにハラハラして振り回されたり、理不尽な攻撃(嫉妬)を何故か受けたりを見るのが愉快。
2人の気持ちが近づく一方で不穏さも増してきていて、幸せになれるのかドキドキさせられる物語です。


本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~
小説家になろう / 香月 美夜 さん)

言わずと知れた大長編。平日のお昼時、そろそろ更新されてないかチェックしてはガッカリという状況、本好き読者なら何度も味わっているはず。
コミカライズが展開されたりファンブックが出たりもして、知名度がぐんぐん上がった年だったなあという気がします。

完結が近づいてきてるのが分かって寂しいですが、マインさんのハチャメチャな活躍は相変わらずで楽しいです。どう着地させるのかが楽しみ。


自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う
小説家になろう / 昼熊 さん)

毎日12時に更新される、お昼時の楽しみだった物語。自動販売機に転生した主人公が色んな自販機に変化して冒険していくのが面白いです。戦闘シーンに登場するだけでも本当に多種多様なのが凄い。他の登場人物たちも個性豊か、自販機のハッコンを慕うラッミスかわいいです。

この作者さんの作品は、他作品も畑への転生など一癖二癖あって面白くて、今年出会ってかなり読みました。


その無限の先へ
小説家になろう / 二ツ樹五輪(*´∀`*) さん)

異世界転移した主人公が、仲間と共にダンジョンを攻略していくファンタジー。書籍版の感想でも書いてますが、先に進もうとする人の意志や、それが影響して伝わっていく描写が好きなのです。
限界スレスレまで追い込まれて燃える戦闘や試練、コミカルな掛け合いの楽しさ、主人公の前世をはじめとした謎の多さ、など他の見所もたっぷり。

ちょうど連載が盛り上がってきたところで、書籍版の先行きが不穏。続きますように……!

2016年読書まとめ(商業作品編)

2016年12月31日(土)

ブログに移行してからはじめてのまとめ記事です。

2016年読んだ冊数はちょうど100冊でした。ここ2年は180冊程度だったので大幅に減りましたね……。仕事とオンノベが大体の原因かと思います。決してオンノベだけが原因じゃないんですよ!

読了数減ったのでベストに挙げる数を減らすか迷いますが、いつも通り10作にしました。だってビーズログのシリーズ物だけで3枠固いんですもの。
あと、読む数絞った分、厳選して読んでいるので、お気に入り作品の数はあまり変わってないのもあり。このブログのエントリ、半分以上にお気に入りタグついてますからね。お気に入りとは一体……。

というわけで今年読んだ個人的お気に入り10作です。発売時期は関係なし、少女小説→その他ライトノベル→一般小説の順で、あとは順不同。


(仮)花嫁のやんごとなき事情 シリーズ (夕鷺 かのう/ビーズログ文庫)

(仮)花嫁のやんごとなき事情 ~最終決戦はついに離婚!?~ (ビーズログ文庫) (仮)花嫁のやんごとなき事情 ~結婚できたら大団円! ~ (ビーズログ文庫)

祝完結! 入れ替え身代わり物という好きなジャンルに加え、抜群の行動力と変なセンスと乙女のかわいらしさを備えたフェルという主人公も大好きで、最高に面白いシリーズでした。

毎回笑えて、さらに楽しい甘さもたっぷり味わえるのが特に大好きでした。自覚したあたりのフェルの奇行とか大好き。ヒーローのクロウも、フェルと振り回し振り回されを繰り返しながら、一途な想いを成就させたいい男でした、本当によく我慢した。今まで読んだ少女小説の中でもかなり上にくるくらい格好いいヒーローでした。

サイン会に参加したのも思い出、勢いで参加して良かったです。番外編が楽しみ!

<今年の感想>
(仮)花嫁のやんごとなき事情 ~最終決戦はついに離婚!?~
(仮)花嫁のやんごとなき事情 ~結婚できたら大団円!~


シンデレラ伯爵家の靴箱館 シリーズ (仲村 つばき/ビーズログ文庫)

シンデレラ伯爵家の靴箱館 乙女は新たな靴を履く (ビーズログ文庫)

祝完結その2。ヒロインとヒーローが一歩ずつ試練を乗り越え、心を成長させ、恋心も育んでいく。その1つ1つを丁寧に描いた、とても良い少女小説でした。おどおどするばかりだったエデルの、最終巻での姿にはグッときましたし、幸せそうな姿に感無量。最終巻は今年のベスト1冊でも迷うくらいにお気に入り。

そんな王道の良さとは別に、ヒーローのアラン様の迷言集も素晴らしかったです。ヒロインを「ぶたにく」に喩え、「幸せな豚を目指そう」と真顔でのたまうヒーロー……。腹筋が試される場面が大変多かったです(※この作品はラブロマンスです)。少女小説史に名前を残すヒーローでした、楽しかった!

仲村さんの新シリーズ、まだ読めてないので近いうちに!

<今年の感想>
シンデレラ伯爵家の靴箱館 乙女は新たな靴を履く


おこぼれ姫と円卓の騎士 シリーズ (石田 リンネ/ビーズログ文庫)

おこぼれ姫と円卓の騎士 再起の大地 (ビーズログ文庫) おこぼれ姫と円卓の騎士 王女の休日 (ビーズログ文庫) おこぼれ姫と円卓の騎士 白魔の逃亡 (ビーズログ文庫)

ビーズログから3連発、その3。衝撃の最終章スタートをはじめ、今年も安定の面白さ。毎年挙げてるんですが外せません。

今年特に良かったのは、最新刊でのレティと騎士の絆かな。離れ離れになった仲間たちが、これまでの信頼で繋がって、状況を挽回していくのって燃えますよね。

あと数冊で終わってしまうのが寂しいですが、まだ波乱はありそうですし、最後まで楽しみ。

<今年の感想>
おこぼれ姫と円卓の騎士 再起の大地
おこぼれ姫と円卓の騎士 王女の休日
おこぼれ姫と円卓の騎士 白魔の逃亡


青薔薇伯爵と男装の執事 シリーズ (和泉 統子/ウィングス・ノヴェル)

青薔薇伯爵と男装の執事~発見された姫君、しかして結末は~ (ウィングス・ノヴェル)

タイトル通りの男装ファンタジーですが、今年出た2巻にして完結巻が望外の面白さ。 複雑な血縁関係による二転三転するハラハラ展開を抜けた先にある大団円のハッピーエンドが最高!

ネタバレ危険すぎるのであまり書けませんが、メイン2人の恋愛模様も良かったです、ヒロインのアンのヒーローっぷりが特に(日本語的におかしいけど間違ってない)。

手に取りにくいレーベルですが、ハッピーエンドな楽しいロマンス好きな方には是非手にとってほしい作品です。

<今年の感想>
青薔薇伯爵と男装の執事 ~発見された姫君、しかして結末は~


ドイツェン宮廷楽団譜 シリーズ (永瀬 さらさ/角川ビーンズ文庫)

ドイツェン宮廷楽団譜 嘘つき婚約コンチェルト<ドイツェン宮廷楽団譜> (角川ビーンズ文庫)

年の瀬に出会った楽しい楽しい音楽ラブコメディ。
ミレアみたいな行動力あってかわいい主人公に、「憧れの君」が実は身近にいることによるニヤニヤできる展開、家族やサブキャラクターたちの描き方、などなど全てが自分の好みとマッチしてました。終盤、演奏と恋心の描写を合わせたロマンチックさも大好き。

1冊で綺麗にまとまってはいますが、続きが読みたいという気持ちをこめてシリーズ表記に。

<今年の感想>
ドイツェン宮廷楽団譜 嘘つき婚約コンチェルト


Babel シリーズ (古宮 九時/電撃文庫)

Babel ―異世界禁呪と緑の少女―<Babel> (電撃文庫) BabelII ‐剣の王と崩れゆく言葉‐ (電撃文庫)

Webで大好きなシリーズの待望の書籍化。圧倒的な力を前にして、言葉と意志だけを武器にして対峙する主人公の雫が大好きで、異世界での言語というテーマに真っ向に踏み込む物語も面白いのです。特典目当てに久々に複数冊買いしました、買った冊数は人生で第1位。

この先、傑作を見せてくれることが確定しているこの物語。3巻以降の発売が危ぶまれてますが、何とか……!

<今年の感想>
Babel ―異世界禁呪と緑の少女―
Babel II ―剣の王と崩れゆく言葉―


ダブルクロス The 3rd Edition リプレイ・メビウス シリーズ
(中村やにお, F.E.A.R./富士見ドラゴンブック)

ダブルクロス The 3rd Edition リプレイ・メビウス2 微笑むキミに会いたい<ダブルクロス The 3rd Edition リプレイ・メビウス> (富士見ドラゴンブック) ダブルクロス The 3rd Edition リプレイ・メビウス 3 1秒でも長くキミといよう (富士見ドラゴンブック)

TRPGリプレイの魅力というものを味わわさせてくれた作品。プレイヤーの意志が120%シンクロして産み出される物語は、時に小説を凌駕するのだと知りました。ループ物という好きなジャンルでなければ手にとっていなかったかも。読めてよかったです。

リプレイ定番のプレイ前の笑える会話もキレキレで、やはりリプレイは屋外で読んではいけないと再確認もさせられました。

<今年の感想>
ダブルクロス The 3rd Edition リプレイ・メビウス


自負と偏見 (ジェイン・オースティン/新潮文庫)

自負と偏見(新潮文庫)

名作は色あせないのだ、と改めて教えてくれた1冊。はじめは嫌っていた相手の印象が、ある機にガラリと引っくり返り恋心へと変わる、そんなラブロマンスの鮮やかさを見せてくれました。ヒーローのダーシーがとんでもなく格好いい。

あと印象的だったのが、世間体ばかり気にしていたり、お金が第一だったり、といった俗っぽい登場人物たちの多さ。現代にも普通にありそうな特徴が喜劇的に描かれていて、上手いなあと思わされました。

<今年の感想>
自負と偏見


この闇と光 (服部 まゆみ/角川文庫)

この闇と光 (角川文庫)

耽美で幻想的な世界観からゾクゾクする展開に引っ張り出される、そんな体験が衝撃的だった物語。ネタバレしづらい物語なのですが、何がどこまで本当なのか、読了してもまだ怖くなるお話でした。

<今年の感想>
この闇と光


盤上の夜 (宮内 悠介/創元SF文庫)

盤上の夜 (創元SF文庫)

囲碁のAI界隈が非常に盛り上がり印象深かった1年でしたが、碁打ちや棋士達の生き様を中心に描いた本作も強く心に残りました。
囲碁も将棋もコンピュータに人間が勝てない流れは不可逆でしょうが、この作品で描かれたような対局者同士の駆け引きや盤上での対話の面白さなどのドラマの魅力は色あせないでしょう。そこからさらに踏み込んだ独特の世界観を見せてくれたのも、この物語の面白さでした。

<今年の感想>
盤上の夜

 

ドイツェン宮廷楽団譜 嘘つき婚約コンチェルト / 永瀬さらさ

2016年12月25日(日)

ドイツェン宮廷楽団譜 嘘つき婚約コンチェルト<ドイツェン宮廷楽団譜> (角川ビーンズ文庫) ドイツェン宮廷楽団譜 嘘つき婚約コンチェルト
永瀬さらさ
角川ビーンズ文庫
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素晴らしいラブコメディ&ロマンスでした、こういうお話大好きです!

「精霊歌士と夢見る野菜」などを書かれている永瀬さんの今月の新作は、バイオリニストの女の子が主役のお話。良い評判が聞こえてきたので優先して読んだらスマッシュヒットでした! つい先日「ファンタジー要素薄めの楽しいロマンス好き」と書いたばかりで、またこういう作品に出会えて嬉しいです。

バイオリニストのミレアが指揮者のアルベルトと出会うところから物語は始まるんですが、溌剌として負けん気強そうなミレアの性格が好みで、最初から「このお話当たりかも!」と思わされました。性格悪いアルベルトとの掛け合いをはじめ、「聖夜の天使」への純真な憧れなど一挙一動がかわいくて楽しい。アルベルトに惹かれだしてからはさらにかわいい。

ヒーローのアルベルトがまた良いキャラクター。ミレアが憧れる「聖夜の天使」との関係性は割と早くから予想がついて、読者視点だとミレアの言動に振り回される様子に凄くニヤニヤできるんです。「聖夜の天使」にばかり気持ちを向けられたら、そりゃ苛立ちますよね。師匠がそんなアルベルトのことをいじったりするのも楽しい。
それでもミレアにとってのベストな結果を最優先するアルベルトの優しさは、ヒーローにふさわしい格好良さ。その優しさに時折ミレアが気づくことで生まれる甘い空気がまた良かったです。

そして、とても気に入ったのがクライマックスの場面。ミレアの行動力からはじまり、皆の暖かさに触れて、アルベルトを振り回した先に待っているのは素敵な音楽。音楽を通して体当たりして気持ちを伝えるミレアがロマンチックで凄い好きでした。「落ちたら受け止めてくれるでしょう?」が素晴らしかった!

他にポイント高かったのが、話運びや悪役の描き方。しっかりとした障害や困難として描かれながらも、ただの悪役で終わらないのが、意外性もあって個人的に「おおっ」と思わされました。悪役たちだけでなく、脇役たちも含めた想いの描き方がいいなあと思う物語でしたね。家族から名もない楽団のメンバーまでみんな良かった。

あと表紙デザインの2人がかわいい。いい意味でビーンズらしくない表紙だなと思いました。少しずつ多様化が進んでいるんでしょうか。

この1巻でも綺麗にまとまってはいますが、2人のラブコメ模様はこの先も楽しそうだし、レベッカ達など気になるサブキャラもいるので、続きが出ますように!